43. 人間のホルモン小全集 - 性ホルモンとステロイド -
【第42-44回 2022.1.1-5】 人間のホルモン小全集 を配信
【気になる、男性・女性ホルモンってどんな作用があるの?】
【創作テキストにも使えそうな、基本的なホルモンの働きを解説するよ】
代表的なホルモンを学んでいく、企画の第2回です。
ちょっと、小難しい話が続きますが、これが理解できれば表現者としてワンランクアップ! あるいは、健康博士、トリビアマスターになれるはず?
一挙に覚えるのは難しいかもしれませんが、興味のあるホルモンからでもチェックして行ってくださいね。
●今回触れるホルモンをざっとまとめ
・インスリン:数あるホルモンの中で唯一、血糖値を下げる働きのあるホルモン。
・糖質コルチコイド:ステロイド物質の代表。炎症を抑える。
・副腎アンドロジェン:ステロイドの一種で、男性ホルモン。毛深くなるよ。
・ヒスタミン:炎症やアレルギーを起こす。
・プロラクチン:性ホルモンに近い。胸の発育。子供を育てる母親モードに。
・テストステロン:男性ホルモンの代表。筋肉も育てる。
・エストロジェン:女性ホルモンの代表その1。
・プロジェステロン:女性ホルモンの代表その2。妊娠中に強く働く。
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●インスリン
・別名:インシュリン
・分泌場所:膵臓のランゲルハンス島α細胞
・役割を一言で:数あるホルモンの中で唯一、血糖値を下げる働きのあるホルモン。
血糖値を上げるホルモンは数あれど、逆に血糖値を下げる効果のある唯一のホルモンといってもいいのが、このインスリンです。
血液の中に含まれるブドウ糖の量を血糖値といいますが。
インスリンはこの糖分をエネルギーにかえて消費するよう促すほか、骨格筋や脂肪組織、肝臓などあらゆる部位に働きかけ、糖分を組織内に蓄えるように指示を出します。
結果として、血液の中に含まれる糖は減ることになるわけです。
血糖値が増えすぎると、生活習慣病としておなじみの糖尿病に。
過剰な糖分は、血管をつまらせて心疾患や脳卒中の原因になりますし、腎臓や目の網膜、神経系、体の末端部にダメージを与えます。(※1)
そのカウンターとして血糖値を下げるのがこのインスリンで、糖尿病患者に経口薬や、注射で投与させることがありますね。
対して、血糖値が下がりすぎるのも困りものです。
エネルギー不足だと意識が保てなる他、なんとか人体が血糖値を上げようと前述のアドレナリンなどが大量に分泌されるため、転じてイライラ、動悸の原因に。
『お腹がすいたのでイライラする』のはまさにこの状態を指し、空腹時にインスリンを投与するのはご法度とされています。(血糖値が下がりすぎて、気絶してしまう)
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●糖質コルチコイド
・別名:コルチゾル、コルチゾール、コルチコステロン
・分泌場所:副腎皮質
・役割を一言で:ステロイド物質の代表。炎症を抑える。
糖質コルチコイドは、炎症やアレルギー反応を抑える効果があるホルモンです。
皮膚炎や、喘息が出たときに使う薬品に、ステロイド剤というものがありますが。そもそもステロイドとは、脂質でできているホルモンを指し、性ホルモンやこの糖質コルチコイドが該当します。
ですが、性ホルモンは性ホルモンだけで、だいたいひとくくりにされるので。
医学の世界でステロイド剤といったら、大体この糖質コルチコイド(に似た物質)が含まれている薬品を指しますね。(※2)
・炎症やアレルギー反応を抑える
・ストレスに対するショックを緩和する
・肝臓で糖を作り、たんぱく質や脂質を分解し、血糖値を上昇させる
といった効果があります。
炎症やアレルギーだけでなく、ストレスとも戦ってくれるのですね。
ただ、欠点もあり、炎症やアレルギー反応というのは、体を防衛するための免疫反応の一種。それをステロイドで抑えこむわけですがら、使うと免疫機能が落ちます。(※3)
また、ステロイドを使うと胃酸が増加するため、長期利用すると胃潰瘍などの原因となります。あくまで、いきすぎた免疫反応(炎症・アレルギー)を抑えるのが、ステロイド剤の意義といえるでしょう。使いすぎイクナイ。
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●副腎アンドロジェン
・別名:副腎アンドロゲン
・分泌場所:副腎皮質
・役割を一言で:ステロイドの一種で、男性ホルモン。毛深くなるよ。
アンドロジェンとは男性ホルモンの総称ですが。
精巣とは別に、腎臓に隣接している【副腎】からも分泌されているため、これだけを指して、副腎アンドロジェンと呼ばれます。
男性ホルモンですが、女性でも副腎アンドロジェンは分泌されるようです。
男性ホルモンの詳しい説明は、後のテストステロンの項に譲りますが。
