53. ヒトの感情の正体に迫る! 中編
【第53回 2022.7.3】『ヒトの感情の正体に迫る!』中編 を配信
【エモい物語の肝である感情について】
【生理学・脳神経学から仕組みを解説してみるよ!】
前編では、偏桃体と前頭葉について。
偏桃体が「快・不快を判定して、感情のきっかけを作る」
前頭葉が「感情を最終コントロールしている」
ことに触れました。
中編では、『自律神経』『ホルモン(神経伝達物質)』の2つの感情への関与について考えていきます。
■エントリーNo3. 自律神経
さて、偏桃体で下された快・不快の判定は、ヒトの体にどのように利用されるのでしょうか? まっさきに影響を受けるのが、交感神経と副交感神経のセットで運用される、自律神経系が挙げられます。
自律神経については、
第27回『クリエイターのための健康講座(初歩編)』、
第42回『人間のホルモン小全集』
でも扱いましたが、ここでも軽く触れましょう。
『27. クリエイターのための健康講座(初歩編)』
https://ncode.syosetu.com/n8509ft/27/
『42. 人間のホルモン小全集』
https://ncode.syosetu.com/n8509ft/42/
自律神経とは、人間の心と体の動きに大きくかかわっている構造体。
『交感神経』と『副交感神経』の2つが存在します。
『交感神経』とは、闘争と逃走(どちらも、とうそうと憶えとくといいよ)を司る神経で、目の前に課題に取り組もうとすると、活発に働きます。
こいつが働くと闘争心が増したり。あるいは、生命の危機が迫った場合に、全身の感覚を研ぎ澄まして、すぐに逃げられるようにしたり。
いわば、やる気になり、集中力を増すための重要な仕組みです。
『限界まで体を動かせるように、心臓を早く動かして全身に血をいっぱい送る』
『身体を緊張させて、ちょっとした刺激にも反応できるようにする』
といった、具合。
絵顔文字で表せば、
(´Д`)ハァハァ
動物というのは、危機に相対した時に、戦うか。
あるいは逃げるかの選択を迫られます。
よって、交感神経が適度に働くと集中力がアップ。
さらに働くと、イライラの『憤り』を生じ、戦闘態勢へ。
あるいは逃げたいぜ、という『恐怖』『不安』といった心情を演出します。
おや、この仕組み、前編で似たのを見ましたね。
そう、『偏桃体』が行う、快・不快の判定システムと類似しています。
すなわち、『偏桃体』が「不快」と感じたときは、『交感神経』が活発化。
具体的には、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンがメッセンジャーとして、血流に乗って駆け巡り、全身の交感神経系のスイッチを入れるわけですが。
ヒトが不快なものを見たときに襲われる感情――。
・恐怖、怒り、不安といった心境。
・それらの心情に陥った時に身体に生じる、体の震え、動悸・息切れ
を、『交感神経』を介して、実現させます。
対して、『副交感神経』は逆の役割が。
『副交感神経』とは、休息のための神経です。
これが活発になると、リラックスして、眠るのにも適した状態に。
『交感神経』とはまるっきし反対の作用ですね。
また、こちらも言うまでもなく、『偏桃体』の「快」の刺激に対応しています。
好ましい物を見たときに、セロトニンというホルモンに類似した神経伝達物質(※1)を使って、全身をリラックスさせるのです。(※2)(※3)
■エントリーNo4. ホルモン
/→→ 不快・判定 → 交感神経ON →→ イライラ・不安
偏桃体+前頭葉
\→→ 快・判定 →→ 副交感神経 ON → 癒されるわぁ
このフローチャートがヒトの感情の基礎となるわけですが。
他にもいくつかのホルモン(神経伝達物質)が、感情の変化に作用することが分かっています。
例えば、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンは、3つの幸せホルモンと呼ばれています。(※1)
セロトニンは先ほどご紹介した通り。
癒しや、リラックス、ゆとりの心境を演出。
不安を、打ち消す効果があります。
オキシトシンもまた、偏桃体から生じた【不快 → 不安や緊張】の導きを断ち切る効果があるホルモン。
主に、親しい人と交流した時、親切にした&された時、ボディタッチした&された時に分泌されて、安心を演出します。
ドーパミンはもっと直接的な喜びを演出するホルモン。
【テストで100点を取ったから、ご褒美をもらった】
【100連ガチャを回して、ついに狙っていたキャラが手に入った】
人にとって好ましい条件がそろったときに素早く分泌され、脳神経に【快感】を感じさせます。
ただ、ドーパミンの場合はもろ刃の剣で、依存症の原因であり、「~しなくちゃならない、さもないと不安でどうしようもなくなる」という強迫性障害のトリガーになっているという説もあります。
さらに、運動した時、眠った時、食事をしたときに分泌される、エンドルフィンというホルモン(※4)は、一種の脳内麻薬――。
痛みを鎮め、幸福作用があるとされています。
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などと、ヒトの感情の起こる仕組みの基礎をこうして見てきただけですが。
とどのつまり、感情とは、
・過去の記憶との比較から生じる (偏桃体)
・交感神経が緊張や憤り、副交感神経が癒しを演出する
・アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、オキシトシン、エンドルフィンといったホルモン(神経伝達物質)が感情を変化させている
・前頭葉がリーダーとして感情を制御している
といった、ところでしょうか。
神経の可塑性や、過去の記憶との比較から感情が発生していることから、感情とはその人が歩んできた歴史・環境とは切っては切り離せないこと。
オキシトシンの作用である、ボディタッチをすると安心させることができる。といった条件は、色々と作品に使えそうですね。
■ 今日のまとめ ■
・「交感神経」が発動すると、イライラ・不安になるよ
・「副交感神経」が発動すると、癒しの心境になるよ
・偏桃体の「不快」判定が「交感神経」、「快」判定が「副交感神経」とリンクしているよ
・セロトニン、オキシトシン、ドーパミンといった幸せホルモンをはじめ、エンドルフィン、アドレナリン、ノルアドレナリンが感情の変化にかかわっている
(※1) セロトニン
厳密にいうと、セロトニンは「臓器Aから臓器Bに指示を出すために、血流に乗せて分泌する物質」というホルモンの定義に当てはまらず、「神経系に直接作用する」働きのみ有するため、ホルモンではなく神経伝達物質に数えらるようです。
ただ、専門家向けの定義なので、ここでは俗説の通りホルモンの一種としてまとめて解説してしまいます。
(※2)
この偏桃体から自律神経の一連の働きを代表とする、刺激が与えられた時の体やホルモンの変化を、ストレス反応といいます。
この場合のストレスとは、イヤなことだけでなく、熱い・寒い、音、圧力、くすぐったいといったありとあらゆる外部からの刺激を指します。
また、過去の忘れられない記憶や、可塑性が生じた結果――その人にとって不利になるストレス反応が出るようになったのが、昨今、有名になった適応障害です。
例:スポーツ選手のイップス
大勢の前で緊張して失敗してから、ますます大勢の前に出るのが苦手になる
幼少時に襲われてから、犬を見るだけで震えが止まらない――幕末の偉人・勝海舟
(※3)
なお、ストレスが常態化すると、交感神経のスイッチを入れるノルアドレナリンと、副交感神経のスイッチを入れるためのセロトニンが枯渇します。
こうなると、集中することも戦うことも、休むこともできなくなる。典型的なうつ病の発症原因です。
(※4) エンドルフィン
セロトニン(※1)と同様に、エンドルフィンも臓器間を血流に乗って移動するのではなく、脳内の神経系のみに働くため、正しくはホルモンではなく神経伝達物質に数えられます。
【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】
ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。
その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。
毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。




