本質と覚悟
相変わらずギリギリまでかかってしまいました。
前回の直しも終わってないし……そのうちやります。
次回からはきっと戦闘回になりますよ~
――――ひさめと言う少女を気にかけて欲しい
濡れ羽色の前髪で表情を隠す少女を再び前にしてその言葉を隼翔は思い出した。
だからこそ、か。他人の名前を基本的に覚えない男にも関わらず、彼女のフルネームをしっかり覚えていたし、その特有の幽霊のような見た目も記憶にしっかりと刻み込まれていた。
ただ、隼翔としてはそう思い込んでいるだけであり、実際は別の理由もあって彼女のことを覚えているのだが、今の彼にそれを気が付けるほど経験が無い。
ソレはともかくとして、名前を普通に呼んだのだが、そこでふと隼翔はなぜ少女がここにいるのか疑問に思った。
「……ん?なんでハヤトが名前知ってんだ?知り合いか?」
「ああ、以前地下迷宮で死にかけていたから助けたんだよ、なぁ?」
隼翔が疑問を口にする前に、クロードが別の疑問を口にする。なぜ隼翔がひさめの名前をしっかり覚えているのか、と。
それに対して隼翔はと言えばあっけらかんとした感じで助けたとひさめに同意を求めるように言い放つ。
「……随分と軽い言い草だな。しかも命を助けたっていうのに」
「んーまあ、あの時は階層門番と戦った後だったからな。それと比較すると大したことが無かったことは否めないな」
呆れたように呟くクロードに、隼翔は軽く肩を竦めて見せる。
他の面々もクロードと似たような反応を示しているが、一人だけ隼翔の言葉に驚いたように口を半開きにしてる。
「えっ……階層門番を?……ですが討伐隊情報など最近聞いた記憶など無いのですが……」
きっと何年経ったとしても、ひさめはあの時の光景は覚えているだろう。
血生臭さも、地面の硬さも、全身で感じた絶望も。
そしてその世界で差し伸ばされた手の温もりとその人の身形を。
だからこそ、ひさめは驚きを禁じ得ない。
あの時隼翔は一人だった。しかも身に纏うモノこそ高そうには見えなかったが、汚れの類は一切と言うほど見当たらなかった。
しかも討伐隊を組んだという報告は聞いていない。
そこから推測される結論は最終的に一つの非常識へと帰結する。つまり――――。
「あの方は……一人で階層門番を倒したってこと、です……か?」
「あー、まあー、なんだ。考えるだけ無駄だぞ?」
「それこそ随分と失礼な言い草じゃないか?」
最初の関門とは言え、階層門番をたった一人で倒したという結論にあり得ないとばかりに呟くひさめだが、クロードや他の面々がかつてないほど苦い表情を浮かべながら考えるなと諭す。
もちろん隼翔はその対応に異を唱えるが、クロードやアイリスだけでなくフィオナとフィオネですらそっと視線を逸らす。
「……色々と物申したいが、とりあえずソレは置いておくとしよう。ところでなんで彼女がいるんだ?」
視線の端にはテーブルの上で鍋から白煙とともにボルシチに似た香草とトマトの香りが空腹の隼翔の鼻腔を擽り、少しでも早く空腹を満たしたい隼翔は仕方なしに折れて、ひさめがここにいる理由を尋ねる。
「そういえばその話だったな……なんでも彼女はお前に要件があるそうだぞ?」
「俺に?……わざわざ礼に来たってわけでもないんだろ?一体全体何の用だ?」
首を傾げつつ、ひさめに視線を向ける隼翔。
決してその視線は怖いモノではないが、どうにも隼翔へのあこがれ意識ともう一つの別の感情が、ひさめの心を高鳴らせビクッと身体を固まらせる。
「なんでも刀に興味があるみたいだぞ」
「そ、そうなんですっ!是非とも、その、刀という武器を使ってみたいのですが……」
「ふーん……。まあ、その話は後にしよう。せっかく作ってくれた飯も冷めてしまうからな。お前も食べるだろ?」
