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49. 感覚刺激はエンターテイメント

【第49回 2022.5.1】『感覚刺激はエンターテイメント』 を配信


 【面白さにつまったら、参考にしてください】

 【感覚からアプローチする、エンタメを楽しくする工夫】

 ヒトの発育を扱う発達領域において、触覚、味覚、聴覚、嗅覚etc――

 といった、感覚センサーから入る刺激は、脳が育つための栄養であり、また楽しみであるともされています。


 子供の頃、坂の上から、無邪気にゴロゴロと転がったりはしなかったでしょうか?

 あれは、地面や草がチクチクと肌に当たる触覚や、前庭覚(直線・回転加速度を測る)や、視神経を通して目まぐるしく変わる風景を楽しんでいたから。


 児童公園における不動の人気遊戯「ブランコ」も、


 ・手の触覚 (鎖をつかむ感覚)

 ・足の裏の触覚 (微妙な圧変化を感じている)

 ・前庭覚 (ブランコの揺れ=加速度を感じる)

 ・露出している部分の触覚 (肌で風を切る心地よさ)

 ・視覚 (体が前後するたびに、目の前のものが大きくなったり、小さくなったり)

 ・筋の筋紡錘・ゴルジ腱紡錘 (ブランコをこぐ時に使う、筋の伸び縮み)


 といった数多くの感覚の刺激が、遊具を動かそうとする自分の体の動きに合わせてリアルタイムで入ってくるから、愉快だったのだと解釈できるでしょうか。


 遊園地にある「コーヒーカップ」や「メリーゴーランド」といったアトラクションも、回転加速度を測る前庭覚への刺激をウリにしている遊戯だといえます。


 なにも感覚刺激が楽しいのは、子供だけで特権ではない。

 バイクの運転――ツーリングでは、


 ・視覚 (風景を次々と後ろに置いてけぼりにする)

 ・触覚 (肌で風を切る心地よさ)

 ・聴覚 (ドドドドドッエンジンの音)

 ・振動覚 (エンジンの振動)


 といった楽しみがある。


 また、本を読むという行為でも、収納場所を取らない便利な電子書籍が普及する中で、あくまで紙媒体で読むことを止めない読者もいます。


 いわく、紙の手ざわりがたまらない。

 いわく、紙の匂いがいい。

 いわく、紙をめくるときの感覚が…etc


 ともすれば、文明機器の進化についていけない老人の言い訳だ。

 などとも捉えられがちですが、「本を読む=触覚や嗅覚への感覚入力を楽しむ場を兼ねている」と考えれば、紙の本を手に取る人の情も理解できます。


 感覚への刺激がエンターテイメントだなんて、「常識じゃん!」と、言われてしまいそうですが。テレビゲーム、スマートフォン、文庫本と、手のひらの中で納まる遊び方が隆盛な昨今では、見落としがちかもしれません。


 たとえば、対戦格闘ゲーム。

 モチーフとなっている実際のスポーツとしての格闘技は、自身の筋の伸縮を感じながら、相手の攻撃を紙一重でかわし、パンチが相手に決まったときに拳に返ってくる感触が快感である。と、爽快感を定義できそうです。


 これをうまくゲームに落とし込んだのが、1990年代に対戦格闘ゲームのブームを起こした「ストリートファイター2(あるいはその前作)」でした。

 格闘技の動きを


 格闘技のパンチ・キック → ボタンを押す

 体の動き → 8方向レバーでの動き


 と、置き換えたのまでは普通。慧眼だったのは、素早くレバーを操作し、タイミングよくボタンを押すと発動する必殺技コマンドの存在でした。


 「レバーの操作と、キャラクターの動作がリンクしている」のがポイントで、


 主人公・リュウの代表的な技――飛び道具を出す波動拳(↓\ → + パンチ)は、

 【キャラクターの前下方向に1/4回転させる】(※1)

 レバーの動きを要求されます。が、キャラクターの動きも


 【1:普段、構えている位置より下の腰に手を置く (↓の要素)】

 【2:両手を前に突き出し気を放つ (→の要素)】


 と、前下方向に1/4回転するレバーと連動した、アニメーションをしているのです。


 同じくリュウの技――

 竜巻旋風脚(↓/← + キック)も、

 【キャラクターの後下方向に1/4回転させる】

 レバーの動きに合わせて、蹴りを出す前に一度

 【後ろ(←の要素)】を向きます。


 空中にアッパーを放つ昇竜拳(→↓\ + パンチ)でも、レバーの

 【最後の方向が前方下方向】

 なのを反映。頭上を攻撃するわざなのに、最初に、

 【沈みながら拳を前方にえぐりこむ(\の要素)】アニメーションが入ります。


 他のキャラにおいても、ローリングアタックやスーパー頭突き(←にタメて→ + パンチ)

 といった技は、突撃するまえに

 【後ろに仰け反ってタメを作る(← タメの要素)】

 アニメーションが入ったり。


 回転しながらパイルドライバーを決める、スクリューパイルドライバーは

 【1回転 + パンチ】

 で出たりと。(※2)


 必殺技のコマンドとキャラの動き(手の運動覚と、視覚)をリンクさせることで、ストリートファイター2はあたかも自分がゲームの画面に入って戦っているような没入感を演出。