副腎アンドロジェンを分泌する【副腎】という臓器は、前の項目で紹介した【糖質コルチコイド】も分泌します。
そして、糖質コルチコイドはストレスにも反応して分泌される。
ストレスを感じると男性ホルモンが活性化して、毛深くなると一部では囁かれていますが。ストレスを感じると【糖質コルチコイド】と【副腎アンドロジェン】がセットで増加してしまうからじゃないか。と、私などは勝手に解釈しています。(裏付けは取れていない。あくまで、私見)
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●ヒスタミン
・分泌場所:全身の肥満細胞
・役割を一言でいうと:炎症やアレルギーを起こす
全身にある肥満細胞(そういう名前なだけで、別に太っている人に多いわけではない)から分泌されるホルモンです。異常があった部分に
・血管を広げる
・血管の壁を作る細胞同士の隙間を広げる
・結果として、その部分の血流が多くなる
といった変化を起こします。
そこに血流が集まるといういことは、体を防衛するための白血球や、体の修復に必要なたんぱく質が自ずと集まりやすくなることを意味します。
これが、炎症やアレルギー、怪我をした部分が腫れる原因です。
ヒスタミンは身体防衛反応のキーマンといえるでしょう。
ただ、何事も限度はあります。あまりに腫れやアレルギーがひどい場合に処方される、塗り薬などには、【抗ヒスタミン】つまり、ヒスタミンの働きを抑える効能があるものが多いようです。
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●プロラクチン
・分泌場所:脳の下垂体(前葉)
・役割を一言で:性ホルモンに近い。胸の発育。子供を育てる母親モードに。
プロラクチンは女性ホルモンに近しい働きをしますが、やや特殊な立ち位置のホルモンです。
・乳腺の発達を促す
・母乳を産出させる
とここまでは女性ホルモンのイメージ通りっぽいのですが、
・排卵を抑制する(妊娠しなくなる)
・自分の子供以外に対して、攻撃性が上がる
と、一部の性の機能を減退させます。
プロラクチンは、女性が妊娠中に最も多く分泌されるといわれており、【異性と恋愛して子供をなす】から、【我が子を守る強き母】のハートや肉体に変化させるものと定義できるでしょう。
恋愛より、子育てを優先する心理になるわけです。
既婚の男性から【子供ができて、妻が変わってしまった】【妻が俺ではなく、子供ばかりに構うようになってしまった】と、愚痴ともおのろけともつかない、不満をもらす場面をお見かけしますが。
この妊娠時に多量に分泌される、プロラクチンが影響していることは、想像にかたくありません。
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●テストステロン
・分泌個所:精巣
・一言でいうと:男性ホルモンの代表。筋肉も育てる。
テストステロンは精巣から分泌されるホルモンで、男性ホルモンと聞いたら思い浮かぶイメージそのものといってもいい効果を持ちます。
・男性器の発達、維持
・精子をつくる
・男性の二次性徴期のトリガー(体毛、のとぼとけ、声変わりなど)
・性欲を強くする
・筋肉や骨の中でタンパク質の合成を促す
女性と男性といえば、どうしても男性の方が腕力が強いという傾向がありますが。
このテストステロンの【筋肉や骨の元となるたんぱく質を作る】作用が、大きく働いています。
また、肉体を酷使するアスリートがこっそりテストステロン(に似た物質)を服用して、強化していることも。
いわゆるドーピングで、大体においては反則。
前述の通り、脂質でできている性ホルモンはステロイドの一種なので、スポーツ業界でステロイドといったら、こちらを指すことが多いと思います。
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●エストロゲン
・別名:卵胞ホルモン、エストロジェン
・分泌個所:卵巣
・一言でいうと:女性ホルモンの代表その1
エストロゲンは、女性器の卵巣から分泌される女性ホルモンの代表格で、次に紹介するプロジェステロンと共同して、女性の月経や受精をコントロールしています。
・卵胞の中にある、妊娠できる前段階の卵子を育てる
・子宮の粘膜と膣上皮を厚くする(受精後の卵子が着床するベッドをつくる)
・分泌のピークを越えると、排卵が起こる
・女性の二次性徴期のトリガー(乳房の発達、骨格の女性化、皮下脂肪の発達)
・性欲を強くする
・骨の破骨細胞の働きを抑える
月経周期においてエストロゲンは、未熟な卵子を発達させ、排卵させる役割をもち、主として、生理のあった日から排卵日の直後まで分泌されます。
子をなすための周期の前半を支えている形といえるでしょうか。
最期に、骨に対する働きについてですが。
