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何でもいい。

「何でもいいよ」


僕はいつものようにそう応えた。家で母に「今日の晩ごはんなにがいい?」そう聞かれてなにを考える訳でもなく、手に持ったスマートフォンでSNSを開きながら。


「新総裁⚪︎⚪︎氏に決定!」

ふと見た投稿にそう書いてあった。リプライには「本当に⚪︎⚪︎さんで良かった!」「これからの日本が楽しみ」「やっと明るい未来が見えた」とか、比較的明るい言葉が多かった。...どうでもいいけど。

正直これからの日本とか、未来とかそんなことを考えるような人間じゃない。日本の未来が変わったところで自分の未来が大きく変わることはないし、希望が見えるほど世界が変わる訳でもない。だから、どうだって良かった。


目覚ましが鳴る。朝だ。眠い目を擦りながら朝食を済ませる。スマホを見ながら食べた朝食は何の味がしたのかも分からなかった。新品の制服に袖を通し、玄関で腕時計を確認しながら待つ親のもとへ。そう、今日は高校入学の日。玄関を出れば桜の花びらが頬を撫でた。

「天気の良い朝ね」

「そうだね」

(かなで)、緊張してる?」

「別に」

そんな他愛のない会話をしながら最寄り駅へ向かう。入学する高校は最寄り駅から二駅ほどで着く比較的近い学校だ。ただ家が近いから、友達もそこにいくと言っていたから。そんな適当な理由で選んだ高校だった。


学校に着くと校門には「入学式」と大きく書かれた看板が立っていた。

「あら、佐藤さん、鈴木さん」

「あらー!おはようございます柊木さん」

うちの親が挨拶したのは小学校からの友達の相馬(そうま)大地(だいち)の親だ。

「よーかなで」

「おーかなでじゃん」

この二人は小学校、中学校とよく遊んでいた友達だ。よく遊んでいたと言っても昼休みにドッチボールをするとか、休み時間に話すとか、そんな感じ。

「おはよ。相馬、大地」

この二人が同じ高校なのは大きい。全員知らない人からスタートする高校生活なんて僕にとっては地獄だ。

そんなことを思いながら校門前に留まっていると

「すいません、失礼しまーす」

車椅子に乗った女の子とその親と思われる二人が僕たちの横を通った。ふと女の子を見ると目が合った。長い髪に整った顔、車椅子に座っているのも相まってお嬢様のように見えたのはきっと僕だけじゃないはず。

「かなで、いこーぜ」

「あ、うん」

先に歩き出していた大地に呼ばれて校門をくぐる。桜の花びらが頬を撫でる。可愛かった。そんなことを思っている自分に呆れながら、校舎に向かっていく。

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