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「王と  」 その1

「ふふ、初めまして!」

・・・・いつからそこに居たのだろうか?

黒い長髪に真っ黒な和服に茶色い肌、

見た目だけでも明らかに愉快に笑いそうな黒い少女がそこには居た

「ここに来てくれたってことは、ワタシのお話を聞きに来てくれたってことだよね?」

 フフッ と、見た目道理の愉快そうに笑いながら、少女は尻尾を振る


尻尾、そう、尻尾である

黒い少女の頭には猫のような黒い耳、そして腰にはこれまた猫のような黒い尻尾が付いている しかも二つも

二つの尻尾を持つとは、まるで――———

「まるで、猫又みたい、 そう思ったでしょ」

少女は目を細めて笑う


猫又、民謡伝承や古典の怪談、随筆などで語られる、尻尾が二本あるのが特徴の妖怪

人に化け、時には人に取り付いたり人を食らったりたり、

そんな、現実には居ないはずの、妖怪


「ところでさ、」

と、いつの間にか、何処からとりだしたのだろうか白いベットに寝そべっていた黒い少女は言う

「願い って、どうゆう物だと思う?」

 よっこいせ と起き上がり、少女はベットの上で胡坐をかく

「一般的には・・・願いって、○○が欲しい! とか、○○になりたい! とか、 ま つはりは物を欲するってことがよね?」

・・・そうだと思うし、むしろそれ以外にあるのだろうか

「うん、あるよ」

少女はベットから降りて、言う

「病気になりたくない、いじめられたくない、事故に遭いたくない、受験に落ちたくない

要は『物を欲さない』 判りやすく言えば『こんなのになりたくない』という、願い

・・・・・はて、何が違うのだろうか?

それはただ 健康でありたい、誰かと仲良くありたい、安全でいたい、受験に合格したい

要はただの言い方の違いではないだろうか?

「ま、そう思うだろうね 結局はどっちもただの願い事だし」

少女は肩をすくめる

「前者、欲する願いはその願った場所へ向かおううと思うこと

後者、欲さない願いはその願った場所から逃げること

本質的には同じ、願うこと、今の場から動こうと思うこと」

 ただ と少女は続ける

「向かうと逃げる、歩く道が違えば、目的は同じでも、目的地は同じにならない

つまるところ、結果は全く別のものなる

・・・・・・・・・・・

「ま、理解はしてくれなくていいよ ただの猫のちょっとした思い付きなだけだから

と、そうだ そろそろ本題に入ろう」

これまた何時から持っていたのか、少女の体半分以上の大きさのある本を見せて少女は言う

「さて、物語を始めよう」

少女は、もういいや、椅子に座り、本を広げながら紡ぐ

「この物語の舞台はアヴァロンエデン、通称『異端郷』と呼ばれるところ

理想郷の楽園(アヴァロンエデン)の通称が異端とはこれ如何に

「そこは、現実のすぐそば、本当にすぐ近くにある、現実とは程遠い、願いが叶う世界」

願いが・・・叶う・・・?

少女はニヤリと笑い、続ける

「そんな世界に一人の少年が迷い込む——————————

あ、そうだ」

と少女は語るのを一時中断して、

「この物語を面白くするために、一つ、別のお話を」

と、少女は一度息を吸い、


「僕は、人が嫌いだった————————————













僕は、人が嫌いだった

昼休み、僕以外誰もいない校舎裏、一人だと錯覚しそうなほど静寂の中、そこにある切り株に座り本を読みながら思う

僕には人というのが判らなかった

何故かみんな当たり前のように他人と話し、平然と遊び、普通とばかり笑う

僕には、そのことが、みんながどうやってそんなことをしているのか判らなかった

だから教室に馴染めず、ここでたた一人きり

こうゆうのを適応障害というのだろうか

「・・・・・ふん」

考えるのが何だか馬鹿馬鹿しくなり、手元の本に目を向ける


僕は本が好きだった

本を読んでいるときの、まるで僕がそこにいるかのような感覚、

周りに馴染めない僕の、唯一馴染むことの世界がそこにはあった

勿論本に、いや、物語のキャラクターとして舞台には出演できないが、僕は観客として、拍手を送る盛り上げ役として、この世界に溶け込んでいる

そしてその演劇を見ているのは僕ただ一人

その演劇(ほん)は僕一人のために行われている

まるで、僕が一国の王で、僕のためだけに呼び寄せた演劇部隊、

それが僕の中での本の見え方だった

「・・・・・ふふっ」

自分は小学生らしくないな と、小学五年生男子の僕はそう思った



「・・・・・ん?」

予鈴が鳴り、教室に戻ってみると教室が騒がしかった

「何だ?」

窓に人が集まっていて、話し声が耳に入る

「ねぇ、何で窓割れてるの?」

「うーん、何か誰かがボールで割ったみたいなんだけど、犯人が分からないらしいんだ」

「えー、誰がやったのかな?」

 どうやら誰かが窓を割ったらしい

と、そこへ、

「何だ、どうした!」

と、先生が入ってきた

あ、これめんどくさくなるやつだ


まー、お察しの通り先生お怒りで、 誰がやったと騒いで、 そして緊急学級会 と

「先生は怒っている!窓を割ってしまったのはまだいい! だが黙って誤魔化そうとするとは何事だ!」


はぁ――――  めんどくさ

何でやってない事で怒られなければならないのか

て、言うか犯人分かんないのに何でこのクラスに犯人がいると思っているのか、可能性なら他のクラスの人もあるのに、

何でこんなめんどくさい事を————————

「○○! 聞いているのか!」

僕を指差し、先生は言う

「・・・聞いてますよ」

「何だ!そのめんどくさそうな言い方は!」

いや、事実めんどくさいし

「・・・すみません」

めんどくさいので、とりあえず謝っておいた

その態度が余計にイヤだったのか、

「まさか、お前が窓を割った犯人じゃないだろうな」

その言葉には流石にㇺッとした

僕が言い返そうとした時

「あ、あの!」

と、一人の女子生徒が立ち上がって言った

「何だ?」

「あ、あの・・・・実はわたし、窓を割った犯人を知っているんですっ!」

教室がざわめきだす

「何だと!なぜそれを早く言わない!」

「じ、実は、その犯人の子に口止めされてて・・・」

 もしかして、僕を助けてくれているのか?

「でも、やっぱり言わなきゃって思って・・・・」

だとしたらありがたいことだ

「大丈夫だ しっかりキミのことは守ってあげるから、犯人を言ってくれ」

「は、はい・・・ その、窓を割った犯人は・・・・」

と、その子は指差す

その指差した方向に一斉にみんなの目線が行く

その、目線の先とは・・・・・

「○○君です!」

僕だった


——————————————————————————は?


「○○君がボールで窓を割ったのをたまたま見て、」


待て待て待て待て、可笑しいだろ!


「それで、先生にチクったら痛い目見せるぞって」


そもそも僕がボール遊びをしたことがないんだからボールで窓を割れる訳ないだろ!


「お前だったのか、○○!」


違う————


「しかも脅迫までして!」


違う———————————


「それでいて白を切ろうとして・・・!!」


違う—————————————————————


「許されないぞ!○○!」


「違う!!!」


そう叫んだ時、気が付いた

僕が犯人だって言ったその女子生徒が、

不安そうな表情の中で、

薄く、笑っている事に



ずっと違うと言ったが結局、誰にも、クラスの子にも、先生にも、親にも無罪は信じてもらえなかった———



やはり、人ってのは良く分からない

なぜ嘘を簡単に信じるのか

なぜ真実を簡単に信じないのか

なぜ、こうも簡単に、罪悪感無く、罪をなすりつけるのか

僕には、この世界は判らない世界だった


別の世界に行きたい

僕はそう思いながら、出ることの無くなった部屋の中で、本を読むのだった






以上を踏まえた上で、さぁ 物語が始まるよ♪








『王と  』





「うーん・・・・・・・」


木、木、木、木


何処を見ても木の中、いや森の中を一人さ迷い歩く

何故こんなことになったのか、それはオレにも分からない

何故か一人、森の中をさ迷うという異世界ものでは結構べたそうな展開の中、森をさ迷い歩く

「本当に、どうしたものか・・・」

せめてここがどこか分かる人がいれば・・・・

何て思いながら歩いていると、

「お、」

少し遠くに人影が見えた

「あの人に聞いてみるか」

少し小走りにその人影が見えたところに向かう

「あのー、」

人影に近づき声をかけようと———————

「・・・・・・・・・」

人影かげに近づとそれは人影だった

人ではない、人影

冗談のように真っ黒で、手がクロ―的な形で、いかにも敵キャラっぽい、人の形をした、

文字通りの人影だった

と、人影がこちらに気づき人影と目が人影に目など無いが、合う

「・・・・・・・・・・・・・・・」

一瞬の沈黙の間、そして、

「・・・・・・・・・やっべ」

後ろを振り向いて全力で逃げた

何だよ何だよ何だよこいつ!

ちらりと後ろを振り向くと、人影は追って来ていた

「一体何なんだよ!!」

いきなり説明無しの森スタートからの敵エンカウントのとか、小説だったら読者付いていけないぞ!

そんなことを思いながら走っていたせいか、

「おわ!」

木の根っこにつまずいて転んでしまった

「いてて・・・」

慌てて立ち上がろうとしたが、

「っ!やべ!」

いつの間にか目の前に既に人影がいた

人影がそのクロ―のような手を振りかぶり、オレを裂こうとする

やっべ、殺される!

思わず、意味は無いと思うが頭を庇い、目を閉じる


チャキン  と何かが切れる音


その後引き裂くような痛みがオレを・・・・・・

「・・・・・・・・・?」

襲って来なかった

恐る恐る目を開けると、そこに人影はいなった

代わりに、

「大丈夫?」

白い、いやどちらかと言うと銀色の髪に赤い椿のような飾りのついた簪、そして桜の花びらが描かれた和服を着た少女が、身長とは不釣り合いな日本刀を持って、桜の花びらが舞い散る中、

そこに立っていた



「ははは! それは災難だね!」

魂桜(こんろう) 刹那(せつな)と名乗った少女の後を追いながら、オレたちは森の中を進む

「災難ですむレベルじゃないだろ・・・・」

この子が助けてくれなっかったらどうなっていたことやら・・・・・

「・・・・ど、どうかしたか?」

ふと、刹那がこちらをげしげしと見つめている事に気付く

「ん? あ、いや、人間がここに迷い込むとは珍しいなって」

人間がって・・・・・・

「いや何? ここってガチのエルフやらドラゴンやらがいる異世界なの?」

異世界って、お前何処から来たんだよ 的なことを言ったらここは異世界だと確信しようとしたが、

「うーん・・・遠からずも近からず、って所かな・・・・・」

何か、妙に曖昧な返事だな・・・・・

「ま、詳しいことは」

と、いつの間にか森を抜け、

「ここの館の主に聞いてね その方が良いと思うから」

少し古ぼけているが汚くはない、そんな館がそこにはあった





「んーまぁ、ここの館の主、『最悪の吸血鬼』(じん)は吸血鬼と―————————」

・・・・・・・・・

「そのために仁には悪い噂ばっか出てるんだけど————————— って、聞いてるの?」

「ん? あ、あぁ・・・・」

正直聞いている余裕は無かった

その館の光景は異常だった

いや、風景はただの豪華、では無いが、館で特に変わったところはない普通の館だ

何人ものメイドが、窓を拭いたり、話し合っていたりしているのも普通

小人のように小さいのと浮いているのを除いて

「・・・・・なぁ、さっき人間が珍しいって言ったのって、ここが妖精の国だからか?」

ならここガチ異世界じゃね?

あぁ、そうゆうことか と、笑いながら刹那は言う

「ここは妖精の国じゃ無いし、あの子ら、叛軍人形(レギオンドールズ)は妖精じゃなく人形なの」

「いや自立して飛んでる時点で一緒なんだが・・・・」

やっぱり異世界だ、ここ

「まぁ、何度も言うけど、」

とたどり着いたのは重厚感のある扉の部屋の前で、

刹那はその扉を開ける

「こいつに聞いてね」

その部屋は・・・・・・・・・これはこれで異常だった

薄暗い部屋の中、少し大きめの画面三つのデスクトップパソコンの前でゲームをする少年、

部屋を見渡すとP〇Pやら、ニン〇ンドース☆ッチやら、山積みのゲームのカセットやらがあり、

外見の古風な館にも、ファンタジーな人形たちにも似合わない、現代(ヒキコモリ)の部屋が、そこにはあった

「ここ、世界観がバラバラじゃね?」

思わず、そう呟いてしまった

「そりゃ、ここはそうゆうところですから」

と、少年は椅子をくるりと回転させ、こちらに振り向く

「・・・・・・・・っ!」

ゾクリ としたのは気のせいではないだろう

「ようこそ、願望が集まった、理想とは程遠い理想郷へ」

何せ少年の笑みは、

「歓迎はしないよ」

人影に出会った時よりも恐い、何かがあった




・・・・・やっぱ気のせいだっただろうか

刹那にカーテンを開けられ、 「わー、死ぬー!」 とか大げさに叫ぶ少年に対し、 「お前は死なないでしょ」 と呆れて様子で言う刹那とのやり取りを見ている時には既に少年にさっきの気迫などみじんもなかった

「あのー、」 

「あ うん分かってます、とりあえずそこに座っ下さい」

とりあえず勧められて椅子に座る

「改めてようこそ、ボクはここの館の主、輝闇(きじゃ) (じん)と申します」

いかにも礼儀正しそうな口調、しかし見た目は小学生で、赤いパーカーにヘッドホンを首にぶら下げた姿は、どうにも館の主とは見えなかった

「ま、別にボクは見た目とかどうでもいいですからね」

 考えてること見抜かれてた

「ま、取り敢えず聞きたいことはここが何処かですね」

と、仁は言いながら携帯ゲームに手を伸ばそうとしたが 話してる時くらいゲームをするな という刹那の目線で、渋々手を伸ばすのを止める

「あぁ、いったい此処はど

「あ、質問タイムは後で取りますのでしばらく口を挟まないで下さい」

思いっきりセリフをぶった切られた

「まずはこの世界の話ですね 此処はアヴァロンエデン、通称『異端郷』」

「異t

「現実の近くにある、現実っぽい、現実とは程遠いところです」

相づちもダメらしい

理想郷の楽園(アヴァロンエデン)という名前が付けられたのはここが願いが叶う場所、正確には空想の世界、ま要はみんなで理想の町の地図を描いたような世界ってことです」

・・・・・・・良く分からない

「んー、何と言えばいいですかね・・・・・・・ ここはパソコンの中みたいな場所なんです こう、みんなのやりたいことを、載せる場所みたいな

あ、そうだ! ペル〇ナ5って知ってますよね! そのメメ〇トスみたいな場所です!」

いやまぁ、知ってるから何となく分かったが・・・・

「でまぁ、ここはそんな人々の空想から作り上げられた世界なんです だから願いが叶う」

だんだん解ってきた

つまり、この世界は夢を見ているのと同じということだろうか

「うーん、こんな説明じゃ少しわかりずらいかなー ま、もう伝わらなくてもいいや」

「雑だなおい!!!!」

流石にそれはツッコミを入れる

「だってぇ、説明苦手なんですもん・・・」

申し訳なさそうに仁は言う

何で刹那はこいつに説明させようとしたんだ・・・・?

「取り敢えず、ここは願いが叶う場所、あぁ、後はボクらみたいな奴がいる場所って所ですかね」

僕ら・・・・・・・?

「成る程、知らないのですね」

仁は妙に納得したように頷いてから、

「ボク、吸血鬼と人間のハーフなんですよ」

「は!?」

事も無げにそんなことを言う

「き、きゅ

「いるんですよ、この世界には」

相変わらずオレの言葉を遮りながら、少し表情を暗くして、言う

「この世界はある意味ボクらみたいな現実には居られない怪物、異端な者を閉じ込める場所でもありますからね」

   あぁ、だから『異端郷』なのか

よくマンガである、そんな光景になっているのか ここは

「ちなみに刹那も桜の妖怪? 化身? まぁそんな類の者ですよ」

チラリと刹那の方を見ると、刹那は少し困ったように笑っていた

「ま、ここがどうゆう場所なのかはこれまで 次は願いが叶う についてです」

暗い話は止めよう とばかりに仁は殊更明るく言う

それについてはオレも気になっていた

願いが叶うということは、大金持ちになるとか、スーパーマンみたいになるとか

「無いですよ」

 ・・・・そんなに顔にでも出てるのか

思わず自分の顔を撫でてしまう

「そんな何でも思えば出で来るほど都合よくないですからね、ここ」

まぁ、そうだよなー

「まぁ、無いわけでもないのですが・・・・」

よいしょ と、言いながら仁はタブレットを取り出す

これはゲーム目的では無さそうなので、刹那も取り上げない

「そもそも、『願う』って漢字の成り立ちを知っていますか?」

と、タブレットに『願』の漢字を映し出して言う

「原+頁で願、原は水が湧き出る場所とか、そうゆう『みなもと』を表す意味を持ち、頁は人の頭部、『かしら』、正確には『きまじめ』を表す意味を持ちます

そこから、自分の主張を曲げず、ひたすらに『ねがう』という意味です」

「へぇー」

自分の主張を曲げないって、何かカッコいいな!

「まぁ、こういえばカッコいいのですが・・・・・・・・・」

「?」

「まぁとにかく、ここではそんな、それこそその願いが原因で今の自分の性格になってしまったって程の願いが、叶う対象です」

成る程、さっき無いわけでもないと言ったのは、本当に金に貪欲な人はお金持ちになるという願いが叶い、本気で人の助ける事をしたいと願えばスーパーマンになれるという訳だ

「さて、あらかた話し終わりましたが、何か質問は?」

「え、うーん・・・・・・」

やっと発言権が回ってきたが、特には・・・・・

「あ、という事は、オレの願いも叶うってことなのか?」

ふと、思いついたので、聞いてみる

「ええ、そうですね 現に」

と、オレの方を向いて、いや、

()()()の願いは叶ってるみたいだから」

「・・・・・・?」

オレの方を向いてのだが、どうも見ているのはオレじゃない気がする

辺りを見渡すが、刹那は少し遠くにいるし、他に誰もいないし・・・・

「・・・・・それ、オレの願いが叶ってるって事でいいんだよ、な?」

その言葉に対し、仁はただ、ニコリと笑うだけだった

 ・・・・何なんだ、その笑み?

「ま、話はお終いですね」

んー と、仁は背伸びをして言う

「あぁ、そうだ 行く場所は無いでしょうから暫くここに住んでも構いませんよ 食事もこっちで出しますから」

「あ」

そうゆうの、全く考えて無かったわ

まぁ、住む場所をくれるのは有り難い

「あと、ここから少し行った場所に街がありますので明日にでも行って見てください 案内を付けさせるので」

「おう、分かった ありがとな、仁!」

「礼には及びませんよ、・・・・・えーーっと

・・・名前、聞いてませんでしたね」

「あぁ、そうだっな」

そういえば名乗って無かったな

「オレは—————————————————————」

あれ? ()()()()()()

「レイだよ!」

「そうですか、よろしくお願いします、レイ君」

「ん? あ、あぁ、よろしく・・・・」

あれ? 今オレが言ったんだよな? そのはず、だよ、な?