クロードの説明に続くようにして、必死に声を張り上げるひさめ。
その姿はまるで何かを追いすがっている、あるいは求めるような力強さがある。果たして彼女は刀と言うこの世界では異形の武器に何を求めているのか、隼翔はそこに興味をそそられた。
それが何なのかを見極めるように少しの間ひさめを眺め、すぐさま視線を逸らすと定位置であるいつもの席に静かに座る。
「え、あの、その……」
「ん?テーブルにもしっかり6人分用意されているからてっきり食べるのかと思ったんだが、違ったのか?」
それならひさめを待たせるのも少しばかり忍びないので、他の面々には食事を先に取ってもらい、自分だけ彼女と話を付けようと席を立ちかける隼翔だが、姉妹がそれに待ったをかける。
「いえ、しっかりひさめちゃんの分も用意してありますので問題ありませんよ」
「そうだよ。だからひさめちゃんも席に座ってよ!」
「えっ、え……!?」
困惑するひさめの背中を姉妹が優しく押しながら、空いている席へと誘導し、笑みを浮かべながら問答無用とばかりに座らせる。
クロードとアイリスもそれには異を唱えず、定位置へと座り、食事の時を待つ。
隼翔の左右には相変わらず姉妹が陣取り、対面にはクロードとアイリス。そして今日は暫定的にアイリスの隣にひさめが座す。
「さて、それじゃあ食べるか。頂きます」
「「「「頂きますっ」」」」
取り分けられた煮込みにはゴロゴロと肉と野菜が入っており豊かな香味が漂わせ、バケットに山盛りに乗ったパンはこんがりとしながらも中身は全てを白くて雲のようにふわふわ。
それらが目の前に並んでいるだけでもひさめにとっては未体験なのだが、極めつけは隼翔の一言に追従するようにクロード、アイリス、フィオナにフィオネと、皆が祈るように両手を合わせ軽く頭を下げる異様な光景に、目に見えて狼狽してしまう。
「えっ?えっ?一体何の儀式……ですか?」
ひさめは自分も真似るべきかと悩みながら、果たしてその動きを真似るだけで本当に良いのかと葛藤してしまう。
相変わらず律儀で、かつどこか臆病な性格のため苦労が絶えないその姿こそ、彼女の迫害された歴史を物語っている。
「別にわざわざ真似る必要ない。俺の習慣に律儀に皆が付き合ってるだけだからな」
食事の前に互いの頑張りを称えたり、労ったりするという意味で乾杯をする習慣はあれど、この世界には食事の前に祈りを捧げるという文化は生憎とない。
それでも隼翔はどうにも変な部分に癖が染み付いているのか、食事の前には必ず両手を合わせてまで祈りを捧げている。だからと言って何かを信仰しているわけではなく、本当にただの癖。あるいは前世において時には夜食などを作ってくれた母に対する感謝の気持ちが未だにその動作に現れているのかもしれない。
どちらにせよ、この世界には無い文化だけにどうすればいいか迷うひさめに隼翔は真似する必要は一切ないと告げる。他の面々にしても隼翔が強制したという訳ではなく、どちらかと言えば隼翔がやっているからあるいは食事に感謝をするという意味を知ったうえで必要だと感じたからこそ真似ている。
「え、えーっと……頂きます」
真似する必要はないと言われても、どうしても真似てしまうのがひさめと言う少女だろう。
ぎこちなさはあるモノの、風貌が日本人とよく似ているせいか両手を合わせて食事に感謝を示すその姿はかなり様になっている。
それ故に隼翔も何も言わず、ただ苦笑いを浮かべるだけ。もちろん緊張しているひさめがその視線に気が付くことは無く、キョロキョロと豪勢な食事に視線を躍らせ、何を食べようか迷う。
「…………」
テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々に圧倒され、見ているだけでも幸福感を得ていたひさめが迷った末に最初に手を伸ばしたのは取り分けられた煮込み。
なぜかびくびくとしながらスプーンに手を伸ばし、掬う。小さなスプーンの上には様々な野菜と肉が申し分ないほど乗っている。正直ひさめが今まで見た事が無い光景と言えよう。
その多幸感あふれる光景をしっかりと目に焼き付けながら、ゆっくりと口に運ぶ。
「っ!?」
一口食べただけでひさめは目を見開くと同時に理解した。かなり高級な食材とふんだんに調味料が使われているということを。
ひさめは基本的に日々の料理を担当してるだけあって、その腕前はかなりのもの。だがパーティの稼ぎも多くは無く、生活に余裕があるわけではない彼女たちにとって食費を削るためになるべく安い食材と最低限の調味料しか使用しないために食事としては美味しいモノの、良く言えば身体に優しい味、直球に表現するなら薄味が当たり前。
――――ここまで味がしっかりと付いた食事は久々で、美味しすぎて舌が麻痺してしまいそう
それがひさめの正直な感想だった。
スプーンを咥えたまま茫然と固まってしまう。それほどの衝撃がひさめを襲う。
「え、えっと……ひさめちゃん。もしかして私の作った料理は口に合わなかったかしら?」
「……はっ!?い、いえっ、決してそんなことはありません。とてもおいしいですっ」
隣で黙り込んでしまったひさめに、アイリスは炭鉱族の味付けが気に入らなかったのかと心配そうに尋ねるが、ひさめはそんなことはないと精一杯、それこそ首がもげるのではと思うほどかぶりを振っておいしさを表現する。
そんな普段とは緒ったばかし違い、騒がしさある食卓。だが隼翔は決して嫌そうな表情を浮かべることなく、楽し気に食事を楽しむのだった。
普段とは一味違った楽し気な食事も終わり、隼翔は現在私室の3人は座れるほど大きい黒革のシックなソファーに深めに腰を掛けている。
このソファーは隼翔が選んで買ったものではなく、屋敷を購入の際に商人であるノマルが厳選して設置してくれたものである。
そのおかげか、身体を包み込むように柔らかく、革のひんやりとした感触が今の時期には心地よい。
「別にそんなに警戒しなくても、俺はお前を捕って食ったりはしないんだが?」
「い、いえっ!決してそんなつもりではない、のですが……」
対面で同じ型のソファーに浅く腰を掛け、キョロキョロと部屋を見渡すひさめに隼翔は苦笑い気味に問いかける。
先ほどまでいた食事場とは違い、隼翔の部屋には基本的にほとんどモノがなく、それこそ目立つモノと言えば何人で寝れるのだろうと思わせるほど巨大なキングベッドくらいだろうか。
そのような部屋で憧れとほかの感情を抱く人物を前に一対一になってしまえば、ひさめの乏しい対人スキルは簡単にキャパシティーをカンストしてしまう。その結果として、まるで身構えているかのように周囲からは見えてしまう。
「そんなに緊張するならフィオナとフィオネに同席してもらうか?」
足の短いテーブルに置かれたブラックコーヒーに手を伸ばしながら、提案する隼翔。
実は先ほどまでは姉妹はこの部屋で二人のために給仕をしていてくれたのだが、ひさめの話を聞くにあたり隼翔はわざわざ姉妹に席を外してもらっていたのである。
その理由として、ほかに誰もいない方がひさめとしても本心を口にできるのではないかと言う隼翔の珍しい気遣いなのだが、今回はそれが裏目に出ているようにも感じられ、内心で珍しいことはすべきではないなと呟く隼翔。
「いえ、このままで大丈夫です……ので少しだけお時間を下さい」
力強くかぶりを振りつつ、ちょっとだけ勇気出し、落ち着くために深呼吸を繰り返すひさめ。
