表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

③村の祭り

また月日は流れ2人は15歳となった。


今日は年に1度の村のお祭りだ。

といっても小さな貧しい村なので本当にささやか祭りなのだ。


各家庭が料理を持ち寄り食べ飲んで踊るシンプルながらも村人が一番楽しみにしている催しである。


私の家でも朝からお菓子や料理を作るので大忙し。


「ちょっと、エリス、あんたまた焦がして」


「それはお姉ちゃんの小麦粉の配分がおかしかったからでしょう」


相変わらず口喧嘩が絶えない2人にお母さんが

「2人共いい加減にしなさいっ!もう幼い子供じゃないんだから」


それを見ていた父さんは女3人からの飛び火を警戒し

「祭りの準備を手伝ってくる」

と言ってそそくさと家を出ていった。


「私、ルカに特別に手作りクッキーを作ろうかしら」

姉が突然言い出したので

「やめといた方が良いわよ、ルカ甘い物苦手だから」

と、嘘をついた。ルカは甘い物が大好きなのに。


「ちょっと、何嘘ついてんのよ、ルカ甘い物好きじゃない」


速攻バレたが…。


「悔しいならあんたも作ればいいじゃないの、焦げ焦げクッキー、ぷっっっ」


「はぁ!?最初から自分で作れば失敗しないしっ!」

また口喧嘩を始めた2人に母の大絶叫が響いた。


「本当にいい加減にしてーーーっっ」



***



「ルカ!リーシェさん!」

2人の姿を見つけ声を掛ける。


いつものルカなのにお祭りのせいでテンションがあがってるのか何だか雰囲気が違って見えドキドキしてしまう。


リーシェさんも相変わらず綺麗だ、うちの姉とは雲泥の差だわ。見た目も、性格も!


「僕も今エリスの家へ向かえに行くとこだったんだよ」


「エリスちゃんこんにちは、お祭り楽しみましょうね」


ルカの言葉に喜びながらもリーシェさんに挨拶する。

「リーシェさんこんにちは、はい!楽しみですっ」


**


お祭りはトラブルもなく村中の皆が大いに楽しんだ。日も暮れ最後は火を囲みながら思い思いに好きな人とダンスを踊るこの祭りのメインイベントが始まる。


家族で踊るのも良し、勿論恋人とも。

この日に告白や求婚をする人も少なくはないので村人は今か今かと期待して待っているのだ。


実際に始める人がいると村中のバックアップが凄まじく大いに盛り上がりを見せ、成功率はほぼ100%になるとかなんとか。


ルカを踊りに誘いたくてソワソワしてるとルカの方から誘ってくれた。


「エリス嬢、どうか僕と踊ってくれませんか?」

ちょっとおどけながらルカが言う。


「はい!是非お願いします!」

もっと女らしく言えば良かったがこれが今の私なので仕方ない。


ダンスなんてこの村では誰も習ったことなどないので好きなように体を動かすだけなのだが、好きな人と思いっきり笑いあって思いっきり踊るのはきっと豪華な舞踏会よりも楽しいと思う。舞踏会なんて行った事ないけどね...。


私とルカは顔を見合わせながら2人での踊りを心から楽しんだ。踊りが終わるとルカが

「エリス、ちょっとこっちに来て」

と、祭りの輪から少し外れた場所へと連れていく。


何だろうと内心ドキドキしながらも大人しく着いていった。


するとポケットから何かを取り出し私の手に乗せ

「これ、僕が作ったんだ。エリスに貰ってほしくて…」


ルカが渡してくれた物を見るととても綺麗なネックレスだった。

「え…これを私に…?」


「うん、普通のネックレスじゃないよ、僕の魔力を付与した物なんだ」


魔力!?え?ルカ魔力があるの???

ネックレスを貰った嬉さとルカに魔力がある驚きで目を見開いてしまう。


「ルカ、魔力があるの??」


「うん、あることはあるけど本当にささいな位しかないから魔法なんかは使えないし、恥ずかしくてこの村では言った事がないんだ」


この世界には魔法があり魔力を持つ存在は確かにいるが貴族の一握りの人間しかいないと都会からずっと離れた村に住んでる私でさえ知っている。


なので少しの魔力だとしてもとんでもなく凄い事なのにルカは自慢するでもなく恥ずかしそうに言うのだ。


「何をいってるの!ルカ凄いよ!魔力があるなんてめちゃくちゃ格好いいっ」


私がそう言うとルカは一瞬驚いた顔をしたが徐々に頬を染め照れたように微笑んだ。 


「ありがとうエリス、前に馬鹿にされた事があって…それから人に言うのが恥ずかしくて黙ってたんだ。だけど、エリスに何かプレゼントしたくて、それもエリスを守ってくれるような物を」


「守る?」


「うん、そのネックレスには僕が数年をかけて少しずつ魔力を付与し作った防御の魔道具みたいな物なんだ」


ルカが私を守るために数年かけて作ってくれた…それだけであまりに嬉しすぎて言葉が出てこない…でもどれだけ喜んでるかは一目瞭然だった。


「魔道具なんて言える程たいしたものではないかもしれないけど、何よりも心を込めて初めて作ったネックレスなんだ…貰ってくれるかな?」


「勿論よ…ありがとうルカ」


ルカは涙を堪え体を震わせてるエリスに近付くと私の手の上からネックレスを取りそっと首に着けてくれた。


「ありがとう…ルカぁ。一生大事にする!ルカは天才だわ、こんな素敵な物を作れるなんて!本当に本当に嬉しい…」


そう言うと堪えていた涙がボロボロと溢れた。



この日の想い出はずっとエリスの心の中に残った…。


大好きだったルカへの気持ちが愛おしく何よりも大切な人へと変化した特別な日だったから…
























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