「じゃ、ボクはゲームをしないといけないので、刹那、レイ君を部屋に案内しといてください」

「はぁー、はいはい」

と刹那はパソコンに向かう仁に対してため息をついてから言う

「こっちだ、レイ」

刹那が部屋を出る それに付いていく形で、オレも部屋を——————————

「あ、重要なことを言い忘れてました」

部屋を出る際に、仁は思い出したかのように言う

「本当の願いってのは本人にも分からないものなので、くれぐれも気を付けてくださいね 君」

「はぁ・・・・・」

取り敢えず曖昧な返事をして、オレは部屋を出る





「願い  願いねぇ・・・」

もう夜が深くなる時間 食事も済ませ、自由に使っていいと言われて部屋のベットで二人、考え込んでいた

「そもそも、願いが叶うって、どんな形でかなうんだろ?」

「・・・・・どうゆうことだ?」

ベットに寝っ転がり、考えるように窓から見える、実際には真っ暗で何も見えないが、景色を見ながら言う

「例えば・・・・猿の手って、知ってる?」

「猿の手って、あれだろ? 願いが願わない形で叶うってやつだろ?」

「そ、その猿の手」

猿の手、確かジェイ・・何とかという小説家か書いた小説で、三つまで願いが叶う猿の手のミイラを貰った主人公は大金が欲しいと願った すると息子が事故で死に、賠償金(大金)を得たという話だったか

「つまりさ、願いを叶えられる時に、知らないうちに何か代償が支払われている可能性があるんだ」

「ふむ・・・確かに」

確かにそんな都合がいい話がノーリスクってのも変な話だ

そうなれば裏があると考えるのも当然だろう

「もしくは何か、こう、ギフト的な?」

「ギフト?」

「要は天武の才的な、『君に才能を与えよう その代わり、使えるかどうかは君次第だけど☆』 とか・・

 これなら一応は可能性的にはあるんだけど」

成る程、暇を持て余した神々が面白がって人間に力を与える訳か

「はは、面白い発想だな!」

「・・・・・こっちは真剣に考えてるんだけど?」

「はは、悪い悪い」

オレは起き上がり、頬を膨らませる幼女の真っ黒な髪を撫でながら言、う・・・・・・・・・・・・・

「って、! 誰だお前‼」

「あ、バレるもんだね」

いつの間に居たのか、真っ黒な黒髪に紫色の瞳 黒をベースに所々星形の黄色いラメが入った、少しサイズの大きいパーカーとショートパンツを履いた幼女が、いつの間にやらそこには居た

「うーん・・・このまま隠し通せると思ったんだけど、そんなに都合よくいかないか・・・・・」

頭を掻いて、一人幼女はぶつぶつ言う

「仁にも気づかれてたし、ああ、でも刹那ちゃんには気づかれて無かったし、君もさっきまでは気づいてなかったよね」

「お、おう・・・・」

良くわからない、良くわからないが、独り言を聞いている限り、どうやらこの子が、仁の言っていた()()()らしい

「うーん、何で今になって気付いたんだろ・・・・・・」

「あのー、」

「ん? 何?」

良かった 仁みたいに問答無用に話を聞かない子じゃなかった

そう安堵しつつ、少し警戒して言う

「そろそろ、君が誰かって聞いてもいいかい?」

「ん?僕は


     ・・・・あー、名前考えて無かったなー・・・・・」


「んー、名前は———————ロスト、で行こうか ロスト、ロスト・・・うん何かいい!」


「後は・・・ あ、そうだ! 僕も吸血鬼と人間のハーフって事にしよう!」


「何かカッコいいし、それに・・・・・・・」


「それにしても・・・・・・ こっちはちゃんと効いてるみたいだね いや隠せてるって言った方がいい?」


「やっぱ何でバレたんだろ・・・・ 触られたから?」


「ま、いいやそろそろ戻して・・・・・・


ロスト ロストって言うんだよ!」

「ロスト、ね」

ロスト 確か翻訳すると失うって意味だったか

名前的には結構不吉な名前だな 親はどんな意味を込めてそう名付けたんだ?

「それで吸血鬼と人間のハーフなの」

「お前もなのか?」

「うん、そう」

そう吸血鬼と人間のハーフってポンポンいるもんなのか?

「それよりも、」

「それよりもって・・・・・」

もっと種族のことに追及してほしかったのか、少し残念そうにしているロストを無視居て言う

「・・・何時から居た 何の目的で居る」

もしかして、こいつがオレをここに連れてきた犯人か

何があっても何か行動は取れるように少し身構えていたが、

「何時からって言われてら最初から」

特に何もなくロストは言う

「最初って、オレが森に居たところからか?」

「うんそうだよ」

ガチ最初じゃねぇか

まさか、あの人影はお前が・・・・・・

「それで何の目的かって言うと、」

ふと、ロストの紫色の瞳と目が合った

その時の様子を何と表現したら良いだろうか・・・

「君が心配だから」

子供を心配する親のような、それでいて友達と別れたみたいにとても悲しそうな、それなのに何かを決心したような

そんな様々な感情が入り組んだ瞳が、そこにはあった

「だから安心して、君に危害を加えるつもりは無いから」

「・・・・・・そうか」

ロストの頭をナデナデしながら、オレは言う

「・・・・・・あの、何で僕の頭をナデナデしてるの?」

邪魔そうに言うが払いのけようとはしない

「んー、ナデナデしやすそうだったから」

「何その理由!」

頬を膨らませてロストは言う

「・・・・・・・・・」

やだ、何か可愛い 

て、言うか今更だがこいつ僕っ子幼女なんだよな

結構属性が良いな

「何か他にしてほしいことがあるか?」

「してほしい事って何!?」

「抱っことか、子守歌とか、高い高いとか、」

「僕は赤ちゃんか!?」

「じゃ、一緒に寝る?」

「・・・・・・・・・・・」

チラリ とロストは一つしかないベットを見る

「ま、まぁベットは一つしかないからね」

とロストはベットのシーツの中に入り、

「それならしかたがないね、うん」

寝る体制に入った

「もう夜も深いし、もう寝よ、王さま」

「そうだな」

・・・・・・・・って、

「王さまって、オレのことか?」

「うん、レイってそうゆう意味でしょ?」

「・・・・・そうなのか?」

そうだったっけ?

「まぁいいからほら早く寝て」

「お、おう・・・・・」

取り敢えず電気を消して寝っ転がる

自分が感じている以上に疲れていたのか、びっくりするほどすぐ眠れた







・・・・・・・寝たね


と、言うか寝ちゃったよ

寝さすことも出来るのか実験する前に寝ちゃったよ

相当疲れてたのか、はたまたそうゆう性質なのか、僕を抱いたまま、ものの数秒で寝てしまった

身動きが取れないので、とりあえず天井を見ながら整理してみる


まず一つ、願いはスキルみたいな感じで叶えられる

現に今、僕は何かを『隠す』ことが出来るみたいだ

例えば自分がいることを隠して姿を消したり、

話している内容を隠して聞かれないようにしたり、

話をしていること自体を隠して僕と話をしているのに気づかず話が出来たり、


・・・・・うん、中々に面白い

そして、これが僕の願い、なのか・・・・


隠すこと、秘匿すること、邪魔されないこと?


考えてみるが、自分でもよく分からない

「そもそも、この状況が最も分からないんだよなぁ~・・・・」

よもや人に抱かれる日が来ようとは・・・・

王さま(レイ)を見ながら、ため息をつき、そう思う

「・・・・・・本当に、どうなってるんだ?」

なぜ触れると僕の力が働かなくなったのか(仮定)

それに、これは()()()()()()()()()()()()


・・・・・これは、影武者、ということなのか?

考え度考え度、分からない


「まぁ、いいか・・・・・」

取り敢えず、今はまだいい

問題は二つ目だ


輝闇 仁、やつは侮れない すぐ僕が隠れていることに気付いたこと

そして説明下手なこと

あいつが説明下手なのは、自分で全てのことを予測でき、理解できるほどの頭を持っているのだろう

何故分かると聞けば、なぜ分からないとあいつは返すだろう

 全く、天才肌め・・・・・・・

・・・・・しかし、だからこそ悪い噂が出て、嫌われるのだろう

 そこには、気の毒に思うか

「ふぅ」 とため息をつき窓から見える月を見る

そういえば試しにさっき窓から見える風景を変えてみたのだが、王さまにはどう見え

「ふぐ」

寝ている王さまに強く抱きしめられた

「だ、抱き枕じゃないん・・・・・・」

ふと、感じる

人の体温を、

「・・・・・・・・・・・」

そういえば、人に触れるのって、いつぶりだろ


・・・・・・まぁ、いいや 寝よ


そう思い目をつぶる


段々と意識が薄れる

そんな中、ふと思い出す


『本当の願いってのは本人にも分からないものなので、くれぐれも気を付けてくださいね 君』


それって、どうゆう、 いみ   な   んだ  ろ・・・・・・・・・・・・

それと・・・・・・ 仁に  は  気を 付けな い  と

下手する と    殺 さ    れ     ちゃ   ・・・・・・・・・・・

———————————————————



気付けば、自分は微睡の中にいた









どうして・・・・・・っ!!

「残念ですが、」

どうして・・・・・・・・・・・っ!!!

目の前には黒髪の幼女の目の前に剣先を向ける赤いパーカーを着た少年の姿、

どうしてこうなったんだっ!

「まぁ、悪く思って下さい」

少年は剣を振り上げる

・・・やめろ

「こんな形で、君を殺すのを」

・・・・・・・・やめろ

そして、少年は幼女に剣を—————————————

「やめろーーーーーーーー!!!!!!!!」









「くっっっっ、そがぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!」

ついに癇癪を起してコントローラーを仁に投げ出すロスト

それを軽々しく受け取る仁

「またかよ、またかよまたハメかよ!!!!!」

ビジュアル的にこれがいいからと仁に言われ、オレの膝の上に座っているロストは頭を掻きむしる

まだ朝食も取ってない早朝、オレとロスト、二人が起きた途端に「ゲームしましょ!」とけしかけてきた仁

それに応じる快くロスト

そこまでは良かったのだが、

仁がハメにハメを繰り返す仁、頑張ってロストは仁を倒そうとしたが、遂に音を上げてしまった

「もーやだぁ・・・・・・・・ 慰めて、王さまぁ~~~・・・・・・」

少し涙目になりながらオレに縋り付くロスト

「よしよし」

頭をナデナデする

昨日みたいに全く嫌がらない

そんなことをしてると、

「全く、また朝っぱらからゲームして!」

「あ、刹那か」

ドアを開ける音と刹那の声がして振り向くと———————————

「と、刹那からの伝言だ」

そこに居たのは刹那ではなく、茶色いコートに半眼の目をした、中学生くらいの少年と、数名? 数体?の叛軍人形(レギオンドールズ)たちだった

「ん? え?」

確かにさっき刹那の声がしたんだが・・・・

「朝食だぞ」

無表情な半眼のまま、少年は言う

数名の叛軍人形が朝食を運んでくる

「仁はフレークでいいな」

「ええ、ありがとうございます」

「客人は・・・・・・」

と、少年はこちらを見て、

「む、聞いていた人数と違うな」

何処までも無表情に言う

「まぁ問題ない 客人にフレークとトーストとどっちがいいか聞くために二つとも用意していたからな」

と人形たちがフレークとトーストこちらに持ってくる

「あ、僕フレークで」

「ちっこいのはフレークだな」

「ちっこい言うな、名前はロストだ」

そう言いながら、ロストはフレークを受け取る

「必然的におっきい方がトーストになるがいいか」

「おっきい方って・・・・・」

確かにここのやつら全体的に背が低いが

「まぁ、トーストでいいぜ あとオレはレイだ」

「承知した また要望があれば聞こう」

と、少年は部屋を出ようとするが、ふと立ち止まって、

「仁!」

と、無表情のまま、刹那の声で、言う

「たまには外にでも出で、ついでにレイの案内でもしときなさい!」

と、一息ついてから

「と、刹那が言ってた」

「・・・・お前、凄いな」

これが声帯模写というやつか

そしてそのまま部屋を出ようとする少年に

「あ、シザース、自己紹介」

「了解した」

部屋に入りなおして少年は言う

「ディスティニードール・シザース 人形だ」

そう淡々に、命令を全うするロボット(人形)のように、シザースは言う

「人形なのか」

「どーりでさっきから無表情貫いてると思ったら、人形は無表情で心が無いのが普通だからねー」

「・・・・・・他の人形たちは表情豊かなんだけど」

レギオンたちの方を見ると、 こんな主ですいません とでも言いたそうな苦笑いをしていた

「これでいいな」

そう言ってシザースは部屋から出

「あ、それともう一つ」

「何だ」

仁の呼びかけに答え入りなおして来た

「・・・・・・・何か、これだけで劇みたいだね」

ボソッ とロストは言う

「・・・・・・・そうだな」

本当に仕組んだような動きをするな、こいつ

「それとシザース、この二人の街案内をしてあげてください」

「・・・俺がか」

無表情に、だが声色は呆れたようにシザースは言う

「刹那にお前が案内してやれと言われたのに」

「頼めますか?」

ふと、仁の言い方に何か変なことを感じた気がした

「・了解した」

シザースも反応が一瞬遅れていた気がしたが、 

まぁ、気がしただけだろう

「それで、今行くか? それとも後で行くか?」

「ふぉへふぁへぇへぇふぁあふぃふ」(これ食べてから行く)

フレークを口に含んだロストが言う

それ、何言ってんのかわから

「了解した 朝食が済んだら広間まで来い そこで待ってる」

 通じたんだ 今の

そうしてようやく、シザースとレギオンたちは部屋を出ていく

「ふぁふぃっふぇ、ふぉんふぁふぉふぉふぉふぁふぉんふぇ?」(それで、街ってどんなところなんだろ?)

「物を口に含んで喋られても分かんないんだけど・・・・・」

取り敢えず、トーストにかぶりつく事にした







「本当に良かったのか?」

仁の部屋の中、街へ向かうレイ、シザース、いつの間にかいたロストと言うらしい少女を窓から見送る仁を見ながら問う

「ええ、だって案内とかめんどくさいじゃないですか そう思いません、刹那ちゃん?」

そうゆうことじゃない

そう言おうとしたが、

「それに考える時間が少し欲しかった」

仁の声色と口調が変わる

仁が振り向くと、そこにはいつものおちゃらけた様子など微塵も無い、『最悪の吸血鬼』と恐れられる、輝闇 仁の顔があった

だが、

「・・・・・・考える時間、って?」

「ああ、考える時間だ」

仁は椅子に座り、真っ黒なパソコンの画面を見ながら言う

「率直に聞く あいつらをどう思う」

「・・・・・素直に言って、信用してはいけないと思う」

「あいつが人間だからか?」

「もちろん、それもある」

人間からしたらこちらは化け物なのだろうが、こちらからしたら際限無く欲望を望む人間、そしてその欲望を叶えるこの地にとっては、人間こそが化け物なのだから

「他には?」

「レイと会った時、あれは自作自演だと思う」

「お前が言ってた人影の件か」

そもそも、おかしいのだ 人間がこの世界に迷い込むのもおかしいが、あの人影、あんなものはあそこには居なかった

そして更に、

「それを切ったら、桜の花びらに変わったんだよ?」

「お前の能力、『願いを桜と変える』力、か」

そう、切った、厳密には願いとして現れた力に触れると桜の花びらに変えてしまう能力

つまり、あの人影は、生物で無く、能力で誰かが作り上げた物だと言う事になる

「能力、能力ねぇ、  しっかし、願いが叶うのは人間限定で、だから人間を化け物呼ばわりするが、オレたちはもうすでに願いによって作られた化け物のくせに、笑えねぇなぁ」