それならばと隼翔もそれ以上は口を出さず、優雅に食後の珈琲を楽しむ。
何度も繰り返吐き出しては空気を吸い込む呼吸音が静かに響く。それは決して耳障りには感じず、なぜか少しばかり背徳的なBGMに感じられるのだが、隼翔に気にした様子は見られない。
果たしてそのBGMはどれくらいの間奏でられていたのだろうか。すっかり隼翔のカップの中は空になり、口の中にあった苦みと酸味の余韻は薄れ始めている。
「お待たせしました……」
「そうか、それじゃあさっそく尋ねようか。どうして異形の武器である刀に興味を持ったのかを」
ようやく口を開き落ち着きを見せたひさめに、隼翔は待ったとは言わずさっそくとばかりに本題に切り込む。
「実は自分は戦うということがあまり好きではないのです……。ですがこのような風体ですし、何よりも故郷の状況が芳しくないので、冒険者になるしかなかったのです」
ポツポツと語り始めるひさめ。
詳しくは自身の過去に触れないものの、今までになくしっかりとした口調で話すその姿はどれだけ彼女が真摯に思っているかを物語っている。だからこそ隼翔も決して口出しはせず、黙ってひさめを見つめ聞き手に徹する。
「故郷のため、そしてこんな自分でも人の役に立てるならと冒険者になったのは言いのですが……お恥ずかしながら未だに戦いに忌避感が拭えないのです。だからこそ、剣や槍と言った武器にも正直言い感情を抱けずにいました……」
隼翔は決して人斬り出会った過去を悔いてはいないし、恥じてもいない。だがそこに誇りは決してなく、ただあの人のために命を奪い続けた。それが当たり前で、誰かを殺すことに今では忌避感など抱く気にもならない。
だが目の前の少女は違う。確かに隼翔と同様に誰かのために戦っているが、人どころか異種である魔物の命を奪うことにすら罪過を感じてる。その慈しみの心はとても美しく、同時に冒険者には向かない命取りの甘さでもある。
果たして少女の葛藤はどれほどのものなのか、そしてなぜその優しい少女が人を殺すことにのみ特化した刀と言う武器に見せられたのか隼翔はより興味をそそられた。
「そんな折、先日……そ、そのあ、貴方様に助けて頂いたのですが……初めて戦っている姿、そしてその刀と言う武器が美しいと思えたのです……」
厳かな雰囲気から一転して、長い前髪の下で顔をカーッと真っ赤に染め上げるひさめ。それは果たして本音を口にしたせいか、あるいは隼翔のことを名前ではないとはいえ口にしたせいか。
隼翔としてもなぜ顔を赤らめたのか、大いに気にはなったのだが、それを指摘するとおそらく話が脱線してしまうと予感し、口にはせず大様に頷いて見せた。
「なるほどな。俺が刀を振るう姿はともかくとして、確かにコレは美術品としても好まれていたから美しいと思うのは俺も同意する。だが、刀は美しいだけじゃない。それ以上に命を、ひいては人を殺すことに特化した武器だ。扱いにしても直剣などとはまるで異なる。それを踏まえた上で問おう……お前に刀を持つ覚悟はあるか?」
前髪の間から覗く、漆黒の瞳をジッと見据える隼翔。
扱いに熟達してしまえば今まで以上に容易に命を奪ってしまうんだぞ、と言外に瞳に問いかける。
ひさめはその視線の力強さに一瞬気負したように、目を逸らそうとしたが、自分の覚悟はそのようなものではないと言いたげにグッと堪え、気持ちを口にした。
「じ、自分は確かに刀の扱いを知りません。だからどれほど命を奪うことに特化してるか分かりませんし、そもそも扱えるかもわかりません。ですが、逆に言えばしっかりと扱えるようになれば……え、っと、その人の命を奪わなくても大丈夫なのではないでしょうか……奪うだけじゃなく、護ることも可能なのではない、でしょうか……」
