表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

進む

作者: タマネギ

神社の前を通り過ぎると、

頭上を烏が鳴きながら

飛んでいった。

雨上がりの昼下りになる。


蒸し暑さは変わらず、

日が差してきた分、

尚更、暑くなりそうで、

疲れたなと呟いていた。


蒸し暑さは即ち、疲れと

感じるのは、子供の頃から

変わっていない。

他所の人もそうではないか。


いつものように父親の世話に

向かおうとしていた。

その後で仕事もあった。

早めに事を運びたかった。


ふと烏の鳴き声が

久しぶりに聞こえたと思った。

晴れてくるからだろうけれど、

予報は曇のマークだった。


雨は降らないとしても、

曇り空が続いてゆくらしい。

それを知るたびに、

それでも乾くと覚悟する。


大した意味はない。

畑の水やりを思うだけで。

傘のマークを見ても、

降らないと安心できない。


親の世話と仕事と畑と、

それから、あれとあれと、

あれとあれと、を

思い浮かべては疲れている。


いつも、何にも考えすに、

休日はテレビを見ながら、

居眠りをしていること、

それしか頭にはなかった。


なるようになる、で、

曇り空のような日常を

傘を持つか持たぬか考えずに、

ご都合主義で暮らしてきた。


そうであったから今で、

そうであったからここで、

たくさんの、あれ、を

抱えたのは間違いない。


烏は鳴きながら、

どこかへ飛んでゆくもの。

大切な巣に帰ったか、

仲間のいる餌場に行ったのか。


なるようになるでは、

それはずっとわからない。

自分の方向さえも、

曇り空の下、霧の中だ。


おーい、誰かいないか。

神社の森に声をかけたくなる。

蒸し暑いのは疲れたと同じ。

だからね、少しでも進む。


烏の行く先がわからなくても、

向いている方向が見えなくても、

疲れたと感じて止まることは、

自分らしくないとして。


神社の前を通り過ぎたのは、

父親の家に行くからだった。

烏と蒸し暑さのせいか、

仕事も一緒に少し忘れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