くつくつと、笑いながら仁は言う

「それに能力って言い方も、願いが叶う=能力が与えられるってのも、まるで取って付けたような詭弁な言い回しが、 全く、この世界はちぐはぐだなぁ」

ひとしきり笑い、「だが」と仁は、

「こんなちぐはぐな世界でも、此処はオレの居場所だ」

ほんのり、仁の周りの景色が歪む 仁の周りに陽炎が浮かぶ

「・・・・・・・殺す?」

背中の日本刀の重みを感じながら、言う

段々と部屋が熱くなり、仁の体の所々から炎が見えるようになる

これは本当に殺さないといけないかもな

少し緊張しながらそう思った

何せ、得体の知れない人間を殺さないといけないとなると、何が起こるか分からない

その緊張を読み取ったのか、仁は吸血鬼らしく、夜の帝王と呼ばれてもおかしくないような笑みを浮かべて、

そして、

「う~ん、どうしましょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

さっきの不陰気が嘘のように、そこにはただのヒキコモリ、輝闇 仁が、そこには居た

「なぁ、せめていきなり不陰気壊すのは止めよう?」

「そんなこと言われてもぉ・・・・」

と、仁は困った笑みを浮かべて言う

「あの二人、多分何も企んで無いですよ?」

「・・・・・何?」

そんなはずはないだろう と思うが、

「レイは不思議なほど判るし、ロストはおかしいほど判らないんですよねぇ」

「・・・・仁の能力でも、って事?」

「ええそうです レイは人間です 一切変化のない人間です」

確かに不思議だ ここでは願いが叶えられるのだから、何かしらの変化はあるはずなのに、それが一切ないと来た

「ロストの方は、おかしいほどに情報が一切判らない」

仁の能力を持ってしても判らない人物、明らかに怪しいが・・・・・

「だから一緒にゲームをして、見たんですが・・・・」

うーん、 と自分の顔をもみながら言う

「どーにも何か企める性格してないみたいなんですよねぇ」

仁が言うなら、そうなのだろう 

仁の生き物への目利きは随一を誇る

「ま、だから様子見ですかねぇ」

と、仁はパソコンを立ち上げようとする

思わず小言を言おうとした時、

何故か仁はため息をつき、立ち上げるのを止めた

「ど、どうしたの・・・・・・?」

思わず訪ねてしまった 仁が自分からゲームをしないなんて中々無いことだからだ

「いえ、別に・・・・・・・」

と、仁はもう一度ため息を付いて、立ち上がる

「やっぱりレイたちに付いて行って見ます」

「ほ、ほ、本当にどうしたの??」

もしかして何かされたのか? そう思ったが、

「いえ・・・・・・、ロストとのゲームは、ちょっと楽しかったなー、って思って」

寂しそうな、仁の顔

「・・・・・・・・そうか」

そんな言葉しか言えない自分に、少し腹が立った






森の中の一本道をオレ、シザース、ロストの三人ですす・・・・・・

「ん? あれ、ロストは?」

さっきまで隣にいたはずだが・・・・・・

キョロキョロと周りを見渡しても居ない

「姿を隠してるだけだろ」

そう言って歩き出すシザース

確かにそうかもな

そう思い、ありきだそうとしたら

「ま、待って~~~~~!!!!」

振り向くと、ロストが居た

結構遠くに、息を切らせながら

「ぜぇ、ぜぇ・・・・・ ふ、二人とも早いよ・・・・・」

ペタリとその場に座り込んでしまうロスト

「大丈夫かー?」

ロストに駆け寄りながら言う

「歩幅が狭いからな」

ロストに近づくなり、シザースは言う

「ほ、歩幅   ぜぇ、狭いとか 言うな・・・・・っ」

未だに息を切らせながらロストは言う

「取り敢えず、呼吸を整えようぜ ほら、ひっひっふー ひっひっふー」

「そ、それ出産のやつ!」

そう言いながらも ひっひっふー と繰り返すロスト

 結局やるんだ

ようやく呼吸が落ち着いたのか、 ふー と最後に一呼吸入れて、「それにしても・・・・」と、ロストは自分の体を眺めながら言う

「こんなにも小さい体が大変だとは思いもよらなかったなぁ・・・・」

その言い方だと、まるで元は体が大きかったようにも聞こえるが・・・・

まぁ、たまたまだろう

「それより早くいくぞ」

再び歩き出そうとするシザース

「今度は僕の歩幅に合わせてよ」

「断る」

速攻でロストのお願いを切るシザース

「大体お前の足が遅いのが悪い」

「そんなこと言われても・・・・・」

確かにそれは理不尽だ

「なら、こうするか」

「んぇ?」

オレはロストを持ち上げる

見た目以上に軽いロストに驚きつつ、ロストを肩に乗せる

まぁ、ただ単な肩車だ

「え、ちょ、ま、待って!」

「ほらほら暴れるな 落ちるぞ」

上でじたばたと暴れるロスト

「とっとと行くぞ」

「待って、おろして王さま! ねぇってば!」

恥ずかしいのか何なのかは知らないが、未だに降りようとするロスト

「歩くよりはマシだろ? ほら、恥ずかしいなら街の手前で降ろしてやるから」

「う~~・・・・・・」

まだ不満そうだが、暴れるのは止めるロスト

と、

「・・・・・どうした、シザース?」

ふと、シザースがこっちをじっと見ているのに気づく

「いや」

そう言って少し黙るシザース

相変わらず無表情だが、何かを言おうか迷っているように見える

そして言うことにしたのかこんな質問をされた

「お前らは兄妹なのか?」

「いや違うよ」

と、答えるのはロスト

「てか、何でそう思ったの?」

「いや・・・・妙にお前らが仲が良いからそう思っただけだ」

「・・・・そんなに仲が良さそうに見えるか?」

「見えるな」

即答された

「ところで、お前らは何時から知り


まぁいい、行くぞ」

そう言って歩き出すシザース

「? お、おう」

何か今違和感があったような・・・・・・・・・




会話を『隠す』 そうすると脈拍もなく会話が終わる

自分が言ったことが認知されず、相手が言ったことも認知出来ない

ふぅん、結局使い勝手が良いな、これ

「・・・・・・どうした?」

「いや別に」

王さま声に反射的に反応して下を見る

「・・・・・・・っ」

ち、ちょっと怖いな・・・・

前まではこれくらいの目線が普通だったのに、何故か身体が小さいとこの高さでも怖くなってしまう

おまけに少しぐらぐらするし

しかし・・・・・

「・・・・・・・・・・・・」

王さまの顔を覗き込むようにして、落ちないように気を付けながら、前のめりになる

それに気付いた王さまがこっちを向き、僕に向かって微笑む

「どうかしたか?」

「・・・・・・・・いや、別に」

 こうゆうのも、悪くないな









「う~~~~~ん、何というか・・・・・・・・」

「本当に統一感無いね、ここ」

和洋折衷、と言えば聞こえが良いが、

京都に在りそうな和風建築の横にメルヘンなお店があったり、

かと思えば古めかし看板のお店があったり、

ついでに中国風の中華料理店っぽいところがあったり、

とにかく、恐ろしい程に景観がバラバラだった

「ホント景観どうにかならないのか?」

「ならないな」

シザースが肩をすくめながら言う

「何度も言われていると思うが、此処はそうゆう場所だ

皆々の空想でできている場所、そして空想とは一人一人違って見える

それはこの景色のように悪く感じることもあれば・・・・・」

と、シザースは 辺りを見渡してみろ とでも言うように顎をしゃくる

「善く感じる事もある」

ふと、周りの人々、いや、人とは到底呼べない者たちも混じっているが・・・・・・

「・・・・・・・いい場所だね、ここ」

そうロストは呟く

普通の人型の者、魂みたいに浮いている者、ケモ耳を生やした者、更にはデーモンと呼んでもいいような大きな怪物まで

そこには多種多様な者たちが、何もいざこざもなく、暮らしている光景があった

「そうなのか?」

ロストは何か感動している様子だったが、オレにはこの光景の良さは判らない

「そうだよ あっちの世界だと・・・・・・・・・・」

「?」

陰りがある物言いにふと疑問を感じた

「ところで」

と、シザースはオレを、

正確には未だにオレに肩車されているロストを見て言う

「肩車されたままだが、いいのか?」

「あー、もう別にこのままで・・・・・・・・・」

ふと、ロストは何かを見つけたのか、

「あ! 降ろして! 降ろして王さま!」

ぺしぺしとオレの頭を叩きながら言う

「分かった、分かったって」

降ろすとロストは一直線に古めかしい和風の店に入っていった

オレも後を追って店に入る

「いらっしゃい・・・・・・・」

周りに人魂っぽい物を浮かせた店主をよそに辺りを見渡してみる

「・・・・古本屋か」

重厚感のある本がある本棚の間を進んでいる中、一冊の本を手に取っているロストを見つける

「わぁー! この本が置いてあるんだー!」

目を輝かせながら本を見るロスト

何かの小説の様だが、オレには良くわからない

「本が好きなのか、ロスト?」

「うん大好きだよ! まぁ、小説限定だけど」

と、また別の本を取るロスト

「あ! これあの有名な本じゃん! ん? こんな本は知らないな でもおもしろそうだな・・・

いいなぁ、全部読みたいなー・・・」

「しかし、オレたち金なんか持ってないが・・・・・」

よく考えたら本当に何も持ってないな、オレたち

「そうだよねぇ・・・・・・」

ため息を付き、ロストが本を元に戻そうとした時

「仁に『欲しい物があったら買ってやれ』って結構な額を持たされているが」

その言葉に、ロストはピタっ と止まる

「本当に?」

「本当だ」

シザースは財布を見せながら言う

「因みに何冊でも?」

「結構な額を渡されているからな 何でも買ってやれって意味なのだろう」

それを聞いた瞬間のロストの動きは速かった マジで速かった

「これとこれとこれと、ああ、これもいいなぁ! 他に何か無いかなぁ!!」

目の前にどんどん本が山積みに重ねられる

「・・・・こんな量、本当にいいのか?」

「よくないな」

「だよなぁ・・・・・」

いくらなんでも、そんなに買ってはお金が・・・・・

「量が多い 持ち運びに苦労する」

あ、そっちなんだ・・・・・

「仕方ない」

と、シザースはクイッ と指を動かす

「? 何したんだ?」

同胞(人形)を呼び寄せた そいつらに運んでもらう」

「へぇ、遠隔でよびよせれるんだな」

「そうだ しかし・・・・・・・」

つ・・・・ と、せわしなく、目を輝かせて動くロストを二人で見る

「あぁ、これもいいなぁ え!? 嘘、これもあるの!?」

「・・・・・・人形のパレードが起こりそうだな」

シザースは初めて、表情らしい表情、苦笑いをして、そう言ったのだった




「一杯買ったな・・・・・」

と、人形のパレード、とまではいかなかったが、沢山の人形が沢山の本をリアカーで引いていくといった光景を見届けながら、シザースはポツリと言った

「あれ、全部読めるんですか?」

「大丈夫でしょ 僕、結構本を読むのは速いし    って」

いつの間にかロストの隣に黒いパーカーを目深に被った少年、仁が居た

どうやらあの赤いパーカーはリバーシブルになっていたようで、赤い裏生地が見える

 そんなことよりも・・・・・・・・

「じ、じじじじ仁、どうした!!!! お前が町へ来るなんて!!!!! ま、まさか何かされたのか!?」

「ボクが町へ来ただけでそこまで驚きます!?」

顔面蒼白、といった感じで言うシザース

今までも無表情のかけらも無く、驚くシザース

「て、言うか、たまにこっちに来てますよ・・・・・・・」

「まじか」

さっきの顔面蒼白だった表情のかけらも無く、無表情でシザースは言う

 ・・・・こいつ、もしかして演技得意?

「ところで、何でこっちに来たんだ?」

「ん~、暇、だったから?」

曖昧に仁は言う

「気まぐれだなぁ・・・・・」

ロストが呆れたように言う

「・・・・ところで、そんなにロストは本が好きなんですか?」

「うん まぁ、主に小説やライトノベルだけだけど・・・・・」

「へぇ あ、ならノーフィクションライフって、知ってます?」

「あ、うん! あれ大好き!!」

「ボク好きなんですあの小説」

「マジで!? 僕も僕も!!」

・・・・話に付いていけない

「折角です 向こうの方に穴場の喫茶店があるので一緒にそこで語り合いませんか?」

「うん、いいよ!!」

そう言って歩き去る仁とロストの二人

そしてポツンと取り残されるオレとシザースの二人

「・・何処か行きたいところはあるか?」

「うーーーーん、特に無いかな」

「そうか」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

沈黙が流れる

取り敢えず会話をする為に何かいいところは無いのかと聞こうとしたその時、

「お前、趣味は無いのか?」

唐突にシザースは聞いてくる

「うーーーん・・・・・・・・無い、な」

「そうか」

折角シザースが会話のチャンスをくれたのに、無駄にしてしまった

 しょうがないじゃん だって趣味とかないもん

「質問変更」

ふと、シザースの方を見る そしてシザースと目が合う

無機質な、人形のような目と

「この世界に来る前、つまり現実世界でよく何をしていた」

「うーーーーーーーん・・・・・・・・・・」

現実世界、現実世界、で・・・・・・・・・・

      あれ?

「オレ、現実世界で何していた?」

そもそも・・・・・・

「オレ、あの森で倒れる前って何していた?」

あの森で倒れる前の記憶、

いくら探しても、いくら考えても、無い

全くない

「何故だ・・・・・・?」

本当に無い

記憶が無くなった時に使う表現の、もやがかったようにとは全く違う、

表現するなら、そう、

『思い当たる節がない』

「・・・・・・・・まさか」

シザースが何か言おうとしたその時、

「ん?」

視界に端で、()()()()()が横切った気がした

そっちの方を見てみたが、そこには何もいなかった

「どうした」

「いや・・・・・・」

シザースの方を向こうとしたその時、


パチン


「ギャァァァァァッァaaa」

甲高い声が後ろから聞こえた

「っ!?」

思わず振り向く

そこには鴉、と言うには口ばしが長く、身体が大きい

そんな鴉みたいな真っ黒い物が、首が真っ二つになって、転がっていた

「な、なんだ・・・・・?」

思わず後ずさる

「こいつは・・・・・」

オレとは逆に鴉のような物近づくシザース

ふと、シザースの手に大きな立ち切り鋏があるくことに気付く

「レイ」

無表情に、だが緊張感が乗った声で、シザースは言う

「まずいことになった」

ふと、視線を感じて周りを見れば、鴉みたいな者たちが、オレたちを取り囲んでいた・・・・・・






「くっそ、どうなってんだよ! 何であの鴉みたいなんはオレたちを襲うんだよ!!?」

町中の悲鳴を聴きながら、叫ぶ

「正確には鴉では無く『シルエット』と呼ばれる、この世界の悪害、正確にはみんながあいつをいじめるから自分もいじめるといった集団的悪意の塊だ 因みにその個体の固有名詞はクロウだ」

「そんな呑気に解説してる暇があるかっ!? あとやっぱ鴉じゃねぇか!?」

「GiシャアアAAAアAaaa」

襲ってくるシルエットとやらを頑張ってかわすオレに対し、

「呑気に解説している暇は俺にはあるな」

パチン パチン と音がする度にシルエット、クロウの首が飛んでいく

勿論、シザースが鋏で、何故か刃が届かない距離なのに、首をはねているからだ

「しかし、量が多いな と言うより・・・・・・」

と、周りを見渡してシザースは言う

「何故シルエットが町中に居る」

「どうゆ  っと、あぶね、 ことなんだ?」

何とかクロウに食われないようにと口ばしから逃れながら尋ねる

「そのままの意味だ シルエットは普通町、言い方を変えれば表に出ない

路地裏で集団暴力をやるのと同じ原理で、シルエットたちは人目が付くところで獲物を襲わない なにせ存在が発覚すれば退治されるのは目に見えているからな だから町には出ないはずなのだが・・・・」

「めっちゃいるんですけど!?」

本当に異常なほどクロウが居る

もうそこら中首なしの死体だらけなのに一向に減る気配がない

「だがまあいい クロウは数は多いがそれ以外何のとりえも」

シザースの真横をを何かが飛来し、パシャ と音を立てて地面に落ちる

何か落ちた方を見ると、そこには紫で、ベトベトして、そして何か沸騰したみたいにポコポコと音を立てている物が・・・・・・・・

「・・・・・・・毒じゃね? これ?」

「どうなっているんだ」

驚いて、無表情なので驚いているかどうか判らないが、シザースの手が止まる

そのすきを付いて

「っ、シザー、後ろ!!」

「む」

素早くシザースは後ろを振り向き鋏を閉じる

「giaaaaaaaaaaア」

そのクロウは、毒を吐こうとしたのか、首が真っ二つになったとたん毒が首から飛び取る

「む」

シザースは避けようとするが避けきれず、多少毒を浴びてしまう

「だ、大丈夫か!?」

心配して声をかける

「大丈夫だ そもそも人形の俺に毒など効かない 臓器など無いのだから」

「そ、そうか・・・」

その言葉に安心す・・・・

「・・・・・身体、溶けてるぞ?」

「む」

ふと、シザースの身体を見れば、毒が付いたところが少し溶けている

「すまない、大丈夫ではなかった だがこれくらい、活動には問題無いし、直すことレイ後ろ」

「は?」

唐突に後ろと言われて後ろを振り向く

そこにはもう既に毒を吐いたクロウが居た

「あ・・・・・・・・」

時すでに遅し

この距離では避けることも出来ず、反応することも出来ず、ただただ毒の飛来を眺めるだけだった

 あ、オレ死ぬんだ ロスト、どうしよう?

そんなことを思っていると遂に、毒が体に付着する

「レイ!」

そんなシザースの叫び声が聴こえる

ぬめぬめとした感触、だが不思議と痛みは無かった

毒って、痛みは無いんだな・・・ それとも感覚がマヒしてるだけか?

そんなことを呑気に思っていると・・・・・

「クギシヤヤヤヤヤヤヤ!!!!」

目の前の、オレに毒を吐いたクロウが、溶けだし、のたうち回り、死んだ

「・・・・・・・・・・は?」

全てが、シザースもクロウも、町全体が止まったような沈黙の中、オレの間抜けな声がポツリと出る

「え、あ、あれ?」

取り敢えず、体に付いた毒を手で振り払う

毒の付いていた部分は、無残にもドロドロに溶けて・・・・・・

とかは無く、特に何にもなっていなかった

しれっと毒を手で触ってしまっていたのがだ、特に何にもなっていなかった

「どうなってんだ・・・・・・?」

と、ふとクロウたち皆が固まっている事に気付く

「あ、シザース、今!」

ハッ っとシザースは我に返り、

運命切断(ディズニーライン)!!」

と、謎の技名とともに鋏を振り払うと同時に、クロウたちの首が一斉に飛ぶ

その後、辺りを見渡し、クロウたち全員の首が飛んでいるのを確認してから、

「よし、片付いたみたいだぞ、シザー・・・・・」

シザースの方を見ると、そこにはシザースの、首なしの体と、その足元に鋏と頭が転がっていた

「お、おい、シザース!」

慌ててシザース駆け寄る、すると、

「何者だお前は」

「うぉ!!?」

足元の頭が喋り、胴体が動き出す 繋がっていないのに 

そして胴体が頭を拾う

「俺は今、所かまわずに鋏で切った」

とシザースは頭と胴体をくっ付けながら言う

「無論、お前もだ」

「な・・・・・!」

何でオレも!?

って、オレ、も?

「しかし、お前は無事だ」

そう、オレも狙ったのだとしたら、オレは無傷じゃないはずだ

「しかも、何故か俺の首が飛んだ」

と、頭と胴体をくっつき終えたシザースは鋏を拾い、

「もう一度言う」

その鋏をオレに向けて、言い放った

「何者だ、お前は」






「特にこの子がですね」

「うん、わかるわかる!」

静かな喫茶店に、二人の声が響き渡る

 ・・・・まぁ、僕と仁の声なんだけど

誰かと好きなことを語り合う

そんなことがこんなにも楽しいことだとは知らなかった

思えば、ずっと、ずうっと一人でいたから、誰かと話すことなんてほとんどなかったからな・・・・・

「それでですね・・・・・・ どうました?」

僕の考えていた事を感じ取ったのか、怪訝な顔をして仁は尋ねる

「いや、別に それより・・・・・・」

と、取り敢えずはぐらかしといて会話を再開仕様とした時、

「キャァァ――――――――!!!!」

「んぇ!?」

急な悲鳴に思わず飛び上がってしまう

誰かの悲鳴が店内に響く いや、これは外か?

「何ですかね・・・・・ 外に出てみましょう」

「え、あ、ちょっと待って!」

僕の返事も待たず駆け出す仁を追いかける

そして、仁と一緒に店の外へ出てみると、

「ん、あ、え? な、何? あのへんな生き物!?」

町中に真っ黒なキウイみたいなやつがうじゃうじゃといた

そのキウイは、時には人、あ、人じゃないんだっけ

まぁとにかく! 手当たり次第に襲い、周りに在るものを壊していった

「・・・・・・クロウ?」

ふと、ぽつりと仁が呟く

「何か知ってるの、仁!?」

と、聞いてみるも

「何故シルエットが町中に?」

「・・・・おーーーーい?」

「しかも何故集団個体のクロウといえどこんなにも大量に」

「おーーーーーーーーーい??」

顔の前で手を振ってみるも、反応は無い

 これは完全に考え込んでるわ

仕方ない、仁なら放っておいても大丈夫だろう

街の者たちには悪いけど、僕は隠れさせて・・・・・・

と、ふと、思いが頭をよぎる

街の者たちを助けないのか、 と

「た、助けてくれー!」

やけに胴体が長い男性が悲鳴を上げて逃げ惑う

「ギシヤヤァァァァァlaaaa!」

その男性を追いかけるキウイ

今仁がポツリと呟いたことを聴けば、クロウと言うらしいが、

その者たちを助けな

「くだらない」

ふん と、その思考を鼻で笑い、一蹴する

助ける? どうやって?

こんな幼女の身体でどうやって?

そもそも、助ける意味などどこにある

所詮は他人、助ける義理も、ましてや助ける意味など無い

そして僕は姿を隠そうとしたその時、

「きゃ!!!」

ふと、転んでしまった、獣の耳を生やした少女が目に映る

そして少女が起き上がろうとしたその時、

「guaシャァアァァァァァァアァ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!」

少女の上に乗り、少女を押さえつけるクロウ

このままだと、少女はクロウに食べられてしまうだろう

だが知ったことではない

僕は気にせず隠れる

「やめて・・・・・・っ」

少女は恐怖に染まった顔で言う

 気にすることではない

「giaaaaaaaaaaaぁ!!」

パカッ と大きな口ばしを開けるクロウ

「いや・・・・・・っ」

そして段々と口ばしが少女に近づく

「いや・・・・・・・・・っっ」

 僕には関係ない

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕に、助ける義理など、無い





「グギヤァァァァァァァァッァァァァ!!!!」

ふと、そんな悲鳴のような声で、目が覚めたような感覚を得る

「・・・・・・・・・はぁ」

足を下ろしながら、今の状況にため息を出す

どうやら僕は、無意識に少女に乗りかかっていたクロウに蹴りを入れていたらしい

ふと、呆然と僕のことを見る少女が視界に入る

「逃げなくてもいいの?」

少女に声をかけると、少女はハッ とした顔になって

「あ、ありがとうっ!!!」

おぼろげな足取りで立ち上がり、つまづきながらも走り去っていった

「はぁ・・・・・・」

さて、どうしようか・・・・・

こちらを睨むクロウを見て頭を掻き、ついでに冷や汗も掻いて、考える

敵対視されてしまえば隠れることは出来ない

じつはこれは昨晩王さまで実験してみていたのだ

居るのがバレた後、試しにもう一度隠れてみたのだが、全く効果が無かった

まぁ、それはそうだろう

僕は隠れる、隠すだけであって、別に透明になれる訳ではない

要は視界に入らないから分からないだけであって、視界に入っってしまえば隠れるもへったくれもない

つまりは、このクロウと戦わないといけないという状況になってしまった

「・・・・・ちっ、」

戦う? 冗談じゃない 武器も力も無いのにどうやって戦えと?

なら逃げる? それも無理だ こっちは逃げる体力なんて微塵も

「グシャァァァァァl!!」

考えている間にクロウはこっちへとびかかる

「え、あ、ちょ、ちょっとタイム!タイム!!」

思わず両手を前に突き出し訴えるが、もちろん聞いてくれるはずもなく、

ギシヤアアアアアアアァァァァァlaaaぁぁぁ!!!!!!」

「わ、わーーーーーーーーーーー!!!」

思わず目をつぶって、さらに両手を振る速度を無駄に上げる

「あーもう、どうにでもなれぇ!!!!!!」

そんなことをしているとふと、

サク  という音と共に、手に何かを切り裂く様な感触を感じる

「・・・・・・・・え?」

思わず目を開けると、

「グ ググ・・・・・・・・・・・」

と、息絶えるクロウと、

「・・・・・・え? 何、これ・・・・・・・」

真っ黒になって、クロー状になっている自分の手があった

「これって・・・・・・・・」

あの時と同じ・・・・・・

そして気づけばいつの間にか自分の手が元の小さい手に戻っていた

「どうなってるの・・・・・・・・」

自分は『隠す』能力じゃ無かったのか?

これって変形させてる? 物事を歪める・・・・・・・

でっち上げる?

「・・・・・・・あ」

もしかして・・・・・・

と、ふと考え事から立ち上がり、顔を上げれば

「あーらら、敵対視されちゃった?」

いつの間にかクロウたちが僕の周りを取り囲んでいた

絶体絶命的な状況、 って、さっきなら思ってたかな

「ま、いいや」

と手を突き出して、クロウたちに言う

「ちょっと実験体になってよ」

「グ・・・・・・・?」

何のことだ? とでも言いたそうなクロウたちを無視して、僕は手のひらの上に鳥を思い浮かべる

するといつの間にか、手のひらに真っ黒な、それこそ影絵のような鳥が停まっていた

そして手をスライドさせる

すると手に停まっていた鳥が最初から二羽いたかのように、一羽は空中に停まっていて、もう一羽は手のひらの上にいる

「・・・・やっぱり♪」

これが、僕の能力の神髄か

じゃ、ちょっとカッコよく決めますか

そして、僕は手を思いっきり薙ぎ払いながら、叫ぶ

「行け! 空飛ぶ(ホログラフィック)影鳥(フライングバード)!!!!!」

薙ぎ払った手のひらから無数の影鳥が現れ、飛び立つ

そして影鳥たちはクロウに向かい、次々とその真っ黒な翼でクロウを切りつける

「グガアアアアaaaaaaaaa!?」

クロウたちはパニックになり、慌てて影鳥から逃げ出す

そしてクロウを追いかける影鳥

「これが僕の能力の神髄か♪」

僕の能力の神髄、それは『偽る』こと

この影鳥(フライングバード)は偽りの鳥、つまりは、『存在しないことを存在させて』作られた鳥だ

「そしてその逆もできる、っと」

逆に今までの『隠れる』ことは『存在しているものを存在させなくして』いたということだ

「ふふん♪」

これは良い能力だ 物の事柄を偽れ———————————————————


『犯人は・・・・』


「・・・・・・・っ!!!!!!!」


唐突に、 ズキン と、頭と心の奥底とが痛む


「っ!!!!!! っ!!!!!!!」


どんどんと、自分の息が荒くなる


「っ!!!! っ!!!!!! っっ!!!!!!」


もしかして、   僕は・・・・・・・・


「っ! っ! っ! っ!!!!!」


僕は、まさかそれを望んでいたのか・・・・・っ?


「っ っ っ っっ っっっ!!!!!」


そんな願いを持っていたのかっ!!!!!!!!!?




「gusiァaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

「あ」

唐突に現実に引き戻され、間抜けな声を上げてしまう

全く気付いていなかった

いつの間にか、目の前でクロウが大きな口ばしを開けていた

 ・・・あらら

避けることも出来ない

迎撃することも出来ない

あるのは、ただ、死ぬのみだった

 ・・・・まぁ、いっか

妙に遅く感じるさなかに思う

別に死んでもいいや

こんな醜い僕なんて死んでも

・・・・あぁ、だからか・・・・・・・だから・・・・・・・

そして、クロウの口ばしが届く・・・・・・・・・


その寸前、

「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaア!!!!!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

思わずのけぞり、尻餅をついてしまった

目の前のクロウが、急に燃えたのだ

「? ???」

死を覚悟した手前、こんなことになって、頭が回らなかった

と、ふと、

「何やってんだ?」

と、僕に呼びかける声

「あ、じ―—————————」

声の主を見た途端、身の毛が立ち、尻餅をついたまま後ずさりをしてしまった

「っ! 誰!?」

思わずそう言ってしまった

「おいおい、誰とは失礼だな さっきまで一緒にオレとお話していただろ?」

赤いパーカーに首にはヘッドホン

もちろん仁、なのだが———————————

「ま、いいや」

手には短剣、身体が所々燃えて、炎に包まれていた

そして、何より、

「取り敢えず、こいつらを片付けようぜ」

全然違う、口調と表情で、仁は、

いや、仁の形をした誰かが言った





「何者だ、お前は」

シザースがオレに鋏を向けて言ったその時、

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

遠くから少女の叫び声が聴こえた

「叫び声って・・・ もしかして、あっちにもクロウが!!」

しかも聴こえた方角って・・・・・・

「ロストたちが行った方角じゃねぇか!?」

こうしてはいられない 早くロストの所へ・・・・・

「待て」

いつの間にか、喉ぼとに鋏を突き付けられていた

「質問に答えろ」

「っ! 今はそれどころじゃねぇだろ!!」

たまらずそう叫ぶ

しかしシザースは無表情で、淡々と言う

「それどころなのだ」

「お前っ、何をふざけて・・・・」

「ふざけていない」

思わず息を飲んでしまった

それくらい、今の言葉に重みがあった

「ロストの方は安心しろ 仁が居たら問題ない だから、」

と、声のトーンを変え、そして怒りを顔に作り出し、言い放つ

「質問に答えろ お前は何者なのだ!!」

「・・・・・・・」

シザースはなおも続ける

「正直に言う 俺はお前を疑っている いや、正確にはお前とロストだ」

疑う? 一体・・・

「・・・・何に、だ?」

「町にクロウを呼んだ犯人」

「はぁ!? 何をい・・・・・・・・っ」

首の筋に固い金属の冷たさを感じる

シザースは鋏の刃をオレの首元で、皮膚が切れるギリギリまで鋏を閉じている

「これで最後だ」

思わず、冷や汗を掻く

「お前らは何者だ!」

「オレが、何者か・・・・・・・?」


そんなことを言われても・・・・・


「そうだ」

 

どうすればいい・・・・?


「言え」


どういえばいい・・・・・・?


「早く!」


だってそんなの知らねえもん! どう答えれば良いんだよ!



「・・・・・・・・知らねぇよ」

ため息を付きながら言う

結局、素直に言うことにした

「オレが何者かぁ? ロストが何者だぁ? 首謀者がオレたちだ??

オレが何者かも、ロストが何者かも、この事件の首謀者も知らねぇよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

無表情に戻り、黙り込むシザース

その表情の真意は判らない

判らないが、別にそれでいい

別に、分からなくていいのだ

「本当に、知らないのか」

「あぁ、知らないし、分からない」

「・・・・・このまま切り殺すぞ」

脅し文句 しかし、その言葉に覇気は無かった

あったのは、戸惑いだった

「真面目に答えないと、殺すぞ?」

やはり、覇気は無い

はぁ、ため息一つついて、

「なら、真面目に答えてやるよ」

と、シザースの鋏を持っている腕を掴んで言う

「今はそんなことどうでもいいんだよ」

・・・・・どんな風に聞こえてのだろうか

まさか、シザースが肩を跳ね上がらせるとは

「今はそんなことよりロストだ」

と、シザースの腕をどかそうとした時、

「三つ、質問がある」

と、シザースは、淡々とした、本当に淡々とした声で、言う

「一つ、お前は自分のことが分からなくてもいいのか?」

「別にいいし、興味ない」

思い出せない物に興味は無い

「二つ、ロストが何者か知らなくてもいいのか?」

「・・・・まぁ、別にいいかな」

「・・・・・・三つ」

これが本題だ とばかりに、間を開けて言う

「何故そこまでロストを信用する?」

・・・・・・・・・・・そういえば、何故だ?

よく考えてみれば、あったのは昨日の夜が最初だ

それなのに、何故ロストをこんなにも心配したくなるのだろう

・・・・・・・・・・


「・・・・・・・分かんね」

結局笑顔でこう言い放つことにした

「・・・・・・・・・・・・」

「まぁ、ただ一つ言えることは・・・・・・・」

と、ロストの、昨日見た目を思い出して、言う

「ロストのことは信用していいと思うぜ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

数舜の間

そして、

「・・・・・・そうか」

シザースは鋏を降ろす

「仁が居るから問題ないと思うが、一応行ってみるぞ」

「・・・・おう!!」

そして、オレとシザースは走り出す

待ってろよ、ロスト!

そう思いながら走る

暫く走ったのち、ロストを見つけるだが、

「ん、ロストの様子が変では無いか」

見つけたロストは、何故か真っ青な顔で喘いでいた

「何か、あったのか・・・・・?」

何か、うなされているようにも見えるが・・・

「ともかく、早くロストを・・・・」

と、ふと、

「・・・ん? 何だ、あの黒い鳥?」

何故かクロウたちを攻撃している謎の影絵のような鳥を見つける

「シルエット、いや、違うな あれは何だ」

二人して影絵の鳥に気を取られていた

そして、気付いた時には、

「っ!! あ、ロスト!!!」

思わず叫んだ

気を取られている内に、クロウがロストの目の前まで来ていた

その言葉が耳に届いたかどうかは知らないが、ロストはハッ となった顔をしたのち、ただ茫然とクロウを眺めていた

「危ない!!!」

オレは走り出す

「危ないぞ」

いや、走り出そうとしたが、シザースに止められた

「っ!!! 何を・・・・・・」

オレが怒鳴ろうとした次の瞬間、

「gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaア!!!!!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

そんな二つの叫び声と共に、目の前が明るくなった

「な、何だ!?」

唐突に、ロストに迫っていたクロウ、正確にはクロウとその周りが燃え出した

と、ふと、

「何やってんだ?」

と、

「あ、仁!」

赤いパーカーに首にはヘッドホン

さっきの黒パーカーではなく、ヒキコモリスタイルの仁が居た

この炎は仁が?

「っ! 誰!?」

ふと、ロストが怯えたように叫ぶ

誰って・・・・ 仁だr

「おいおい、誰とは失礼だな さっきまで一緒にオレとお話していただろ?」

「いやホントに誰だ?」

何故か仁の口調がガラリと変わっていた

「ま、いいや」

と、手に持っていた短剣を弄びながら、

「取り敢えず、こいつらを片付けようぜ」

初め合った時とは違う、全然違う、口調と表情で、仁は言った

いや、

初めて会った時と同じ、か

『歓迎はしないよ』

そう仁が言った時のような不陰気があった

「・・・・・・?」

ふと、シザースの方を振り向いた

「俺の助けは必要か」

そう言いながら仁に歩み寄るシザース

 今、シザースがこっちを見ていた様な気がしたのだが・・・・・・・

まぁ、気のせいだろう

取り敢えずシザースの後を追う

「ん? あぁ、シザースとレイか そっちは大丈夫、 っぽくないな」

少し溶けたシザースを見て、苦笑いの仁

「少し油断した」

無表情で肩をすくめるシザース

「報告 クロウが毒を吐いてきた」

「・・・毒を? そんなことがクロウに出来たか?」

「出来なかったはずだが—————————————」

っと、会話を聞くよりも・・・・・

「ロスト、大丈夫か?」

オレは恐怖した顔で茫然としているロストに声をかける

「・・・・・・・・・・」

しかし、反応は無い

「おい、ロスト?」

と、ロストの肩に手を当てる と、

「っっっっ!!!!」

肩を思いっきり跳ね上がらせて、驚いたようにこちらを振り向く

そして、その紫の瞳にじわりと涙が浮かぶ

「そんなに怖かったか?」

オレはロストの頭を撫でようとした、 が、

「ごめん・・・・・・・」

「は?」

「ごめん・・・・・・・・・」

ポロポロと涙を流し、何故か謝るロスト

「本当に、ごめん・・・・・・・・」

「お、おい・・・・?」

「こんな僕で、本当に、ごめん・・・・・・」

「お、おい、本当に

「本当にどうしたんだ?」

と、気が付くと、

「って、それはこっちのセリフだ!!!」

気が付くと、辺り一面、炎の海だった

「これクロウがしたことよりも大惨事になってないか!?」

「それは大丈夫だ」

そう仁が言った途端、

「ちゃーんと、火は燃え移らないようにと、あと、クロウ以外の生き物は燃やさないように気を付けましたから あ、クロウはボクが全滅させたので、ご安心を」

周りの炎は消え、ついでに仁の謎の威圧感も消えていて、元の口調と態度に戻っていた

「それより、ロス————————」

と、仁が口を開いたと同時に、

「きゃーーーーー!! 最悪の吸血鬼よ!!!!」

と、女の人、見た目は普通な女の人だ、が叫んだ

「な、何故あいつがここに!?」

「ほ、本当だ・・・ 何故あいつが・・・・」

その叫びを聞きつけ、様々の者たちが集まってきた

「・・・・さすがにやりすぎましたかね」

と、苦笑いしながら仁は言い、

「シザース、帰りましょう」

「了解」

と、シザースと仁の二人は逃げるようにしてどこかへ行ってしまった

「・・・・・・・えーーっと、」

「ぐす・・・・ひっぐ・・・・・・・・・」

取り残された、オレと泣いているロスト

「・・・・・と、取り敢えず、落ち着こ、な?」

取り敢えず、ロストの頭を撫でて、落ち着かせる事にした






「・・・・そうか」

帰り道、ボクはシザースの話を聞いて思った

間違いないな、と

「レイとロストの関係性は、いじめっ子といじめられっ子だ」

「・・・・・・・・・・」

シザースは何も言わない

シザースは基本話に口を挟まないので、話し相手としてはとてもいい

「ロストは、黒い鳥を出すのが自分の能力の神髄だと呟いていた」

さながら、影絵のような、似たような形でそこに何かが居ると勘違いさせるような、観客を騙すような鳥を出すのが能力の神髄だと呟いていた

ならば、考えだされることは一つ

「ロストは、『自分のやったことが発覚しない』事が願いだ」

自分の罪を『隠し』、自分のやった事をあたかも自分がやってないように『偽る』

さながら、スクリーンの後ろに隠れて姿を偽る影師の様に

「そしてレイは、毒が何故か効かず、しかも何故か毒を浴びせたクロウ本人が毒を受けた」

つまり、反射させた いや、多分言い方としては、

「それは『反発』したから レイの願いは、『いじめてきた子にやり返すこと』、だろうな」

「・・・・・・・・・・・・・」

反発、こっちの方が言い方としては正しいだろう

因みに、反射の意味は、向き、つまり方向を変えること、

反発の意味は、跳ね返す、もしくは他人の言動などを受け入れないで、強く否定することを意味する

『偽り』を『否定』する

それが、レイの願ったことだろう

「そうすると、レイが記憶が無いことも頷ける」

きっと、ロストがレイの記憶を消して、いや偽っているのだろう

自分の罪が発覚しないように 復讐を、されないように

「・・・・・これは、面白い絵面だな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

思わず笑ってしまった

いじめられっ子といじめられっ子が仲良くしているなど

きっと、レイにバレたらどうなるのだろうか

「・・・・・・・・・・・っち、」

思わず舌打ちをする

と、なると、これは確実に——————————————

「仁」

と、珍しくシザーが口を挟む

「・・・・何でしょうか?」

言って見ろ という意味を込めて、こっちの口調で返事をする

珍しく、何なのだろうか

「仁の推測、いじめっ子といじめられっ子という推測は、多分間違っているぞ」

「・・・・・・・・・ほう」

本当に、珍しい 人形であるシザースが、今の使い手であるこのオレの意見を真っ向から否定するとは

「因みに、理由は?」

睨みを効かせていってやる

心無い人形のシザースだが、感情を表現する、いや演技をすることは出来る

シザースは思わず顎を引く演技をしたが、それでも言う

「レイの態度、 あれは・・・・本当にロストのことを大切に思っていた」

「・・・・それで?」

今度は殺意も込めて言う

これで、シザースは黙るはず・・・・・・

「あれは・・・・・レイは、絶対にロストにいじめられていたからやり返したいとなんて思わないと思う」

「・・・・・・・・・・・・・・」

本当に、珍しい

心無い人形が、心を説くなんて

「・・・・そんなに、レイの言った言葉は重みがあったんですか?」

思わず口調がこっちになってしまう

「そうだ」

「・・・・・そうですか」

ボクもその場に居合わせたかったなー

「まぁ、いいでしょう 一応シザースの意見も頭の片隅に入れておきましょう」

一応、そう言っておく

だがいじめっ子といじめられっ子の線は間違いないと思うが・・・・

「・・そういえば」

何で唐突に、ロストは泣いていたのだ?

何か呟いて用だが、クロウ退治に夢中で聞いていなかった

それに何故か唐突に喘いでもいたし・・・・

「・・・・・・うーん、」

もしかして、()()()()()()()()()()()()()()

それのフラッシュバックであんなことに?

「・・・・・そんなわけないか」

ロストは偽るだけのはずだし、それだと辻褄が合わなくなるしね

さ、早く帰ってゲームでもしよっと、

・・・・・一緒にゲームしたら、ロストは元気になってくれるかな

 ボクらしくないな 他人に気を遣おうなんて思うなんて









「・・・・いい加減食べろよ、ロスト」

夕闇、といっていいような、ちょうど暗くなるかならないかの境目のような時間

部屋の中で、机に置かれている手の付けられていない夕食を見た後、部屋の隅に膝に顔を埋めて座っているロストを見て言う

あの後、一応は泣き止んでくれたのだが、泣き止んだ後はずっとこの調子である

ずっとうつむいたままで、ずっと喋らない

何度呼び掛けても身じろぎ一つすらしない

「・・・・・はぁ」

思わず、ため息を付いてしまう

一体どうしたのだろうか?

クロウが怖かった? 仁が怖かった?

いや、それにしては態度がおかしい

それと、オレに言った『ごめん』という言葉

一体どうゆう意味なのだろうか・・・・・

「はぁ・・・・・・・・」


ま、何にせよ


オレはロストに近づく

近づいても、本当に身じろぎすらしない

取り敢えず、しゃがんでロストと頭の高さを合わせる

顔は埋めているため、目は合わない

そんなロストを見ながら、

おもむろに、

ロストの足を掴み、

「よっと」

そのまま立ち上がって逆さ吊りにしてやった

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「あ、良かった ちゃんと反応した」

思わずホッとする

「良くない良くない良くない!!!」

下を見ると、頑張って地面に手を付こうと、手をジタバタさせているロストが見えた

「怖い怖い怖い怖い!! 降ろして、降ろして!!」

「ん、はい」

取り敢えずロストの手が届く高さまで降りしてやり、その後、足を地面に付けさして放してやる

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・・・・・」

「大丈夫か?」

「大丈夫か? じゃないよ!!!!!」

怒った顔で言うロスト

「まぁまぁ」

取り敢えず元気になって良かった

「全く・・・・・・強引過ぎるよ・・・・・・・」

「ははは、すまんすまん」

どうやら、元気を出してもらうためにやったのには気づかれたらしい

「まぁ、何はともあれ、元気になってもらって良かった」

そう言っていオレは笑うが、

「うん・・・・・・・・・・・」

ロストは陰りがある笑みで笑う

「・・・・・・本当にどうしたんだ?」

オレはベットに座り、お前も座れ という意味を込めて隣を叩く

「・・・・・・・・・・・」

何も言わないロスト

だが、座ってはくれた

「・・・・・・・・・・・・」

チラリ、 とこちらを向いては目を逸らすことを繰り返すロスト

言いたいことがあるが言おうかどうか迷っている

そんな表情だった

「・・・・・・はぁ」

ため息を付きながら窓の外を見る

いつの間にか、完全に暗くなっていた

今夜は半月だった

半分明るく、半分真っ暗な、月だった

「どうしたんだホント、そんなにクロウが怖かったのか?」

「・・・・・・・・」

「それとも、仁が怖かったのか?」

「・・・・・・・・」

「それとも、」

チラリ 、とロストの方を見る

それがたまたまロストもチラリとこっちを盗み見ていて目が合う

「オレに隠し事することがそんに怖くなったのか?」

「っっっっっ!!!!!」

ロストの口から心臓が飛び出てもオレは驚かなかっただろう

それぐらいの驚いた表情を、ロストはしていた

 やっぱり、当たりか

「・・・・・・・どうして?」

驚いた、いや、怯えた、と言った方が正しいか

そんな表情をして、ロストは震えた声で言う

「どうして・・・・・・、知ってるの・・・・・・?」

「んーーーーー」

さて、どう説明したことか

「お前、オレに『ごめん』って謝ってただろ?」

「・・・・・・・うん」

「それで、何で謝ったのか考えてたんだけど・・・・」

ロストがオレに謝らなければならない事とはなんだ?

まだ出会って一日しか経っていなにのに謝らなければならない事って何だ?

歩くときに遅れていたことか? 

本に夢中になっていた事か?

それともオレが見ていないところで一人危ないことをしていたとか?

しかし、それだとあれだけ泣くはずはない

なら・・・・・・

「一つ、思い当たる節があったんだよ」

これは、朧げなのだが・・・・・・・

「お前、昨日の話の途中で隠せているとかなんとか、何か一人ぶつぶつ言ってただろ」

「・・・・・・・・・・・・・は?」

驚きを通り越したのか、間抜けにロストは呟いた

「は? え、え?」

と、ようやく言葉が頭に染みたのか、

「いやいやいやいやいや!!!!  ちょっと待って!! あれ、聞こえてたの!!!!」

「聞こえてたぞ  まぁ、何か空耳っぽく聞こえてたから気のせいかなー って思って特に何も言わなかったんだが、」

「・・・・・・・・・・・・・そっか」

ロストはそのまま腕を目に当てベットにに転がり、もう一度「そうかー」 と、呟いた

「聴かれてたんだ 全部」

腕を目に当てたまま、ロストは笑う

目を伏せたまま、笑う

「・・・・・僕のこと、どう思う」

そして、目を伏せたまま訪ねてくる

「僕の能力は物事を『偽る』ことだ 偽る、つまり人を『騙す』って能力なんだよ

それについて、どう思う?」

「どうって・・・・」

そんなの、

「僕はね、醜いって思ったんだ 自分の中にこんな願いを持っていたなんて」

・・・だからあの時、喘いでいたのか

自分に、嫌気が差さして

と、すると、あの影のような鳥はロストが出したのか

影のような鳥を出せることに気付いて、自分の願いに気付いてしまったと言う訳か

「本っ当醜いよね、そんな願いを持つことなんて」

口だけで自嘲気味に笑うロスト

「人を騙そうとするなんて・・・・・・」

「そうか? 別にそんなことは無いと思うが」

ピタリ と、ロストは一瞬止まった

「別に騙すのは悪いと思わないぜ」

「・・・・・どうしてそう思うの?」

腕をずらして片目だけを見せてロストは言う

「騙すのは悪い事じゃん 嘘をついて、他人に罪を擦り付けて」

「うん、それは悪いことだな」

「だったら・・・」

「だが、」

例えば・・・・・

「自分には知られたくない秘密がある だから、それを知られてたく無いが為に他人を騙す これはいけない事か?」

ロストの体がこわばった

予想通り、

「それが、オレに隠し事をする理由だろ?」

「・・・・・うん」

完敗だ とでも言うように両手を放り投げて言う

「どうしても王さまには知られたくない、知って欲しくない 僕の過去を、僕らの関係性を」

「・・・関係性?」

どうゆうことだ?

「つまり、もしかして前からオレたちは出会っていたって事か?」

ここに来る前の事が思い出せ無いのもロストの

「あ、いや違うよ? 本当に昨日が初対面だよ?」

「あ、何だ違うのか」

「ただ、まぁ・・・」

と、ロストは起き上がり、オレの腕に頭を預け、寄り添う

「長い付き合いにはなるかな」

「・・・・・・?」

何か、なぞかけみたいだな

初めて会ったのは昨日なのに、長い付き合いになる・・・・・・・

「不思議な関係性だなぁ・・・・・・・」

あ、不思議といえば、

「そうだロスト、」

「ん?」

オレはあの時の事を説明する

クロウに毒を吐かれたのに無傷で、逆にクロウが毒を負ったこと

シザースに切られそうになったが、逆にシザースの首が飛んだことを

「・・・・・『反発』」

それを聞いたのち、ロストがポツリと呟く

「って! 今しれっと流したけど、王さまシザースに殺されそうになってたの!?」

「まぁ、うん」

今思うとこっちの方がヤバい状況に居たんだな

「・・・今度からシザースの動向には気を付けないと・・・・・・」

何となく、不陰気的に何かしそうなロスト

 余計に首を取られそうになる行動は止めてね?

