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格闘家⑨レンデル

 本日2話目。

≪おめでとうございます。Lv.22にアップいたしました≫


 突如聞こえてきた天の声でシルバーバックの死亡を感じた。

「……勝った、のか?」

 倒れて動かなくなったシルバーバックを見ても実感が湧かない。だが、次の瞬間。

『『『ウ~~ホホォォオオオオオ!!』』』

 けたたましく鳴り響くウッドエイプ達の叫び声。

 まだウッドエイプ達が残っていたのを思い出し、振り返るとそこには必死で方々に逃げ出していく姿だけがあった。

(シルバーバックがいなくなって統率が取れなくなった。…いや、ボスがいなくなったから無理をしてここに残っている理由がなくなったのか)

 本来だったら、あいつらはオレとの戦闘をしたくなかったんだろう。

 それでも残っていたのはオレにボスが勝った場合に備えていたというところか。

「何にしても…、勝ててよかった~」

 すっかり体力も消耗してしまって動けそうにない。

 オレは緊張感から解放されたことで体中から力が抜け、その場に大の字で横になった。


 はぁ~、疲れたけどレベルが一気に上がったな。戦闘開始当初は17だったのが、今では22。一気に5つも上がったのなんて初めてだ。

「おっと、忘れてた」

 討伐の証として首から上を持って行かなきゃいけないんだよな。

 そう思い、体を起こす。

(生け捕りの場合はこれを担いで持って帰らないといけなかったんだよな…)

 改めてみると、その巨体には驚かされる。これを1人で運ぶとなると、相当骨が折れることだろう。運搬中、モンスターに襲われれでもしたら目も当てられない。

「さっさと切り落とすかな…」

 戦闘では使わなかった剣がこんなところで役に立つとは…。使い方を間違っているような気がしないでもなかったが、オレは腰に差していた剣に手を伸ばした。


「そこまでだ!」


 だが、伸ばしていた手は突如かけられた声によって止めざるを得なかった。

 いや、声だけならば放っておいたかもしれないが、いつの間にかオレとシルバーバックの間に立っていた男。そいつがオレにランスを突きつけていたので止めてしまったというのが正しいだろう。

「……誰だ?」

 オレは不機嫌さを隠すことなく声を発した。正直、疲労困憊で喧嘩を売るような真似をしたくはなかったのだが、先に売られた喧嘩をそのままにしておくわけにもいかない。何より、この状況で武器を突きつけるということは、こいつはオレと敵対する意思があると見て間違いないだろう。

 ギルドで聞いた獲物を横取りする連中か?

「『誰だ?』だと?そんなに知りたければ教えてやる!」

 何故か気分がよくなったらしい男が自慢げに名乗ってくる。

 この状況では頭がおかしいとしか思えないわけだが…。

「俺こそが、かの『白銀の騎士団』期待の新人!名を――」

「――そこまでにしてもらおうか?」

 気分よく名乗りを上げようとしていた男は背後から肩を掴まれ、その人物に驚き目を見開いた。

 というかオレも驚いた。じっと見ていたが、この男がいつ後ろに現れたのかさっぱりわからなかった。

「何故邪魔をするのです!」

「…邪魔?おかしなことを言うね」

 口調こそ穏やかだが、聞いた者を底冷えさせるような怒りを含んだ声。それからも目の前の人物の怒りを感じ取るには十分だった。

(一体何に怒ってるんだ?)

