⑤ルカに会いたい
私はルカに会いに行く決心をした。
だけど想いを伝える事が出来なければ今までと何も変わらない…
その時思い出したのが幼い頃にルカと約束したあの花だった。
アスターという希少な花を見つける事が出来たら…その花を探し出せたら勇気が出せるかも、そして満月の夜に2人で花開く瞬間をみて…想いを告げることが出来たら。
その日から私は毎日森の中を探し回った。
奇跡の花と言われてるくらいなのだからそうそう簡単には見付からないだろう…。
1人で雨の日も暑い日も寒い日も諦めずに探し続けた。
村の中でも毎日朝早く森へ入り、暗くなる直前まで帰って来ない私を見ておかしくなったと馬鹿にして騒ぎ立てる人達もいたが全く気にならなかった。
早く見付けてルカに会いに行くんだ、そう思ったら辛い捜索も他の人に馬鹿にされる事も苦にならなかった。
そして、数ヶ月とうとう見付けたのだ!
その日はいつもより森の奥に入ってしまい暗くなる前に戻ろうかと思った時、突然突風が吹きかぶっていた帽子が風で飛ばされた。
追いかけていくうちに今まで見たことがない場所にぽっと出たのだ…何ヵ月も森の中を捜索したのに不思議だわ…。
そこでついに探していたアスターの花を崖の下に見付けた。
正確には蕾(摘んだ花は満月の夜に1度だけ咲いて枯れてしまうらしい)だけと。
見付けたのは良いが…どう考えても簡単に取れるような場所ではない。
探し求めていた花があったのに摘めないなんて…。
悔しくて仕方がなかった…
あの花は摘んで満月の夜に咲くまでは枯れないはず、とにかく1度戻って考えてみよう。
場所をしっかりと覚えその日は帰路に着いた。
帰宅してからもどうやって崖の下に行こうかと悶々と考えたが解決策は出てこなかった。
枯れないといってもずっとそこにあるとは限らない、毎日花があるか確認しては村に戻るという日々を繰り返した。
次第に焦りを感じ口数も減って塞ぎ込むようになってしまう。それを見た姉が何かあるなら言ってみろと声を掛けてきた。
いつもだったら決して言わないのによほど参っていたのかもしれない、今までの事や悩みを話してしまった。
姉もルカが好きなんだと思っていたから気まずいしアドバイスなんて何もくれないだろうに何故話したのか…。
言わなきゃ良かったと後悔した。
しかし予想外にも姉が全てを解決してくれたのだ。
「これは…?」
姉が小さな瓶に入った液体を私の手に乗せた。
「ふふ、これはね魔法薬よ。何と数分だけ空を飛べるようになるの!」
空を飛べる…?もしそれが本当なら…。
崖の下に行って花を摘めるの?
「ものすごく高価な薬だったのよ、でも妹の為になら惜しくはないわ。たまには姉らしい事してあげないとね」
幼い頃から喧嘩ばかりしていた。
嫌いじゃないけど、口うるさい姉が鬱陶しかったし、腹がたつことのが多かった。
「…姉さんはルカが好きだったんじゃないの?私に協力してくれるの?」
ずっと口には出さなかったが気になっていたことを初めて聞いてみた。
「勿論好きよ、でも弟の様な存在としてよ。異性の好きとは違うわ」
そうだったのね…私勘違いして焼きもち焼いてたなんて。
姉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「姉さんごめん…私、可愛げのない妹だったわ」
「そうね、確かに。でも私の妹はそんなあなたしかいんだから、これからも宜しくね」
こんな時でも正直過ぎる姉と顔を見合わると2人で吹き出してしまった。
姉さんにいつか恩返しするわ!そう心に決め早速はやる気持ちを押さえきれず森へと向かった。
その時後ろから姉が叫んでる声が聞こえた
「エリスー!薬を飲んだら必ず1度その場で効果を試すのよっ」
その声に返事をする時間も惜しく、期待に胸を膨らませながら森の奥深くへと急いで走っていった。