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48. 挫折から復活するまでの心の5段階

【第48回 2022.4.1】『挫折から復活するまでの心の5段階』 を配信


 【物語には付き物の挫折! でも、実際の人間はどんな手順を踏むの?】

 【復活するまでの心の変化を2パターン解説】


 人生とは七転八倒。七転び八起き。

 ヒトは、生きていく中でいくつもの挫折を味わうものです。

 創作作品の中とて例外ではなく、「最愛の恋人を奪われた」「武器をふるうための利き腕を失った」など、哀しく痛ましいイベントも挿入されるもの。

 障害を乗り越える、あるいは乗り越えられないことが、ストーリーの起伏を生み、登場人物の将来に大きく影響することは疑いようがないでしょう。


 さて、このような挫折・癒されない傷を負った人間の心理状況がどのように変化していくのかですが、実際の心理学や医療の現場でも研究されています。


 諸説はあるのですが、今回は『復活するまでの心理段階』のうち2つの説をご紹介。(※1)

 実際の人間の心理段階をトレースできれば作品のリアリティが増すかもしれませんし、知った上であえて無視することで、独自性が生まれることもあるでしょう。


 ともあれ知識は財産ですし、選択肢も増やします。

 さっそく解説していきましょう。


---


●『障害受容の心理段階』その1

 まず、その1ですが、順番に↓の5段階を経ていくといわれています。


1.ショック期 自分に何が起こったか理解できない状態

2.否認期 状況から目を背ける。あるいは現実味がない妙な楽観視する

3.混乱期 打ちひしがれる、抑うつ、他人に八つ当たり、自殺が起きやすい時期

4.解決への努力期 問題を克服するために積極的な努力をする

5.受容期 受けた障害を本当の意味でポジティブに受け入れる



〇1.ショック期

 何が起こったか理解できず、あるいは説明されても実感がわかず、ボーっとしているような状態です。感情そのものが麻痺しており、周りからは、心の平穏を保っているように見えることも多い模様。

 若い人ほどこの期間は短いそうです。


〇2.否認期

 そんなわけないと状況そのものを認めない。

 あるいは、「必ず元通りになるんだ」などと、一見、前向きに状況を受け入れたように見えても現実的ではない可能性にすがっている段階です。

 不治の病で余命半年と診断された患者が「この半年間で特効薬が生まれるかもしれない」と信じたり。利き腕を失った人が「なに、もう1本残ってる、反対の腕で何でもできるようになればいいさ」と、そこに至るまでの苦労をあまり考えずに楽観視したり。


 この時期も周りから見れば穏やかなことが多く、しかもポジティブな発言が増えるため【状況を受け入れたのかな】と誤解されがちです。しかし、現実検討が不十分な故の脆い楽観視ですので、いずれ次の混乱期に進むことになります。


〇3.混乱期

 避けられない困難さを自覚してしまった状態。

 悲しみに打ちひしがれたり、八つ当たり的に周りに憤りをぶつけたり。

 感情の起伏が激しくなり、悲観が過ぎて自殺を試みる可能性が高まる時期です。


〇4.解決への努力期

 失われたものは戻ってこないと諦めたうえで、現実的な解決方法を検討。

 回復しないダメージはそれとして、別の方法で元の生活・生じた問題の解決に近づけるように積極的に訓練・努力に励みだします。


〇5.受容期

 障害そのものを自分の個性として受け入れます。

 新しい生き甲斐・役割を獲得したり、挫折を経験した自分だからこそ大切なものを見つけたり、成長できたと感じられる。再び、前向きに生きられるようになった段階です。



 さて、チェックポイントとしては、『2.否認期』の存在でしょうか。

 前述の通り、「あれ? 意外とショックを受けてない?」と周りに思わせておいて、次には一番危険な『3.混乱期』が間近に迫っているわけですから。

 視点を変えれば、フィクションでも使い所で、


【例】

 『2.否認期』から『3.混乱期』に至り、夜の病室で嗚咽するキャラクター。

 その前に、イケナイ悪魔が登場する。


 「あいつらは、オマエの苦しみなど欠片も分かっちゃいない。

  お見舞いと称して、安心してすぐに帰ってしまったじゃないか?