「あぁ~、なんだ?お前さんのせいじゃないからそう怯える必要はないぜ?」

 心当たりがなさ過ぎて困惑していると、突如う背後から声をかけられビクッとなって振り向く。

「……そんな声のかけ方じゃ、余計怖がらせるだけよ。ごめんなさいね?私の仲間は無作法な連中が多くって…。筋肉達磨の脂肪が燃焼するニオイは不快だったでしょ?」

 そこには手斧で肩を軽く叩いている筋骨隆々な男性と、いかにも魔法使いといった装いの女性がいた。


「おいこら、誰の何が臭いって?」

「あら、聞こえてたんじゃないの?あなたの汗のニオイは災害指定クラスの悪臭だと言ったのだけど」

 わかりにくかったかしら?からかうような冷笑を浮かべる魔法使い。鼻をつまんで不快そうな表情を浮かべるなど意外と芸が細かい。

「おうおうおう!言ってくれんじゃねえか!俺の体臭は男らしくて素敵だと街のねえちゃん達には大人気なんだぜ?」

「…いや、それどう考えてもお世辞でしょ?商売なんだから相手だって気分よくさせるように工夫をするわよ。というか、いきなりそんな話を振らないでくれる?というか、騎士団の名が穢れるから行かないようにするか騎士団辞めてくれない?」

「何をー!?おい、小僧!俺の体臭は臭くないとこの役立たずに言ってやれ!」

 えぇ~!?ここでオレに振るか?

「……いや、あのぉ」

 どうしても言い淀んでしまう。それは別にこちらを見ている魔法使いの眼が怖いからとかではなく、近寄ってきたおっさんの体臭がお世辞にも臭くないとは言えなかったからなのだが…。

「ほら、やっぱり臭いんですよね?」

「あっ、はい。まあ……あっ!」

 しまった!うっかり返事をしてしまった!

「そんなバカな~!?」

「「……そんなに?」」

 ショックを受ける必要もないだろうに…。思いがけず、オレと魔法使いの言葉がハモった瞬間だった。


「レ、レンデルさん?」

 そんなことを話している間にも2人の話は進んでいた。

 最初に話しかけた男はビクビクしながらも、話しかけた男――レンデルに振り向いていた。ただし、肩を掴まれたままなので首だけでだったが…。

「ギオ・ヘルミック。お前は自分が何をしたのかわかっているのか?」

 ギオ――そう呼ばれた男の怯えた様子など気にも留めず、レンデルは話を続ける。

 そんなレンデルの様子にギオも何か失敗をしたのかもしれないということには気付いたが、それが何かわからないから自分の思ったことを口にする。それが余計に怒りを買う行為だとも気付かずに。

「何って、レンデルさん…何を怒ってるんですか?俺は不当に俺達の獲物を横取りした礼儀知らずに物を教えてやろうと…」

 そこからの言葉は発することができなかった。

 レンデルから傍目に見ても分かるほどに怒りのオーラを感じ取ったからだ。

「……意味がわからんことを言ってるんじゃないぞ?『俺達の獲物』、だと?」

 肩を掴む手に力が入って行っているのかミシミシと音が聞こえてきて、ギオが悲鳴を上げる。

「いいか?モンスターは先に戦闘に入った者に優先権がある。この場合は彼こそがシルバーバック討伐依頼を達成した冒険者だ!いや、彼以外はそれに該当しない!」

「……で、ですが、俺達もウッドエイプを倒しました!それに依頼を受けたのは俺達じゃないですか!」

 痛みと恐怖で震えながらも、そう叫ぶギオ。

 その光景に目を奪われつつも、オレは疑問を感じていた。

(依頼を受けた?どういうことだ?)

 オレは確かにギルドでシルバーバック討伐依頼を受け、それをもとに村まで行って情報を手に入れた。オレが間違った場所に行ってしまったのか?それとも、彼らが間違えたか?まさか、あの村人……オレが去った後に重複で依頼を発注したんじゃ?

 そんな風に疑問が浮かぶが、重複の依頼の場合はさすがに時間的に辻褄が合わない。オレは村で情報を得てからすぐに来た。彼らも今ここに居るということはオレが入ってからそう経たないうちにこの森に入ってきたことになる。


「確かに、僕達はウッドエイプ倒した」

 レンデルの言葉に喜色が浮かぶギオ。だが、レンデルの怒りはそこで爆発する。

「だが、依頼はシルバーバックだ!そして、それを倒したのが彼である以上、依頼を達成したのは彼だ!そんな彼から――全身全霊をかけて戦った戦士からその成果を横取りするなんて誇りある『白銀の騎士団』の名に泥を塗るつもりかっ!!」

 凄まじい怒気が森全体に広がっていき、遠くで鳥獣が逃げ出す音が聞こえる。

 先程のシルバーバックの咆哮をも上回るそれにオレは身を竦めてしまった。

「貴様のような奴が、『白銀の騎士団』団員であることを名乗るなど、言語道断!貴様が団員候補と言うことですら耐え難い侮辱だ!