 格闘技の自身の筋を動かして拳に返ってくるパンチの衝撃と、レバーとボタン捌きを近しいものとして、錯覚させることに成功しました。


 だだし、これがスマートフォン上での操作となると話は別です。


 すべての操作が指先1つで完結してしまうため、感覚入力が限定的。

 運動というのは、大きく体を動かす「粗大運動」と、細かな動作の「巧緻運動」に分類されるのですが、スマートフォンの画面上での操作はどうしても「巧緻動作」になってしまいます。


 「小さな画面上で行うちまちました巧緻動作」では、格闘技のスポーティで大胆な動きを連想させることは難しい。

 スマートフォンでも遊べる格闘ゲームは幾つもリリースされていますが、なかなか大成しない一因となっているような気がします。


 類似した事例――感覚刺激が足りなくて苦戦しているといえば、家庭用のVRバーチャルリアリティや、ニンテンドー3DSなども該当するでしょうか。

 どちらもお家で立体的な3Dグラフィックを嗜めるようになる意欲的な商品であり、話題にもなりましたが、ゲーム文化としてはいまいち根付きませんでした。


 迫力のある演出というのは視覚だけに頼るのではなく、音響や、場合によっては触覚や嗅覚への情報が利用されるもの。

 国内のテーマパークの最新アトラクションに乗ると、シートが傾いたり(足・お尻の裏の触覚や、前庭覚を刺激している)、霧や風が吹きつけられたりと、五感を刺激してくるギミックが用意されているものも多いですよね。


 でも自宅にそれらのギミックを取り入れるのは、5.1chサラウンドの音響を除けば、難しい。視覚だけが頼りの3Dには表現力には限界があります。

 VRや3Dシネマは、お家向けではなく、大資本を投入して造られるテーマパーク向けの技術なのかもしれませんね。


-----


 などと、いつも以上の散文的に感覚入力とエンターテイメントの関係を振り返ってきましたが。

 とどのつまり何が言いたいのかというと、


 【遊びを創造するなら、感覚入力の価値を今一度、確認しておくといいかもね】

 ということです。


 作っているゲームが当初の想定よりあまり面白くないのであれば、感覚入力が少なくなっているのかも(例:スマートフォンの対戦格闘ゲーム)。

 あるいは、ちょっとした感覚入力の追加で、ゲームの臨場感が増す場合もありえるでしょう(例:ストリートファイター2における、必殺技コマンドとアニメーションのリンク)。


 コンテンツの主流が、掌の中で基本完結するタブレット端末やスマートフォンとなった昨今ではなかなか難しいアプローチですが、全くできないわけではなさそうです。


 例えば、モンスターストライクのような【引っ張る】アクション。

 また、パズル&ドラゴンやツムツムのような【なぞる】アクション。(※3)


 どちらも、従来のただタッチする操作とは異にする、画面に指を触れながら引きずる「スライド操作」の応用です。

 この指を画面に押しつけながら引きずるという操作の際には、ただタッチするだけではあまり働かない「動的触覚」が強く刺激されていると考えられます。


 「動的触覚」とはパチニ小体、マイスネル小体といった肌にあるセンサーが感じ取るもので、肌を摩擦させたときだけに働く感覚です。

 ただ「タッチ」するだけでは操作に飽きてしまうであろう状況で、【引っ張る】【なぞる】といった、変わった指の動きをさせることで新鮮味を実現している。


 モンスターストライク、パズル&ドラゴン、ツムツムといえば垣根を越えて、万人に受け入れられたゲームですが。躍進の一助にこの、特殊な操作方法とそこから生じる感覚刺激が役立っているとは考えられないでしょうか。


 また、ポケモンGOやドラクエウォークといった、地図と連携したスマートフォンアプリも、「屋外を散歩する」という色々な感覚入力が生じざるを得ないギミックを組み合わせて成功したのだと、ちょっと強引ですが解釈することもできるでしょうか。


 デジタルコンテンツから離れても、子供というのは「ぬるぬるのスライムの玩具」「水や氷、泥・粘土」「手遊び歌」といった感覚を用いた遊びが大好きです。


 高齢者を介護するような施設でも、音楽療法やアニマルセラピー(動物と触れ合う)といった感覚入力を用いたレクリエーションが行われていることが多いです。


 ある意味、人の楽しみの本能、原始的な部分に、感覚入力は関わってきます。

 新しい遊びのアイデアに行き詰ったときにでも、「感覚刺激はエンターテイメント」ということを振り返って頂くと、良いかもしれません。(※4)


■ 今日のまとめ ■

・触覚、視覚、聴覚、前庭覚etc――といった感覚刺激は、老若男女が楽しめるエンターテイメントだよ。

・パズドラやツムツム、モンストの成功の理由の1つは、ちょっと変わった指先の動きでちょっと変わった感覚刺激を与えたことかもしれないよ。

・遊びの提案につまったときは、感覚入力の過不足を見直してみたらいいかも。



(※1) \ /

 本来は斜め方向の矢印ですが、機種依存の文字ですので【\】【/】で代用しています。


(※2)

 全て操作するキャラが右を向いている場合のコマンドです。


(※3) モンスターストライク パズル&ドラゴン ツムツム

 どれも言わずとしれた、スマートフォン向けの大ヒットパズルゲーム。


(※4)

 スマートフォンで考えるなら、タッチ操作 → スライド操作に置き換えられる部分は置き換えた方が、ユーザーは操作を楽しく感じられる。という仮説が立てられるでしょうか。

 ただし、スライド操作は良くも悪くも指を摩擦させるので、やりすぎはプレイ中の怪我の元になりそうです。


【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】


 ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。

 その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。

 毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。

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