二.朝の靄
朝、目が覚めて夜眠るのは当たり前の事だろう。
時計をみれば、とっくに起きなくてはならない時間だった。
「仕方がない……起きるか」
まだ動きの鈍い体を無理やり起こして、身支度を整えた。
「きっとカノンも気づいただろうな」
そう呟くと、彼はゆっくりと家をでた。
そして案の定、カノンは家の前に立っていた。
「遅い! 今日こそもっと大きな手掛かりを手にいれるの!」
「昨日の夜の騒ぎで眠れなかったん……」
「そんな言い訳は聞かないよ! 私の家の方が近かったんだからね!」
言葉を遮られて言い訳もできないのも案の定。
膨れっ面のまま、カノンは歩き始めた。
しばらくぶつぶつと文句を言いながら歩いていたが、
「ちゃんとヴァンが朝起きないからいけないんだよ?」
だいぶ落ち着いてきたのか、言葉に棘がなくなり始めた。
「次から気をつけるよ」
苦笑いしながら答えると、満足したのか彼女の顔に笑顔が見え始めた。
昨日の夜ご飯はどっちが豪華だの他愛のない話をしながら、
昨日から脳裏に焼きついている映像のある場所までやってきた。
「……また……なんだね」
突然、カノンは悲しそうに俯き言った。
「あぁ……また助けられなかった。」
そこにはふくろうが一羽、人間の首が五つ落ちていた。
「みつからないうちに片付けよう」
「リマークブルとして、必ずいつか……」
二人はポツリと呟いた。
ヴァンは、一つ首を拾った。
生きていた時の温かさなど微塵も感じ取れなく、
血液が一滴もないのか、顔は真っ青だった。
しかしその顔は笑顔で、太陽は空の真ん中で輝いていた。
「ほら、カノン……?」
フクロウの死骸を手渡すと、小さく頷いてソレを受け取った。
片づけが終わったのは、それからすぐのことだった。