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リリース日

『おはようございます!リリース日開始まで残り23時間59分と となりました!今日も素晴らしい日をお送りください』


世界に響き渡る朝のアナウンス。それを聞いたエレノアはゆっくりとキングサイズのベットから起き上がった。例えゲームの中だとしても規則正しい生活を送ることは現実世界同様同じだ。

フラフラとした足取りでエレノアは食堂に向かう。

そこはたった1人が食事を取るにしては大き過ぎる程の食堂だった為最初は少しばかり気になってはいたがその内気にならなくなっていった。

そしてこの食堂に合う無駄に豪華な椅子に腰掛ける。


「今日の朝ごはんは?」


エレノアはそう無機質なメイドに話しかける。


「目玉焼きと野菜、ベーコンをパンに挟んだものでございます。お飲み物は何になさいますか?」


「牛乳で」


「かしこまりました」


何気ない朝のやり取りをしながらエレノアは黙々と無機質なメイドが作ったサンドウィッチを食べる。

もうこの生活も慣れたものだ。最初は色々と居心地が悪かったが人間案外適応力があると知った。

あっ、私人間じゃなくて魔族だった。


「もうリリース日まで1日かぁ…。意外に早かったな」


世界アナウンスと共に起き、無機質なメイドが作った朝食を食べ、城下へ降りて敵性エネミーを狩る。そんな毎日を送っていたらもうリリース日まで残り1日だ。こんななんの変哲もない毎日を過ごしていると飽き飽きしてくるかもしれないが、何気に毎日が充実している。何せ敵性エネミーを倒すとLvがアップし、強くなったと実感出来る。この時の感覚が辞められずこの生活をずっと繰り返している。この世界にまともな娯楽というものがあるのかは分からないが、少なくとも今の私にはこのレベリングがまさに娯楽だ。

そして固有スキル〈選択〉は対象以外に私にも付与出来ることが出来た。これも色々と検証がてら使った結果だろう。それによって私の弱点である陽射しを何とか克服出来ている。


その後私はいつもの服に着替え城下の森へと向かった。

この服もこの1ヶ月で自分好みにアレンジを加えまくったりした。そしていつの間にか同じ服が何着もクローゼットにかけてあったのは謎だ。

もちろん着た服は毎日洗っている。無機質なメイドがな。


そしていつもと変わらない1日が過ぎ、ついにリリース当日となった。


『おはようございます!本日は記念すべき〈エレノア〉のリリース開始日です!今日という日を祝福しましょう!』


いつもよりも早い時間に世界アナウンスが流れた。やはりこれもリリース開始日だからだろうな。そして私もいつもよりも早い時間に起きた。

この1ヶ月ひたすらレベリングを繰り返した私はこの森では敵無しの生態系の頂点に君臨したと言っていもいい。地上の敵性エネミーの強さは分からないが少なくとも始めたてのプレイヤーには当分遅れは取らないだろう。


そんなわけで今日はリリース開始までゆっくりと城内で過ごすことにした。別段やることが無いので城内から見える空に大きく映し出されたカウントダウンを眺めていた。


ついに私以外の人がこの世界に足を踏み入れると考えるとワクワクする。思えばこの1ヶ月色々あった。母親が交通事故で亡くなり、私は下半身麻痺で歩けなくなり、クソ親父に実験台にされて今この状態だ。私は元々感情が薄いせいで悲しみという感情が薄らいでいってしまっている。クソ親父の所業でさえ段々と薄れてきてのが中々に腹立たしい。もしクソ親父とまた出会う機会があるのであれば一発顔に拳をぶつけてみたいものだ。


そしてその時はやって来た。

カウントダウンは0になり世界に騒がしい音楽が流れ始めた。


『〔エレノア〕ついにリリースです!この世界はあなたの中に眠る潜在能力を十分に活かせる世界です!さぁ!ここからあなたの壮大な冒険が始まります』


ついに始まったか。

まずは地上に降りることから始めるか。


エレノアの居るこのダンジョンは空中に浮かぶ1つの島のような所だ。それも雲の上に存在している為普通に降りようとすればそれだけでアウトだろう。だがエレノアの選んだ種族は魔族:〔吸血種〕でありその副産物としてコウモリのような翼を背中に生やす事が可能になった為楽に降りることが出来る。目的地はエレノアが最初に訪れた町の近く。なるべく人に見られないようにしたかったからだ。


