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討論会 後編

古代語で書かれた文字列を訳すとこんな風に書かれていた。

~~

~~~~

光屈曲を利用した遠隔観測装置というものがある。

まず、ブラックホールによって光の進む道が捻じ曲がる現象が起こり得ることをご存じだろうか。光の道筋を曲げる方法は鏡や光ファイバー以外にも存在するわけだ。

これを利用して遠隔観測装置を作れないだろうかと言う研究がなされている。

……略……

~~~~

~~


 「嘘?!」キャニスが叫ぶ。

 「その技術は現在でも完成していないのよ。古代文明でも同じ発想の研究がなされていたという事?」


 「落ち着き給え、キャニス君。これはな、おそらく小説なんだ。」


 「「小説?」」


 「ああ。同じICチップからスライムやらチートやら転生やら非現実的なことに関する記述がある。だから、ここにある記述は全て古代人の妄想であったと考えてよいだろう。後程、前文の翻訳作業をやってもらうつもりだから、ミツニ君は楽しみにしておいてくれたまえ。」


 「なんだあ~。びっくりしましたよ。古代文明の方が発展していた!なんてことが分かったら大事件ですもの。」とキャニスは言う。あいつ、よくもまあロゼッタ教授の前で委縮せずに話せるなあ。



 「質問宜しいでしょうか?」


 「なんだね、ミツニ君?」


 「これは本当に小説なんでしょうか?何というか、小説にしては些か内容が詳しすぎるように感じます。大衆に向けた娯楽として発信されている内容とは思えないのですが。

  例えば、二枚目のページに書かれている内容は『人の本質はDNAか思考回路かにまつわる議論』についてです。これはちょうど今、我々が頭を抱えて困っている問題ですよね。実際、昨日私が見たネットニュースの記事と古代文明から出てきたっていうこの文章、内容がそっくりです。

  現在、専門家同士が必死になって議論するような内容を、古代文明の人は小説を書くようなノリで行っていたという事でしょうか?私には正直信じられません。」


 「いいところに気が付くね。流石ミツニ君と言ったところか。君が言うように、ここに書かれている内容を古代人が考えていたとは考えにくいのだよ。ちなみに、このチップはいつ頃作られただと思うかね?」


 「正直、実は昨日作られたものですと言われた方が納得しますが……まあ、教授がそういうってことは相当昔なんですよね……宇宙歴500年とかですか?」と俺は言う


 「ミツニ、それは流石にないでしょう~。1000年前の人が我々と同じような科学的問題を考えていたというのはちょっと言い過ぎじゃないの。せいぜい宇宙歴1000年位じゃないの?」とキャニスは言う。


 「正解は宇宙歴マイナス1000年の遺跡だ。」


 「「はあ?!」」


 宇宙歴とは全人類が一つとなり、宇宙進出を活発に始めるようになった記念すべき年を0年としてカウントする年数のカウント方法だ。すなわち、宇宙歴マイナス1000年とは人々がまだ惑星上で暮らしていた頃の遺跡という事になる。


 「そ、それは大発見ですね。まさか、古代人がこんなことを考えていたとは……認識を改めなくてはいけませんね。」


 「ああ、ここまでくると、もはや『我々人類は一度記憶を消されたのだ』と言われた方が納得する。」


 我々は沈黙してしまう。もし、この発見が本当だとすると、そしてこれからもっと多くの証拠が発見されたとなると、人類は一度退化したという事になってしまう。本当なのか?それは。



 「あの~」とここで、先輩が手を上げる。うわ、先輩居たんだ。すっかり忘れていたよ。


 「大発見なのは理解できました。ですが、これを我々に言う意義は何なのでしょう?我々は古代物語研究会であり、サイエンス=ヒストリーを専門とする彼女らと同席する意味が無いような気が……」


 「うむ。当然の疑問だな。実はだな……過去に電子データを送る技術の研究が為されていたんだが、その研究に目途が立ったんだ。」


 「はあ。」


 「人間が退化したというのはあり得なくはないが、可能性としては低いよな。」


 「ですね。」「えっと、まさか……」


 「うむ。そのまさかだ。」


 他のみんなは「え、どういう事?」みたいな顔をしている。が、俺は感付いてしまった。


 「誰かがその技術を使って過去に小説を送信しているかもしれないという事ですね。」


 「いかにもその通り。ところで、この『過去に電子データを送る技術』が悪用されたら大変だという事は容易に想像できるよな。」


 「はい、犯罪グループなどの手に渡ってしまったら大変ですよね。」


 「ああそうだ。だから、我々としては『過去に電子データを送る装置』の使用者を制限したいのだ。」


 「なるほど。ロゼッタ教授の意図が分かってきました。要するに、僕にその『未来についてやけに詳しく書かれている小説』を書いて過去に送って欲しいという事でしょうか?」


 「いかにもその通り。」


 「……」


 いや、「いかにもその通り」じゃあねえよ。タイムパラドックスが起きるだろう、タイムパラドックスが。


 「タイムパラドックスの危険があるから、それは出来ないんじゃあないの?」とキャニスが言ってくれた。グッジョブ。


 ロゼッタ教授は静かに言う。

 「実際、発掘されているんだ。むしろ、放置する方が問題だ。それにね、未来に書かれた論文を送るんじゃあないんだ。所詮は小説を過去に送信するんだ。当時の人だって『これはSF小説だろう』としか考えないだろう。」


 「「はあ、まあ。正直関わりたくないけど……。」」


 「サイエンス=ヒストリーを専攻する天才美少女キャニス君と、古代語を習得している天才児ミツニ君にしかこの仕事を頼めないのだよ。頼まれてくれんか?」


 うう、ロゼッタ教授の涙目は反則だ。可愛すぎる。ファンクラブが出来るのも納得だ。でも、俺にはその作戦が通用するかもしれないが、キャニスはどうやって説得するんだ?


 なんて馬鹿な事を考えていたら、キャニスが大声で

 「そうよね!この天才美少女キャニス、謹んで指令を遂行させて頂きます!ミツニもいいよね?」


 と言った。ああ、こいつはおだてたら何でもする奴だ。ははは。

 「はあ、分かりましたよ。精一杯頑張ります。」


 ロゼッタ教授はまぶしいほどの笑顔で

 「ありがとよ、君たち。」と言った。

 まあ、なんか大変なことになったけど、頑張るとしますか。キャニスもやる気みたいだし。





 「あ、ちなみにだな、同じことをあと十組くらいに頼もうと思っているからそのつもりで」


 「「さっき、君たちにしか頼めないとか行ってませんでした?!」」


 という会話が後程あった。

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