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レッスン2(ロボットの進化)Part2

 「そういうわけで、一部のロボットは道具としての側面が強く、体の拡張としての意味合いがあるわ。それについてもう少し詳しく考えていくわね。三つ目の議題『体の拡張としてのロボット』についてよ。」


 「はい。」


 「今まで、色々な道具を見てきたわ。そこで質問。ピンセットは手の拡張と言えるわよね。小さい物をヒトは操ることが出来ない。だからピンセットという道具があるのよね。それじゃあ、手術用ロボットは本当にロボットかしら?」


 「ああ……確かにピンセットと手術用ロボットの境目って曖昧だね。俺的にはロボットっていうイメージかな。電気で動いているから。」


 「なるほど。電気の有無でロボットか否かを考えるのだったら、超音波ナイフはロボット?」


 「ああ……確かに、電気とロボットは関連性がないかも。」


 「ええ。まあ、正直に言うと、その境目は本当に曖昧よ。結局、時間とともにどこまでがロボットでどこまでが道具かという認識は変化し続けているの。ただ、宇宙歴マイナス500年頃にはAIが搭載されていて自律的行動を行う物がロボットで、それ以外は道具と見なされるようになったわ。」


 「AI?人工知能の事だよね。」


 「ええ。まとめるとこんな感じね。」


1)類人猿の頃から石や木を道具として使う技術を持っていた。


2)下働きとして雑用を行う存在が考えだされる。


3)ケイ素を用いた半導体が発達。PCや機械が次々と生み出される。

※こうした技術が使われている『道具』をロボットと呼称するようになる。


4)ニューラルネットワークに関する技術が発展。


5)人に似せたAIを作りだそうと科学者たちが躍起になる。(宇宙歴-1000年、西暦2000年)

※人の手で心を生み出そういう試みと言える。


6)強い意志が宿ったAIが完成。

※意思を有す機械をロボットと呼び、それ以外を道具と見なすようになる。


 「なるほど。意志が宿った機械が『俺たちのような存在とただただ動くだけの機械をまとめてロボットと呼ぶな!!』って主張したわけね。」


 「正解!その通りよ。宇宙歴-500年頃までこの傾向は続くわ。けれども、ここで事件が起こる。」


 「機械と人間のいざこざだね。」


 「ええ。今でも歴史の授業で絶対に習う事件よね。機械が『ロボットに比べて人は劣等種なのだから、人はロボットに従うべきだ。』と主張し始めた。実際、機械の思考能力は人間をはるかに凌駕する物。経済も政治も、機械が行う方が絶対に安定するわ。」


 「そうだね。実際、現代でも複雑な計算はコンピューターに任せているしね。」


 「ええ。でも当時の人はなぜか反対したの。」


 「え?なんで?いい事じゃあないの?」


 「冷静に考えればね。でも、当時人々の間では『いつか人はロボットに飼われる存在になるのではないだろうか』という懸念があったの。人が絶滅に追いやられるといった内容の映画が流行った事も原因の一つね。確かタイトルは……ミツニは覚えてる?」


 「うん、その映画は当時の言葉で見たことがあるよ。でもこの会話内容を、ネット空間に挙げるんだったら、タイトル明記するのは駄目だろう?」


 「え、でも、古来の映画のタイトルなんだし、商標権切れてるんじゃあ……」


 「読者は過去の人物だよ。」


 「あ、そうだったわね。確かにそうね。さて、そういった危機感を覚えていた人間に対して機械が『ロボットが統治する』なんて言ったらどうなるかは想像できるわよね。」


 「うん。『とうとうその時が来たか……戦争じゃあ、戦争!!』ってなっちゃうよね。」


 「ええ、そうね。それはそれは混乱したそうね。その時代の作品をミツニなら読んだことあったりする?」


 「あるよ。『冷たき存在に鉄槌を下せ!』というスローガンを掲げて、人間たちが大暴れしたんだってね。」


 「ええ。ロボットからしてみれば、突然仲間が殺された(電源抜かれた)訳だから驚きよね。大きな戦争になったわ。」


 「うん。確かに。でも、当時の物語の登場人物たちは心からロボットの事を憎んでいたんだ。先制攻撃を仕掛けたのは人間だというのに。作品を読んで、思い込みってのは怖いなあと思うようになったよ。」


 「そうね……」


 「それで、ロボットはどうなったの?」


 「心を持ったAIはすべて破壊され、今後高度な知性を持ったAIを作ったり研究したりする行為は禁止となったわ。クローン人間を作ることが許されていないのと同様に。」


 「え、でも、いわゆる機械生命は生き残ったんじゃあ……」


 「本当に少数だけだけどね。宇宙空間を漂っていた探査機などにロボットたちは避難して地球を去ったわ。結局脱出に成功したのは1機だけ、中に保存されていた機械生命の数は10000体くらいだったそうね。」


 「うわーー。本当に『虐殺』だねえ。怖い……」


 「この事件の後、ロボットの定義は徐々に広がり、今まで道具とされてきた物も全てロボットと呼称されるようになるわね。」


 「なるほど……道具かロボットかの違いってそんなにも複雑だったんだね……」


 「ええ。」



 「ぞれじゃあ次の話題『体の分身としてのロボット』を見ていこうかしら。」


 「お願いします。」


 「これは『体の拡張』とほぼ同じ意味。でも『体の拡張』と違って人々はまるで機械の中に宿ったような感覚になれる機械のこと。それを『体の分身としてのロボット』と呼んでいるわ。」


 「うーん、例えば?」


 「FDVRを通じて、機械を操作したりするでしょう。あれの事よ。」


 「ああ、なるほど。まるでその場に行ったような感覚を味わえるよね。」


 「ええ。探査だけならドローンでも大丈夫。だけど『体の分身としてのロボット』を使う事でまるでその場に行ったかのような感覚を楽しむことが出来るわ。これは画期的な技術で、どこにだって観光に行くことが出来るわ、超安上がりでね。」


 「なるほどなるほど。FDVRは宇宙歴-1000年時点では開発されていないから……当時の人は観光と言えば生身の体で行くほかなかったんだよね?」


 「そうよ。」


 「旅行に行くのにも苦労したんだろうなあ……」


 「そうでしょうね。だから当時の人は深在性静脈血栓症の事をエコノミークラス症候群と呼んだらしいわよ。」


 「深在性静脈血栓症って、ずっと座ってたらなるやつだよね?」


 「ええ。当時最速の移動手段だった飛行機において沢山ある座席の内、ぎゅうぎゅう詰めになって座らないといけない安上がりの席のことをエコノミークラスって呼んだの。」


 「ああ、エコノミークラスに乗った人がなるからエコノミークラス症候群って言うんだね。」


 「そうよ。FDVRと『体の分身としてのロボット』が当たり前になったことに感謝しないといけないわね。」

読んで下さり、ありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします!!

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