タイムスリップ
朝日がカーテンの隙間から部屋に差し込み、小鳥のさえずりで僕らは目覚めた。
僕たちはすぐに出かける準備に取り掛かった。
現代にあるものが過去のものに劣ると言うのだから準備をしてもあまり意味はないのだが。
何もしないで時が経つのを待つのはなんとも不安でいっぱいにさせるのだから、しょうがないだろう。
ものが劣るといっても食べ物は必要になるはずだ。
水と携行食品は持っていくことにしよう。
色々とカバンに詰め込んでいく。
しばらく開けていなかったタンスをがさごそと漁った。
奥の方に古びた本があった。
見覚えのある本だった。
—著クラウディア=フィネガンス『セカイ』
中にはアトランティスについて書いてあった。
—昨日思い出しかけた本はこれだったのか
『アトランティス』について書いてある。何かの役に立つと思うのでカバンに詰め込んだ。
—こんなもんでいいよな。
アリエルの準備が整ったら出発だ。
今だに昨日のことを信じることはできなかった。
しかし、もうすぐ出発なのだ。
行くことができれば、現実と受け止めてやっていくしかないだろう。
アリエルの準備ができたらしい。
—行くか…
僕は腹をくくりアリエルの元に駆け寄った。
――――――――――――――
アリエルの荷物は少ない。
どうやらシャワーを浴びただけらしい。
髪が湿っていて頰は紅くほんのり染まっている。なんとも艶めかしい。
「準備はいいかい少年。」
言うことは決まっている
「ああ、行こう」
「では行こうではないか!」
—そういえばどうやって行くんだ?確かペンダントが必要なんだよな…
「あの、どうやって行くんですか」
「そういえば説明していなかったな。説明するよりやった方が早い。こっちに来てくれ。」
手招きをされたので近寄る。
ペンダントのチェーンは思ったより長く僕とアリエルを一周した。
—ち、近すぎる!
健全な高校生にはなんとも耐えられない状況であった。
シャンプーのいい香りが鼻につき、アリエルの胸が当たっている。
アリエルはさして気にしていなかった。
アリエルはペンダントを操作する。
「座標軸はここで、時間軸は、うーんと、まぁ、こんくらいでいいよね。では行くぞっ!」
彼女はボンタンを押す。
光粒が周りに漂いだしそれらはあっという間に数を増し、次第に僕らを包み込んだ。
周りの風景が変わっているのが垣間見える。
僕たちだけが時間に取り残されているような感じだった。
不安になりアリエルの手を握る。
ギュッと握りかえしてくれた。
アリエルの隣は妙に落ち着く。
安心させてくれる。
次第に視界がぼやけてきた。
彼女が慌てているのが見える。
そして、意識が飛んだ。