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だから異空間収納なんて無理なんだ。

 「この世が縦横高さと時間の4次元の実で構成されているという保証はないわ。もっと多くの次元、それこそ5次元や6次元である可能性もある。けれども、我々は3次元の中に閉じ込められているからそれ以上の次元を認知できない。」


 「ああ。それじゃあ、パラレルワールドとは一体?」


 「仮に縦横高さをそれぞれ、x、y、zとして、時間をtとしましょう。そして今あなたがいる位置を(0, 0, 0, 0)とするわ。すると、私がいる位置は……まあだいたい(1, 0, 0, 0)という事になるかしら?ただし、tは自動的に増えていくけどね。この座標系を用いてこの世界の全ての物の場所を示すことが出来るわ。でも、もうひとつw軸が存在したとして(x,y,z,t,w) = (0,0,0,0,1)の位置にある物は、我々には知覚できない。それがパラレルワールドに存在する物ってことになるわね。」


 「うーんと?x軸方向に1移動したところには君がいる。けど、w軸方向に移動したところはこの世から外れてしまって、それがパラレルワールドってことかな?」


 「そうよ。さらにここで、連続性を考えてほしいの。」


 「連続性?」


 「例えば、私が今立っている位置は空調の風が直撃しているから少し寒いわ。それと比べたら、ミツニがいる位置は少し暖かいわよね。」


 「え、その一直撃してる?方向変えようか?」


 「ごめん、そうしてくれると助かるわ。さて、このように温度の差はあるけど、どこかを境に温度が急激に下がっているということは無いわよね。すなわち(0,0,0,0)地点から(1,0,0,0)地点まで温度は徐々に変化している。」


 「そうだね。」


 「そうすると、(0,0,0,0,0)地点から(0,0,0,0,1)地点まではどうなっているかしら?すぐ隣に位置するパラレルワールドはこの世と全く違った世界なんてことはあり得ないような気がしない?」


 「な……るほど。じゃあ、パラレルワールドといっても、すぐ隣の世界はこの世界とほとんど変わらないと?」


 「ええ。ところで、ラプラスの悪魔って知ってる?」


 「えっと、聞いたことある。確か、未来に起こる出来事を何でも知っている空想上の存在の事だよね。」


 「そうよ。かつて、人々は『すべての原子の位置と動いている方向が分かれば、計算を使って未来の出来事を知れるのでは?』と考えてラプラスの悪魔の存在を考えたわ。けれども、量子力学の発展で、不確定性理論が発見され、ラプラスの悪魔は完全に否定された。」


 「不確定性理論?」


 「ええ。どれだけ優秀な顕微鏡を使ったとしても、物の位置は決定不可能である。というよりも、物の位置を決定する行為は不可能であるって事ね。例えば、今ここに私は存在しているかしら?」


 「存在しているよね?」


 「量子力学では『私はここに存在している』とは考えないの。物理学の法則上、『私がここに存在する確率が極めて高い』としか表現できないの。もしかしたら、一メートル右にいるかもしれないし、逆に一メートル左にいるかもしれないけど、おそらく『ここ』に存在しているだろうって事ね。」


 「???」


 「まあ、これについてはいったんおいておいて。結局、どれだけ科学が発展しても、未来を完全に知ることは出来ないってことが科学的に証明されたの。あなたが明日の朝、ご飯を食べるかパンを食べるかどうかはどれだけ高性能なパソコンを使っても把握できないの。パンを食べる確率が40%でご飯を食べる確率が60%みたいな表現になるわね。」


 「ふーん?それがパラレルワールドとどう関係しているの?」


 「ええ、例えばご飯を食べる確率が60%と計算されていたとして、実際にはあなたはパンを食べたとしましょう。このとき、60%は本当になくなったのかしら?」


 「?」


 「例えば、世界が100個あって、その内60個の世界ではご飯を食べ、40個ではパンを食べた。偶然、w=0の空間にいるあなたはパンを食べたけど、w=50地点のあなたはご飯を食べているのかもしれない。こんな風に考えたら、『物理的に計算しても未来は把握できない』ってこともピンとこない?」


 「すなわち、未来は無数にあるのだから、未来を決定することは出来ない。けれども、どういう世界が多く存在するかという『確率』は把握できるってことなの?」


 「ええ。まあ、詳しくは分からなくても大丈夫だし、私自身あまり分かっていないわ。とにかくわかってほしいことは、パラレルワールドがあったとしても、近くにあるそれはこの世界とほとんど変わらないよってこと。あなたがパンを食べた世界だろうがご飯を食べた世界だろうが、ミツニという人物は存在しているわけだし、平和な世界であることに変わりはない。そう考えてみると、次元のはざまから剣と魔法の世界に転移するなんてことおかしくない?次元のはざまが仮に存在したとして、w軸がずれたとしても、たいして変わらぬ日常生活が待っているだけね。」


 「なるほど……。あれ、そういえば異次元収納みたいな概念って『この世界とは異なる世界に物を保存』ってことだよね。じゃあ、異次元収納が万が一実現したとしたら……。」


 「元々あった世界を壊す必要があるわね。しかも、w軸が若干ずれた異世界は別の自分が生きている世界だから、あなたは別世界の自分を殺すことで異次元収納を成り立たせるってことになってしまうわ。」


 「ひえ……」


 「だから、私は『異世界や四次元以上の存在を信じてはいるけど、異空間収納とかは不可能』って思うわけ。」


 「なるほど……難しかったけど、要するに、異世界や異空間って自分の住むこの世界と大して変わらないってことね。」

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