「それよりも、反発ってどうゆうことだ?」

「『反発』、英語で言うとバウンド 跳ね返す、とか否定するとか—————————————」

唐突に ハッ となったように青ざめるロスト

「もしかして————————————————」

が、

「ん? それだとこの状況おかしくない?」

すぐに悩んだ顔になる

「いや、おかしいよね、それだと」

「・・・・・・・・・・・・」

一体、何を考えてるんだろうか・・・・・

「ねぇ、王さま 僕の事嫌い?」

「・・・・・・・い、いや! そんなわけないだろ!」

唐突に聞かれ、思わず反応が遅れた

これを回答を一瞬悩んだと捕らえなければいいが・・・・・・

「うん、そうだよね

自分でそうだよねって言うのもなんだけど」

頭を掻くロスト

これは照れているわけではなく、悩んでいるから頭を掻いているだけでだろう

「うーーん、何か変な感じになってるなぁ・・・・・・」

「変な感じってどうゆ」

ぐぅ~~~

その音を合図に、話題は終了した

「そういえばまだ晩御飯食べてなかったな・・・・ んじゃ、たーべよ食べよっと♪」

そう言ってベットから降り、テーブルに座るロスト

「いっただきまーす」

「・・・・・・・」

結局、何を悩んでいたのだろうか

「まぁ、いいか」

ベットに寝っ転がり、白い天井を見る

まぁ、いつかは分かる事だろう

その時まで、待てばいいや

「冷めてる・・・・・・・・」

「それは温かい内に食べなかったお前が悪い」






「刹那、ちょっといいか?」

今日はシザースが朝食を作ってくれているので、少し寝坊しての朝

自分の部屋で、此処だけ和室になっていて、三面鏡の前で髪を簪で留めている途中、部屋をノックされた

「どうぞ」

そう返事をしたが、すぐには入って来なかった

どうしたのだろうか

そう思っていると、

「あ、横開きなのか」

ガラっ と、襖を開けて、レイは部屋に入ってくる

「何でドアノブが無いのかと思っていたが」

「和室が好きだから ごめんね」

ここだけ扉が横開きになっているので、単に戸惑っていただけらしい

ちなみに扉は中からだと襖に見えるが、外からだとほかの部屋と同じ模様の扉になっている

「ま、入ってよ あ、靴は脱いでね」

「はいはい」

部屋の中なのにある三和土(たたき)(コンクリートで作られた靴を脱ぐ場所)で靴を脱ぐレイ

「それで、何か用なのか?」

髪を留めるのを再開して言う

「いや、別に大した用事はないよ」

鏡越しに座布団に座ったレイを見る

「むしろ、何か用は無いか?」

「どうゆう意味?」

髪を止め終え、座布団に座る

「いや、暇だから何か手伝える事が無いかなぁ って」

「って急に言われても、買い出しはまだいいし、人形たちが出来ない水仕事とかも今は無いし・・・」

と、ふと、

「・・・そういえばロストはどうしたの?」

何となく、仁とロストはセットという謎のイメージがあるのだが、

「あぁ、ロストは図書室?に引きこもってる ついでに仁も」

「あぁ」

昨日大量に運び出された大量の本

どうやら全部ロストが買ったらしく、それに伴い仁が一夜で書籍室を作り上げたのだ

「結局、また仁の奴は引きこもっているのか・・・・・」

まぁ、昨日は外に出ていたから良しとしよう

「うーん、なら、どうしようかなぁ・・・・・・」

自分から働こうとするレイ

仁も見習ってほしい

「・・・・・・そんなに何かしたいなら、」

仁から聞いた、レイの『反発』能力の拝見も兼ねて、

「なら、私の仕事を手伝ってくれない?」





「普段から、刹那はこうゆう事もしてるのか?   ・・っと」

岩を避けながらレイは言う

岩肌が生い茂っていて、さほど街から離れて居ない場所をレイと二人で歩く

「たまにね」

仕事というのは街にシルエットが近づいて居ないか、用は見回りだ

普段はこんな街からでも歩いて来れる様な場所ではなく、もっと危険な場所を見回っているのだが、仁に暫くは街の近場を見回って欲しいと言われ、こんなところを歩いている

「で、街のど真ん中でシルエットが出てきたって本当なの?」

「あぁ、本当にわらわら出てきたぞ」

仁からある程度の事は聞いていた

シルエット、しかもクロウ個体が街で暴れまわっていたらしい

正直、信じられない話だった

シルエットが町に来たこと何て一度も無かった

それに街のど真ん中、というのも変な話だ

街の近く、ならたまに在った

街の最端、もまだ分かる

しかしど真ん中というのはおかしい

何故、誰もシルエットが街のど真ん中に来るまで()()()()()()()()()

町のど真ん中で急に出現した訳でもあるまいし、町の外から大群が押し寄せてきたのなら誰かが気が付いても良いと思うのだが・・・・・

「ところでさ、」

ふと、レイが言う

「何で仁って『最悪の吸血鬼』なんて言われてたんだ?」

「それは、」

これは真剣な話しだ、と言う意味を込めて、一区切り入れてから言う

「それは、出会うだけで『最悪をもたらす』と言われているからよ」

「出会うだけで、最悪・・・・・・?」

どうもしっくりこないらしい

「まぁ、それもそのはずよね 何てったって、あなと初対面はだらだらした仁の方だったし」

しかし、

「でも、最初に戦闘時の仁、炎を纏った仁を見たらどう思う?」

「・・・・・・・・・・・・」

人間から見たら、炎を纏った獅子が街中をうろついている様な見た目になるだろうか

暴れまわり、物に、者に火をつけ歩き回る獅子

下手をすると炎に焼かれる前に食べられてしまうかもしれない

仁は皆からは存在してはならない悪魔、居るだけで『最悪の吸血鬼』として言われている

と、ここまで言ってふと、

「・・・・・そういえば、レイは仁の炎を纏ったところを見たの?」

まぁ、見ていないのだろう だからしっくりこないような・・・・・・・

「あぁ、見たぜ」

・・・・・・・・・え?

「いやー、迫力凄かったなー 確かにあれは怖いわな」

「え、ち、ちょっと待って」

もしかして、

「仁のあの姿を見たのに平気なの!?」

最初あの仁の見たとき、本当に怖かった

炎の中で薄く笑う悪魔 今ではもう長い付き合いで、今ではそこまで怖くなくなったのだが・・・・

「ん? 平気だけど? いやもしろ当然だろ」

「・・・・・・・・・」

思わず、呆気に取られる

 どんな神経してるのよ、こいつ

「まさか、『最悪の吸血鬼』を恐れないとは・・・・・」

まぁ、これは仁にとっては良い事なのだろう

「しっかし、嫌な二つ名を付ける奴もいるもんだな」

「そんなものよ?」

何せ、二つ名とは見たままを表しているだけなのだからだけなのだから

平気で人の先入観が入ってしまうのだから

「そうなのか ・・・・因みに刹那にも二つ名があるのか?」

「あるわよ 『百桜繚乱(ひゃくろうりょうらん)』って呼ばれているわ」

きっと願いを桜に変えたときの光景を見てそう誰かが言ったのだろう

「へぇ、それってどゆう・・・・・」

と、ふとレイが辺りを見渡し出した

「・・・・? どうし、っ!!」

ゾクリ と、変な予感がして日本刀を手に持つ

「っ! 刹那避けろ!!」

その言葉に咄嗟に後ろに飛びのく

その後、自分が立っていた場所に何かが刺さる

「棘・・・・・?」

レイはそう呟くが、違う

「氷、正確には氷柱かな?」

思わず舌打ちをしながら氷柱が飛んできた方向を見る

「アイスホッグ また面倒な奴が何でこんな場所にいるのかなぁ?」

アイスホッグ ハリネズミのような形をしたシルエットで、冷気でを扱うのが特徴

ついでに基本的な生息地は森の深くの年中中が凍っているような寒い洞窟で、間違ってもこんな岩肌に出てくるようなシルエットではない

「寒いの嫌いなのに・・・・・・・」

あて付けのように氷柱を蹴る

蹴った途端氷柱が桜の花びらに変わる

「それが、刹那の能力なのか?」

とにかく、まずは倒す事が優先だ 何でここにいるのかの推測は後でも出来る!

日本刀を手に、アイスホッグへと走り出す

「え、あれ、無視?」

アイスホッグはこちらへ沢山の氷柱を放つ

「てやっ!」

だが、刀の一振りで、刀に当たった全ての氷柱が桜に変わる

「おぉ、スゲーな! それと奇麗だな」

本当ならアイスホッグの氷柱は固く、下手をすると刀に刺さる程の強度を持っているが、こっちには関係ない

このまま真っすぐ突き進んで正面から切りつける!

「・・・・っ! 刹那、気を付けろ!」

 ・・・・・さっきから五月蠅いな・・・・・

レイに苛立ちながら弾幕、否、氷柱を桜にし、突き進む

桜の花びらにして、つき進む

それゆえ、まるで桜吹雪の中を突き進んでいる様に見える

()()()()()、桜吹雪の中を

だから、気付かなかった

「・・・・・ん?」

あと十数メートルといった距離の事、気が付いたら氷柱が止まっていた

桜の花びらがまだ完全には散り去っていないのでうまく見えないがアイスホッグが口を開けているのは分かる

それから、口の中に何かキラリと光る物を見つけた

 大きな氷柱でも吐いてくる気?

そんなこと出来たっけ? と、思いつつも走るのは止めない

どのみち、氷柱だったら、きれば、

花びらが晴れ、それでようやく気付いた

キラリと光ったのは、氷柱が光を反射していたとかでは無く、炎の煌めきだという事に

「・・・・・・え?」

どうして・・・・・アイスホッグが、炎を・・・・・・?

アイスホッグはイメージ通り熱い物がにが

「っ!!」

呆気に取られていたせいで反応が遅れてしまった

いつの間にかアイスホッグが炎を吐き出していた

 まずい、炎はまずい!!

願いとして現れた力に触れると桜の花びらに変えてしまう能力 仁の命名 幻葬楼華(げんそうろうか)だが、この発動には条件がいるのだ それは攻撃すること

もちろん、刀で炎を切れば桜に変わるだろう

だが、それは切ったところだけだ

炎をとは、小さな火が連なって出来るもの

それゆえ、火を切ったところでまた次の炎が迫るだけ

どうするべきか・・・・・・!

思わず冷や汗が頬を伝ったその時、

「だから危ないって言っただろ」

目の前に現れる人影

「っ、レイ! 何をしてるの! もしかして、庇う気!?」

前に出ただけで炎を庇う事なんか出来やしないし、そんなことしてもらう義理は

「まぁ、大丈夫だって      多分・・・・・・」

「多分って何!?」

ダメだ焼かれる!

せめてレイだけでも突き飛ば、し・・・て・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

どうなっているのだろか

まるで手品のように、何故かレイの目の前で炎が消えてゆく

「ちょっと熱いな・・・・・・・・」

呑気にそう呟くレイ

そして程なくして炎は止んだ

いや、正確には止んでない

「どうなってるの・・・・・・・?」

炎は少し遠く、炎を吐き出した本人、アイスホッグを焼いていた

「ふぅ、ちゃんと出来て良かった」

パンパン と、手を払いながら言うレイ

「これがオレの能力、『反発』らしい まぁ、刹那にとっては大した能力じゃ無いだろ 刹那と似たような感じだし」

「・・・・・・・・・・・・・・」

ふと、この光景に既視感があった

そうだ 仁に初めて会った時もこんな光景だった

死にそうに、殺されそうになった時に現れた炎

その時、真にこの人に使えるべきだと、我が使えるべき王だと思った

そういえば、ロストもレイの事を王様だと言っていた

反発の王

「・・・・・・『反王』」

自分にはそう見えて、思わず呟いてしまった

「ん? それオレの事か?」

 「照れるなぁ」 と、言う声に初めてそんなことを考えてしまっているのに気付く

「それより!」

誤魔化す用に咳払いをして言う

「どうして、アイスホッグが・・・・ それにどうして火を・・・・・?」

「やっぱり、おかしいのか?」

こくり、とうなづく

「アイスホッグは基本年中氷があるような洞窟に居るの おまけに熱いのが苦手で、炎なんて絶対に吐けない」

もう動かない、だが未だに燃えているアイスホッグを見ながら考える

一体、どうして・・・・・・

「・・・ん? どうしたの?」

ふと、レイがキョロキョロしている事に気付く

「ん? いや、」

レイは唾が悪そうに頭を掻く

「・・・・やっぱ、気のせいか?」

「どうしたの?」

重ねて問う

「いや・・・・・」





「黒毛の動物?」

ロストは聞き返す

「そうなんだ クロウの時も見て、最初はクロウの事だと思ったのだが、流石に二度目は」

アイスホッグが現れる前、その時にも見たのだ 黒毛の動物を

「・・・・・・・・・・そのことは、刹那に?」

「いや、言って無い」

その時ははぐらかしておいた

一応ロストの意見を聞いてから言おうと思ったからだ

「・・して・・・・・・・・・・・・」

「? ロスト?」

ふと、ロストの顔が真剣なのに気が付いた

「何か、知っているのか?」

しまった! と言ったような顔にロストはなる

「・・・・・ロスト」

疑問形では無い

何か知っているなら言ってくれ

そんな気持ちを込めて言う

「その・・・・・・・・」

言いづらそうにして、結局観念したのか、ため息を付いておずおずと言う

「・・・・・これ、僕が犯人っぽくない?」

「え?」

どうしてそうなるんだ?

「だってさ、真っ黒な動物って、」

そう言って机を見るロスト 

それにつられて机を見ると、

「これは・・・・・」

真っ黒な毛の猫が居た

いや、正確には目だけが白い、影絵のような猫が

「黒毛の猫が居た何て言われたら真っ先に偽れる能力を持つ僕が疑われるだろうね・・・」

ため息を付きながらロストは言う

そういえばシザースもロストが犯人じゃ無いかと疑っていたな

「でも、それだとクロウに襲われていたのは」

「自作自演 って、言われるだろうねぇ」

「う・・・」

確かにそうゆう予想も出来るが、

「でも」

「だから、」

とロストはオレの言葉を遮って言う

「この事は、他言無用で」

「・・・・・・・・・・・分かった」

不満はあるが、ロストが嫌に真剣なので黙っておくことにした

「しかし、『反王』って」

ロストは笑う

「変か?」

「いや?」

ふと気付く、その笑い方が 嫌に変だった

「カッコいいなって」

嬉しそう、と言うか、

「ホント、僕とは大違いだね・・・・・」

自嘲気味、と言うか、

何か、変な感じだった

「・・・・・なら、お前もカッコいいのを自分で付ければ?」

何か、またロストが部屋の隅で縮みこむ不陰気があったので強引に話題を変える

「自分で二つ名ねぇ・・・・・・・」

「何なら、オレが考えてやろうか?」

「・・・・・因みに?」

あまり期待してないが、 とでも言いたそうな顔だった

これは良いのを出さないと

「そうだな・・・・・・ まずはシンプルに『偽りの女王』ってのはどうだ?」

ロストは偽る能力がある そしてオレ、レイ()の隣にいる人物

割と偽りの女王はカッコいいんじゃないか?

「却下 女王って響きが嫌」

一蹴された 真顔で

「てか、僕が王さま(レイ)を王さまって呼んでるんだから女王、って言うより家臣だよね・・・」

「うーむ・・・・・・」

確かに だが、ロストを家臣として扱うのは何か嫌だな・・・・・・

下手をすると毒を盛られそう

王の最後は身内の暗殺で終わる よくある話しだ

「女王が嫌なら王に、偽りの王『偽王(ぎおう)』はどうだ?」

「うーん、カッコいいけど・・・・・」

これもお気に召さないらしい

「わがままなお姫様だな」

「いや始めたのそっちでしょ」

ごもっとも

「てか、何で僕を高い身分にしたがるのさ」

「いや、何となく、オレが王さまなら隣に居るのも身分が高い人かなぁ、って」

「それならもう偽りの大臣でいいよ」

「却下 ぜってーオレを殺す気だろ」

数舜キョトンとしてから「そうゆう事ね」とロストは笑う

「うーん、けど、女王は嫌だし、あ、姫も嫌だよ 王の隣に王が居るってのも船頭多くして船山に登るみたいだし・・・・・」

「うーん・・・・・・・」

王の近くにあるもの、玉座? 召使い? 市民?

「・・・・・・城?」

「城?」

ここで、自分が思っていたことを口に出していた事に気付く

何でもない そう言いかけたとき、

「城 城 城壁・・・・・・・」

そう呟きながら何回か頷くロスト

そして、

「うん、これだ」

と、オレの方を向いてロストは言う

「虚栄の城壁、『ヴァニティ・(虚栄の)キャメロット(城壁)』 これが良いや!」

「・・・・どうして、虚栄の城壁なんだ?」

「決まってるじゃん!」

と、ロストはオレの手を、その小さな手で包み込む

「僕は偽り(虚栄)で王さまを守る(城壁)になりたい だから、ヴァニティ・キャメロット!」

偽りなく、変な感じも無く、ロストは笑う

「ロスト・・・・・・・」

包み込むロストの手は、温かかった

「あ、そろそろ夕食じゃ無い?」

照れ隠しなのか、そう言ってオレの手を離す

「今日は何が出てくるのかなー 結構美味しいんだよね、ここの夕食は!」

「・・・・そうだな」

「・・・・折角だから、仁と一緒に食べよっか」

「そこは刹那とシザースも入れてやれよ」

「・・・・・シザースって物食べるの? 人形でしょ?」

「うーん、どうなんだろうな」

そうゆうやり取りをしながら、オレとロストは部屋を出る


「・・・そういえば、ロストって、猫、好きなのか?」

「? 犬よりも好きだけど、どうしたの?」

「・・・・・いや、何でもない」

「??」







「ここに来て、もう何日かなー」

「まだ二週間ですよ」

パソコンの前で、一人一つの画面で怪物をハントするゲームの協力プレイをしていた

まぁ、協力と言っても、仁が双剣で無双してるので、僕はただ単にデバフ弓を打ってるだけの作業になっているが、

「あ、麻痺ったよ」

「よし じゃ後はお任せあれ」

 てってててー

「・・・・マジで早いね」

「これがハメと言うやつだ」

いや、ドヤ顔で言われても

「あーんま、楽しくないな・・・・・・」

「まぁ、あっさり終わりましたしねー   ・・・・次は裸になります?」

「それ僕が死ぬ!!」

コンコン と、扉がノックされる

「ロストー? 買い出しに行くが、お前は来るかー?」

「あ、行く行く!」

仁にコントローラーを投げつけて扉を開ける

「んじゃ、行ってくるね 仁」

「ええ、お気を付けて」

投げつけたコントローラーを振って仁は言う

相変わらず上手くコントローラーをキャッチするなー



「お前と出会って何日になるんだ?」

「もう二週間だよ」

オレとロスト、二人で街へ行くための森の一本道を歩く

まぁ、歩いているのはオレ一人だが・・・・

「お前、そこ気にいったのか」

上を見上げてオレは言う

「うん、結構快適」

下を見下げてロストは言う

何故か、この肩車がロストとの移動方法になってしまった

前はオレが肩車しようかと言ったが、最近ではロスト自らが「肩車して!」と言うようになった

「いやー、快適快適」

「・・・そうか」

まぁ、快適ならいいんだが、

「これ、絵面的に大丈夫か?」

まぁ、肩車をしようと最初に言い出したのオレだが そして今更だが

「ダイジョブダイジョブ 吸血鬼もどきの幼女は肩車されるって相場があるから」

「何その相場?」

そんな世の中なのか? 向こうは

「あ、ほらほら街に着いたよ」

「はぁー、はいはい」

ため息を付きながらロストを降ろす

此処でロストを降ろすのはロストが恥ずかしがっているから、

ではなくロストが単に店を歩き回りたいだけだからだ

と、

「あ! ロストちゃん!」

と、狐のような耳を生やした和服の少女、名前をみづきと言うらしい、が声をかけてきた

「よっ」

片手を挙げて返事をするロスト

聞いた話しだと、クロウの事件の時に彼女を助けて、それ以来仲良くなったのだとか

「それに、反王さんも!」

「・・・・おう」

どうしても苦笑いになってしまう

刹那とアイスホッグを退治した時のこと、町の近くということもあってたまたまそこに居合わせあ者が居たらしく、更にクロウ事件の時に仁が逃げて行ったのはオレの活躍があってこそ、つまりレイ、いや反王は二度も町の危機を救って下さったのだ! 

