②もどかしい気持ち
それから月日は流れエリスとルカは12歳になっていた。
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私が家から出ようとすると姉のシャノンに呼び止められる。
「エリス、どこ行くのよ、もしかしてルカの所?」
「ええ、そうよルカと森へ行く約束してるの」
待ち合わせの時間がせまっていたので早口で答える。
「なら私も行くわ!待ってて支度するから」
「え?ちょっと…!」
私が反論する間もなく姉は支度をしに自分の部屋へと走って行ってしまう。
何なのよ!
最近ルカと会おうとすると何故か姉も着いてくるようになった…それがすごく嫌だったのに断る事が出来なかった。姉が嫌いではないけどルカとの時間を邪魔されているようで心がモヤモヤとしてしまう。
「お待たせ!」
姉がいつもよりおしゃれをして部屋から出てきた…。
「森へ行くのよ、そんな服じゃ動きにくいし汚れちゃうわよ」
「エリスみたいにいつまでも小猿みたいな子供じゃないの、あんたも少しは女らしくしたら?」
言い返そうと思ったがもう時間がないのでむかつく言葉は聞き流した。
「もう置いてくよ!」
そう言って走って家を飛び出した。
「あ!ちょっと待ってよ!エリスっ」
後ろから姉の叫ぶ声が聞こえたが足を止めずに待ち合わせ場所まで走った。
***
「ルカごめん、またお姉ちゃんが着いてきた…」
待ち合わせ場所に着くと既に待っていたルカにそう告げる。
「シャノンさんも来るの?僕は全然構わないよ」
相変わらず優しいルカ…。
たまにはエリスと2人が良かったな、何て言ってくれてもいいのにさぁ、そんな事言うわけないか…。
少し間を置いてから姉の声が聞こえてきた
「エリスっっ!何で置いてくのよっ!この小猿っ」
ハァハァゼーゼー言いながらもしっかりと着いてきたようだ。
ルカがいる事に気が付くととたんに笑顔になり
「ルカ!私も来ちゃった、会えて嬉しいわ」
「シャノンさんおはようございます、僕も嬉しいです」
何だかムカムカする…。
「もう行こうよっ」
私は森へと足を向けて歩きだした。
後ろからはルカと姉の楽しそうな話し声がする。
せっかく楽しみにしていたのに…1人黙々と歩いているといつの間にか隣にルカがいた。
「エリス、ちょっとペースが早いよ。シャノンさんが着いてこれず途中で休憩してもらってるからいったん戻ろ?」
その言葉を聞いて余計に腹立たしくなり
「そんなにお姉ちゃんと一緒にいたいなら2人で行くといいわ!私は1人で行くから気にしないでっ!」
その頃の私は本当に子供で
自分の思う通りにならなければすぐに機嫌が悪くなるという…そんな私をルカが好きになってくれるはずがないのだ。
1人ずんずんと森の奥へ進む、そう言えばルカは姉を置いて私に着いてきて来れるかも…そんな打算を考えつつチラッと後ろを見てみる。
しかしそこには誰もいなく、ただ静かで穏やかな風景が広がっているだけだった。
ルカは私の所に来てくれなかった…きっと姉の所へ戻っちゃったのね…。
私は酷く悲しくなりボロボロと涙をこぼす…。
あんな意地張らなきゃよかった…そうすれば今日は楽しい1日になったはずなのに、自分の身勝手な行動で最悪な日に変えてしまったのだ。
それよりも、ルカに嫌われてしまったかも…と思うとどうしようもなく苦しくなった。
更に悲しくなって声を上げて泣いてしまう。
すると遠くの方から誰が走ってくるような足音が聞こえ、だんだんと近付いて来るのがわかった。
そして泣いている私の側まで来ると立ち止まって息を整えた。
「ハァハァ…1人にしちゃってごめんエリス…シャノンさんの所に行って今日は家に戻ってもらったよ、ここからは2人で行こう」
よっぽど急いで走って来たのか汗ばんだ顔を袖で拭いながら笑顔で私に言った。
そんなルカを見て私は自分の行動がとても恥ずかしくなった…1人で勝手に怒って周りに当たり散らして、何てみっともないんだろう。
「ルカ…ごめん…私恥ずかしいわ」
ルカの顔を見れなくて下を向いてしまう
「エリスどうしたの?」
「今みっともなくてルカの顔見れないの…」
私がそう言うとルカはちょっとだけ言いにくそうに口を開いた。
「実はさ…今日エリスと2人で森に行くのが楽しみだったんだ。だからシャノンさんには申し訳ないけど、今ちょっと浮かれてるんだ…僕だって恥ずかしやつだよ」
と言って笑う。
その言葉に驚きパッと顔を上げルカを見た。
きっと優しいルカは私に気を遣って言ってくれただけだと思う、なのに今までの暗い気持ちが一瞬にして晴れてしまった。
単純過ぎるけど、嬉くって仕方ない。
するとルカが
「行こう」
と、私の手を取った。
私達は手を繋いで今度はゆっくり歩きながら2人で森での散策を楽しんだ。