 団長には僕の方から連絡を入れておく。お前は早々に立ち去れ!」


「ヒ、ヒイイィェエエエエエエエエエエエ!!」


 言い放つと同時に抜き放たれた剣に恐れをなしたのか、みっともなく逃げ去っていく。そんな背中を見つめていると、怒りを鎮めたレンデルがオレの傍に立っていた。

「……すまない。みっともない場面を見せてしまったね。大丈夫だったかい?」

「ははっ、あんたの怒気に当てられたことについて言ってるんなら大丈夫じゃないが、他は問題ないよ」

 差し出された手を握り締め、引き起こされる。

「だっはっは!そんな冗談が言えるなら、問題あるまい!」

「ははは…。さて、少し悪いが話に付き合ってもらうよ?」

 キリッと引き締めた表情で向き直るレンデル。無意識のうちに姿勢がピンとなるのを感じながらも話をきくことにした。



◇◆◇◆◇◆◇



「おおっ!皆様よくぞご無事で!」

 私は村に戻ってきた騎士達を笑みで出迎えていた。あの頼りない小僧のすぐあとにやって来た騎士達。3人だけだったが、かの有名な『白銀の騎士団』所属。しかも、リーダーは第2部隊隊長というじゃないか。これはギルドが依頼を重複させていることなど問題にもせずこちらを頼ってしまうのも無理はないというものだ。

「…おや?もう一方はいらっしゃらないようですが?」

 どこか人を見下したような態度を取っていた気に食わない小僧が消えている。死んだか?まさか、仮にもこの大陸でも随一のパーティーの一員だぞ?だが、奴が消えたのならばそれはそれでいい。おそらくは貴族の血が混ざっているのだろうが、あの態度は好かんからな。


「村の皆、安心してほしい!シルバーバックは無事に討伐を果たした!」


 リーダーの男が宣言すると村中から歓声が上がる。

「おおっ、さすがは名高き『白銀の騎士団』の面々。やはり、Dランクの依頼など楽勝でしたか!」

 儂の言葉を無視するのはいけすかんが、まあええじゃろうて。

 この村で銀貨30枚は高額じゃが、それでも普通の手段で『白銀の騎士団』を雇おうと思えばその数倍は確実。それを低賃金、しかも悩みの種であるシルバーバックも退治されるとあれば安いもんじゃ。

「……さて、失礼ではあるのですがシルバーバックの討伐を確認させていただけますかな?」

 一応は確認しておかねばならんからな。

 それにしても、3人しかおらん上に討伐部位を持っているように見えんのじゃが?

「わかりました。――お願いします」


「なっ――!」

 リーダーの男の声で現れたのは最初に来た冒険者だった。

「き、貴様っ、一体何をしに来た!」

 儂が叫ぶと、周りからも敵意が篭もった視線や野次が飛んでくる。

 だが、その腕に抱えていた布を外すと、そこにはシルバーバックの頭部があった。

「ど、どういうことですかな?」

「わかりませんか?」

 質問に質問で返すんじゃないわい!

 いや、待てよ。そういうことか!

「はっはーわかりましたぞ!そちらは最初にいたお仲間の方ですな?そして、森で見つけた冒険者の死体から身包みを剥いで儂らを驚かそうとしておるのでしょう?」

 そうに違いない。まったく、騎士団と呼ばれて調子に乗ったガキ共めっ!