と言う謎の噂が広まって何故か反王として評判になっていた

「人気者で良かったね、王さま」

「う、うむ? そうか?」

何か複雑な気分だ

嬉しい様な、照れるような、うざったいような

「そうだよ! 良いことだよ!」

「そうだよそうだよ!」

「みづきちゃんまで・・・・・」

まぁ、悪い事では無いか

「ところで、今日はどうして街に?」

「あ、そうだった 買い出し買い出し 行こうぜ、ロスト」

「うん」

そう言ってロストはオレの手を握り、二人で歩き出す

「じゃあね、みづな」

振り返り、手を振るロスト

「うん、バイバイ ロストちゃん」

肩越しにみづなを見れば、みづなも手を振っていた

そしてみづなが見えくなった頃、

「ねぇ、王さま」

「・・・・・ん?」

ロストの方を見ると、ロストもオレの方を見ていた

「ずっと一緒に、ここに居ようね」

ロストに眼、紫色の瞳と目が合う

「・・・あぁ、そうだな」

笑って言うと、ロストも笑う

「ずっと一緒だ」

「うん ずっと、王さまで居てね」



「ずっとずっと、この世界で、僕の()()()の王さまで居てね」



「そのためなら、僕は命も投げ出すから」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「随分ロストと仲良くなったね」

仁の部屋、では無く書籍室で仁に言う

レイとロストが来てからと言う物、一人の時はゲームをするよりも本を読むのが多くなった

まぁ、引きこもるのには変わりないが、最近はどこか楽しそうだった

「ああ、中々良い遊び相手です 刹那もあれくらいゲームに関心を持って欲しい物です」

勿論、冗談だろう

「しかし、人間一人と謎の吸血鬼が一人入るだけでこうも館の不陰気が変わるとは思いもしなかったなぁ」

レイは何かと手伝いを沢山こなしてくれて大助かり

ロストは仁の子守をしてくれてわざわざ怒鳴ることも少なくなった

そして人形たちも、シザースも含めて、レイに好感を持っているのか、珍しく交友的だった

あの二人が来ただけで館が明るくなった

「・・・・・・・いつまでもあの子らが居て欲しいなぁ」

「あぁ、無理ですよ」

「まあね・・・」

だって、レイは人間だ

人間の寿命は短いだからいつかはし

「だって僕がそろそろ元の世界へ送り返すんですから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

その言葉を飲み込むには時間が掛かった

「ど、どうして?」

ようやくでた言葉はそれだった

「半分は危なっかしいから」

「あ、危なっかしい?」

一体、あの子らのどこが・・・・・?

「いやー、レイ君は危なっかしいでしょ」

と、本から目を離し、こっちを見て言う

「こんなにも人を変えるってのは危ないにきまってるでしょ」

人を・・・・変える・・・・・?

「も、もう半分は?」

意味が分からず、取り敢えずもう半分を聞いてみることにした

「もう半分は、」

と、背筋が凍るような笑み、最悪の吸血鬼の顔で仁は答える

「秘密だ」

そう言い残してから、再び本を読む仁

何を、考えてるんだ、仁は

そして、ふと気づく

どうして、こんなにもレイを庇おうとするんだ?


結局答えは出ぬまま、レイとロストは帰ってきた






「オレたちを、返す?」

「ええ、そうです」

お使いから帰るなり書籍室に呼ばれ行くと、心配そうな顔の刹那と楽しそうな顔の仁

そして部屋に入るなり仁に言われた

あなたちを元の世界へ帰します と

「急にどうしたの?」

そう答えるのはロストだった

「あなたたちは元は現実世界の人間、ちゃんと元の場所へ帰るべきです」

「・・・・・そうか」

自分でも思う 妙に他人事のようだった

記憶が無いからかなぁ

まぁ、そう言われたのなら受け入れよう

「ロスト、お前もそれで「ダメ」

特に何も無く裏も無く、明日の天気でも言うように、しかし、オレには見えた

一度、浅く深呼吸をして、もう一度 「ダメ」 と言ったのだった

「理由をお聞きしても?」

目を細めて仁は言う

いや、威嚇して の方が正しいだろうか

「・・・・・・そんなの、決まってるじゃん」

少しうつむきがちに言う

そのせいで表情が見えなくなる

無表情なのか、はたまた笑っているのか、はたまた怒っているのか、ここからはうかがえない

数舜の沈黙が流れる

ふと刹那を見れば、刹那もロストの表情を伺おうとしていた

刹那と目が合い、お互い気まずそうに目を逸らす用にロストを見る

「決まってるじゃん!!」

意を決したように顔を上げてロストは言う

「そしたら色んなゲーム出来なくなるじゃん!!」

「「それだけかよ!!!」」

思わず刹那と一緒に叫ぶ

「だってそうじゃん! ここには最新のゲームが一杯あるのにどうして出ないといけないの!?」

「なんだそんなことですか」

ニコニコと笑いながら仁は言う

あ、此処はゲームを渡してロストをどうにかするとか そうゆうてんかいな

「思いつめた振りしてして考えた言い訳がそれか」

「・・・・・・っ」

その言葉で間違いに気付いた

ニコニコと、では無い ニヤニヤと、下げづむような笑みで仁は言っていた

「・・・・・・・・はぁ やっぱバレるか」

ため息を付いて、降参するように両手を挙げるロスト

「やっぱ仁を騙すことは出来ないか」

「ええ、出来ませんよ」

  ・・・・・・・・・・・・・なんだ?

何故か、冷や汗が出る

「ところで、何で元の世界ね帰りたく無いんですか? 二週間だとそろそろホームシックになる頃でしょう?」

「ん? あぁ ちょっとね、懸念事項があるんだ」

「懸念事項?」

 何なんだ??

ただの会話のはず

なのに、

「そそ、懸念事項」

「ほう、気になりますね して、その懸念事項とは? 良ければお手伝いしますよ?」

「ふふ、ありがと!」

なのに、何でまるで、

「なら、聞いてもらってもいい?」

「ええ、どうぞ」

お互いの黒い腹の探り合いのような緊張感があるんだ??

「それがね・・・・・・・」


唐突に、一瞬立ち眩みを起こしたかのように視界が真っ暗になる

その後気付けば、

「・・・・・・・・え?」

森の中、きっと最初に倒れていた森だろうか、その中をロストに引っ張られて歩いていた





いつの間にか、書籍室でレイとロストの姿は無く、仁と二人きりになっていた

「逃げましたね」

きっと、いや絶対に予想していたのだろう特に何も無く気楽に言う仁

取り敢えず逃げてくれた事にはホッとする

「・・・・で、どうするの?」

「何で少しホッとしてるんですか?」

「・・・・・・・・・・・」

何も言わない、いや、何も言えない

「ま、いいでしょう」

見た目はいつものヒキコモリ仁なのに、何故か最悪の吸血鬼のような迫力がある 現に、

「さて、鬼ごっこの時間ですね」

楽しそうに笑って言うが、目は全然笑っていない

「で、でも、ロストは偽る、隠れる事はかなり得意なはずだよ?」

現に仁も逃げるのを阻止することは出来なかった

目の届く範囲でもこの結果なのだ ましてや目の届かない所まで行かれたらいくら何でも

「・・・・あのさぁ」

チラリとこっちを向く仁

思わず背筋が伸び、凍る

「オレを誰だと思ってんの?」

 今すぐここから逃げたい

最悪の吸血鬼の、最も見たくない、向けられたくない感情の一つ

「オレは本物の吸血鬼だ 偽りの吸血鬼がオレに敵うと思ってんのか?」

不機嫌  不機嫌そうにため息を付いて、仁は言ったのだった




「ちょ、ちょっと待て!!」

ロストに引っ張られてながら森の中を歩く いや歩かされる

現に今立ち止まってロストの歩みを止めようとしているのだが車か何かで引っ張られているように止まることの出来ない

あ、ロストに引っ張られているのか

「・・・・逃げるよ」

ロストはポツリと呟くように言う

「何でだ?」

「逃げるよ」

「答えになってないぞ」

怒るように言うが、それでもなおロストは歩みを止めない

「どうして逃げるんだ?」

・・・・・・答えない

「どうして仁から逃げるんだ?」

・・・・・・答えようとしない

「どうして、元の世界から逃げようとするんだ?」

・・・・・・「答えたくない」

ようやく、ロストは足を止める

「答えたくない」

後ろを向いているため表情は見えない

だが声色で予想は付く きっと、無表情だろう

そう思うくらい、ロストの声は淡々としていた

「・・・・・・・・・これからどうするつもりだ」

ロストの真意を探るため、取り敢えず何か話しを切り出してみる

「・・・・・・逃げる」

「仁からか?  それとも元の世界からか?」

わざと皮肉気に言って見る

「・・仁から」

そう言って再び歩き出すロスト

 これで簡単に揺らいでくれたら良かったんだが・・・・

オレもロストの後に続く

「・・・・・ところで、何で唐突に仁はオレたちを元の世界にかえそうとしたんだ?」

「・・・・それくらい分からないの?」

 少しイラつくようにロストは言う

・・・・・・あぁ、そうゆう事

どうしてロストが逃げているのか、何故仁がオレたちを元の世界へ帰そうとしたのか

ロストの苛立ちで分かった だが、

「・・・・・・分からないな」

敢えてそう言ってみた

「・・・・分からないの?」

「あぁ、分からない」

「・・・・・・・・本当に、」

もう我慢できないといった感じでロスト強く振り向く

「本当に分からないの!!!!」

振り向いたロストの顔は、泣いていた

酷く怯えた顔で、泣いていた

・・・・・やっぱり、これは気付いてないな

怯えに捕らわれ、気付いていないな

「むしろ、何でロストが分からないんだ?」

「・・・・・・え?」

呆気に取られた顔をするロスト

オレは優しくなだめるように言う

「お前が何故仁から逃げているのか それは逃げないと殺されるからだろ?」

「・・・・・うん」

泣き顔のまま頷くロスト

「まぁ、あいつは無茶苦茶だからなぁ 何となく、従わないと殺してくる不陰気はあるんだよなぁ」

「そこまで分かってるなら」

「けどさ、」

逃げないと殺される? 殺されるのが怖い? それなら

「これ、別に逃げなかったら殺されないよな」

「・・・・は?」

「逃げるから殺されそうになるんだよ だから、逃げずに仁の要望を受け入ればいい」

「・・・・・・・・・・」

「違うか?」

これなら、何の問題も無い、ましてや、

「・・・・・違うよ」

「いや、違わないさ」

ポン とロストの肩に手を置く

ビクッ と肩を跳ね上げるロスト

きっと、ロストの気にしている事は、

「お前、元の世界に戻ったらオレと会えなくなると思っているだろ」

どうしてわかったの? とでも言いたいのだろうか 呆気に取られた顔をするロスト

「やはりな」

そこが一番の間違いだ

「そもそも、元の世界に帰ったって会えるだろ」

「・・・・・どうやって?」

どうやってって・・・・・・ 思わず苦笑いになる

そんなことも分からないのか?

「一緒に元の世界に帰るんだろ? だったら向こうの世界でも会えるだろ」

きっと、一緒にここへ来たんだ なら、帰る時も一緒な

「あぁ・・・・・・・ なるほどね」

「そうだろ だから一緒に」

「何にも解ってないんだ」

「・・・ロスト?」

ロストの顔を見る 

いつの間にか顔を伏せていたロスト

目は見えない だが、

「なーんだ 記憶が戻ったかと思っちゃったよ」

その口元は、笑っていた

「王さま、僕らはね、元の世界に帰ると会えなくなっちゃうんだよ?」

・・・・・・会えなく、なる?

それはどうゆう

「会いたくなくなる、の間違いでは?」

「・・・・・っ!!」

ハッ と木の上を見ると

「逃げるならもうちょっと上手く逃げてくれよ 探し甲斐がないなぁ」

パーカーに首にはお決まりのヘッドホン、そしてこの口調

「・・・・仁」

「鬼ごっこは終わりだぜ、ロストちゃん」

最悪のタイミングで現れた仁が居た

「・・・・どうやってここが?」

ぐしぐしと涙を無理やり拭いてから、泣いていた痕跡が微塵も無い顔でロストは言う

「ん? それはただ単に」

シュ、 と、オレとロストの間を何かが横切る

「こいつに後を追わせていた 吸血鬼にコウモリの眷属はつきもの、違うか?」

仁の手にコウモリが留まり、消える

「・・・・尾行してたんだ」

「そそ、何となくロストちゃんが逃げそうな気がしてたから それよりも面白い話をしていたね 君たち」

よっ と、仁は木から飛び降りながら言う

「元の世界に帰ると会えなくなる、実に興味深いねぇ」

「・・・・・・・部外者は口出ししないでくれる?」

「さっきと違ってつれないねぇ」

ま、部外者なのは事実だけど と付け足すように仁は言う

「ま、いいじゃない 部外者が口出ししても」

「知ったような口をして」

ふん と鼻を鳴らしながらロストは言う

仁の態度が相当気に入らないらしい

その知ったような口ぶりが

「・・・・もしかして、仁はオレとロストの関係性を知っているのか?」

「いや? 知りませんよ?」

「なら、「ただし、」

と、ロストの言葉を遮り、ニヤリと笑って言う

「どうゆう関係かは、予想してますけど」

「・・・・・へぇ」

その言葉にロストは挑戦的な笑みを返すロスト

「なら、言ってみなよ その予想とやらを」

「ええ、いいですよ」

答える方が逆だがさっきと似たようなやり取り

これはまた逃げる気なのか? いや、さっきと同じ状況なら、

「ロストとレイの関係性、それは・・・・・・」

その言葉を聞いた時、一瞬 視界がブレた気がした

それは、ロストが何をしたのか、はたまた、

「いじめっ子といじめられっ子の関係性 違うか?」

はたまた、自分の思考が止まったのか

その言葉にそれくらいの衝撃を受けた

いじめっ子と、いじめられっ子 だと?

ロストも同じようで、何かしようとしていたのだろうか、変な姿勢のまま固まっていた

「どう・・・・・・・して・・・・・・・・・」

絞り出すように出した声、それはロストが言ったのか、それともオレが言ったのかは自分では判らなかった

仁は愉快そうにロストを見て、それからオレを見て、もう一度ロストを見る

「そう思った経緯を解説しましょう」

コホン とわざとらしく咳ばらいをして言う

「まず疑問に思ったのはロスト、君の能力です あの時見させてもらった影の鳥、あれは姿形を偽った鳥ですよね? つまりロストは『偽る』能力の持ち主、別の言い方をすれば『何かを隠そう』とする願いの持ち主ですよね 

真実を隠すために事実を偽る それがあなたの願いでしょう

そして次に、レイの能力です ボクは実際に見てはいないですが、あなたは何かを跳ね返すことができるそうですね 

そっくりそのまま、自分の身に起こることを相手に返す、つまり『反発』する

ボクはそれを『誰かにやり返したい』という願いが現れたと考えたんです

ここまではいいですか?」

わざとらしく聞いてくる まぁ勿論こちらの反応を訊かないで仁は続ける

「そうすれば次に出てくる疑問はこれ、何故そんな願いを持つようになったのか

ロストは何を隠すために偽るのか レイは誰に何をやり返すのか

これを解く重要なカギは、レイあなたにあるのです」

「・・・・・・オレに?」

「そ、君に、です そもそも、何故レイが元の世界の記憶が無いのか不思議に思ったんですが、こう考えてはどうです?」

と、ある方向を見て言う

「誰かに記憶を消されているとか」

・・・・・・・まさか、

仁の向いている方向を見る

その方向には無表情なロストがいる

「そこのところ、どうなんです?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

眉一つすら動かさないロスト

「まぁいいです」と、肩をすくめて仁は続ける

「もしもレイがロストに記憶が消されたとすると、次に考えるべきは何故消したか

とはいえ、何故消したかと言われればほとんど可能性は絞られて、と言うかこれ以外無いでしょう

つまりは『覚えて欲しくないこと』があるから」

「とは言え」と、仁は悩むような素振りを見せて言う

「この手の内容は短絡的な予想で語って良い物では無いですからね そこは、直接本人から聞きたいのですが・・・・・ 言ってくれないですか?」

「・・・・・・・・・なら、真実の前に君の短絡的な予想とやらを聞かせてよ」

「・・・・・・・・・っ!」

思わず息を飲んでしまう

 おい、冗談だろ?

「答え合わせは式を書いてからでしょ?」

その言い方だと、本当に仁の言っていることが真実だと言っているように聞こえるぞ!

本当に、オレとロストは、本当な仲の良い二人ではなく、仲の悪い二人だったって事か・・・っ!

お前は、本当はオレに害成す存在だったってことか!?

その思考を肯定するかのように

「そう来なくては」

と、仁は笑う

「では、短絡的な予想で語らせてもらいましょう レイとロストの経緯を

ボクの予想のシナリオではこうです

まず、ロストが何かをやらかしてしまった そしてその罪をレイに擦り付けた、いや、敢えて罪を偽ったって言いましょうか 勿論、レイは「オレは知らない!」「オレはやってない!」っていったんでしょうね しかしそれは誰にも信じてもらえず、結局レイの有罪でこの話の幕は閉じた」

「・・・・・でも、幕は閉じても終わりじゃない その裏で片づけをしている人が必ずいる」

「そう! その通りです!」

ロストの合いの手に嬉しそうに掛け合う仁

それはきっと、そのロストの言葉が肯定の意味を表しているからだろう

「そしてその後、レイ君は誰にも信用されなくなったのでしょう 周りから噓つきと呼ばれて、そう下げづんだのでしょう」

「・・・・・・これだから頭のいい奴は・・・・・」

もう諦めたように頭を掻きながらロストは言う

「は、本当なのか? ロスト 仁の言っていたことは、予想ではなく、真実、なのか?」

「・・・・・・・そうだよ」

一瞬迷うそぶりを見せて、ロストは言った

「仁の予想は、全て事実だ 周りから噓つき呼ばわりされて、誰からも信用されなくなって、そしてついには誰も信用出来なくなってって、家に引きこもるようになった」

「・・・・ロスト  」

オレはロストにこう言おうとした 『どうしてそんなことをした!』 『どうしてオレの記憶を——————

と、ふと、

・・・・・・・・・ん? そのロストの言い方、何かおかしく無いか?

何か違和感を感じて、その先の言葉が出なかった

「もう全部言っちゃっていいよ 本当の願いってのは本人にも分からないもの って、大層な何でも知ってますよフラグを立てるくらいなんだ どうせその次の説明も当たってるだろうし、もう全部説明しちゃっていいよ」

あれ?やっぱ何かおかしくないか? この話しは仁が予想が合っているかどうかの話しだよな?

それなのに何で・・・・・・

「じゃ、全部ボクが説明しちゃいますね!」

予想が当たって嬉しいのか、意気揚々としながら、仁はどうしてオレとロストの関係性がいじめっ子といじめられっ子なのかと思ったのかの説明を続ける

「家に閉じこもってしまったレイ だがそれを、良かったと同時に良くなかったと思う人物が居た」

ビシッ と、無駄に格好を付けてロストを指す

「レイに罪を擦り付けたロスト でも、君は他人に罪を平気で擦り付ける程の極悪ではないのでしょう

とっさの思い付きで罪を擦り付けてしまったってだけなのでしょう 最初はバレなくて良かった、と思うだけでしたが、段々とレイがいじめられ終いにはヒキコモリになって、これはマズイと思い始めた

それは何故かって? 

それは、これほどの大事になってしまって、レイには恨まれているのではないかと、そして、

自分が真犯人だとバレたら  どうなることやら」

わざとらしくはぐらかして言う仁

チラリとロストを見れば、何処か嫌そうに眉をひそめた感じだった

「そして一方レイは」

そんなロストの表情を見て楽しいのか、はたまたどうでもいいのか気にせず仁は続ける

「家に引きこもりながら思った 「どうしてオレがこんな目に 憎い 憎い オレに罪を擦り付けた奴が憎い!」 そう思っいながら引きこもってたんでしょう」

「後はお分かりですね?」と、オレの方を見て仁は言う

「レイはロストを恨みやり返し、つまり『反発』を願い、ロストは『偽り』の発覚を恐れ願った

それがお前らの願いだな?」

最後だけ、口調を崩して言う

楽しそうに目を細めてロストを見る仁 それを見返すロスト そしてオレ

暫くの静寂

「・・・・・・これって僕と王さまがいじめっ子といじめられっ子の関係性の説明じゃなかったの?

