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全応探偵  作者: 龍宮路・零・夜斗
第1章 狙われる探偵
4/8

ならば、2つの肩書を使おう

遷宮路は一ノ宮の返事を待たずして、立ち上がりジャケットを羽織る。

「では、早速現場に行こうか」

「現場ですか?」

「そうだ、君の友人の家だ、まだ現状が残っていればいいが」

一ノ宮は首を横に振り、答える。

「残念ながら無理です、もう家族が片付けて空き部屋になってます」

一ノ宮の答えに遷宮路は特段気にせず返す。

「そうか、だが空き部屋であれば自由に見れる、ならばまず見に行くべきだな」

「、、、確かに、言われてみれば、そうですね」


遷宮路は本棚やタンスの引き出し、机の上を右往左往しながら話す。

「そういえば、一ノ宮くんは、大学生で文系だな、アルバイトはしてる様だが実家住みだ。アルバイトはコンビニ、いや、喫茶店だ。それもフロアではなくキッチンだな。家は遠くないようだから学校は黎明大学だろう」

「な、なんで、分かったんですか!?」


遷宮路は手帳を見つけてジャケットの内ポケットに仕まう。そして、机に置いてあるメモ帳に何かを書きながら喋る。

「ならば、2つの肩書を使おう、これからは一ノ宮くんの大学の誰かと会う時は、私は君のアルバイト先の先輩。それ以外の人と会う時は大学のゼミの担当助教授とする。因みにアルバイト先に同じ大学の生徒は居るかな?」

「いいえ、バイト先で同級生に会うと面倒だったことが何度かあったので、隣町にしてます」

「それは良かった、最後に私の名前だが、小林拓実こばやしたくみと呼ぶ様に」

「偽名も使うんですね、分かりました」

遷宮路は自身の設定と偽名を書いたメモを、一ノ宮に渡し玄関へ向かう。

「現場まで案内してくれ、詳しい話はその間に聞く」

「ヤマの家、歩くにしてはここから少し遠いですよ」

「大丈夫だ、車はある」

遷宮路は部屋の何処かにあった車のキーを見せる。


事件の被害者の自宅に行くまでの間、遷宮路は一ノ宮から、事件の詳細を聞いた。


本件の被害者、通称ヤマは本名を鳴宮山地なるみややまじ。一人暮らしの大学生で一ノ宮とは、高校で知り合った友人だ。アルバイトはしていたが、カラオケとしか言わず場所は頑なに教えてくれなかったらしい。

そして一ノ宮が探偵に依頼してまで解決したがった自殺という死因の不可解さ。なぜ一ノ宮が疑問に思ったか、それは単純に鳴宮の頭がいいからだ。鳴宮は黎明大学理工学部生命化学科に在籍していた。


「あんなに頭が良いのに自殺なんて1番無意味なことするとは思えないんです」

「確かに、黎明大の理工学部は偏差値でいえば60後半。頭が良いのは誰でも分かる。しかし、一つ言わせてもらえば、そういう奴ほど1人で思い詰めて、苦しくなって自殺するなんて、最近よく聞くだろ。頭が良い自覚が適度に力を抜く、バカになることを妨げるんだ」

「でも、ヤマとは大学でもよく話すし、アルバイトの愚痴とか言い合ったり、ご飯だって行くぐらい仲がいいんです」

「鳴宮に彼女はいたか?」

「いいえ、ヤマは女子に話しかけるとかは出来ないタチです。だからいないと思います」

「両親とか兄弟とか、親戚との関係はどうだったか分かるか?」

「両親とは特別、仲が良いとか悪いとかは無かったと思います。普通です。時々連絡するとは言ってました。兄弟は1つ下に弟の鳴宮海斗かいとがいます。ヤマとは性格が真反対で、ザ陽キャって感じで、実家に居た時は家に帰らないこともしばしばあったらしいです」

「葬式に出たと言ったな、その時いた人居なかった人は分かるか?」

「鳴宮の両親はいました、弟は見ませんでした。親戚らしい人が数人と、僕含めて高校の同級生が4人です」

「そうか、なら葬儀の出席者の名簿も必要だな」


一ノ宮は葬儀のことを思い出して、気になっていたことを話す。

「そうです!なぜ僕は犯人の目星がついていると思ったのか。葬儀の時、少し空き時間ができて飲み物を買いに行ったんです。その道中でヤマの両親が隠れて喋ってたんです。」

「「やっとアイツが死んだ、」」

「「出来損ないは鳴宮家に必要ない、」」

「こんな事聞いたら誰だって両親が殺したんじゃないかって思いません?」

「それだけを聞いて犯人と決めつけるのはまだ無理だ。着いたな、ここだろ鳴宮山地の家は」

遷宮路は車から外を見渡して頭を引っ込めると、再び車を走らせた。


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