表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/47

15

ちょっと短めです

野球の練習に連れて行ってもらった日は、すごく楽しかった


慎一郎さんは約束どおり、メンバーに紹介してくれた

散々冷やかされたけど、みんなに祝福されて、お祝いまで戴いた


慎一郎さんはサードを守ってて、久しぶりとは思えないくらい、華麗にプレーしてた

それはもう、本当に格好よかった

トリップしそうなのを、我慢するのが大変なくらいだった


「奥さんの前だからって、張り切ってたら怪我しますよ〜」

なんて言われてた


慎一郎さんの言う通り、他のメンバーの家族の方も来ていて、ずっとお喋りしながら練習を見てた


専ら私たちの新婚生活の質問ばかりだったけど……



練習が終わって、家に帰る車の中で慎一郎さんが聞いてきた



「祥子、今日は楽しかった?」

「はい。すごく楽しかった。また連れて行って下さいね」

「うん、もちろん」

「また慎一郎さんのユニフォーム姿見たいし」

「僕のユニフォーム姿?」

運転しながら、可笑しそうに笑ってる

「そんなに気に入った?ユニフォーム姿。じゃ毎日、家でも着てようか?」

「……う〜ん。それはちょっと違う気がする……」

私がそう言ったら、慎一郎さんは声を出して笑ってた


なんだか、こんな日常が幸せに思えるなんて、慎一郎さんと結婚してよかったと、しみじみ思った




そんなある日のこと、夕食を食べているときに、慎一郎さんから頼み事があるんだけどと言われた



「えっ?パーティーに?」

「うん、そうなんだ。随分断ったんだけど……」



慎一郎さんがアメリカで勤務していた頃の取引先の担当者が、日本支社の支社長に就任することになり、お披露目を兼ねた就任パーティーをすると

だから、是非慎一郎さんにも出席して欲しいと……


それだけなら良かったんだけど、その支社長さんが、慎一郎さんが結婚したことを知り、是非夫婦で出席して欲しいと言ってきたらしい



「妻は会社の人間じゃないのでって何度も言ったんだけどね……」

「支社長さんって、アメリカ人……だよね?」

「うん……やっぱり断るよ。そういう場所に祥子を引っ張りだしたくないし」


そういう訳にはいかないだろうと言うのは、私でも簡単に想像できた

慎一郎さんが私に頼むこと自体、安易に断ることが出来ないんだろう



「……慎一郎さん、私パーティーに出席します」

「祥子……」

「慎一郎さんと結婚するとき、こういうこともあるだろうなと、ちょっと覚悟してたから」



慎一郎さんは、大企業の部長さんだ

いずれは、役員になることは間違いないだろうと、結婚式の時に会社の人にも言われていた

だからなんとなく、そういう場所に夫婦同伴で行くこともあるのかなと、漠然と思っていた



「祥子……」

「慎一郎さん、ちゃんとフォローしてくれるよね?」

「当たり前。ありがとう、祥子……助かったよ」



『助かったよ』


そんな言葉を慎一郎さんから聞いたのは、初めてだった

本当に断れなかったんだと改めて実感した



パーティーまで、あと1ヶ月半

慎一郎さんの足だけは引っ張りたくない

私は覚悟を決めた


読んで下さってありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