プロローグ
〈エレノア〉
それは全世界で大ヒットしていフルダイブ式VRMMOだ。
エレノアは広大な世界を冒険したり、ギルドを作ったり、お店を開いたりと幅広い事が出来るため発売開始と共にブームとなっているゲームだ。
このゲームではキャラの種族を最初から自身で決めることが出来ないが、一定のLvに達するまでに獲得したスキルや今までの行動を基準に自動的にピックアップされた適正のある種族の中から選ぶことによって自分の特性や性格にあったプレイスタイルの種族を選択する事が出来るのが売りだ。
このゲームを作った製作者チームは「自分の天性の適正を活かしてプレイして欲しい」を目標にこのゲームを作り、売り出したようだ。
そして今、エレノアの中であるイベントが開催しようとしていた。
『半年に一度の魔王祭開催です!』
広場の噴水上に設置された空間投影スクリーンに映る明るい女性が半年に一度の祭りを知らせる。それと同時にスクリーンの後ろから色鮮やかな花火が何発も打ち上げられた。
魔王祭。
それは半年に一度だけ開催される強敵に挑戦する為だけに運営が開催している祭りであり今回で三回目の開催だ。
この祭りはギルド対抗戦であり、制限時間内にどれだけボスにダメージを与えられるかによってギルドの順位が決まる言わばギルドランク戦だ。
『今回の魔王祭には前回他のギルドと圧倒的なスコア差をつけた第1位ギルド玉楼も勿論のこと!ギルドランクキング2位バレンシア、3位の蒼生の夜空の貴重な戦いが見れます! 是非是非公式生配信で見ましょう!』
今回の参加ギルド数は72であり前回の参加ギルド数の約2倍を誇っている。これも前回のギルドランク戦の影響だろう。
『そして今回の魔王祭より新たなボスが配置されました。ですので今までの戦法では突破できませんよ♪』
スクリーンの前に集まったプレイヤー達は「おおおおおお!」と嬉しそうに叫んだり、「これはかなり順位が変わりそう」と言ったりと様々だ。
『えーこの後しっかりとした情報を流しますが今ここでざっくりとした事を話しますよ~♪ ルールは前回と同じ! ですがステージは今回魔王祭らしい魔王城が舞台となっております! 』
これまでずっと存在が確認されていたもののリリース当初から謎に包まれていた魔王城がようやくお披露目ということでプレイヤー達は大盛り上がりだ。
今までのルールは広大なステージの何処かに潜んでいるボスエネミーを探し出し、見つけ、倒す。それが今までの魔王祭だった。
だが今回は魔王城ともう既に場所が特定されている。
流石にここまで変わるとは思いもしなかったプレイヤーは数しれず、またこの事を予想出来ていたプレイヤーも中には居ただろう。
『そして皆さんが一番気になっているボス情報の発表もここでしちゃいます♪ 今回のボスはなんと初の人型です! なので対人戦向けプレイヤーを中心として戦うといいかも知れませんね♪ ボスは近接戦と遠距離攻撃を同時に使う厄介な敵です! しっかりとその時の状況を判断しながら戦うとギルドのランキングがグーンと上がりますよ♪』
スクリーンの女性が話終わるとプレイヤー全員に今回の魔王祭のしっかりとしたルール説明とボスに関する情報が開示された。
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【ルール説明】
・ギルドランク戦に参加できる人数は最大20人
・全装備使用可能
・『ステージNo.0魔王城』の第1階から最上階(第7階)まで行き、最上階に居るボスをより早く倒した&ダメージスコアによってギルドの順位が決まります。
・エリハの森の外から一斉にスタートし、中央に存在する魔王城を目指してもらいます。
・制限時間は12時間です。
・第1階の門は複数あり、難易度は完全ランダムです。各ギルド事に見つけ次第まとまって入りましょう。
・最上階のボスを倒せたor制限時間終了と同時にスコアが決まります。
【ボス情報】
・称号《━》
・名前『石Λ√剱k你W亞』
・Lv450
・種族『威Ω奏%U閻mi』
・魔法耐性Lv100
・物理耐性Lv50
・総HP12000
・一定のHPが減少で第二形態
・使用武器は短剣、日本刀
・魔法職に攻撃する時ダメージ50%down
・戦闘職に攻撃する時ダメージ100%up
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この情報を見たプレイヤー全員が思ったことは「力押しが出来ない」だった。
斬撃などの物理耐性はある程度低いが戦闘職に対して攻撃する時ダメージ100%upは破格のものだ。これだと戦闘職であるタンクなどは前線に出すことは出来ない。魔法職にバリアを張ってもらうしか防ぎようがない。
そして魔法耐性はカンストしている為魔法での攻撃で傷つける事は不可能に近い。だがその代わり魔法職に対してダメージは50%downと二分の一にダメージを抑えられる。
そうなると参加人数20人という少ない枠の中で上手い具合に魔法職と戦闘職を入れなくては行けない。だがエリハの森の中央に魔王城がある為前衛であるタンクを連れていかなければ魔王城までの道中の敵性エネミーを対処出来ない。
ここ数年で一番悩まされる魔王祭だと言うことは誰もが察しただろう。
一方プレイヤー達がスクリーンの前で騒いでいる中、ギルドランク戦のステージである『ステージNo.0魔王城』の最上階。王座に座る白髪の少女がゆっくりと銀色の目を開けた。
「めんどくさい祭りに参加させられたものだ」
めんどくさそうな顔をしながら退屈そうに待つ白髪の少女はそう言っているが、本音は退屈しのぎにはなるかとワクワクしながら胸を踊らせていた。