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なんでもよくない。

「おはよ!」

いつもの月待さんの元気な挨拶だ。

「おはよう」

「今日は私がいるから寂しくないね」

最近はにやにやしながらこんなことを言ってくるようになった。毎回顔を赤くする僕を楽しんでいるようだ。

「はいはいそうだね」

「あーそんな反応だと明日休んじゃうぞー」

そんな冗談半分の発言に嫌だと思ってしまう自分に恥ずかしさと、言い表せない気持ちを抱いてしまう。

放課後になり、いつものように月待さんと一緒に図書室へ向かう。この時間も不思議と前よりも心地いいと思っている自分がいた。図書室に着くと月待さんがいつもとは違う雰囲気で口を開く。

「柊くんさ、前に言ってたよね。なんでもいい、どうでもいいって」

「え、ああ、うん」

図書委員のカウンターに着きながら、聞かれたその問いに思い出しながら答える。

「私もさ、分かったよ。その気持ち。」

「え?」

「私、最後まで学校いられないかも」

彼女が口にしたその言葉を理解するのに少し時間がかかった。だって、いつもみたいに元気に挨拶して、冗談も言ってきたりして、これからもこうして学校生活を送るのだと、そう勝手に思っていたのに。不意に彼女の車椅子が目に入った。

「まって、え、どういうこと?」

「この間休んだでしょ?あの時起きたら膝から下の感覚が完全になくなってて、病院に検査に行ってたの」

嫌な予感がする。その先を聞かなくても、どうなるのか、想像できてしまうくらいに。

「あと一年で全身が動かなくなるって、心臓も」

聞きたくなかった言葉が彼女の口からこぼれ落ちる。早すぎる、後一年?それじゃあ月待さんが思い描いた学校生活が、青春が、人生が送れないじゃないか。おかしい、そんなの絶対に。

「だからさ、もうどうでもいいやって、なんでもいいやって思ったの、もう本当に」

そう言った彼女の横顔は何もかも諦めた、あの時の自分によく似ていた。

「...よくない」

「え?」

「なんでもよくない!」

気づけば椅子から立ち上がっていた。図書室だというのに大きな声で、何を言っているんだろう。

ふと彼女の顔を見れば、目から涙が溢れていた。彼女のそんな顔を見たのは初めてだった。いつも明るく笑顔で元気一杯のその顔が、今は悔しそうな、子供がほしいものを諦めたくないような、そんな顔で目から大粒の涙を流している。

「どうしたら、ねえどうしたらいいの?わかんないよ』

両手で顔を覆いながら泣きじゃくっている彼女を見ていたら、体が勝手に動いていた。

「大丈夫。一緒に叶えよう。僕でよかったら付き合うから」

そう言った僕は後ろから彼女を抱きしめていた。一瞬彼女の動きが止まる。その後すぐに肩を大きく揺らして泣き始めた。自分でもどうしてこんな事をしたのかわからない。ただ泣いている彼女を見て、そうしなきゃいけない、そうしたいと、強く想った。

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