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雑談とか

天使と悪魔。成功と失敗。

作者: ACT

「天使も悪魔もうるせえ」という話。


 大河の対岸に財宝が眠っていた。


 Aは悩んだ。

 そこに天使と悪魔が現れた。

 天使は言った。「取りに行こう」

 悪魔は言った。「危ないぞ」

 Aは財宝を手に入れた。


 Bは悩んだ。

 そこに天使と悪魔が現れた。

 天使は言った。「取りに行こう」

 悪魔は言った。「危ないぞ」

 Bは家に閉じこもった。


 CとDは悩んだ。

 だが、そこには天使も悪魔も現れなかった。

 Cは財宝を手に入れた。

 Dはサメに喰われた。



 BはAに訊いた。

「悪魔の言葉が聞こえなかったのか?」

「聞こえた。だが、あまり気にしなかった」


 Cにも訊いた。

 Cは首を横にふった。

「聞こえなかった」


 幽霊になったDにも訊いた。

 Dは眉根を寄せた。

「聞こえなかった。もし聞こえていたら、死なずに済んだのに」



 AとCは再び財宝を取りに行くことにした。

 すると今度はCにも天使と悪魔が現れた。


 天使は言った。「取りに行こう」

 悪魔は言った。「危ないぞ」


 Aは財宝を手に入れた。

 Cは家に閉じこもった。


 BはCに訊いた。

 Cは震えながらいった。

「渡らないのか?」

「悪魔の声が聞こえた。怖いから渡らないことにした」


 

 BはAに訊いた。

「どうしたら悪魔を追い払える」

「悪魔は口だけだ。気にしないことだ」

「口だけ? でもDはサメに襲われたじゃないか」


 Aは首を傾げた。

「サメは悪魔か? 魚じゃないのか?」

「……魚だ」

「サメが怖いのか。それとも悪魔が怖いのか」

「両方だ。それは同じことじゃないのか?」

「私もサメは怖い。だからサメを撃退できる銛を用意した。

 CとDはサメのことを知らなかったらしい。

 Cはサメに遭遇せず運良く成功して、

 Dはサメに遭遇して運悪く失敗した」

「Cはその後、天使と悪魔の言葉を聞いて渡れなくなったよ」


 Aがいった。

「それで、Bはサメが怖いのか? それとも悪魔が怖いのか?」

「さっきと同じ質問じゃないか」

「なら質問を変えよう。悪魔からは他にも言われなかったか?」

「言われたな。沈没するかもしれない。財宝はないかもしれない。対岸には敵がいるかもしれない」

「私も似たようなものだ。逆に天使は色々と良いことを言ってくれた」

「私の天使もそうだった。だが私は悪魔に耳を貸してしまった。だから悪魔を追い払いたい」

「追い払いたいか……、やはりBは悪魔が怖いみたいだな。私はサメは怖いが、悪魔は怖くなかった」


 Bは驚いた。

「なぜだ」

「サメは鋭い歯を持つが、悪魔は口先だけだからだ。奴らはいつでも私が不安になることばかり言う。そして追い払ってもいつの間にか隣に戻ってきている。だからもう追い払うことは諦めたんだ」

「気にならないのか?」

「気になるけど、まあ仕方ない。諦めているのさ。悪魔とは10年の付き合いになるが倒すことも追い払うこともできなかったよ。お金と時間だけが消耗された。さて、私はまた渡河するよ。サメ対策に用意したこの銛と、財宝を入れる箱を用意してな」

「私は悪魔を倒す銛が欲しい。そうしたら天使の言葉がよく聞こえるはずだ」


 Aは肩を竦めた。

「どうかな。天使もかなり都合が良いことしか言わないぞ。先日、対岸で財宝を見つけると、天使は船が沈むほどの財宝を持ち帰ろうと言っていた。悪魔はそれが危険だと言っていた。私は悩んだ末、財宝を減らすことにした」

「天使も悪魔も危険だということか? なら私はどうしたらいいんだ?」

「さあ……、私の天使と悪魔が君と同じとは限らない、私には君の天使と悪魔が見えないからな。でも一つだけ、個人的な見解を述べさせてもらうとしたら……」


 Aは銛を持って立ち上がると、Bに笑顔を向けた。


「どちらもおしゃべりで、話が長い」

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