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44. 人間のホルモン小全集 - ハードコア -

【第42-44回 2022.1.1-5】 人間のホルモン小全集 を配信


 【いろんなホルモンあるんだな、いろんなおしごとあるんだな】

 【どんどんででこいはたらくホルモン】

 さて、ホルモンをご紹介してきたこのシリーズも今回がラスト。オマケにして、ハードコア。あんまり制作物には生かせそうにないかもだけど、人体に重要なホルモンを取り上げたいと思います。

 これも君も理解できれば、貴方も立派なホルモンマスター!?


 最後に、区別がしにくい【ホルモン】と【フェロモン】の違いにも触れるので、気になる方はそちらだけでもご覧ください。



●今回触れるホルモンざっとまとめ


・メラトニン:セロトニンの変化。体内時計の正体。

・バゾプレッシン:おしっこの量を減らす。

・甲状腺ホルモン:新陳代謝、成長、活動を促す。

・胸腺ホルモン:T細胞を管理・成熟させ免疫機能を高める

・ガストリン:胃液の分泌を促す、ガスター10。

・セクレチン:胃液の分泌を止める。

・グルカゴン:インスリンの逆=血糖値を上昇させる。


・電解質コルチコイド:血液の「色んな液体を吸い込むぜ」パワーがアップ。

・心房性ナトリウム利尿ペプチド:電解質コルチコイドの逆。おしっこの量も増やす。


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●メラトニン

・分泌場所:松果体

・役割を一言で:セロトニンの変化。体内時計の正体。


挿絵(By みてみん)


 連載1回目のセロトニンの項目でも触れた通り、メラトニンは体内時計のキーとなるホルモン。

 脳の一部――皆さんが脳と聞いて思い浮かべるであろう大脳の下。視床下部(ホルモン系の中枢)の近くにあたる視床後部にある松果体で、生成されます。


 体内でメラトニンが増えると、体温が下がり、脈拍も血圧も低下。

 いわば、休息のためのスリープモードに。


 松果体は、朝に日光を浴びてセロトニンが生成されてから十数時間後に活発に働くという性質があるようで。セロトニンを材料に、松果体はメラトニンを生成します。


 つまり、朝日を浴びることが、人の体内時計を整えることに繋がります。

 なお、赤ちゃんはよく眠るといいますが、メラトニンが大人よりも多く分泌されていることがわかっています。



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●バゾプレッシン

・別名:抗利尿ホルモン

・分泌場所:脳の下垂体(後葉)

・役割を一言で:おしっこの量を減らす。


挿絵(By みてみん)


 バゾプレッシンは、血液をろ過して尿を作っている腎臓に働きかけ、水分の再吸収を促す――すなわち、おしっこの量を減らす効果があります。

 暑さにやられたときなど、体内の水分が足りなくなったときに、貴重な水分を残す目的で、バゾプレッシンは分泌されます。



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●甲状腺ホルモン

・該当するホルモン:サイロニン、サイロキシン

・分泌場所:甲状腺

・役割を一言で:新陳代謝、成長、活動を促す。

挿絵(By みてみん)


 甲状腺はのどぼとけの下、のどの付け根にあたる臓器で、サイロニン、サイロキシンと呼ばれるホルモンを分泌します。(※1)

