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3話 西の森

まずデンが穴から顔を出す。周りはやわらかい苔の生えた地面だった。

「敵のいる気配はありません。私が先に出て、姫君を引き上げましょう」

「お願いね」

手にしていた槍を最初に穴の外に置き、デンは腕の力だけで体を上に持ち上げた。どうも明るいと思ったら、木が生えていない草地に出口はあったようだ。銀色の半月が南の空高くに上っていて、ここだけは光が届いている。

真冬を過ぎたとはいえ、空気は冷たかった。澄んだ月の光が肌に突き刺さる冷気に変わっているかのようだ。二人を囲んでいる黒々とした木の陰は気味の悪さを通り越して美しくも思えた。

ワマウを引き上げるときに地面をよく見ると、いくつかの足跡に混じって小さな靴の跡を見つけた。

「姫君、お喜びください。ラクラス王子もここに無事にたどり着かれたようです」

「本当ね、よかった」

小さな足跡を指し示すと、ワマウは安堵したように息を吐いた。

「隠し通路は西の森に繋がっていたのですね。出口がここで良かった。あまり深いところですと我々も迷ってしまいますからね」

西の森はカンザ王国の三分の一を占める広大な森であり、王城の西側を守る壁の役割を果たしている。森に慣れた者でも、奥に踏み入ることは決してないという。

月の位置を確認してデンは歩き出した。王城の北側には山脈があり、山伝いにイファーラの街に出られる。人の多い街に出れば追っ手の目をくらませやすくなるだろう。夜明けが近かったが、足跡を辿られないようにデンは余計な時間をかけて山に向かった。霜が降りた地面は、靴越しにも寒さが伝わってきた。

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