ひさめは要するに、扱いに長ければ長けるほどに命を奪わずに済む術があるのではないかと、武器の、ひいては刀の本質を否定してる。
武器とは命を容易に奪うための道具であり、それを扱う剣術などの技は効率的に命を奪う術である。それはどんなお題名目を並べても覆すことは出来ない本質。
それは隼翔の中では当たり前で、変わることはなく変えることのできない定理。
それなのにひさめが口にしたのは真っ向から否定する言葉。隼翔の双天開来流を殺人剣と称するなら、ひさめの口にした剣術は人を活かす剣――――活人剣とでもいうべきか。
相手を殺さず、自分もそして誰かも護る――――それはどれほど険しく、難しいことなのか。人斬りとして生きた隼翔にはそれが嫌と言うほど理解できているが、果たして目の前の少女にそれが理解できてりうのかと問いたくなった隼翔だが、そこでようやくひさめの瞳に宿っていた力強さが何なのかを理解した。
「……くっ、ははははっ。なるほどな、ようやくわかったよ。"菊理ひさめ"と言う人間の本質が」
何を思ったのか、突如として愉快そうに笑い声をあげる隼翔。急な出来事にひさめは面を喰らったように目を丸くするが、それに気が付かないほど隼翔は気分が良さそうである。
「え、ええっと、……何かおかしなことを言ってしまったでしょうか?」
「ああ、かつてないほど可笑しなことを聞いた。こんなに愉快なのは久方ぶりだよ」
おずおずと尋ねるひさめに、隼翔は未だに笑いが収まらず小さく息を荒げる。
何かを成し遂げるためには命を奪うしかないと思っていた。誰かに褒めてもらうためには殺すのは当たり前だった。刀を握った以上、誰かを護るためには相手を殺すしかないと思っていた。
そのために自分だけの、相手を確実に殺すための剣術を造り・極め、それ以外にも多くの武術を収めた。
それなのに、目の前の少女は隼翔のこれまでの人生を真っ向から否定した。新しい誰も殺さない道を提示して見せた。もちろんそれが実現できるかは別の話なのは間違いないし、隼翔にはもう決して歩むことは出来ない道であることには違いない。何せ、彼の辿ってきた道には多くの屍と血の海が広がり、この先もそれが広がっているのだから。
だからこそ、ひさめの口にした道の先に果たしてどんな光景が広がってるのか、あるいは広がるのか気になるところであり、見てみたいと感じる。
「ふぅ……すまんな。どうにもこんなに否定されたのは久々で笑いが止まらなかった」
「いえ、むしろ自分が変なことを言ってしまったようですし……」
隼翔に大爆笑され、凹みながらオロオロとするひさめ。
そんな彼女をしり目に隼翔は軽快に立ち上がると、部屋の隅に飾られた隼翔が趣味兼能力練習で創った刀コレクションの中から、悩みながらひと振りを掴む。
「笑わせてくれた礼だ。お前にこいつをやろう」
「え、えっ!?」
徐に刀を渡され、ひさめは何度目か分からない狼狽を見せる。
差し出されたのは黒塗りの鞘をした極一般的な刀。
「そいつに銘はない。だが初心者のお前にはちょうどいいだろう。長さも2尺2寸で身長的にはぴったりだろう」
ひさめの身長は160㎝無いほどであり、それを加味すれば初心者なのだからちょうどいいほどの長さ。
どうしていいか分からないままとりあえず受け取ったひさめは、両手におさまる刀を茫然と見つめる。
「人を斬る覚悟が無いんじゃなく、人を斬らない覚悟を持っている、か。それが果たしてどんな光景を見せてくれるか、楽しみだな」
固まるひさめをしり目に、隼翔は愉快そうにそっと呟いた。
この出会いが、ひさめと言う少女にこの後どのような影響を与え、どれほど困難な運命を歩ませたか、それはこのとき誰も知りえないことだった。