  だが、俺様は違うぞ?」

 「オマエの悲しみを理解できるのは俺だけさ。どうだ、取引をしないか?

  悪魔の力を受け入れれば、その傷も全て元通りになるのだぞ…?」


 と、悪魔が取引をしかけるのは、いかにも『らしい』展開です。

 あるいは、そこにキャラクターのことを心配して助けに入る友人が現れれば、彼の思慮深さ、友情、洞察力を印象づけることができるでしょう。


 なお、この心理段階で一般的には1→2→3→4→5という順番に進みますが、前の段階に逆戻りしたり、個人差もあったりするようです。(例:否認期が存在しない)


---


●『障害受容の心理段階』その2

 続いてもう1つの説ですが、こちらも順番に↓の5つのステップを踏んでゆくといわれています。特に、近い将来の【避けられぬ死】を前にした人が、このケースに当てはまることが多いようです。


A.否認・隔離 起きたことを飲みこめない(≒ショック・否認期?)

B.怒り なぜ自分だけがという怒りを周囲にぶつける(≒混乱期?)

C.取引 みだりに可能性の低いものにすがろうとする(≒否認・混乱期?)

D.抑うつ なにもできなくなる(≒混乱期?)

E.受容 最終的に自分に起きたことを受け入れる(≒受容期?)


〇A.否認・隔離

 そんなことはないと、目を背ける。受け入れようとしない時期です。

 人を遠ざけ、孤立することも。


〇B.怒り

 次第に状況を理解しますが、「なぜ自分だけが」と周りの人を妬み、責めてしまうような時期です。


〇C.取引

 超常的なものにすがる時期。

 たとえば信仰に傾倒し、罪を償い善行をつめば(例:財産を全額寄付する)治るかもしれないなどと考えます。


〇D.抑うつ

 万策尽きてどうあがいても困難は避けられぬと分かり、打ちひしがれ何もできなくなります。これまでの行いを後悔し、抑うつ症状が現れます。


〇E.受容

 葛藤を終え、残された期間・能力で何ができるかを考えます。



 『復活するまでの心理段階』その1と照らし合わせると、混乱期をかなり細分化しているイメージでしょうか。また、前述の通り【死を目の前にした人がよく当てはまる】理論のせいか、『4.解決への努力期』に対応するのが見当たりません。

 (死は解決しようがない…; ;)

 こちらのパターンも個人差があり、『C.取引』『D.抑うつ』『E.受容』に至らずに鬼籍に入る人も少なくないとされます。


---


 今回は、『復活するまでの心理段階』について2ケースを見てきましたが、繰り返しになりますが、個人差があります。

 この手の心理学の理論が示すのは【一般論】であり【平均】。

 例外はあるということ。

 【平均】を知った上で「平均と同じかな?」「例外ではないかな?」と細かく観察することで、相手の心理をちゃんと察することができるわけです。


 創作の上でも【平均】を踏まえた上で、

 「このキャラは冷静沈着で自己分析も得意であろうから、『1.ショック期』は殆どないだろうな」

 「いや、そう思わせてショックを受けていることをあえて見せて、新しい一面を表現してもいいかもしれない」

 と、考察していくことが、活き活きとしたそのキャラらしい心理描写・行動パターンに繋がるのではないかと思います。


■ 今日のまとめ ■

・挫折・障害を負った人は、『ショック』『否認』『混乱』『解決への努力』『受容』という心理状態を順番に経るよ

・あるいは、『否認・隔離』『怒り』『取引』『抑うつ』『受容』という心理状態を順番に経るよ(特に死を前にした人)

・もっとも個人差はあるけどね



(※1) 専門用語で『障害受容』といいます。

【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】


 ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。

 その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。

 毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。

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