見習い①プロローグ
初めましてあるいはお久しぶりです。ようやく連載小説を再開することが出来ました。それでは、お楽しみください。
……ここは、どこだ?
俺は、誰だ?
目が覚めたら晴れ渡った空が広がっている。だが、こんな場所で寝た記憶はない。いや、それ以前に何も覚えていない。
ただ一つ言えるのは……、こんな状態ではなかった。それだけだ。
だって、今のオレって…………
「赤ん坊ですやん…」
へいへいへい。ひとまず落ち着こうぜ、オレ。
まずは状況を整理しよう。
問1ここはどこだ?
うんわからないね。
問2では俺はなぜこんな状態じゃなかったと言えるか?
まあ、これは感覚だな。以前はもっと自由に身体が動かせたような気がするし、言葉も流暢に話せた気がする。気がする程度でかなりアバウトな感覚だけど。なんたって、今はどんな言葉も「あ~」だの「う~」って音にしかならないからな。実際、さっきの言葉も「あばぶぶぅ」って言ってるだけだったし。
続いて問3そもそも、オレって何?
そう、ぶっちゃけここがどこだかわからないとか、なぜ赤ん坊なのかわからない以前の問題として自分のことが何一つわからない状態なんだよな。
まあ、だからこそ場所も名前も、なぜこんなことになっているのかもわからないのかもしれないが。
さて、これからどうしようか。
試してみたところ幸いにも寝返りをうてたり、ハイハイが出来るくらいには行動可能みたいだ。
ちなみにその結果、ここが草原のような場所だということはわかった。ぶっちゃけ、辺り一面緑で何の情報もないってことがわかっただけだが…。
そもそも、赤ん坊の体力や行動力では元いた場所を中心に回転してみるぐらいしか見渡せなかった。
「う~ん…、本当にどうしよう」
頭を捻っていいアイデアを考えようとするが、すぐにやめた。
何故か急激に頭痛がしてきて、寒気もする。
何だろう?急に風邪でも引いたのか?
後にこれが宿敵となる知恵熱だということをオレはまだ知らなかった。
とりあえずこのままこうしていても始まらないので、ひとまず行動してみようと思う。だが、俺に何ができる?
そんなの決まってる。赤ん坊の仕事なんて不満をぶつけるように泣くだけだ!悲しいかな、いや悲しくなくても泣けてしまうのが赤ん坊ということで…。
「――いざっ!」
意気込んで泣こうと…言ってて自分で意味わかんなくなってきたわ。だが、そんなことはどうでもいいか。今はそれ以上に困惑させる事態に直面してしまった。
泣こうとした時、オレの頭に直接流れるような声があった。
≪スキルの取得条件を満たしました。スキル【大泣き】を取得します≫
…………はっ?
えっ?何?どういうこと?突如として聞こえた声によって告げられた内容に驚きと戸惑いを隠せない。取得条件に、【大泣き】?そもそも、スキルって何よ!?
≪ステータスの確認を致しますか?≫
当然イエス!
・名前:なし Lv.1
種族:人間(???)・男 ジョブ:見習い ランク:なし
HP20/20 MP0/0 体力5/6
攻撃力3 魔法攻撃力0 防御力1 魔法防御力0 知力5 速度2 人格50
種族特性:なし ジョブ適性:なし ジョブ補正:なし
スキル:【大泣き】New
頭で思った瞬間、まるで直接流れ込んでくるように情報が表示される。
「名前がないのは当然としても……」
表示されている内容がわかり難いし、全体的に数値が低い。
HPっていうのは何だ?体力はまだわかるが…。それに、MPって一体。
≪HPとはヒットポイントを意味しており、生命力の数値となります。この数値が0になった時点で死亡しますのでご注意を≫
≪MPとはマジックポイントを意味しており、魔力の数値となります。魔力とは魔法と呼ばれる身に余る力を用いるために使われる力のことです。これがなくなったからといって特に問題はありません。しばらく魔法が使えなくなるだけです≫
≪体力とは身体の活動限界を意味しております。これが0になるとしばらく動けなくなるのでご注意を。また、体力が0になるとHPを消耗していきます≫
≪HP、MP、体力などは時間が経てば回復しますのでご安心ください≫
無駄にこの声は性能がいいな。疑問に思っただけで答えてくれるとか…。
まあ、これでひとまずの謎は解けた。あとは、全体的に数値が低い理由だが…、これは赤ん坊だからでいいだろう。
ただ、一つだけ異様に高い数値の物があるんだが…。
ここはもう一丁、天の声に頼るか!
