三.セネラル
俺達は首やフクロウの死骸を〝引き換える〟ために、
現在地のすぐそばにある町を目指した。
そこからしばらく歩いたところに、小さな町はあった。
「セネラル……? 聞いたことのない町だね」
「でも〝引換所〟があればいいじゃん!」
あれだけ重かったカノンの足取りも、セネラルに着く頃にはすでに軽くなり、
嬉しそうに笑っていた。
この町に着いてからは、ひとまず〝引換所〟に行くと決めていた。
彼女の機嫌が悪くならないうちに、それが本音だ。
「……やっぱり、じろじろ見られるのは好きになれないなぁ」
ため息交じりの呟きが雑踏の中で聞こえた。
「あれがリマークブル?」
「まだ若いわねぇ……本当に人の……」
「おい! それ以上は……」
「私達まで……られちゃうわ、あれが……?」
「あんまり……次の……れるぞ」
「そうね、さっさと……」
あたりを見渡すと、こっちを見ながらひそひそと話す中年の夫婦を見つけた。
目が合ったので軽く会釈すると、
「殺される」
小さく、怯えたように一言残して彼らは小走りに逃げて行った。
「誰がいつ人を殺したって言うんだよ」
苛立ちを隠せずにいると、何か変なオーラでもでているのか
周りの人々が避けていくのがわかった。
「ヴァン? 落ち着いて?」
彼女に言われて、やっと頭に血が昇るのが収まった……気がした。
そういえば何も考えずに歩いていたけど、ここはどこなんだろう?
ふと我に返り、左を歩いているカノンを見ると右斜め後方を指差した。
「行き過ぎたよ?」
笑いを堪えている彼女を見て、ここまで失笑したのは何年ぶりだろうか。
いや、初めてであって欲しいと、笑っている彼女の横で切に願っていた。