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君が送りたい人生

僕はあの日受け取った小説を読んでいる。委員会で出す本が決まっていないと言うのももちろんあるが、あの本を渡した後の彼女の横顔が忘れられなくて、読まずにはいられなかった。

その本には、これでもかと言うほどベタで甘い恋愛が書かれていた。主人公の女の子は高校の入学式で一目惚れをするし、学校で告白はするし、遊園地にも海のみえるカフェにもいくし、キスはするし、ただ一つその女の子が病気だと言うことを除けば。


次の日、いつものように月待さんと図書室へ向かう。

「今日は委員会で出す本の締め切りだけど、本、決まった?」

「うん、月待さんと同じ本にするよ」

「え、ほんと!?...どうして?」

「え、まあ時間もなかったし、これで良いかなって。案外面白かったし」

時間もなかったが、面白かったのは本当だった。面白かったというか、不思議と読み入ってしまった。僕は案外恋愛小説が好きなのかもしれないと思ってしまうほどに。

「そっか、うん、嬉しいな」

月待さんは本当に嬉しそうな顔でそう言った。

「嬉しいの?」

「うん、嬉しい。柊くんが私と一緒の本を選んでくれて」

その言葉を聞いてグッと喉の奥が熱くなった。

図書室に着き、カウンターで図書委員をしていると、月待さんが不意に聞いてきた。

「どこが一番好きだった?」

「うーん、ごめんまだ全部読めてないからあれだけど、どこが好きってよりは、主人公の女の子が本当に幸せそうなんだけど、どこか儚くて、見ていたくなるところが好きかな」

意外とちゃんとした返答が返せた自分に驚いた。

「ふーん、意外とちゃんと読んでるじゃん」

ニヤついたような笑顔でこちらを見る彼女を見て頬が熱くなるのを感じた。

「じゃあ私が送りたい人生もちゃんと理解できたんだね」

「え?ああ、そうなるのかな」

そう、この小説を読んでいるとき、不思議と主人公の女の子と月待さんを重ねて読んでしまうことがある。病気の女の子、女子高校生、性格が明るい、色々な要素が月待さんと似ている。

「私、この女の子みたいになりたいの。こんな幸せそうな女の子に」

もう十分似ていると思うけど、と思いながら本を借りにきた生徒の対応をした。

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