人格って何ですか~?
≪人格とは、性格などを意味しており、高ければ善の性質を。低ければ、悪の性質を持っていることを意味します。種族的に悪の性質を持っている場合もありますが、それ以外では数値が高ければ高いほど信用に値する結果になるでしょう。数値は-100から100まであります≫
ふ~ん。つまり、オレの人格50っていうのは普通ってことか?
じゃあ、次。種族補正とか下の方にあるもの全般の解説よろしく。
≪種族特性とは、種族によって受けられる恩恵を意味しております。例えば水の中で生きる種族ならば水中での呼吸を可能とするなどがあります≫
≪ジョブ適性とは、付くことができるジョブを意味しております。ただいまの適性はありません≫
≪ジョブ補正とは、ジョブによって上がりやすいステータスが生じることを意味しております。例えば体を動かすジョブならば体力などが上がりやすくなります≫
むむっ?
言っていることがよくわからん!
「…まあ、今は関係ないと考えておこう」
それよりも気になることがある。Lvっていうのも気になるが……。それ以上に気になるのは、種族だ!何だよっ、種族:人間(???)って!
おかしいだろ!そこは種族:人間でよくね!?
ということで、解説カモン!!
≪…………≫
わくわくわくわく。
あれっ?さっきまですぐに答えが返って来てたのにな…。
≪現在、その質問は受け付けておりません≫
ホーリーシット!!
ここに来て、ボイコットしやがった!!
えっ、何?これについてはそんなに教えたくないってか?意味わかんねえよ…。
「……いや、待てよ」
もしかしたら、質問タイムが終了してしまったのかもしれない。
その可能性に気付き、冷や汗が止まらない。
こんなところで放置されたら死んでしまう。
「と、とりあえず…、ものは試しだ」
何か質問してみよう。それで答えが返ってこなかったら………、その時はその時に考える!
「とは言え、困った」
最後になるかもしれない質問。それで聞くべきことは…。
「よし!決めた!」
教えてくれ。
スキル【大泣き】の効果を!
≪スキル【大泣き】とは、泣き声が遠くまで届くほどの大声量になるスキルです。使用者の人格と受け取り手の人格が高ければ高いほどに効果を発揮します≫
おっ!無事だった。
ふぅ~、焦ったじゃねえか。つまりは、さっきの質問だけは答えてくれないってことか。それとも、答えられない質問もあるってことかな?だったら、それはどうでもいいや。聞けない質問は聞かなければいいだけだし。
じゃあ、そもそもの質問。スキルって何よ?
≪スキルとは、その身で実現することのできる技術すべてになります≫
ざっくばらんと言うか、大雑把な説明だな。
適当に使用可能な技程度の認識でいいだろう。
次はステータスについて聞こうかな。ステータスって他人のも見ることが可能なのか?あと、オレのステータスはオレ以外にも見えたりする?
≪ステータスは基本的に本人しか確認できません。しかし、【鑑定】と呼ばれる魔法あるいはスキルを用いることで他者のステータスを見ることは可能です。ただし、相手の実力が高かったり、使用者の実力が不足している場合。あるいは、相手が隠蔽している場合は見ることはできません≫
見れると便利だと思ったが、しょうがないか。まあ、そう簡単に他人から見られることもないってことだろうし、よしとするか。
「……さて」
次はいよいよ最後の質問だ。気合を入れよう。
「あなたは誰だ?そして、オレとは何だ?」
聞くべきか迷いながらも、覚悟と共に口にした問い掛け。
しかし、その問いに対する返答は予想だにしないものだった。
≪その質問にお答えすることは禁止されております≫
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