日曜日
ピピピピ ピピピピ ガシャン。
手を伸ばして目覚ましを止める。日曜朝7時半。早起きだ。まぶたの向こうから感じる外の光は平日のものとは少し違う。だが、目を開いて見る外の光はいつもと変わらない。
ベッドから降りて立ち上がり、両手を天井に向けて伸びをする。いつもより天井に手が届きそうだ。背伸びをしてみる。あれ、届かない。
着ていたスウェットを脱いで黒のスキニーを履き、真っ白のTシャツを着る。スウェットを手で持って部屋の扉を開ける。味噌汁の匂い。今日の朝食は和食のようだ。
ゆっくりと階段を降りる。足の裏に伝わる階段の冷たさがなぜか気持ち良い。いつもは震えているのにな。
リビングの扉を開け中に入ると味噌汁の匂いが濃くなる。
「おはよう。今日はいい天気よ。」
母さんの声が心なしかいつもより高い。
「あぁ、おはよう」
そのままリビングを通り抜けて洗面所に行く。リビングよりもややひんやりとした空気が漂う。
スウェットを洗濯機に入れ、棚からフェイスタオルを出し、冷水で顔を洗う。冷たい水がまるで脳まで染み込むように思考を明確にしていく。タオルで顔の水を拭き、そのタオルも洗濯機に投げ入れた。
外に出よう。玄関に行き、サンダルを履いて外に出る。肺いっぱいに空気を吸い込む。ゆっくりと吐き出す。
玄関先に目をやる。人が、いる。横になって息をしている。急いで近づいて声をかける。
「大丈夫ですか。」
返事はない。走って家の中に戻り救急車を呼び、母さんとともに再び外に出る。
「動かさない方がいいわね。救急車が到着するまでここで待ちましょ。」
母さんが言う。声が低い。
風が冷たい。裸足の足に冷気がしみる。
空を見上げて目を瞑る。まぶたの向こうからいつもとなにも変わらない光が見えた。
あぁ、天井に手など、届くはずもない。