 2つ合わせて、甲状腺ホルモンと呼びます。

 俗にいう新陳代謝とよばれるものに大きくかかわり、骨や心臓、腎臓、肝臓の活動を活発にします。


 ・タンパク質の合成と消費を促す

 ・糖の吸収、合成、消費を促し、血糖値を上げる

 ・脂質の消費

 ・体温を上昇させる

 ・成長ホルモンをサポートし、骨を強くする


 など。また、甲状腺ホルモンが大量に出過ぎた場合は、頻脈(ドキドキ)や、不眠、集中力の低下、イライラを起こします。これをバセドウ病といいます。

 第1回でご紹介したノルアドレナリンやアドレナリンが、過剰に出た場合と効果が似ているイメージがありますね。


 また、多い場合もあれば、少ない場合もあるということで。

 逆に、甲状腺ホルモンの分泌が生まれつき足りない病気を、クレチン症といいます。


 活動や成長に必要なホルモンが足りないわけですから、低身長や、発達の遅れ。体や筋肉の動きそのものがスローだったり。疲れやすかったり。

 様々な症状が現れます。


 以前、クレチン症の子猫の動画をYoutubeで見たことがあるのですが。

 まだ生後1歳に満たないのに、のんびり屋さんだったり、白髪があるなど――かわいらしいおじいちゃんやおばあちゃんみたいな、趣がありました。高齢者と同じように新陳代謝が控えめになっていることが伺えます。


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●胸腺ホルモン

・該当するホルモン:サイモシン、サイモポエチン、サイムリン

・分泌場所:胸腺

・役割を一言で:T細胞を管理・成熟させ免疫機能を高める。

挿絵(By みてみん)


 免疫を司る細胞の1つリンパ球は、T細胞とG細胞にわけられます。(※2)

 そのうちの前者、T細胞の中枢といえるのが胸腺です。


 T細胞には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、NK細胞などいくつかの種類があって、骨髄で生まれたT細胞の赤ちゃんが、胸腺ホルモンの働きによってどれかのT細胞に変化・成熟します。


 また、胸腺ホルモンはT細胞の活動を管理します。

 ゆえに胸腺の働きが弱まるとT細胞が暴走し、自身の正常な細胞を攻撃することがあります。自己免疫疾患の発症です。


 胸腺は人間の正中線上、胸骨の裏、心臓の上に存在します。



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●ガストリン

・分泌場所:胃の幽門部(出口)

・一言でいうと:胃液の分泌を促す、ガスター10

挿絵(By みてみん)


 ガストリンは胃液の量を調節するホルモンで、胃液を分泌するG細胞(ゴジラじゃないよ)を活性化させます。

 ガスター10という胃薬がありますが、おそらくこのガストリンから名前を取ったのでしょう。



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●セクレチン

・分泌場所:十二指腸

・一言でいうと:胃液の分泌を抑制する


 胃液の分泌を促すのがガストリンならば、胃液の分泌を抑制するセクレチンというホルモンもあります。胃の下にある十二指腸から分泌されます。


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●グルカゴン

・分泌場所:膵臓のランゲルハンス島β細胞

・一言でいうと:インスリンの逆=血糖値を上昇させる

挿絵(By みてみん)


 膵臓から分泌されるインスリンは、血糖値を下げる効果があるというのは初回で触れましたが。同じ膵臓から、反対の【血糖値を上げる】ホルモンも分泌されます。

 それがこの、グルカゴン。

 膵臓は、グルカゴンとインスリンで、血糖値を上げることも下げることもできるわけです。


 なお、膵臓はこのグルカゴンとインスリンの分泌量を下げる、ソマトスタチン(膵臓のランゲルハンス島γ細胞から分泌)というホルモンも生成します。



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●電解質コルチコイド

・別名:アルドステロン

・分泌場所:副腎皮質

・一言でいうと:血液の「色んな液体を吸い込むぜ」パワーがアップ

挿絵(By みてみん)


 腎臓に働きかけ、尿と共に捨てられるはずだったナトリウムを血管内に取りこみ、逆にカリウムを捨てさせる効果があります。

 これが何を意味するかというと【浸透圧】の増加です。


 濃度が高い液体は、周りの水分を引きこむ性質があります。

 これが、浸透圧。


 血液中のナトリウムが増えると、浸透圧がパワーアップし、

 →血管の外にあった水分が、血管内により多く集まる

 →血液量がアップ


 血液量が増えると、血圧が上がるという寸法です(※4)

 (血管内の容量は変わらないのに、液体の量だけが増えるため)


