想像してたのと……
「〈技術:閃迅斬〉」
「ギィエェ!!……エェ……」
ニワトリの様な姿のニューアという敵性エネミーが断末魔の叫びを上げながら倒れた。
そして光の粒子になったニューアの光の粒子はエレノアの体に吸い込まれるように入っていった。
先程使った技は〈技術〉と言い、敵性エネミーを倒しているうちに手に入ったスキルだ。
〈技術〉には様々な種類があるらしく、レア度によって威力も速さも変わってくるらしい。
主に技術は〈剣術〉のスキルを習得すると使えるようになる。
敵性エネミーを倒すか、PVPを繰り返しているうちにGETすることが出来る。
そしてなんと技術の種類は数百種類!
よくこれ程までに技をかんがえられたものだ。
ちなみに私が先程使った〈技術〉はレア度Bらしいのだが、それでも威力、速さが圧倒的だ。
なんせ私でも何が起こったか分からないほどの高速斬撃だからね。
もう速すぎて目が追いつかない。
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Lvが上がりました。
Lv3→Lv4
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頭の中にLvUPによるアナウンスが流れる。
起きてからダンジョンの周りに広がるエリハの森でずっとレベル上げをしているが、未だLv4だ。
ざっと20何体くらい倒しているのにまだLv4ってこのゲーム相当Lvが上がりずらいんだな。
その分1回1回のLvUPによる力の上昇具合は高い。
今私がやるべき事は一人前の力をつけることだ。
私の家でもあるダンジョンを守るためには私自身の力を上げなくてはいけない。
ダンジョンの改築には大量の魔力が必要になる。
今の設備でも充実はしているのだが、もしプレイヤー達が攻めてきた時に防衛する防衛機能が全くないのは心配だ。
その為にも魔力を上げて、ダンジョンに罠などを設置したい。
「グゥアアアァァァ!!!!」
「〈技術:刺突〉」
「グァ……!」
背後の草むらから飛び出してきたオオカミの様な何かの口に白銀の細剣で刺突の技術を使う。
ふぅ……縄張り意識があるのかは知らないけど流石に敵対意識高過ぎない?
この森に入ってから戦い続きでそろそろ嫌になってくる。
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黒狼 討伐ランクE
Lv2
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光の粒子になる前にオオカミの様な何かを〈鑑定〉する。
黒狼ねぇ……。
現実世界に本当に居そう名前してるなぁ。
今のところ苦になる所は無いからこのままLvを少しずつ上げていくか。
現在所有する技術は5種類。
高速斬撃の閃迅斬。貫通力に長けた刺突。
敵の攻撃を剣で防ぎ受け流すことが出来る受け流し。
斬撃を飛ばすことの出来る飛燕。
刃に〈氷魔法〉を一時的に付与して相手を斬りつける斬氷。
どれも敵性エネミーを倒したことによって手に入れた技術だ。
一つ一つの解放条件は不明だが、着々と増えていっていることには変わりない。
これをコンプしようと思ったらどれだけかかるのか考えたくないものだ。
まっ、今私がやる事はひたすらLvを上げることだけだね。
多分このゲームがリリースするのが28日後だからそれまでに一人前の力を付けておきたい。
だって弱いダンジョンマスターなんて聞いたことないからね。
「次はあっちか」
〈気配察知〉と〈探索簡略化〉をフルに使い敵性エネミーを探しては殺る。探しては殺るの繰り返しだ。
もう湧いた瞬間察知しちゃうから湧き潰し同然だ。
私の存在に気づけば相手は自動的に私に襲いかかってくる。
だが相手が私の事を気づかなくても私が襲いかかって殺す。
いや~救いが無いってこういうことなんじゃないかな?
どちらにせよ死ぬのは変わりないんだし。
エレノアの〈気配察知〉と〈探索簡略化〉の範囲は既にこのエリハの森全域を隅々まで見れるほどに広がっていた。
エリハの森の半径は約3kmという広大な大森林にも関わらずエレノアの〈気配察知〉と〈探索簡略化〉はそれを網羅している。
だが大森林全域が手に取るように分かるということはそれだけ情報量が大きいということだ。
普通ならば脳の神経が焼ききれ、強制的にHPが赤に染まる。
なのに何故エレノアは平然としているのか?
それは〈処理高速化〉のスキルをゲットしていたからだ。
〈処理高速化〉は単に脳が行なう情報処理を高速化するだけのスキルだ。
このスキルもあってエレノアの脳は焼き切れずに済んでいた。
「次はあっちか」
スキルの効果によって確認出来ている敵性エネミーの数はおよそ270以上。
そして敵性エネミー1体が再ポップするには1分かかる。
エレノアが今のステータスで近場の敵から順に倒していくと1分間に2匹ずつ消えていく。
明らかにエリハの森の敵性エネミーは全滅するだろう。
それも敵性エネミーを倒し、Lvを上げていく事に倒すペースが早くなっていく。
数時間後
「……やり過ぎたか?」
〈探索簡略化〉と〈気配察知〉を同時に使用していた為そのスキル2つは〈領域探索〉として統合され、精度も範囲も飛躍的に上がった。
しかも〈領域探索〉にスキルが進化したことによって対象の動きを1秒だけ予知する効果も付いてきた。
おかげで敵性エネミーが逃げの一手に徹しようと、1秒とはいえ先の未来が見える。
逃げる方向を瞬時に理解し、それを踏まえて行動を行うことによって簡単に相手を倒せるようになった。
そしてこれが今の現状だ。
〈領域探索〉からは敵性エネミーの反応も消え、ここの空中ダンジョンに居るのはエレノアだけになってしまった。
敵性エネミーの再ポップは何故か止まり。
いくら待っても敵性エネミーの反応が現れることがなかった。
「さて、どうするか」
少しやり過ぎた感はある。
そりゃこんだけ殺戮を繰り返したら居なくなるわな。
途中から楽しくなってきたのもいけなかった。
まさか再ポップが止まるなんて思いもしなかった。
ならどうするか?
そんなの決まっている。
ダンジョンマスターの能力でエリハの森に敵性エネミーもとい防衛エネミーを置けばいいのだ。
これでもかなりLv上がったんだよ?
魔力総量もかなり上がって色々出来るようになったし、何か試しにエネミーを召喚するのも良いかもしれない。
エレノアはダンジョンマスターの力を使い、目の前に透明な表を出した。
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召喚可能エネミー
〇スケルトン
〇ゾンビ
〇インプ
〇オーク
〇ゴブリン
〇スライム
〇黒狼
〇ニューア
〇無機生物
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現在召喚可能エネミーは全部で9種類。
用途によって使い分けたいがどのくらいやれるのか分からない。
ここで言うやれるかとは戦闘力は勿論、的確に私の指示を聞いてくれるかだ。
頭が悪いと指示聞いてくれなそうだしね。
ハッハッハっ!
それにしても最後のエネミー以外全く話効かなそうな気がするのは私だけかな?
まぁそこは召喚してからのお楽しみ。
でもお試しだからなるべく話聞きそうな無機生物にしようかな。
ゴブリンとかオークとか出しても良いけどなんか嫌な感じがするんだよね。
「召喚。無機生物」
エレノアが前に手を突き出し召喚したいエネミーの名を言う。
すると目の前に幾何学模様の魔法陣が現れ少しずつ光の粒子によって形を成していった。
「え」
光の粒子による発行が止まり、無機生物の姿を見たエレノアはついつい驚きの声が漏れてしまった。
何せそこに居たのは1人のにんげんにしかみえないメイドだったからだ。
「何なりとお申し付けください。ご主人様」