となりの君
校舎の玄関まで辿り着くと、上履きに履き替えた。
入学式は体育館で行われるので体育館に向かう。体育館にはもちろんあの車椅子の子もいた。
ありふれた入学式が終わり、クラスを確認してから教室に向かう。
大地と相馬とは違うクラスになってしまった。最悪だ。
教室に着くと座席表が貼られていたので、渋々自分の席を確認してから席に着く。
今日は入学式の後に各々の教室にてHRを行って終了だ。もうすぐHRの時間になろうとしているのだけれど、自分のとなりの席は空席のままだった。入学式の日に欠席か。そんなことを思っていると教室のドアが開く。担任の先生らしき人とあの車椅子の女の子が入ってきた。先生が僕のとなりの席に指を差し女の子に何か言っている。まさか。
女の子はクラス中の視線を集めながら自分で車椅子を操作して、僕のとなりまできた。そう、僕のとなりの空席は彼女の席だったのだ。彼女は自分の机につくなり、僕の方を見て笑顔で会釈してきた。僕も無意識に会釈を返す。
「それではHRを始めます」
先生の声にハッとして二人とも前を向き直る。まさか彼女がとなりだったなんて。少し驚いたがすぐに
”どうでもいいか”
と、いつものようにぼーっと先生の話を聞いていた。
「...以上でHRを終わります」
長い説明書のような話が終わり、HRが終わった。あとは帰るだけか、と立ち上がろうとした時、
「柊木君!...だよね?」
となりの席から元気で綺麗な声で呼び止められた。
「そ、そうだけど...?」
急に呼ばれたので少し驚きながら振り向くと、車椅子の彼女がこちらを向いていた。
「ごめんね、急に。先生が座席表で私の席を教えてくれた時となりの席の人の名前も教えてくれて...。」
「ああ、うん。」
「あ、私”月待 美波”っていいます。となりの席になりました。」
「あ、僕は柊木 奏です。」
いきなり自己紹介をされたのでつい、自分も返してしまった。
「ふふ、よろしくね、奏くん!」
自分の名前を呼んだ彼女の顔は、窓から見える満開の桜よりも鮮やかで、咲き誇ったような笑顔だった。
...そう、それは”彼女が車椅子に乗った女の子”ということを忘れてしまうくらいに。




