幻日
白い空をオレンジが押し上げていく
薄く濁った でも透きとおった白に
重たいオレンジをトプンと落としたみたい
何もかもが死んでしまったような静寂
下のほうから徐々に広がっていく
朱に染まっていく頬っぺたみたい
木々が揺れた
鳥が鳴いた
だんご虫が地面を這っていた
痛いくらいのオレンジが瞳を刺した
光が屈折するから 楕円だ
でも、昇ってしまえば丸になるまで
刹那だ
深緑の葉っぱの裏側が
オレンジに染まりはじめた
枝葉の隙間が きらきらと輝く
風が吹くたび
自分の体が小さく揺れるたび
死んでた家々が命をとり戻す
丸いオレンジの太陽を
一斉に見ていた
どんなに壊れていても
自分の世界が
どんなに壊れていても
街は死なない
土も家も木々も鳥も
太陽を見つめて蘇る
どこかで馬がいなないた