一般的に骨には、骨を作る骨芽細胞と、骨を壊す破骨細胞が存在し、これらがペースを守って共に働き続けることで【古い骨を壊して、新しい骨を作る】→【骨の強度が一定に保たれる】システムが維持されています。
プロジェステロンは、破骨細胞が暴走しないよう抑える働きもあるのですが、卵子の排出が難しくなる閉経(40歳代以降が多い)が近づくと、分泌量が減る。
すなわち、破骨細胞の活動だけが強くなり、骨が弱くなる原因となります。
骨の中身がスカスカになって脆くなる、骨粗しょう症です。
男性の場合は、それとは別にタンパク質を作らせるデストステロンが多く分泌されるので、補えるわけですが。女性には乏しい。
骨粗しょう症は女性の方が、起こりやすいということになります。
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●プロジェステロン
・別名:黄体ホルモン
・分泌個所:卵巣
・一言でいうと:女性ホルモンの代表その2。妊娠中に強く働く。
プロジェステロンは、女性器の卵巣から分泌される女性ホルモンの代表格で、先に紹介したエストロゲンと共同して、女性の月経や受精をコントロールしています。
・受精卵を着床させて妊娠を成立させる
・妊娠状態を維持する
・排卵を抑制する
・乳腺を発達させる
・体温を上昇させる
先述のエストロジェンが妊娠の前準備をするホルモンだとすれば、こちらは妊娠を成立させ維持するための後半を担うホルモンだといえます。
プロジェステロンは排卵後から分泌され始め、妊娠が成立したか否かでその後の動向が変わります。
妊娠が成立した場合は、そのまま分泌が続行。妊娠状態を維持するとともに、新たな排卵は必要ないため、プロジェステロンが卵子の排卵を抑制します。
妊娠が不成立の場合は、10日程度でプロジェステロンの分泌が終了。
受精卵用のベッドは不要ということで、ホルモンの分泌が終わったタイミングで厚くなっていた子宮の粘膜が剥がれ落ち、体外に排出されます。
これが、生理(月経)の正体です。
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〇オマケ1 女性の周期のおさらい
さて、あなたが女性でしたら至極、当然の知識だと思いますが。
男性陣(筆者含む)にとって、女性の月経周期については、神秘の域、あるいはブラックボックスに近しいと思います。
ですので、ここで補足を加えて、およその月経周期の内容を示したいと思います。
月経周期は、【増殖期】【排卵】【分泌期】【月経期】の4段階にわけられます。
・増殖期:14日間程度、卵胞の中で卵子を成長させる ←エストロゲンが起こす
・排卵:卵子が卵胞から離れ、受精可能になる ←エストロゲンの分泌のピークが終えた頃
・分泌期:10日間程度、受精卵が着床できる時期 ←プロジェステロンが起こす
・月経期:3~4日間程度、生理(子宮粘膜の剥奪)が起こる
1回の周期は28日前後。
受精が可能(≒妊娠が成立可能)なのは、卵子が排卵された前後数日程度。
不妊治療では、この排卵のタイミングを狙うわけですが。
排卵の前後から分泌されるホルモン【プロジェステロン】には、基礎体温を上げる効果があります。よって、体温が上がった日は、すなわち排卵日=受精率が高いタイミング、という目安になるわけですね。
なお、増殖期、分泌期、月経期はそれぞれ、
卵胞期、黄体期、生理期ともよばれます。
卵胞は、まだ受精できない未成熟な卵子を育てるゆりかごのようなもの。
黄体は、成熟し排卵された後の卵子を指します。
■今日のまとめ■
・男性ホルモンの代表はテストステロン。筋や骨も強くするよ。
・女性ホルモンの代表はエストロジェンと、プロジェステロン。
・インスリンで、血糖値を下げるよ。
・ヒスタミンで炎症を起こし、糖質コルチコイド(ステロイド)で炎症を抑えるよ。
・プロラクチンで、母親のハートになるよ。
(※1) 腎臓や目の網膜、神経系、体の末端部にダメージを与えます
末期の糖尿病の症状。
(※2) 対して、スポーツ業界でステロイドといったら、男性ホルモンを指すようです。
(※3) ステロイドを使うと免疫機能が落ちる
なので、足にできた水虫にステロイド入りの塗り薬を使うと、肌の免疫機能が落ち、むしろ水虫(正体は菌類)が悪化します。
足の裏にできた皮膚炎は、菌類(水虫)が原因なのか、アレルギーが原因なのか、どちらかを見極めるのが治療には肝要です。
【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】
ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。
その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。
毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。