論点ずれて無い?」

「ん? そうだったか? 悪いな、オレの説明がヘタクソで」

「うん、ヘタクソだったし、何より、」

と、ため息を付いて呆れるように言う

「それ間違ってるよ」

「え?」

カキン  と言う音

気付けば黒い刃を持ったロストと剣を持った仁がつばぜり合いをしていた

「ちっ、不意を付ければ行けると思ったのに」

「・・・・・・真正面からじゃなかったら、当たってたな」

お互いに距離を取って言う

「それよりも、間違っているだと?」

「うん、間違ってる」

「・・・・何処がだ?」

剣を構え直し、何時でも飛び掛かれる格好をして仁は問う

答える側が、また逆さまになる

「それは・・・・・・・・・・」

そして予想通り、目の前が真っ暗になったのだった




「仁」

その言葉に目が覚める

ふと気が付けば、いつの間にそこに居たのかシザースだけが居て、レイとロストの姿が無かった

「・・・・・・・・また逃げられましたか」

自分を落ち着かせるため、この口用で言う

今度は眷属に追跡させていないので完全に逃げられたことになる

「してられたな」

そう淡々とシザースは言う

これは本当にしてやられた

あの時の『それ間違ってるよ』は明らかに嘘はついていなかった

その時のロストの呆れ顔、いやあれはホッとした時の顔と言うべきか? その顔を見れば一目瞭然だった

「うーむ・・・・・・」

一体何が間違っていたのだろうか 流石にこれ以上は予想が立てられない

こればかりは本人に問いただすしか無いが・・・・・・・

「さて、どうするか・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・えっと、シザース?」

「どうした」

何故かシザースの様子がおかしかった いや、見た目とかは全く変化は無いのだが、

「えーと・・・ 何時もなら『叛軍人形(レギオンドールズ)で探そうか』とでも言うと思ったのですが・・・・」

そう、何時もなら忠実な人形シザースはここで探すことを催促してくるはずだ なのに

「鬼ごっころしてくると言っていただろう なら一人で頑張れ」

ズルはするな と言う意味らしい

「それはそうですが・・・・・・・」

何故かシザースの様子がおかしい やはり見た目は変わらないのだが何か言動が変だ

「・・・・・・もしかして、シザースもレイとロストに逃げてくれと思ってます?」

「何の事だ?」

「・・・・・・・はぁ」

文の後ろに疑問符が付いている言い方 明らかな図星だった

 どいつもこいつも

思わずため息が出てしまった

「しゃーね 自分一人で探して、そして殺すか」

さて、どう探すか

オレが歩き出そうとしたその時

「仁」

「・・・・・・何だ?」

睨みを聞かせて言う

しかし、シザースはもろともせずに言う

「一つ疑問なのだが」

「何だ?」

「何故殺そうとするんだ?」

「・・・・・はぁ?」

どうゆうことだ?

「レイとロストを殺す意味はあるのか?」

何故そんなことを問いただすかが意味が分からなかった

「何故って、それは———————————————」

ふと、気付く ()()()()()()()()()()()事に

それと同時に、

「・・・・・・シザース」

「どうした」

ボクは手を額に当てて言う

「これは、本当に殺さないといけないかもしれない」

大変なことに気付いてしまった

「・・・・・・なに?」

こればかりは驚いた表情をつけるシザース

「命令だ 人形を使ってロストを探せ」

そう言った後、やつあたりすように小石を蹴って呟く

「ロストを何とか元の世界に帰すように説得しないと、」

と、ため息を挟んで、吐き出すように言う

「本当に殺さないといけなくなるぞ」

あいつは あいつだけはあいつだけは危なっかしすぎる





「・・・・・ここなら暫くは大丈夫かな?」

真っ暗な、なのに明るい洞窟の中でロストは言う

「にしても、どうゆうことだ?」

「企業秘密」

真っ暗なのに、岩の輪郭も、地面も、ロストの笑っている顔も姿も見える

が、

「そうゆう意味じゃない」

そうゆ意味ではなく、

「僕と王さまの関係性のこと、だよね」

分かってるよ と、半ば諦めたように笑ってロストは言う

「結局、何なんだよ・・・・・・・」

「それはどうゆう意味で?」

「全部」

全部、全部だ 全部、何もかも意味が分からなかった

「なら、その全部を一つずつ分かるように解説しようか?」

「・・・・・い今まで隠していたのに、どんな風の吹き回しだ?」

「うーん、まぁ、強いて言うなら嵐のような風の吹き回しかな」

と、どこか苦笑いのような笑みを浮かべて言う

「嵐のような風がやってきて、隠してたこと何もかもが吹き飛ばされて、もう諦め気味って風かなー」

その場で寝ころびながらロストは言う

「ま、そうゆう訳だから、質問があるなら、どうぞ」

「なら、まず一つ目だ」

これはまず最も確認したいこと

「本当に、オレたちの関係性はいじめっ子といじめられっ子なのか?」

「合ってる、と思う、よ?」

「何だその曖昧な返事・・・・・」

答えるって言った手前はぐらかすなよ

「いや、本当に分からないんだ あ、誤解されているなら先に訂正するけど別に僕が王さまを虐めていた、逆に王さまが僕を虐めていたとかでは無いから」

「あ、そうか」

その言葉にはホッとする だがすぐに「ん?」となる

「あれ、さっきはそれが真実だっていってなかったか?」

「いや、それは僕は僕で勘違いをしてたから」

ロストはため息を付きながら言う

「あんなにすべてを知ってる様な口振りをしてるから全部知ってると思ってたんだが、

ま、これはこれで好都合だからいいけど」

「つまり、仁の言っていたことの大半は真実だが、核心は間違っていたってことか」

「そゆこと」

「成る程、途中ロストの言葉に違和感があったのはその為か」

「違和感? 僕の言葉に?」

「うん、何と言うか・・・ うん、何ていえば良いんだろ? 何というか・・・・」

「仁のヘタクソな説明のせいで王さまも説明がヘタクソになっちゃった?」

「ヘタクソヘタクソ言ってやるなよ・・・・・・」

まぁ、確かに何故か途中論点がズレていたが・・・・

「って、そうだそれだ お前の言い方がおかしかったんだ」

「言い方?」

仁はオレたちの関係性をいじめっ子といじめられっ子と考え、オレがいじめられ、ロストがいじめていたと考えて、そして話していたはずなのに

「お前の言い方だと逆になるよな」

「逆?」

「そう、仁の見立てではオレがいじめられる側だったのに、ロストの言い方だとまるでロストがいじめられる側みたいな言い方だったが」

「あー・・・・・・・・」

『周りから噓つき呼ばわりされて、誰からも信用出来なくなって、そしてついには誰も信用しなくなって、家に引きこもるようになった』

そう、出来なくなって、である 

普通、他人の気持ちを言うなら『信用しなくなって』のはずだ

それなのにロストは『信用出来なくなって』と、 自分の事を言っているかのように言っていた

「やっぱり、お前は虐め「そこは、」

と、ロストはオレの言葉を遮って言う

「そこは、まだ言わない」

「なら、何時言うんだ?」

「出来れば言いたくないが・・・・ まぁ、言うとすれば、きっと、次に仁に見つかった時かな?」

そう言って起き上がり、オレに近づきそのまままた寝ころぶ  オレの膝を枕にして

やっぱり地面は寝心地が悪かったらしい

それと同時に、この手の話はお終いという事だろう

「・・・・・これからどうする?」

「んー、 暫くはここで身を隠して、それから・・・・・・ どうしよ」

かなりの無計画ぶりだな

「まぁ、明日の事は明日考えれば・・・・・ ふぁ~~~~~・・・・」

と、大きな欠伸をするロスト

「・・・もう外は夜になってるんだろうな」

「と言って、もまだそれ程夜中じゃないと、思う、けど・・・・」

「・・・・・・・・・ロスト?」

ふと、ロストを見れば、すぅ、すぅ と寝息を立てていた

「・・・・疲れたんだろうな」

ロストの真っ黒な髪を手で梳く

ロストは少しむづかるようにしていたが、起きる気配はない

「あ、夜食どうしよ・・・・・・」

そういえばまだ夜食がまだなのだが、 と言うか、朝食すらままならない状態なのだが・・・

「まぁ、いいか」

ロストが言ったように、明日の事は明日考えればいい

そう思い、取り敢えずロストと同じように眠ることにした







・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に

別にどうでもよかった

少年が一人、暗い部屋でただ二人

周りの事なんてどうでもよかった

別に、罪を擦り付けた子を責める気はない 信用してくれないクラスの人達を、親を怨む気も無い

ただ、ただオレは守りたかった ただ、それだけだった

ただ、ただ僕は侵されたくなかった ただ、それだけだった

自分の王国を 自分の拠り所を

ただただ奪われたくないだけだった

静かに本を読む時間  五月蠅く演劇を楽しむ王国

オレはそれを守りたかった

僕はそれを楽しみたかった

だけど、それは奪われてしまった

その代わり、無慈悲な噓つき(偽造者)と言うレッテルと、僅かに(あら)がった後が残る部屋(王国)は残った

なら、もうそれでいい それだけでいい

なら、もうそれでいい それだけでいい

それだけでいいって思っていた

オレはそれで良いと思った

僕はそれでは良くないと思った

この世界を知らされるまでは

オレは願った——————————————————————————

僕は願った・・・・・・・・・・・・・・・・・

『                     』と、

                       と、







「っ!! はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・・・・」

それはロストの息、いや、オレの息、いやどっちもか

二人して目覚めた途端荒く呼吸をしていた

「ひどい顔だな」

辺りは暗い、なた拍子にロストの企業秘密の何かが解けたのか辺りは真っ暗で、辛うじてロストの顔色が悪い顔が見えていた

「・・・・・それはお互いさまでは?」

そういわれてふと自分の顔を撫でてみると大量に汗をかいていた

「お風呂に入りたいね」

ロストも自分の顔を撫でながら言う

「そうだな」

取り敢えず顔の汗を拭くの袖で拭きながら思う

「・・・・・・何か、悪い夢を見ていた気がする」

「・・・・・・奇遇だね、僕もだよ」

ロストもオレに習ってタオルで汗を拭く

「って、どっから出した それ」

「偽造で、いや現像の方が正しいかな? 現像を偽造して作ったの はい、王さまの分」

「お、おう ありがと」

仕組みは良く分からないが 取り敢えず受け取って汗を拭く

「ところで、王さまはどんな夢を見てたの?」

「え? うーん・・・・・  何だったかな・・・・・・・?」

良く思い出せ無い 何か、暗いところで誰かが何かしていたような・・・・・

「それで、ロストの方はどんな夢だったんだ?」

「夢を見てた」

「いやそれは知ってるから」

「夢を、見てたの」

その視線はどこか遠くを、此処には無いどこか遠くを見ている様だった

「・・・・・・・ロスト?」

「ん?  あぁ、何でもないよ」

オレの言葉に我に返ったのか、ロストは照れ隠しのような笑みを浮かべる

「・・・そっか」

オレも深くは掘り返さないようにする  と、

ぐぅ~~~

「あ」

そう言ったのはロスト お腹を鳴らしなのもロスト

ソフトに腹パンされたのは絶対に照れ隠しだろう

「そういえば昨日夜食食って無かったしな てか昨日なのか? 今何時なんだ?」

「丁度太陽が昇りだした頃だね」

「へぇ、ロスト、良くわか」

唐突に、ガバッ と振り向くロスト

「? どうした、ロスト?」

暗闇を睨むように見つめるロスト チラリとこちらを見たときはどうして気付かなかったのだと睨むような目線だった

「そりゃ、気付かないでしょ ボクみたいに吸血鬼では無いのですから」

「!? 仁!!」

何!? もう見つかったのか!!

「・・・・・・君にもそんな冗談が言えるんだ」

そうロストが言った途端視界が真っ暗なのに明るくなった

ロストが企業秘密を使ったのだろう

そして見えた光景は沢山と岩々と、苦笑いのロストと、

「何時からそこに居たの? シザース」

無表情のシザースだった

「同胞がお前らを見つけたのが二時間前 俺がここへ着いたのが一時間半前だ」

「割と居たんだな・・・・・」

全く気付かなかった

角度的には思いっきり真正面に居たのに

「・・・・・・・仁はどうしたの?」

油断ならないように辺りを見渡しながら言うロスト

「まだ伝えていない」

「どうゆうこと?」

それはオレも同感だった

普通ならもう仁に伝える、もしくはオレらを捕まえてもいい物なのだが・・・・

「ま、その前に」

と、シザースは背負っていたリュックサック降ろし、ファスナーを開けながら言う

「取り敢えず持ってきた林檎でも食べ」

「ふぉへへ、ふぁんふぇひふぁふかっふぁふぉ?」(それで、何で言わなかったの?)

「早いな」 「早ぇよ」

いつの間にか林檎をロストは持っていた

全く見えないくらいくっそ早かった

シザースにも見えなかったようで、視線をロストとリュックサックを行ったり来たりしていた

「それで、何故仁に言わなかったかだが、」

と、シザースはオレに林檎を投げつけて言う

「特にない」

「無いのかよ・・・・・・・」

林檎を受け取り、皮ごとかぶりつく 

甘い、と言うよりかはほのかに甘苦かった まだ少し青いのだろう

「むぐ、意味の無い行動?」

林檎が苦かったのか、それともシザースの言葉が苦かったのか

「そんなの、シザース(人形)らしくない」

苦笑いを消すためだろうか、再び林檎にかぶりつくロスト

「仁にも似たような事を言われた」

無表情に肩を竦めるシザース

「まぁ、強いて言えばお前らと少し話しがしたくてな 一時間半も待っていたのはお前らがうなされていたから起こすのが憚られてな だからお前らが落ち着いた後に声をかけた」

まぁ、確かに悪夢を見た後に追っ手を見たくはないな

その気遣いには感謝だ

「それで、僕らに話したいことって何?」

クイッ クイッ と、手を動かしながら言うロスト 

もっと林檎をよこせという事だろう

「それは」

と、オレ同様ロストに林檎を投げて言う

「特にある」

「無いのかえあるぐっ!」

無いのかよ と言おうとしたが在った事に驚いて え、在るの!? と、言おうとしたが林檎のキャッチをミスり頭にぶつけたことで謎の呪文のようになってしまった

ナイノカエアルグ

「なんか強そう」

「何がだよ っつつ・・・・・」

頭をさすりながら それでも頭にぶつけても林檎は地面に落とさないようにしていたロストは言う

「で、僕らに話したいことって何?  いや天丼(お笑い用語で『繰り返す』という意味)じゃないよ!!」

「そうか」

もう一度林檎を投げよとしていたシザース それに待ったをかけるロスト

本当に人形劇みたいなことをするな、こいつ

「一つ、お前に伝えたかった事がある」

ロストの代わりにオレに林檎を投げながら言う

「本気でお前を殺そうとしている」

「初めから殺そうとしてただろ」

と、一回深呼吸をして、

「って、言う意味じゃないよな」

昨日のように、楽しくお喋りをする気は無いという事だろう

今度見つけたら本気でロストを殺しにかかる ということだろう

「・・・・・・・・気づいちゃったか」

オレと林檎の間にロストが入り林檎を取って、それからオレの手に林檎を乗せてから、ため息交じりに言う

「気付いたって、どうゆうことだ?」

「そのままの意味だよ  ったく、何でこうも唐突に気付くのかなぁあのゲーム馬鹿は」

と、頭を掻きながらロストは一人呟く

「ま、それならもう選択肢は一択か」

と、ロストは一人歩き出す

「どうする気だ」

その後ろ姿に林檎を投げてシザースは言う

「決まってるだろ」

それを見ずに受け取り、

「仁とのゲーム(戦争)だ」

そして林檎を握りつぶ、そうとしていたが結局諦めて林檎をこちらに投げる

何故こっちに投げたし

そう思いながらも受け取り、林檎を齧る

「・・・・・・・・ん?」

何か変な味がした

齧った後を見てみれば、

「・・・・・・・・・・・・」

林檎の中身は血のように真っ赤で、果汁がまるで鮮血のように滴り落ちていた

「夢が続くか、夢に終わるか 王さま、これから始まるのは少々現実の味がある演劇だよ

その血の味がする林檎みたいに」







「まず一つ聞く」

と、仁はロストに言う

「大人しく元の世界に変える気は?」

「無いね」

ロストは肩を竦めながら言う

此処は仁の館の庭

何で此処に とも思うし、勿論此処だろう とも思う

そんな場所で仁とロストはお互いに見つめあっている

少し遠くに心配そうな顔の刹那、無表情に見えるシザース、館の窓からは沢山の叛軍人形(レギオンドールズ)が顔を出しており、そしてオレはロストの少し後ろに居る

仁とロストの決闘が始まる

何でこんなことに この無益な決闘に歯噛みをせざるを得ない

「そうか、なら」

と、脈拍も無く、唐突に

「なら死ね」

いつの間にか剣を持った仁は()()()()()()()

・・・・・・・・え? 

「させないよ」

カキン、 と言う音が何故か後ろからした

振り返ってみれば仁の剣をロストは黒い刃で受け止めていた

「場所移動、でいいのかな? 君の能力は偽造だったはずなんだけど」

「いや、初めからこの場所に居たよ? 場所移動じゃなくて場所誤認」

「・・・・君は本当に相手をコントロールする戦い方が好きだね」

「そっちこそ 一撃必殺先制攻撃で倒そうとするの止めてくれない?」

前と同じようにつばぜり合いの後お互いに距離を取って言う

「王さまは殺させないよ」

「君が折れてくれたら殺さずに済むんですが」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「って!!」

いやいやいやいやいや!!

「何でオレを殺す殺さないの話しになってるんだ!?」

これはロストと仁の決闘だろ!!

何でオレまで巻き込まれて、てか、オレが中心になってるんだ!?

「あれ、話してないんだ?」

「・・・・・・・どうせ、仁にも同じ話をしないといけないと思ってね」

「・・・・・何の、話しだ」

一体、二人は何の話をしているんだ

「そうですか、ではそうお話しを聞かせて」

その言葉を言い終わるより早く

「貰う気はねぇよ」

仁はロストに切り掛っていた 

仁の剣はもう既にロストの目の前

「ロ    」

ロスト! と、オレが叫ぶよりも早く 仁の剣はロストに届き、そして、

「ま、そうなるよね」

そのままロストをすり抜け、逆にロストの刃が仁を切り裂く

「あらら、先制ダメージはオレが先か ま、予想通りだが」

「うん、予想通り、だね」

肩を切られ、半分右手がずり落ちているのに笑う仁と、仁から流れる血を鬱陶しそうに見つめるロスト

「ところど、その技は?」

「『影師の(シルエット・)奇術(マギア)』 とでも呼ぼうかな? 内容は企業秘密で」

「成る程、自分をを偽造する そこに自分が居ない扱いをする 中々不思議ですね、言葉にすれば成る程と思いますが、それ、実際に実行してみると思うと中々思い浮かべられる技じゃ無いもんだよな?」

「生憎、本を読むのが大好きなので 実際にやってみたいって思って昔からイメトレだけはしてたから」

「殊勝な事で」

「・・・・・・・・・・・」

もう、どこから突っ込めばいいかも分からない

いつの間にか切り口が引っ付いていて楽しそに笑う仁と、全く楽しそうじゃないロスト

「全く・・・・・・」

と、仁がひとしきり笑ったところで、

「楽しくねぇな・・・・・・・・」

唐突に不陰気を変え不機嫌にそう言い放つ仁

「そうだね」

逆に不陰気を変え楽しそう、ではないが、何処か苦笑いを浮かべるロスト

「どうなってんだ・・・・・・・・・・」

もう訳が分からずそう呟いてしまう

さっきから二人は辻褄の合わない行動ばかりをとっている

そんな行動をとる理由など何処にあった?

この二週間で、何が有ったっていうのだ・・・・・!

「・・・・・・・はぁ、無知って本当に素晴らしいですね」

またいつの間にか、目の前で剣を振るう仁とそれを刃で受け止めるロスト

「否定は、しないけど  ねっ!」

そう言いながら仁を吹き飛ばすロスト いや、仁が自ら吹き飛ばされた と言って良いだろうか

それくらい派手に、それでいて特に何ともなく仁は着地する

「このむ     意味な戦いの原因はあなたの願いなのに」

「・・・・・・・・・・は?」

オレが、原因? 

唐突な言葉にオレはたちろぐ

「それよりも、もう言葉隠しはさせねぇからな、ロスト」

「ちっ」

「そ、そんなことより!」

オレはロストに、いや仁に、はたまたどっちもに尋ねる

「オレが原因ってどうゆうことだよ!!」

オレが何時、何処で、何をしたっていうんだ!!

「・・・・してるんだよ 今、此処で、反発を」

そう答えたのは、ロストだった

「え・・・・・・ どう、ゆう・・・・・・?」

「まずおかしいと思いませんか? 刹那、シザース?」

「・・・・・えっ、私たち?」

唐突に仁に名指しされて戸惑う刹那と、

「・・・・・・そうゆう事か」

舌打ちでもしそうな表情を作って吐き捨てるシザース

「お前、俺たちを反発、俺たちを否定してるな」

「は、え、へ? ひ、否定??」

刹那は戸惑ったように言う

「それって、レイが異端の者たちの存在を否定、嫌がってるってこと?」

「そんなこと!」

思わず声を荒げて言う そんなこと思って何かいない!

それだと仁、刹那、シザースにみづな、それにロストまでもが

オレはみんなを嫌っていたって事になる

そんなことは絶対にない!!

