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格闘家③ギルド登録

「着いた―!!」

 オレは今、初めて町にやって来た!

 見上げるは門。そして、傍には門番らしき両親以外で初めて会う人間……に槍を突きつけられてます。


「いいから、身分証を見せなさい!」

 まあ、理由はわかってる。あまりにも興奮してしまい、身分証も何も見せずに堂々と町の中へ入っていこうとしたからだ。だからと言っていきなり槍を突きつけるのはどうかと思うわけだが…。

 さて、問題だがオレが身分証なんて持ってると思うか?

 人気のないところでずっと両親と暮らしていただけ。しかも、その間一切他人と会ったことのないこのオレが。

 答えは当然Noだ!

 だが、安心しろ。こんなこともあろうかと用意はバッチリしてある(ジェノ父さんが)。


「はいはい、わかりましたわかりましたって…。まったく、そんなに怒らなくてもよくないですか?」

 渋々とジェノ父さんが書いてくれた紹介状とやらを取り出す。これはある程度の身分を保証する物らしいが、よくわからない。まあ、この町では身分証を作ることが第一目標だからそれはどうでもいいけど。

「……むっ、確かに。お前の名はエボル。それに間違いないな?」

「間違いないですよー」

「…ううん、紹介状に書かれている容姿にも一致するし通しても問題はないか。よし、では通って良し!ただし、次からは身分証の提示なしに押し入るような真似は控えるように!」

「まったくだな。他所の町なら問答無用で捕まっててもおかしくないぞ?」

「気を付けまーす!」

 ふぅ…。ようやく中に入れる。

「あぁ、そうそう。ギルド会館はこの道を真っ直ぐ行った一番大きな建物だ。寄り道せずにまずはそこに向かえって紹介状に書いてあるぜ?」

「…ほう。過保護ってよりはそれだけ問題児扱いされてるってことか?」

 ちぇっ、せっかく町を見てから行こうと思ってたのにな…。

「わかりましたよ。じゃあ、早速ギルドへ向かってみますか!」



◇◆◇◆◇◆◇



「うわぁ~、これは想像以上に…」

 言われるがままにギルド会館にやって来てみたが、予想以上の大きさに圧倒されてしまった。

 ギルドとは、職業を斡旋するために作られた職業組合のことだ。商人は商業部門として商品の管理流通を依頼し、金融部門は金の貸し付けや資産運用を行ったりする。

 大きな町などには必ずと言っていいほどに支部が作られており、世界を結びつける一大組織としての面が強い。また、その性質ゆえに別段商売などをしない人間もここには登録されており、世界の人口の4分の3以上がギルドを利用していると言われている。

 利用していないのはオレのように辺境に住んでいたなどの世情に疎い存在だけだろう。


 中に入ると、一瞬視線が向けられるが大半の視線はすぐに興味を失くしたように外される。

 見ると、真昼間にも関わらず酒を飲んでいる者もいる。

 これはギルドのある性質ゆえだろう。酒を呷っている者の多くが厳つい容貌をしている。


「アパレイト支部ギルド会館へようこそ!本日はどのようなご用件でしょうか?」

 真っ直ぐ受付に向かうと、カウンターに座っていた1人の少女が笑みを浮かべて問いかけてきたのですぐに身分登録へ移ることにする。

「身分証を作りたい。それに、ギルドに登録もしてほしい」

「はい、かしこまりました。…失礼ですが、身分証をお持ちでない理由をお伺いしてもよろしいですか?」

「あぁ~、実はかなり田舎の方の出身でね。それも辺鄙なところで人なんて数えるほどしかいないような場所なんだ。…で、これまでは必要な物資などは親が町に来て買っていたんだが、オレも成人したことだしそろそろ身分証を持っていた方がいいだろうってことさ」

 ジェノ父さんと事前に打ち合わせしていた通りの内容を語っておく。ついでと言わんばかりに紹介状も渡しておく。

「……あぁ~、確かにそうなってますね。辺境の方はその場で暮らしていけることも多いので大変ですよね~。私どももできるだけ多くの人にギルドを利用していただけるように頑張ってはいるのdすが…」

