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「私、妄想癖があるんです」
「・・・・・・・は?」
「だから、そういうのがダメな場合は断ってくれても構いませんから」
そう言ったところで、タイミングよく食後のデザートが運ばれてきた
「・・・・とりあえず、食べましょうか。ここのデザートは美味しいって評判なんですよ」
私が爆弾発言したのに関わらず、何事もなかったようにデザートを勧められた
(やっぱり今回もダメかぁ…)
心の中でため息をつきながら、運ばれてきたデザートに目をやると、見たこともないような盛り付けの、それはそれはキレイなスイーツだった
『な~に~こ~れ~
こんなキレイで美味しそうなスイーツ見たことな~い!
う~ん…
このイチゴのムースとソースを絡めて食べた時のなんとも言えない絶妙なハーモニー…
この端にあるマカロンも今まで食べたことないくらい美味しい~
あぁ私、今死んでもいい~
・・あっ、でも今死んだら、録画してるドラマ見れないな…
それに、美智子と温泉旅行も行かなきゃだし…
でも美味しい~
幸せ~』
はっ、と気付いた時には、既に遅し
やっちまった!
またトリップしてしまった!
呆れてるんだろうなと思いながら、恐る恐るお見合い相手である、皆川慎一郎さんの顔を見上げてみたら、予想外にもとてもとても優しい笑顔
そして一言
「お帰り」
そんな反応をした人は初めてで、呆気にとられて出た私の言葉は
「ただいま」
まだ呆けている私に、慎一郎さんは、ぷっと吹き出して
「祥子さん、また会ってくれませんか?」
はいぃっ?
今度は我慢できないとばかりに、声を出して笑っていた
それから何回かデートして、お互いの親にも挨拶して、
お見合いから半年後には結婚式
そして今からハネムーン出発です