 だが、返ってきたのは予想外の言葉だった。

「やはり、あなたは重複依頼であることを知っていたのですね?…彼は、僕達の仲間ではありません。あなた方が先に依頼した冒険者エボルです」

「バカなっ!?」

 反射的に声を出してしまってからマズイことを言ってしまったと口を噤む。

「バカな?何故そう思うのですか?僕達は彼が見事にシルバーバックを倒したのは目撃しましたよ?」

「そ、それは…」

 気迫に押されて狼狽してしまう。こんなガキなのに…!


「だけど、1人で他のウッドエイプも倒せたとは思えねえよ!」

「そうだそうだ!」


 周りから聞こえてきた非難の声。そうじゃ、確かにあやつ1人でウッドエイプまで倒せたとは思えん。もしや、ウッドエイプはいなかったのか?だとしたら、報酬はもう少し安くても何とかなったではないか!

「確かにそうです。僕達が行った時には彼は既にシルバーバックとウッドエイプ達に囲まれていました」

「では、どうやって?」

「僕達がウッドエイプ達と戦ったことになります」

「ほう!」

 それは良い!それならば――

「では、依頼は不達成ですな!いや、討伐していただいたことはありがたいですが、複数パーティーによる依頼ではありませんでしたから、勝手に協力を仰ぐのは契約違反ではありませんか?」

 さらに、ここは押していくぞい!

 儂はそっと騎士団のリーダー格に近付き、耳打ちをする。

「(……ここは、重複依頼ということを隠し、あなた方がやられそうになっていた冒険者を偶然助けたということにいたしませんか?)」

 これで、儂らは報酬を払わんで済むし、さらに『白銀の騎士団』に恩まで売れる。

 完璧じゃ!そう思った儂がバカだった。


「……ふぅ、やはりあなた方は間違っているようだ」

 何?

「そもそも、信頼できないならばその場で依頼を断ればよかった。それでも生存圏にモンスターがいるという不安から逃れるために冒険者を頼った。だというのに、あなた方はその冒険者を蔑ろにしている。

 しかも、その後に来た僕達にも同様の依頼を出すことは重複依頼だと知っていながら、それを平然と行う。そんな正しくないあなた達に彼を貶める資格はない!」

「ひっ!!」

「…村長、あなたにはエボルにきちんとした報酬を払っていただきます。僕達は彼の仕事に横やりを入れた立場ですので報酬はもちろんいりません」

 くっそ~、こんな若造にっ!

 だが、先程からのこやつの威圧感で何も言えん。それは野次を飛ばしていた若い衆も同じだった。


 村長は知る由もないが、この時レンデルはスキル【聖言】を発動させていた。これはある程度の上級ジョブでなければ使えないスキルであり、人格に関係なく人を正しい方向へと導くという作用を持っていた。


「さらに、村長には一緒に来ていただきます」



◇◆◇◆◇◆◇



「……で?」

 重い沈黙が流れるギルド会館応接室。

 そこにはレンデル達『白銀の騎士団』の3人、それにエボル。そして、その対面の席にはギルド長とエボルの依頼を受理した受付嬢ニコラがおり、向かい合っている間には村長が縮こまっていた。

「ギルド長、新人に対してこのような扱いをするというのは、公正さを謳うギルドの立場としては拙いのではありませんか?」

 僕の言葉にギルド長は横目で隣に座るニコラを睨みつけていた。そのニコラだが、彼女は僕を真正面から見ることが出来ないのか、ギルド長の視線を避けるように目を泳がせている。


「……そちらのエボル殿には大変申し訳ないことをした」

 しばらく睨み合っていると、ようやくギルド長が折れて僕の隣に座るエボルへと頭を下げた。

 うん。このギルド長はまだ信頼できる。ギルド全体が腐っているわけではないようで安心したよ。

「それで、いかがなされるおつもりですか?」

 まさかこのままお咎めなしじゃありませんよね?そんな意味を含めた問い掛け。

 それに対し、ギルド長はある紙を取り出した。それはどうやら僕達が受けたシルバーバック討伐の依頼書のようだ。

「まず、新人がこのハズレ依頼を持ってきた段階で何故君が否定したのか。それを説明したまえ」

「はっ、はぃ」

 こちら側の主張だけでなく自分達の意見も聞けってことか。まったく、これだから組織のトップは苦手なんだよ。どうにかして自分達の利益を獲得しようと搦め手でくるんだから。