 申し訳なさそうな表情を浮かべ、苦笑する少女。

 とりあえず、さっきの話は信じてもらえたようだ。まあ、信じるも何もちょっと事実を捻じ曲げてはいるが大体が真実だ。疑われる理由もないか。


「では、こちらが身分証の記入用紙になります。ただし、ギルドに登録されるであればギルドカードと統一することも可能ですが、いかがいたしましょうか?」

「だったら、ギルドカードと統一してください」

 そもそも、一般の身分証だけを持っている人間の方が少ないだろう。

 それをわかっているのか、少女もとくに疑問を挟むことなく別の用紙を取り出した。

「では、こちらがギルドの登録用紙になります。まずは、お名前や現在ついているジョブがあればそちらを記入してください」


 ふむ…。

 ジョブは結構面倒なことがあるとジェノ父さんが言ってたな。

 ジョブに付く方法は大きく分けて2つ。自然になるか、それとも人工的に変わるかだ。

 自然になるのは親などのジョブを譲り受けたり、行動を重ねるうちに変わるパターン。そして、人口的になるのは変異石と呼ばれる道具が必要になる。

 変異石を使えば、適性のないジョブでも付こうと思えば付くことができる。ただし、適性がなければそのジョブの技を扱えるかどうかまではわからない。また、変異石であっても上位のジョブには付くことができないらしい。

 結局、変異石なんてオレには関係ないわけだが…。

 だって、自然にジョブが変わっちゃうタイプだし!

 とりあえず当たり障りのない疑われない内容だけ書いておくことにしよう。


「…ええっと、エボル様。ジョブは格闘家ですね。では、どの部門に登録されますか?」

「……あぁ~、えっと、一応どんな部門があるのか説明してもらってもいいですか?辺境にいたものでいまいち知識が合っているのか自信がないもので」

「かしこまりました。まず、ギルドとは職業斡旋所を兼ねているというのはご存知ですか?」

「はい、それはもちろん」

「その性質ゆえにギルドには様々な部門が存在します。一般部門・商業部門・金融部門・生産部門・学術部門・法務部門・冒険者部門となります」

 詳細を簡潔にまとめるとつまりはこういうことらしい。


 一般部門――その名の通り誰でも登録可能。町などの移動に際して身分を保証する役割を持っている。つまりは一般の身分証と変わらないレベル。

 商業部門――物品を介して金銭をやり取りするための部門であり、商売をする者が所属する。

 金融部門――ギルドに登録してあればお金の預け入れるための口座を持つことができ、さらに一度登録してしまえばどこの支部でも引き落としや入金が可能。また、商売をする者などは条件によっては融資を受けることもできる。

 生産部門――農業などの商品を開発するためのノウハウや他人が製法を勝手に真似できないようにするための特許権を発動したりする。また、災害などで被害を被った場合には被害の補填をしてくれることもあるらしい。

 学術部門――これは各都市によって形態が異なるが、簡単に言えば学校だ。より高度な技術を学ぶための場を提供する場合。さらには研究を行う専門機関への紹介等、多岐に渡って活動している。

 法務部門――国ごとの法律を管理し、第3者的立場になって判決を下す。ここに至っては所属するために試験が設けられており、学術部門に所属してから法務部門に所属するのが一般的。ただし、国によって独自の法律が強い場合があり、必ずしも紹介してもらえるとは限らない。

 最後になったが、冒険者部門。

 これはギルド側が受理した依頼に応じて仕事をする…悪く言えば何でも屋みたいな部門。モンスターの討伐から、必要な材料の採取まで。仕事の内容が大雑把な分自由な部門と言える。


(この中からだったら…)

 さらさらっと記入してすぐに用紙を渡す。

「確認いたします。所属を希望されるのは一般部門、金融部門それに冒険者部門……以上でお間違いないでしょうか?お間違いがないようでしたら、こちらのインクを指に塗ってください。塗るのは片方で構いませんが、全ての指に塗るようにしてくださいね?」

 差し出されたのは透明な液体。

 何かわからないが言われるがままに左手の指に塗っていく。

「塗り終わりましたら、用紙に跡がしっかりと付くように押し付けてください」

 そんなことしたら汚れて見えなくなるんじゃね?

