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レッスン2(ロボットの進化)Part1

 ロボットといえば、どんなものをイメージするだろうか。

 お掃除ロボットのような家事をしてくれる物?

 それとも、乗り込んで操作するような巨大な戦闘ロボット?


 中にはスマートフォン・スマートウィッチなどの体に取り付ける機械をイメージする方もいるだろう。


 機械の歴史について、今日は学んでいこうと思う。


 「という訳で、キャニス。よろしく頼むよ。」


 「ええ、分かったわ。そういえば、ロゼッタ教授からOKは出たの?」


 「おお、大方オッケだってよ。詳しくは原稿を提出してからになると思うけど。」


 「りょーかい。それじゃあ、先週のゲームの発展に関する講義や、今日のロボットや機械の歴史についての講義は無駄にはならないのね。」


 「ああ、だからその分、本気でやってくれよ。」


 「もちろん。言われなくても、本気で講義するわよ。それじゃあ、このラインアップで話を進めさせてもらうわ。」



 俺のタブレットに表示されている、彼女が作ってくれたスライドを見る。


1そもそも道具とは何か

2道具とロボット

3体の拡張としてのロボット

4体の分身としてのロボット

5一個体としてのロボット

6人と機械の融合


 「なるほど。というか、ほんとに資料まで作ってくれたんだ。ありがとう。」


 「いえいえ。私達はチームなんだから協力するのは当り前よ。それじゃあ、早速一つ目のトピック『そもそも道具とは何か』について話すわね。」


 「お願いします。」


 「ミツニは道具って聞いてどういう物を思いつく?」


 「そうだなあ。時計・洗濯機・車も道具に入るかな?トンカチも道具だしね。」


 「ええ、そうよね。道具と言われても色々あるわよね。それで、こうした道具は全て私たちの生活を楽にするべく作られたものだわ。」


 「なるほど。時計があることによって我々は時間を知ることができ、結果として一日のスケジュールを管理することが出来る。洗濯機は言うまでもないけど洗濯をしてくれる。車は遠くまで我々を運んでくれるよね。トンカチは何かを叩きたいときに手で叩くよりも効率的に作業を進めることが出来る。」


 「いかにもその通り。ところで、人類がほんとの初期に、それこそ類人猿と言われていた時代に使い始めた道具は主に身体の拡張の意味が強かったわ。」


 「身体の……拡張?」


 「ええ。人間は熱い物を直接触れないわ。だから手の延長(・・・・)として木の棒を使ったり、箸を発明したわ。人間は鋭い鉤爪を持っていないわ。だから爪の延長(・・・・)として石器やナイフを生み出したわ。馬車や車は何の延長と言えるかしら?」


 「足の延長かな。俺たちの足では遠くまで歩けないし、何より疲れる。だから馬車や車を足の延長として発明したんだね。」


 「正解よ。こんな風に、すごく基本的な道具は『体の延長』としての意味合いが強いわ。スマートフォン・スマートウィッチ・スマートグラス(眼鏡)なども全部体の延長と言える面があるわね。我々は記憶の一部を彼らに頼っているし、まさに体の延長よね。」


 「なるほど。改めて道具について考えたことは無かったけど、言われてみればそうだね。体の延長。言い当て妙だね。」


 「ええ、じゃあロボットは何の延長になるでしょう?」


 「ロボットか……ロボットって一口に言われても、色々種類があるしなあ。」


 「そうよね。ロボットって言っても色々な種類があるわよね。それじゃあ、次の話題『道具とロボット』について話すわね。」


 「オーケー。結局、ロボットは道具なのかな?」


 「ロボットの定義を真面目に調べれば、明確な閾値(しきいち)が見つかるかもしれないけど、今回は別の方向性から考えるわね。一番最初に登場したロボットは何でしょう?」


 「えっと、何かの映画に登場したとかじゃあなかったっけ?」


 「ええ、ロボットという言葉はある戯曲が発祥とされているわね。けどロボットに似た概念はもっともっと古くからあったのよ。」


 「そうなの?」


 「ええ、例えば、古代の神話には多数の動く非生物が登場しているわ。ゲームで言うところのゴーレムとかかしら。」


 「ああ、なるほど。でも、ゴーレムは道具というよりは生物みたいに感じるけど。」


 「そうね。ゴーレムのようなものを指すロボットは機械仕掛けの生物であって道具と呼ぶのはいささか疑問だわ。では次の事例。これはロボットとは違うけど『デーモン』って聞いたことある?」


 「悪魔の事だよね。」


 「YesといえばYesだけど、今言いたいのはコンピューター用語のデーモン。デーモンとはコンピューターのバックグラウンドプロセスの事を指すわ。」


 「バックグラウンド……プロセス?」


 「例えば、『メールが届きました』っていう通知が来るときあるじゃん?あの機能が無かったらすごく大変だと思わない?」


 「そうだね。いちいちアプリを立ち上げてメール届いてないかなってチェックしないといけない訳だもんね。」


 「ええ。だからメールアプリは私たちが操作していない時も自動的に新着メールが無いか確認してくれているの。このように私たちの見えない所で動いている処理の事をバックグラウンドプロセスと言い、デーモンって呼んだりするのよ。」


 「へえー。じゃあ、パソコン用語での『デーモン』は悪いやつではなくて、むしろ縁の下の力持ちなんだね。」


 「その通り。ちなみに、『デーモン』すなわち、悪魔も元は悪い奴の意味ではないわ。語源は神様の下で雑用を行う下使えの者を指す言葉よ。」


 「え?そうなの?」


 「ええ。それがどうして悪魔の意味になったかについては今は省略するね。でね、そのデーモンは自由意志があったのかしら?」


 「自由意志?」


 「神様の下で淡々と働くデーモンをどんな風に考えていたかは分からないけど、もしも彼らに意思が無いのだとしたら?もしもデーモンはプログラムされた通りの仕事をこなす存在だったとしたら?ロボットと言えないかしら。」


 「ああ……なるほど。要するに雑用をやってもらう存在としてのロボットというのも想定出来て、これらは道具と言えるという事だな。」


 「ええ。今も道でゴミを拾ってくれている清掃ロボットはある意味道具よね。労働力の補填という意味では『体の延長』に近いと言えるでしょう。」


 そう言ってキャニスは搾りたてのフルーツジュースを飲んでのどを潤わせる。授業はまだまだこれからのようだ。

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