表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/53

魔法使い①Re:格闘家

 ……やってしまった。

 視界に広がるのは、ダボダボの服。そして、何もかも大きくなった室内の家具。

 ――そう。オレは再び赤ん坊に戻っていたのだった。



◇◆◇◆◇◆◇



 事の発端は昨日の夜。

 オレは気が付けばレンデル達と別れ、町を出てさらには別の町に辿り着いていた。確か、レンデル達と一緒にいたギオとかいう奴に襲撃されたところまでは覚えてるんだが…、そこから先が一切思い出せない。何がどうしてこうなったのか?ここはどこで、どうやって来たのか?

 一応、荷物は持っているみたいだから問題になりそうなこともなかったのでひとまず宿を取ってじっくり考えた。

 そして、導き出した結論はレンデル達が何らかの手段を用いてオレを逃がしたという…考えるまでもない結論だったわけだ。

 だが、その結論に至りオレは少し考えた。

 レンデル達が逃がすことしかできなかった状況。それってヤバくね?と。

 もしも、レンデル達がやられた場合。その場合、襲撃者達は再びやって来るだろう。まあ、狙いがレンデル達でなくオレであった場合だが。

 しかも、悪いことにオレは顔を見られてしまった。だから、迂闊に動くことはできない。

 と、いうわけで!それだったら、いっそのこと姿を変えればいいんじゃね?そんな結論に至って進化したというわけだ。

 進化の先として選んだのは魔法使い。ちょうどいいことにポー・ルゥーから魔導書を借りていたし、そもそも選べるのがそこしかなかったから迷う必要もない。

 そんな風にお手軽感覚でちょちょいと選んだのだが、失敗した。

 進化して赤ん坊になってしまったことで宿屋から出られなくなったのだ。いや、普通に考えればそうなるってわかるだろうっていうのは重々承知している。だが、この場合は仕方なかったんだ。

 一応、食料は軽くだが用意してある。赤ん坊でも飲めるような果汁の出る果物が。これはシルバーバックが守っていた巨木になっていた木の実なのだが、レンデル達が言うには非常に栄養価が豊富でウッドエイプの子供が飲むためのミルク代わりの品でもある。

 宿賃はちょっと大目に前払いしてあるから少なくとも5日は泊まれる。

 その間にレベルを上げて動けるようにならないといけない。

 初っ端から大変な課題にぶつかってしまったことになるのだ。


「……こうなったら、やっぱり世話をしてくれる人材の確保は必要不可欠だよな~」

 例のごとく、「あ~」とか「う~」などにしか聞こえない言葉を呟きつつ、途方に暮れることしかできなかった。



◇◆◇◆◇◆◇



≪おめでとうございます。Lv.2にアップいたしました≫


「……ふぅ。やっとか」

 約丸1日かけてようやくレベルが上がった。これで残りは4日。正確には初日の夜に宿泊していることから、滞在できるのは3日。それ以降は延長料金を払わなければならないのだが…。

「レンデルの奴…!」

 いや、あいつに対して怒りを覚えるのはお門違いだな。あいつはオレを助けようと全力を尽くしてくれただけだ。

 だが、あいつが使用したスキルのせいで無意識にここに来てしまった。つまり、顔も隠さずに来てしまったのだ。だから、出る時は注意をしなければならない。それ以上に延長料金を求められたりすると困る。だからこそ、進化する前には決して部屋に入らないように釘を刺しておいたのだ。

 今は【鑑定】を使って、より深く魔導書を読み込んでいる。それでレベルが上がったが、問題がある。魔法を使うということはMPを消費するということだ。つまり、MPが切れる度に動きが取れなくなる。

 それに加えて問題としては、本を読み込み知識を蓄える度に激しい頭痛がオレを襲う。

 格闘家になったばかりの時もこんな症状は起こった。ジェノ父さんに言わせると赤ん坊の脳にとって考える作業は負荷が大き過ぎる。それゆえに起こる知恵熱なのだ。


・エボル Lv.2/15

種族:人間(進化種)・男 ジョブ:魔法使い ランク:卵(C)

HP40/40 MP2/25 体力19/19

攻撃力18 魔法攻撃力0 防御力6 魔法防御力8 知力72 速度14 人格50

種族特性:レベル上限・進化の可能性・進化の恩恵 ジョブ適正:魔法使い(ひよっこ) ジョブ補正:魔法習得率アップ

スキル:【大泣き】・【念話】・【鑑定】・【世界の流れ】・【一点集中】・【正拳突き】


 ステータスを確認すると、MPがそろそろ底を尽きそうだ。ちなみに、【鑑定】は発動時間に応じてMPを消費していくタイプの魔法。【念話】は時間ではなく、距離や人数で固定のタイプだった。

「…この進化の恩恵って種族スキルは何なんだろうな?」


≪進化の恩恵とは、前身の力を僅かながら受け継ぐことができるものです≫


 おおっ!呟いただけで出てくるとか、気前がいいな。


≪前身の力とは、この場合ですと格闘家として培ってきた者になります。つまりは、攻撃力上昇率アップ(中)を持っていた影響で普通の魔法使いよりも攻撃力が強くなっております。ちなみに、次の進化でもその恩恵は消えることがなく蓄積されていきます。そうすることによって圧倒的な強さを維持し続けるのが進化種と言えます。

 さらに、進化したことで本来はその姿でしか使えないスキルを使えることもあります。【正拳突き】は格闘家などでしか使えないスキルですが、進化の恩恵の力によって使用可能となっております。

 ただし、この場合引き継げるのはすべてではなく、一部となっております≫


 今回はよく喋るなぁ…。

 まあ、動かせない身体でも強くなっていれば少しはマシだ。

 ただ未だに魔法攻撃力は0か。これは、確実に攻撃性の魔法を覚えてないからだな。

「やるしかないってことだな!」

 むんっ!と気合を入れ、魔導書に没頭していく。


 ――そして、ものの数分でダウンし、ベッドで寝息を立てる姿があったそうな。

 次回以降はちょっとテンポ早目にお送りします(たぶん)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