 そう思ったが、疑問を挟んでもしょうがないと考えよう。

 まるでインクを紙で拭き取るように念入りに押し付け、手を離す。すると、用紙に付いたインクが光を放ちだした。

 光り輝く用紙を少女は慣れた手つきで火に翳していく。用紙は燃えるかと思いきや、材質が紙から鉱物のようなガラスのようなものへと変化していく。1分もした頃には手で持ちやすい大きさなカードに変わっていた。

「こちらがエボル様のギルドカードになります。ご本人以外は使用することができず、これ自体が身分証の代わりとなりますので紛失にはご注意ください」

 差し出されたカードをしげしげと眺めてみる。

 一見すると本当に何の変質もないカードだ。というか、壊れやすそうだなという感想を抱いてしまう。


・エボル ジョブ:格闘家 ランク:G

最終更新地:アパレイト支部


 記載されてる内容もこれだけだし…。

「あのぅ、このランクってどういう意味があるんですか?」

「そちらは冒険者部門に登録されている方にのみ表示される内容となっておりまして、簡潔に言えばどれほど貢献したのかを表しています。

 ランクは最低がGランク最高がSSSトリプルエスまでございまして、功績に応じてランクは自然と上がっていきます。ただし、同じ程度の仕事をこなしていても上がり難く、より難易度の高い依頼をこなしていただくとランクは大幅に上がります」

「…ランクが高いと良いことでも?」

「もちろんございます!ランクが高ければ高いほどにギルドの信用が上がり、報酬の高い仕事を融通してもらえるようになりますし、ギルドと提携している店舗や宿泊施設でもお得なことが一杯です!」

「じゃあ、Gランクっていうのはどうやって決めたの?」

 オレってそんなに弱いんだろうか?

「Gランクについては登録が完了した段階では皆様Gランクからのスタートになっております。そこに例外はございません。そのため、実力に見合っていないランクの場合もあるでしょうが、そこはご安心ください。

 冒険者部門は実力に覚えのある方が不遇に扱われることを望んでおりません。したがって、最初の依頼に限りランク関係なしに仕事を受けることが可能となっております。つまりは、堅実にランクを上げていくのもよし、腕に自信のある場合はそれ相応の仕事を選んでも大丈夫なようになっています」

「……もしも、どれぐらいの実力があるのかわからなかった場合、その場合はGランクからスタートなわけだ。だったら、偶然…そうだなランクが上の依頼に出ているモンスターなどを討伐した場合はどうなるんだ?」

「その場合ですと、達成した依頼内容にもよりますがランクが上がる場合もあります」

 ただし、と続く。

「――その場合、不審な点があれば審査を行い、もしその審査でも疑惑が晴れなければペナルティを与えられる恐れもありますのでご注意ください」

「わかった。ペナルティの内容を聞いても?」

「基本的には罰金ですが、悪質なもの例えば他人を害してその功績を奪った場合などはギルドから追放。その上で二度とギルドに関わることができなくなる場合もございます」

 あくまで最悪の場合ですが、そう語る少女の顔にはそんなことをすれば間違いなくギルドを敵に回すぞと脅すような表情が浮かんでいた。


「さて、ご質問はもうございませんか?ないのでしたら、あちらのボードに張ってある依頼から1つお選びになってください。現在発注しているクエストが掲示されております」

「……じゃあ、最後の質問。名前はなんていうんですか?」

「申し遅れました。私の名はニコラでございます。それではご利用ありがとうございました」

 ニコラと名乗った少女は満面の営業スマイルを浮かべて深々とお辞儀をする。

 そんな彼女に見送られる形で依頼ボードの方へと歩き出していったのだった。


 次回は定番のアレですよ。

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