「わ、私がエボル様の依頼を張り直したのは…」

 チラッとエボルを見るが、エボルはそんな視線を受けても何も言わずにじっとしている。

「試しをエボル様が正式に乗り越えたと思えず、実力が不鮮明であったからです」

 試し――つまりは新人が無茶をしないように実力を確かめるために絡まれるってことか。そう言えば、僕も昔やられたな。

「それに、エボル様は説明を受けても意見を変えることはありませんでした!」

 言い切った後で自分は悪くないとエボルを睨みつけている。まるで小動物が威嚇しているようで微笑ましいが…。

「ですが、あなたはこれがハズレ依頼だと説明していないのではありませんか?」

「そ、それはっ!」

 言い淀んだね?やるんなら徹底してなきゃ。

「エボルは確かにこの依頼を受けることを取り下げなかったのでしょう。ですが、それならばまずハズレ依頼がどういうものか説明して、その上で本当に彼にやる意思があるのかを確認すべきでした」

「…………」

 ぐうの音も出ないか。

「そして、村長」

「ひっ!!」

 黙っていれば逃れられるなんて思わないことだ。

「あなたも重複依頼だと気付いた段階で少なくとも僕達に依頼をせず、さらにギルドに問い合わせるべきでした」

 あなたの責任は重いですよ。自分達の利益を優先するために他者を蹴落としてもいいなどの理屈は通りません。いえ、僕達が通しませんから。


「…そこまでにしてもらえるかな?これからのことは私が預かる。もちろん悪いようにはしない。エボル殿には報酬を支払い、さらに本来の依頼ランクであるCランクで登録を。

 さらに、重複依頼とは言え、あなた方がいなければ達成できなかった可能性もあるので『白銀の騎士団』の諸君にはギルドから僅かばかりの恩賞を出しましょう」

「わかりました。ただし、このことは団長であるシーラにも伝えさせていただきますが、よろしいですね?」

「……わかりました。致し方ありませんね」

 ギルド長が大きなため息を吐いたところで、この話は切り上げとなった。



◇◆◇◆◇◆◇



「いやぁ~、悪かったね!」

 そう言ってオレの目の前で頭を下げる男は先程までと同一人物には思えない腰の低さだった。

「いや、気にしなくていい。オレもあんたらがいなきゃこの問題は泣き寝入りするしかなかっただろうしな」

 新人のオレの言うことなんて誰も信じなかっただろうからな。

「だが…」

「レンデルゥ~いいじゃねえか!エボルはこう言ってんだぜ?大人の俺達が引き下がるべきところさ」

「…ガルガンに賛同したくはないけど、私も同意見よ。それに、エボル君の言う通りこの問題はある程度の信頼と実績のある人間。つまりはあなたしか解決できなかったと思うわ」

「そういうこと。気にしなくてもいいよ。それに、冒険者同士だ助け合わなきゃ、だろ?」

「そうだね。そうだよ!」

 こいつ、無駄に面倒くさい奴だな。


「じゃあ、改めて自己紹介といこうか!俺の名はガンガル。『白銀の騎士団』第2部隊所属。ジョブは重騎士だ」

 筋骨隆々のガンガルはゴツい鎧をガンガン叩いて自分の屈強さをアピールしていた。

「私は、ポー・ルゥー。同じく第2部隊所属。ジョブは黒魔導師。今のところ第2部隊ではまとめ役のお姉さんよ」

「…僕はレンデル。第2部隊隊長をしている。ジョブは聖騎士だ!」

「ガッハッハ!レンデルは凄いぜ?なんて言ったって、こいつは『白銀の騎士団』団長シーラ様の実の弟。騎士団全体で見れば5番目に偉い男だ!」

「5番目?微妙だな」

「うっ…!」

「ぷぷっ、結構鋭いわね」

「はっは、お前やっぱり面白いな!騎士団われわれに対してそんな口の聞き方をする人間は珍しいぞ?ちなみに、5番目なのも理由がある。騎士団はシーラ様の方針で部隊長などには聖騎士のジョブを持たないとなれないんだ」