「ダンジョン…最初の町の近くまで行って」


ダンジョンの主であるエレノアはダンジョンにそう命じ最初の町に向かうべくダンジョンは移動を開始した。普段はゆっくりと世界を回っている仕様にしている。補足だがエレノアはダンジョン所有者だがダンジョンマスターでは無い。なのでダンジョンコアを破壊されてもエレノアは死ぬことは無いが、ダンジョンは消滅する仕様となっている。本来のダンジョンマスターよりは融通が効かないが、普通に家兼移動手段として使えているのでエレノアは十分に思っている。


十数分後ダンジョンは最初の町の近くの上空に到着した。森の一番端から下を覗いても雲が邪魔をして上手く地上が見えない。


「いざ」


頭から落ちるようにして空中ダンジョンから飛び降りる。そしてスキル〈翼顕現〉を使用してゆっくりと地上に降りていった。

雲を突き抜けるとそこには色鮮やかな花火が町から放たれていた。

そして町の至る所に人が居り、とても賑やかな様子が確認できた。

エレノアはゆっくりと誰も気づかれないように町の外の影に降り立った。

そして遠目でも分かるほど最初にここに来た時とは別物と感じるほどに美しく大きな壁が町を囲んでいた。


「まずは現実世界の情報を集めようかな」


この世界に生を与えられて一度も現実世界の情報を得られて居ない。この1ヶ月でいったいどのような事が起こったのか非常に気になる。それにあのクソ親父の事も分かるかもしれないからな。


町の中に入ると所狭しと大勢の人が楽しそうに騒いでいた。そして前来た時は居なかったNPC達はさながら一つの生命体と思えるほど自然な表情を取りながらプレイヤーと話していた。まさかこれほどまでの技術がこの世に出来ているとは驚きだ。


しばらく町を歩いているとやはりずっと周りから視線を感じる。何か変なものでもついているのか?と最初はは思っていたがその原因は私自身にあった。この世界に最初に来たプレイヤーの髪の色は大体黒、茶色、金色の3色しか居ないが、私は銀髪でありこの1ヶ月少しずつ動きやすいように改造した非売品の服を着ている。さらに吸血種になったことによって耳が少しばかりとんがっていた。この世界に来たてのプレイヤーらしからない格好をしていた。さらにエレノアは美少女と言える容姿をしていた為さらに注目を集めてしまっていた。

その為周りからは━━


「なんだあの美少女は…NPCか?」


「可愛い!」


などの言葉が多く耳に入ってくる。

これはやばいと思ったエレノアは町の裏路地に走り、一旦この場で身を潜めることにした。


「すっかり忘れていた。失態だ…」


エレノアは「はぁ」とため息を吐きながらどうしようか蹲った。



〔エレノア〕基本知識2

『ダンジョンについて』

ダンジョンマスターとダンジョン所有者の違いは言ってしまえばダンジョンコアに縛られているか、縛られていないかです。

ダンジョンマスターはダンジョンコアと一心同体であり魔力量は職業、種族でトップクラス。その魔力量を活かしてダンジョンをカスタムし、罠を張り、敵性エネミーを召喚する。〔エレノア〕では珍しい敵対種と言われる。機能として〈短距離移動〉〈自動ダンジョン修復〉等様々ある。プレイヤーが死んでもコアが破壊されていなければクールタイム無しで何度でもダンジョン内で復活可能(それ相応の魔力を消費)。ダンジョン内でプレイヤーや敵性エネミー(召喚したエネミー以外)が死んだ場合その経験値は全てダンジョンマスターに入る。

習得条件はダンジョンを一番最初に踏破すること。

対してダンジョン所有者はコアとは一心同体では無く、プレイヤーが死ねばそれで終わりであり、ダンジョン所有権は剥奪される。一応敵性エネミーを召喚出来るが自身の魔力が少ないとまともに召喚が出来ない。機能は大体同じである。

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