「逆だ レイが、ではなく異端の者が、つまりお前らがレイの存在を否定、嫌がってたんだよ」

「あ・・・・・・・・・・・・」

その言葉で何か思い出したように呟く刹那

「えと、どうゆ事だ?」

「・・・・・王さまは何か何時も置いてけぼり、って言うか、何も知らないって感じだね」

困ったようにため息を付いてロストは言う

「ねぇ王さま、ここ(異端郷)での人間のイメージって、どうなってるか知ってる?」

「え? それは別に・・・・・・・ 人間が珍しい それだけだろ?」

あの街には様々な種族が居たんだ、別に珍しいだけで何とも・・・・・・

「ではレイ君、君は色々な国から来た人たちが集まるパーティーに行きました 金髪の子、黒肌の子、青目の子、様々な人間がいます そこに、明らかエイリアンな緑の肌の子が居たら、どう思います?」

「え、いや・・・・・・・・」

特に何も とは言えなかった

その様を想像してみると、妙に何とも言えなかった

だが、そのエイリアンみたいな子と自分が仲良くしてる、と言う場面は想像できなかった、と言うより想像すると何か嫌な感じがした

緑で触覚が生えていて目が大きい子と隣で楽しくお喋りしている自分

何処か、ゾッとするような感覚がある

「お前は此処へ来た当初、そんな目で見られてたんだぞ?」

「え!?本当に!?」

「実際思いっきり敵意向けてただろ」

と言うシザースと

「いや別に「怪しがって刹那はレイを僕の所へよこしました」

思いっきり目を逸らして逃げようとする刹那を逃さない仁

「ま、それくらいみんな王さまを嫌ってたって事   ・・・・・一人を除いて、ね」

つ—— とロストが見ていた先を見れば、少し照れたように笑っている仁が居た

「僕は面白い子だと思いましたよ 特にロスト、君は良いからか、遊び相手でずっと此処に居て欲しいまでありますからね」

「今からかい相手って言おうと」

「言ってませんよ?」

二人は楽しそうだった 実際に笑っているのは仁だけだが、何処か気が合ってい居るような、凸凹コンビのような、そんな感覚

「だったら・・・・・・・」

だから、余計に疑問だった

「だったら何で「まだ分かりませんか?」

オレの言葉を遮って仁は言う

「お前はこれにも反発(否定)してるんだよ 詰まる所」

と、仁はオレに剣先を向けて言い放つ

「オレとロストの仲をお前が引き裂いているんだよ」

「・・・・・・・・え?」

思わずロストを見る そんな訳、無いよな と

しかしロストは

「・・・・・・・・・・・・」

目線を合わせてくれない

「だからさ、」

オレが、オレが無意味に?

「ちょっと死んでてくれない?」

オレが生きてるから・・・・・・?

「・・・・・・だからさぁ」

・・・・・・・何度目の光景だろうか、仁の剣をロストが刃で受け止め

トン

「・・・・・え?」

させなかった

オレはロストの背中を押し、バランスを崩させる

どうしてだろうか、どうしてそんな行動をしたのかは自分にもわからない

「残念ですが、」

どうしてなんだろうか・・・・・・・・・・・

目の前には黒髪の幼女、ロストと、剣先を向ける赤いパーカーを着た少年、仁の姿

どうしてこうなったんだろうな

「まぁ、悪く思って下さい」

仁は剣を振り上げる

・・・・悪く思わないさ

「こんな形で、君を殺すのを」

・・・・・・・・やればいいさ

「邪魔んだろ? オレが」

仁はニコリと笑いそして、仁ははオレに剣を—————————————

「やめろーーーーーーーー!!!!!!!!」





「・・・・・・・・・・やっぱり、解らないな」

一体、どうして

「どうしてそこまでしてそいつを守る」

自分の頬の傷口を確かめながら言う

「なぁ、ロスト、」

オレに無駄な抵抗として頬に負わせたロストを見る

「刹那」

その後オレの剣を日本刀で受け止めた刹那を見る

「何でだろうね」

鉄と鉄が合わさっているのにカチャリという音すらしない 相変わらずの剣捌きだな

「王さま!」

「全く、刹那がオレがゲームをすること以外で反発したのはこれが初めてじゃ無いか?」

「・・・・確かに、そうかもね」

これがこんな状況ではなく、レイの能力によってでは無く、尚且つ真顔では無く苦笑いだったらどれ程良かったことか

「王さま! どうしてこんなことしたの!!」

「・・・・すまない」

「どうして止めた 刹那」

「・・・・・どうしてだろ」

刹那は一瞬怯みカチャリと剣と日本刀の間から音が漏れる しかそ均衡までもは崩れることは無かった

「オレが居なくなれば、この問題が解決するかなって、それで」

「全く!! 自己犠牲じゃこの問題は解決しないんだよ!!」

「でも、レイを殺すなんて間違ってるよ!!」

「知ってますけど?」

刹那は一瞬訳が分からないといった顔をして、それからキッとボクを睨む

「そもそも、僕を守りたいんだったら王さまは死んじゃいけないんだよ!!!」

「分かってるのに・・・・ 解ってるのにそんな事をしてるの!! そんなの、仁らしくない 無意味に誰かを殺すなんて仁らしく無い!!」

「そうですね」

解っている 分かっているが、どうしようもない きっと、そうゆうシナリオなのだろう

誰かが、あの二人を此処へ連れてきた誰かが仕組んだシナリオなのだろう

オレですら抗えない願い、正確に言えば拒否願望か? そんな人間が居たものだな讃頌するぜ

さぞかし元の世界は生きにくかったんだろうな そんな闇、一人で抱え込むなんて相当なものだ

輝きの思い()を知り、闇の思い()を知っているボクが言うんだ

そんな闇を一人で抱え込んで生きていくなんて、中々出来るものではない

「あぁ、」

そうか、もしかしてあの子ら二人の関係性って、同じ闇を抱え込んでいたのかな?

つまるところ、二人とも誰かに虐められて、同じように引きこもってしまって、

あぁ、それなら筋が通るか?

虐めから逃げる為の『偽造』と、虐めから自分を守る為の『反発』、いやそれだと反発である意味は無い

守る為ならば『寄せ付けない』それこそ『城壁(キャメロット)』ではないのか?

そう考えるとロストは城壁で隠れる王、強いて言うなら『偽王』とでもなるのか?

そう考えるとあいつら本当に仲が良いんだな

どっちとも、同じように当ては  ま       る・・・・・・・・・

「ん? 同じように?」

「・・・・・・仁?」

不思議そうな刹那のその奥、

「もう二度とこんな事しないでね!!」

「お、おう・・・・・・・・・・」

少し泣きそうになりながら言うロストと何故か戸惑っているレイ

刹那と話しやら考え事やらで余り聞いていなかったが、確かさっきロストはこんな事を言って無かっただろうか

『そもそも、僕を守りたいんだったら王さまは死んじゃいけないんだよ!!!』

それは、つまり、もしかして・・・・・・・・

「・・・・・・・ロスト」

オレは剣を降ろす 唐突に力を緩めた為刹那がよろめき倒れそうなるが無視

「・・・・・・・・・何?」

こちらのただならぬ気配を感じてなのか、はたまた不意打ちへの対策か、ロストは刃の先をこちらに向けてから言う

「ロスト、もしかしてさ、」

不思議そうにしているレイ見ながら、言ってみる

「レイって、記憶を失くしたんじゃなくて、初めから無いのか?」

その言葉に余計に不思議そうにしているレイを見た後、ロストを見る

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

何も言えないのか、ロストは驚いた表情のまま固まっている

「やっぱり」

成る程そうゆう事か 通りでレイを守るのか、そして何故レイ一人だけ元の世界へ帰すということをしないのか、いや出来ないのか

「ロスト、()()()()()()()

黒い幼女、いや、

「今度は、正しいよ 全く、君が言った通り本当の願いってのは本人にも分からないもだね」

黒い幼女の姿をした少年は、あえてだろうか、無垢な幼女のような笑みを浮かべて言った






「どう、ゆう・・・・・?」

「そのまんまの意味だよ」

笑いながら言うのは、バレたならもうどうにでもなれ、とか思っているからだろうか

「僕は君なの」

「・・・・オレの、別の人格って事か?」

「う、うーん、まぁ間違っては居ないんだけど・・・・・・」

腕を組んで悩むロスト

「正確には君が僕の別人格になるのかな? あー、ホントややこしいな・・・・・・」

「なら、ボクが説明「お前は説明ヘタクソだからしなくていい」酷すぎない!?」

・・・・・・いつの間にか,また仲良しに戻ってんな

「あー、いいかい?」

と、ロストはそう切り出し説明に入る

「まず、王さまの記憶が無い事からの説明でいいかな? 王さまがあっちの世界の記憶が無い理由、これは記憶喪失とか、記憶を奪われたとか、そんなんじゃ無いの 思い出せ無いのは、忘れたからとかじゃなくて、元々無いの」

「元々、無い・・・・・?」

「うんそう、元々無いの たぶん」

「いや多分って」

「いやだって別に王さまが何を覚えているか知らないし 実際パソコンとかそうゆうのは覚えてた、と言うか知ってたじゃん」

そういえばそうだ 記憶が無いなら普通そんなことも覚えてないはずだ 全く気付かなかった

「まぁ、簡単に言えば王さまは生まれたてホヤホヤ、異端郷に入って初めて自我を持ったから元の世界の記憶が無いの」

「あ、本体そっちなんですか?」

と、ロストを指差す仁

「いや、本体はこっち」

と、オレを指差すロスト

「え?どゆこと?」

・・・・・・・何の話をしてるんだ?

「ロストが本当のレイじゃ無いのですか?」

「うん、本当のレイだよ      多分」

「いや多分って」

これ言うの二度目だぞ

「そんなこと言われても、これマジで訳が分からなくなってんだよ?」

いいかい? と、人差し指を立ててロストは説明する

「まず、人格的には僕が本物だ 実際あっちの世界の記憶もある」

「うん」

「でも、肉体的、つまり身体、本体は王さまなんだ」

「うん?」

「つまり、王さまは見た目は本物だけど中身は偽、 この言い方は何かヤだな・・・・ 別物なんだ

それに対し僕は見た目は偽物だけど、中身は本物ってことなの」

「えーっと・・・・・・ つまり・・・・・?」

う、うん? 何かこんがらがってきたぞ?

「つまりレイは本物の偽物で、ロストは偽物の本物って事です」

「いや、余計に分からないんだけど」

「まぁ『後ろの正面はどっちだ?』と言うような話しですからね」

と、仁は肩を竦めて言う

「もっと具体的な例を出すと、 レイは記憶を失った少年、失う前をM君でしたが、失った後はL君として過ごしました といった感じで、 ロストは(ターンエー)君がふとした時に記憶が戻りM君に戻った、 といった感じですかね」

「いや∀君って誰だよ! しかもM君は元L君じゃなかったのかよ!」

「そう、肝心なのはそこなんです」

と、仁はため息を付いていう

「レイはロストでロストはレイ、こういえば何となく理屈に沿ってるみたいですが一つおかしい事が一つ」

と、ロストを見て仁は言う

「その身体はどっから出てきた」

と、まじまじとロストの体を見つめる仁

「や、恥ずかしい////」

「殺そうか?」

わざと顔を赤らめてもじもじとするロスト そして真顔で殺す宣言をする仁

「・・・・・・お前ら、さっきまで殺しあってたんだよな?」

唐突に仲が良くなったな・・・・

「それも逆 仲がよかっ・・・・・・・・」

「? どうした?」

「な、何でもない!!」

何故かほんのり顔が赤い  あ、これもさっきのように演技か

「・・・・・・ふふっ(ニヤニヤ)」

「なんですか刹那殿?」

「いや? 別に?」

鬱陶しそうな顔の仁とニヤニヤ顔の刹那

「ま、ま、とにかく!!!」

何かをはぐらかすかのようにわざと声を上げてロストは言う

一体何をはぐらかしたかったのだろうか?

「この体の事なんだけど、この体は・・・・・・」

「体は・・・・・・・・・・」

胸を張るようにして、堂々とロストは言う

「分かんない!」

「「「「「分かんないんかい」」」」」

オレと仁と刹那とシザースとロストは同じ言葉を口にする

「いやロストは混ざるな!」

これ、シリアスな場面だろ!? なんかコントじみてきたんだが!!

「まぁ、冗談はさておき 本当に分かんないんだよ」

ロストはため息を付いていう

「そもそも、はじめてここ(異端郷)に来た時はこんな幼女? なんだよね? 吸血鬼だから鏡に映らないから姿分からないんだけど」

「それ、エセ設定ではなかったのですか?」

「カッコつけのはずだったんだけどね まとにかく幼女じゃなくて何か手がクロー状な上に喋れない謎の生物だったからね」

ん? 手がクロー状?

「それって・・・・・・」

「あの最初レイを見つけた時に攻撃しようとして、それを切った奴?」

「そう、君に切られた奴」

少し睨むようにしてロストは刹那に言う

「本当にびっくりしたんだからあれ・・・・・・ 急に自分の姿が変わった上におまけに目の前に自分が、王さまが目の前にいてさぁ、その上急に後ろから切られたんだよ? 「あ、死んだなこれ」 ってガチで思ったよ・・・・・」

「そ、そう・・・・・  なんか、ごめん」

「ホント、災難だったよ・・・・・・・」

そんな災難話しはさておき、

「それだと、余計にその身体の意味が分からないんだけど」

結局何がどうでどうなってそうなったのだ?

「あ、これ多分ね 虐めが起きた原因になった子なんじゃない?」

「え・・・・・・?」

「あ・・・・・・・」

思わず言ってしまった、と言うような顔をして顔を背けてしまうロスト

「・・・・・・・ふーん、成程ね」

逆に謎が解けたというような顔をする仁

「あの時の、クロウに異常発生の時に変なようになってたのはそれが理由?」

「ん? 何が有ったの?」

「過呼吸に陥った」

刹那の質問に簡単に、本当に簡単に説明するシザース

「いや、あれは・・・・・・」

あれはオレに騙しているということが醜いって思っ・・・・・

「オレを騙す?」

思わず声に出してそう言ってしまった

もしかして、

「・・・・・・仁の言った通りさ、」

「ん?」

「仁の言った通り、解らないものだね 自分の本当の願いって」

一度深呼吸をして、ロストは続ける

「僕はね、こんな感じに、王さまと僕と分断されている理由ってこうだと思っているんだ 

僕は本当はその騙していた子を憎んでいた だからやり返したかった、同じ方法で、同じようにやり返してやりたかった そう心の中で願ってたんだと思う」

「ロスト・・・・・」

「だからね、僕はこう考えてるんだ」

何とも言えぬ表情でオレを見つめてロストは言う

「そんな僕を嫌って僕を自分から追い出したんだって」

「・・・・・・・・そのための、反発、か?」

周りから自分を守るため、周りを遠ざける為では無くて、自分で自分を遠ざける為

つまりオレは

自分(レイ)自分(ロスト)を否定している、と?」

「僕はそう考えてるよ だから、自分(ロスト)自分(ロスト)を否定する」

と、仁の方に再び黒い刃を向けて言う

「王さまは殺させない、そして帰らせもしない 王さまはここで僕には出来なかった、理想のレイ()になってもらうんだ ここで、肯定出来る自分になってもらうんだ!!」

「・・・・・・なんですかそれは」

仁は笑う 笑っている 嘲笑っている それでいて呆れていて、 

「自分が出来なかったことを他人に押し付ける ハッ!人間らしな!!」

軽蔑している 仁も再び剣を構える

「自分に自分の理想を押し付けて何が悪い」

「それが人間らしいんだよ」

ゴウッ と大きな音を立てて仁の周りに炎が燃え上がる

「自分を他人と思う 自分を、自分の命を軽々しく見ている  結局、お前もただの人間なんだな」

もう容赦はしねぇぞ、 と仁は言い放つ

「だってそうでしょ?」

    と何の音も無くロストの周りに影鳥が浮かび上がる

「命ってのは、重いモノってのは、重ければ重い程軽くなるんだよ 例えば持てないほど重い鉄鋼をクレーンで運ぶように 自分じゃできない殺し(自殺)をかわりにやってもらう(手をかけてもらう)ように」

「自分じゃ出来ない事を他人にやらせる それが一番重たい物を軽々しく持つ方法、か

はは、何か無名の兄妹たちが言いそうじゃない?」

「さぁ、どうなんだろうね?」

お互いに微笑みあう 笑いあう  実に楽しそうな光景

しかし、その光景が引き金となり、

「—————————————」

「—————————————」

片や爆炎を上げる光景、片や何も上がらない光景

無意味で、無意義で、

そんな必要のない戦いが再び始まった





「やっぱり剣術とか戦闘術とかそんなのはほぼ皆無みたいですね」

「ぐっ・・・・・・・・!」

剣と刃の衝突に耐え切れずロストの体が吹き飛ぶ

だが何とか危うく着地し、

「うらぁぁーーーーーー!!」

そんな掛け声と共に無謀にも真正面から仁に突っ込む

それに対し仁も真正面に突っ込む

「そんな無謀な攻撃など通用、」

と、クルリと回転し、何時に間にか背後に居た影鳥を薙ぎ払い、

「しませ・・・・」

「するんだよ! 命在る(ホログラフィック・)ライフプランツ(影動植物)!」

唐突に仁の足元からツタのような黒い植物が蠢き絡みつく

「な・・・・・・っ!」

「策ってのは二重にするのが基本でしょ!」

そして動けなくなった仁にロストの刃が、

「無駄だぜ」

仁の体が発火し植物を焼け去り自由になり、ロストの刃を受け止める

「策を力でねじ伏せるのは、強者の基本でしょ?」

「この・・・・・・、インチキ野郎が・・・・・!」

そう吐き捨てて今度はさっきとは逆にわざと力を弱めて飛ばされる事で距離を取るロスト

 この二人・・・・・・

「一体何やってんだよ・・・・・・・・・・っ!」

何でこの二人が殺しあってるんだ! どうしてこんな無意味な事をしてるんだ!

どうして・・・・・・・っ!

「それは君が原因だからだろ」

「分かってるよ!」

オレの能力のせいでこうなってるんだろ!

「でもどうすればいいんだよ! オレが死ねばいいのか!?」

「・・・・・・・君、かなり勘違いしてるね

はぁ、全く 本当はワタシは出しゃばる真似何てしたくなかったんだけど、これじゃバットエンドになりそうだからね」

「バット、エンド・・・・・・・?」

「そう、バットエンド ロストは仁に殺され、その後君も殺され、そしてこの世界に迷い込む人間は二度と現れず、いつまでも何もない平和でありました めでたしめでたし  じゃぁ困るんだよ

物語はハッピーエンドに とは言わないけど、せめてフェイク・(幸せそうに見える)エンド(終わり)じゃなきゃ、続かないでしょ」

「フェイク、エンド・・・・・?」

「そ 良くあるでしょ? これで終わりと見せかけて何故かまだまだ続く物語 これで終われば幸せのまま終われるのに終わらせない物語 まぁ、どの作品かは言わないけど 著作権に引っかかってもいけないし」

「はぁ・・・・・・・・・・」

「それよりも君キミ、早く動いてくれないかな」

「動く?」

「・・・・・やっぱり 君、あれを止める気全然ないね」

「・・・・・・・・・・・止めたいさ あんな殺し合いは止めさせたい あんな無意味なことは止めさせたい」

「別に無意味ではないよ ただ間違ってる、と言うかただあの子、ロストが知らなかっただけで」

「知らない? 何を?」

「それは自分で気づくべきだ ロストか、もしくは君が」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「いや、訂正するよ 君が気付かなければいけない 君が気付いて動かなければいけない

て言うか、何時まで蚊帳の外に居る気なの? この戦いは君の目の前で、君が原因で起きてるんだよ」

「・・・・・なら、あの蚊帳に入れと? あの殺し合いに混ざれと?」

「いや違う 

はぁ、しょうがないな 特別に二つだけヒントをあげるよ

一つ、君はロストでロストは君 なら必然的に君のすべき事は決まってるんじゃない?」

「・・・・・・・・・・・・」

「二つ、鳥籠の中に居る鳥は鳥かごの外の世界をどう見てるのだろうか?」

「鳥籠の、外・・・・・・?」

「どう? 判ってくれた?  

って、言いたいけど・・・・・ 判らないよね それはも仕方が無いのかな

だって君、自分で行動するってことをしないんだから 他人に流されてばかりなんだから

他人の顔色を窺ってばかり 他の人を頼ってばかり」

「そんなこと!」

「そんなこと無い? なら、今の現状はどうなんだい? 今はあの二人の顔を窺ってばかりじゃ無いか

ロストに任せっきりじゃないか 自分の命を、預けたっきりじゃ無いか」

「それ、は・・・・・・・・・」

ふと、ロストを見る

今も懸命に、自分のため、オレのために命を賭して戦っている

自分(二人)の命を賭して、戦っている

「・・・・・・・・あれは、」

「ん?」

「あれは、オレの手で、止めれる戦いなのか?」

「・・・・・・・・・ふふ、 ふふ!

ようやくその気になってくれた? そうさ、これは君の手でしか止められない

じゃ、やっとやる気になった君に大特別ヒントだ!

『城壁は何の為にある?』」

城壁は、何のため、に?

「じゃ、後は頑張ってね 期待してるよ、城壁(キャメロット)君」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



文字数が限界まで達したのでその二へ続く

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