「しかもただ持ってるだけじゃ駄目。それに相応しい品格や実績を持っていないといけない」

「そんなんだから団員が200名を超えているのに部隊数が増えねえ!」

「……はぁ。姉さんにも困ったもんだよ」

 色々苦労してるみたいだな。

「オレはエボル。冒険者には成りたての新人だ。ジョブは格闘家」

「よし、早速だがエボル!お前、ウチに来ないか?」

 ………へっ?

「ちょっと、いきなり過ぎでしょ!…と言っても、あなたの将来性は確かに魅力的だわ。騎士団は優秀な人間は大歓迎よ!」

 いやいや、ちょっと待って。何がどうなっているのか…。

 そもそも――

「――騎士団って何?」


「「「『白銀の騎士団』を知らない!?」」」

「あ、ああ…」

 何だ?そんなに拙いのか?

「かぁ~、お前どこの田舎だよ。ウチは大陸全土に広がるほど有名なはずだぞ?」

「…まあまあ」

「エボル君。私が説明するね?

 そもそも、騎士団って名乗ってはいるけど私達は正確には騎士団じゃないの。冒険者が複数集まって行動するパーティーの1つに過ぎないわ。騎士団の理由はさっきも言ったようにある程度の条件みたいな物があるからかな?」

 ポー・ルゥーの話を総合すると、冒険者には複数人で行動する場合と、単独で行動する場合がある。1人では難しい依頼も複数なら簡単だということだ。

「……つまりは集団で冒険者活動をするってことか」

「そう。ただし、パーティーには結構特徴が現れる場合が多いわ。例えば、騎士団は基本的に討伐系依頼しか受けないの。これは団長の方針が弱きを助け、強きも助けるだから。モンスターに襲われている人達は誰でも助けましょうってパーティーなのよ」

「だから、今回ギオの入団試験も討伐系のハズレ依頼を選んだんだ」

 ハズレ依頼。オレが知らず知らずのうちに選んでいた報酬と危険度が釣り合っていないもの。

「ハズレ依頼は知っていれば選ぶ人間が少ないから結構長く残ってるんだ」

「ようやく受けるって奴が来てもその時にはモンスターは凶暴化しちまってることもあるし、そもそもの依頼人が死んでいる場合もあるからな。騎士団は基本的にハズレ依頼は見つけたら達成するようにしてるんだよ」

「…今回はとんだ災難になっただろうけど、騎士団に相応しくない人間を見極めれてこちらとしては助かったけどね。

 で、どうかな?騎士団に入らない?」

 3人がジッと見つめる中、オレはハッキリと答えた。


「お断りします。今はまだ1人で可能性を探ってみたいので」


 そもそも、進化種であることを隠してずっと大勢と接するのは難しい。

「…そうか。残念だ」

 項垂れるレンデル。無理強いするタイプじゃなくてよかった。

「あっ、そうだ!だったらお詫びと言っちゃなんだけど、今日は一緒の宿に泊まろう。もちろん、宿泊代はこちらで持つよ!」

「マジで!?じゃあ、お願いします!」



◇◆◇◆◇◆◇



「チッ、覚えてろよ」

 宿屋へと向かう4人の背中をじっと見つめている男がいたことなど、気付くことなくオレ達は宿屋へと足を運んで行ったのだった。


登場人物

レンデル Age23 Lv.85

種族:人間・男 ジョブ:聖騎士 ランク:S

スキル:【女神寄せ】・【聖言】・【ホーリー・レイ】


ガンガル Age32 Lv.68

種族:人間・男 ジョブ:重騎士 ランク:S


ポー・ルゥー Age26 Lv.69

種族:人間・女 ジョブ:黒魔導師 ランク:A


※ランクは依頼の達成度に応じた物になっているので実力とはあまりかんけいありません。

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