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ゲーム

寒い日が続くと、寝床から出れなくなります……

 レースゲームは車の運転が得意な人ほど有利と考える人もいる。どう思うだろうか?俺は正直「そんなことないだろう」と思っていたのだが……


 「どうよ!私のドライブテクは!」


 「お前、ほんとにこのゲーム初プレイか?」


 今、レースゲームでキャニスにボロ負けしていた。最初の一回は俺の勝ちだったのだが、キャニスはその1レースでコツを掴んだのか、次の試合からは俺のボロ負けだ。


 「やー、このゲーム確かに面白いわね!操作も簡単だし。UVR(非接触仮想現実)ってやっぱりレトロなイメージがあったからあまりプレイしたことなかったけど、結構クオリティー高いのね。」


 「こ、この操作が簡単……?俺、まともにプレイできるようになるのに一か月近くかかったのに……」


 「まあ、私は自動車運転免許も持ってるし、スペースシップ運転免許も持ってるからね。こういう乗り物の操縦は得意よ。」


 「すごいなあ。俺は自動運転に頼り切ってるわ~」


 自動運転車が普及しても、やはり自分で運転したいと考える人も少なからずいる。自分の手足の延長みたいに操作できるのが楽しいとかなんとか。俺には分からないが、キャニスがそう言っていたからそうなのだろう。


 「それにしても、このゲーム。グラフィックにこだわってるね~。水の表現とか雨の表現とかがすごいリアルーー!」


 「やっぱりFDVRじゃあ無い分、細かいところにこだわってるんだろうね。これってオートドライブモードもあるから、自然の中をクルーズするだけっていう楽しみ方もあるよ。」


 「へー、それはいいわね。どうやるの?」


 「ちょっと待ってね……ほい、これでオッケー。」


 「あれ、ミツニの車が消えたけど。」


 「ああ、今同じ車に乗ってるよ。」


 「へ?いないけど」きょろきょろ


 「お互いの姿は見えないよ。FDVRじゃあないんだから。」


 「ああ、そうなのね。」


 大自然の中をのんびりと走る。こうして運転せずに景色を眺めていると、レース中は気付けないような小さな発見があったりする。


 「あ、右見て、右。鹿の群れがこっちを見てる!!」「おお、小鹿もいる。可愛いな。」


 「前見てみろよ。絶景だよ」「うわあ~。大きな滝ね。」


 「あ、左の湖で魚がはねたわよ。」「まじ?今まで気付かんかった……」





 ゲームを始めて2時間ほど経過した。


 「そろそろ終わるか。小腹すいてきたし。」


 「そうね。何かスナック菓子を注文しましょう。」


 「だな。」


 一家に一台設置されているパソコンを起動し、ストアを開く。


 「食品、菓子類、スナック菓子っと。色々あるけど、どれにする?」


 「ミツニのおすすめで。」


 「俺はこういうの普段食べないから分からないんだ。キャニスが注文して。」


 「私もこういうのはあまり食べないのだけれど……まあ、じゃあ私が適当に選ぶわね。」


 そう言って、手際よく注文を始める。野菜チップス・チョコレート菓子・クッキーなどなど、様々なジャンルのスナック菓子をチョイスしている。


 「こんなに食べられるか?」


 「明日の分も買っておこうと思って。」


 「マジで今日は徹夜するのか?」


 「駄目?不味いならいったん帰って明日出直すわよ。」


 「えーと、知っての通り、俺は睡眠時間短くても大丈夫な体質だし、徹夜しても問題ないけど、お前はまずくないか?『睡眠時間8時間は必要』って言ってなかったっけ?」


 「うーん、まあ一日くらい夜更かししても何とかなるわよ。」


 「前に徹夜で遊んだ時、そう言ってたくせに翌日大変なことになっていたよな?」


 「……ミツニの家に寝室は複数無いの?」


 「泊まっていく気かよ!!駄目だよ、うちには寝室は一つしかない。」


 「そっか、じゃあ今日はリビングのソファーであなたが寝て、私がベッドを使うって言うのでどう?」


 「なるほど、その手があるか……ってなんで家主の俺がソファーで寝ないといけないんだよ!!というか、そこまでするなら一回帰ればいいだろう!!」


 「めんどくさいじゃん。寝るためだけに遠い道のりを往復しろというの?」


 「明日も俺の家に来るのは確定なのかよ。明日はそれぞれの家からFDVRゲームしようぜ。」


 「うーん……仕方ないわね。それじゃあ私は晩御飯を食べさせてもらったらお暇させてもらうわ。」


 「了解。それじゃあお菓子のついでに晩御飯も注文しておこうか。」


 「え?!作ってよ。」


 「……分かりましたお嬢様。今晩のディナーはオーガニック食材をふんだんに用いた料理を提供させて頂きます。」


 「あら、お嬢様だなんて……えへへ。とにかく、料理楽しみにしてるわね!!」


 嫌味が通じなかった。もういいや、作ってやるとするか。



 今の時代、プロの料理人や料理研究家なら別だが、普通の人は料理なんて作る機会がないだろう。ほぼすべての料理は水で戻すだけで完成してしまう。しかも、手間暇かけて自作した料理よりも、美味しい。食材を包丁を使って切った経験すらない人だって人口の半分くらいを占めているのではなかろうか。


 俺は古代物語を読む中で、昔食べられていた料理を再現したいと思いオーガニック食材を使った料理を勉強したのだ。そのことがキャニスにバレて以来、時折料理を作ってほしいと言われるのだ。

 「オーガニック食材」の定義は数千年かけて徐々に変化しているようなので、現時点の定義を言っておくと「オーガニック食材=乾燥させたり粉末にしたりされていない食材」のことである。Organism(生命体)の食材という事だ。

 例えば、オーガニック食材の魚と言えば、生け簀で養殖され吊り上げられた魚そのものの事を指す。普通に売られている魚肉は基本的にはタンパク質を合成、整形して作られたいわば偽物だ。無論、後者は栄養バランスが抜群なので体には良い。けれども、「生き物をさばいて食べる」という(俺たちからすると)原始的な食事も嗜好品としては存在しており、高級レストランなどで提供されていることがある。かくいう俺もそういった高級レストランでアルバイトをしていたこともある。客の前で魚をさばき、野菜を切り、盛りつけるという4500年前では当たり前の事も今の人からすれば驚きの連続だ。料理中の様子を撮影されながら作業を行うときは緊張してしょうがない。


 「というか、俺が作る料理美味しいか?」


 「うーん、味で言うとそりゃあ劣っているわよ。」


 「グサ(心臓に弓矢が刺さった音)」


 「でも、ミツニの作る料理、なんだか優しさを感じるの。だから私は好きよ。」


 「そ、そうかな。」


 「例えば、使う野菜なんかは家で育てているのでしょう?」


 「まあね。」


 「そうやって私の為に手間暇かけて作ってくれた料理だもの。愛がこもってて美味しいわ!!」


 「野菜も料理も俺が自分で食べるために作っているもので、決してキャニスの為ではないぞ。ただただ、俺が料理を作った時に限ってお前が遊びに来るだけだ。愛情を込めたこともないぞ。」


 「もー、ツンツンしちゃって~。ともかく、私はミツニの料理は好きよ。これは冗談抜きで。だから今日もおいしい料理作ってね。」


 「了解です。」

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