 なお、電解質コルチコイドが働き過ぎると、高血圧の症状に。(※5)

 働きが足りないと、むくみの症状が現れます。



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●心房性ナトリウム利尿ペプチド

・分泌場所:心臓

・一言でいうと:電解質コルチコイドの逆。おしっこの量も増やす。


 腎臓に働きかけ、おしっこの量を増やすとともに、血液中のナトリウムを積極的に捨てさせる働きをするホルモンです。

 結果的に血圧が下がるため、前述の電解質コルチコイドの逆の作用。

 また、おしっこの量を増やすという意味では、バゾプレッシンの逆の働きをしているといえます。



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〇フェロモンとホルモンの違い


 最期に、ホルモンとちょっと名前が似ている、フェロモンとの違いについで。

 どちらも目に見えない謎成分なわけですが、どんな区分で別けられてるのでしょうか。

 ホルモンが、


 ・自分の体の中に分泌される

 ・ある臓器が、他の臓器に信号をおくるための物質


 と【体の中】に働くのに対し、フェロモンは、


 ・自分の体の外に分泌される

 ・ある動物か、他の仲間に信号を送るための物質

 ・おおむね、匂い成分として処理される


 【体の外】に働くことになります。

 たとえば、『性フェロモン』を用いて異性に【ワイ、発情してますぜ】【恋に立候補してますぜ】ということを伝える。

 昆虫のアリが道しるべとしてフェロモンを分泌し、先頭にいる一匹のアリの後ろに違うアリがついてくる。(『道標フェロモン』の作用)

 といった具合ですね。

 その他、仲間を呼び寄せる『集合フェロモン』。

 逆に仲間を寄せ付けないようにする『分散フェロモン』。

 仲間に危険を知らせる『警告フェロモン』。

 自分がキングやクイーンだと知らせ、仲間を平伏させる『階級分化フェロモン』など。


 我々、人類にとって身近なのは、異性にフェミニン的な魅力を伝える『性フェロモン』だと思いますが。実は人類、フェロモンを感じる嗅覚の器官が退化しており、人にはフェロモンは作用しないというのが定説となっています。


 人も感じられる少量のフェロモンが、涙に混じっているのではないか。という、報告もあるにはあるのですが、まだ確定ではない様子。


 よって、【人間が感じられるフェロモンは、まだ発見されていない】と、表現するのが最も適切でしょう。人が異性にフェロモンを感じるというのはあくまで比喩であって、たとえ話というわけですね。



■今日のまとめ■

・いろんなホルモンあるんだな、いろんなおしごとあるんだな

・どんどんででこいはたらくホルモン

・ホルモンは自分の体内で働く

・フェロモンは体外の仲間に働く



(※1)

 他にも甲状腺はカルシトニン(破骨細胞を抑制し、カルシウムの排泄を促す)を分泌しますが、詳しい説明は割愛。


(※2)

 体内の免疫を司るのが白血球。

 白血球は、以下の3つに分かれます。


 ・顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球) 細菌、微生物退治のプロ、アレルギーにも関与する。

 ・単球(マクロファージ) とりあえず異物はなんでも貪食する。

 ・リンパ球(T細胞、G細胞) ガンやウィルス退治のプロ。(※2)


(※3)

 ・G細胞:予防注射でおなじみの抗体の獲得のキーマン。

 ・T細胞:抗体はあまり参考にせず、独自にガンや感染した細胞を攻撃する。


(※4)

 また、浸透圧が上がりすぎると、ナトリウムの濃度を薄めようと水を多く飲むように、脳が誘導します。より一層、血管の中の液量が増えるため、もっと血圧が上がります。


(※5)

 電解質コルチコイドが調整するナトリウムは、人体に必要な【塩分】の代表格でもあります。塩分を取りすぎると、高血圧になる――理由もここに?

 (血中のナトリウムが多いほど、血管内に液体を集めてしまうから)

【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】


ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。

その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。

毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。

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