28. ゲームの売上・販促に関する法則 4選
【第28回 2021.3.1】 『ゲームの売上・販促に関する法則 4選』 を配信
【14年間、業界で活動してきた知識・経験則の粋!?】
【ソフトを販売・宣伝するにあたっての規則性を4つご紹介します】
かれこれ、美少女ゲームクリエイターとして14年間活動して参りましたが、その間、さまざまな販促・販売方法を試してきました。
パッケージ版より、ダウンロード版を先行販売したり。
8週間連続で、新作をリリースしたり。
販促の王道である、雑誌広告やバナー広告も幾度も試して、その結果、見えてきた法則といいますか、人の動きの傾向があります。
そこで今回は、その中から幾つかをご紹介。
商品のプラットフォームが違えば、差異も生じるかもしれませんが、それでも貴方の同人・プロ活動におけるヒントになれば幸いと考えています。
■1:雑誌広告の効果は3日間
まずは、雑誌広告について。
コミック誌にある、『ダイエット器具』『恥ずかしい手術』の広告なんかは定番でしたが、あれらの有効な期間は、いったいどれくらいなのでしょうか?
美少女ゲーム雑誌への出稿(新作ゲームの広告)の場合、3日間ほどです。
その期間だけ、該当商品のオフィシャルホームページのアクセス数が増加しました。
実は、新聞などに入っている織り込みチラシなどでも、【効果は3日間】というのが、昔からの定説だそうで。
この手の紙媒体のチラシ・広告は、どれも似たり寄ったりなのでしょう。
想像していたより、短かかったでしょうか?
有効期間、呼び込める人数だけで考えると、あまり効率は良くなさそうですね。
ただ、わざわざ雑誌で商品の名前を憶えて、ネットで検索する。あるいは、折り込みチラシを見て店舗に来る人は、その商品の特徴を把握した上で、【商品が欲しい度】がかなり高まっている状態であろうと考えられます。
購買率が高いお客様だと、容易に想像できましょう。(※1)
専門用語を使えば、ロイヤリティ。私などは『お客様の濃さ』と表現していますが、このあたりの長所も踏まえて、出稿料の割に合うかどうかが、この手法を使うか否かの判断材料となりそうです。(※2)
■2:ホームページ更新による客寄せ効果は10日~14日程度
昨今、マーケティングの基礎を紹介するような書籍を見ると、【常連客を作れ】というフレーズをよく見かけます。
何度も、入店してくれるうちに、そのお客さんはファンになってくれる。
ファンを大勢作ることが、お店の売上アップに繋がるのだという理屈です。(※3)
また、ホームページやオンラインサービスを運営する際にも、同じようなことがいえそうです。すなわち、ホームページを定期的に更新すれば、それが呼び水になって、お客さんが定期的にサイトをチェックしてくれるようになる。
その際に、新サービスやお得な情報を提示すれば、大勢の目に触れて売上アップ!
となるのが、理想像ですが、一つ疑問が生じます。
どのくらいの頻度で更新をすれば、効率よくお客様の目にとまるのでしょうか?
まず、前提として1回サイトを更新すると、その日にアクセスが集中。
訪問客のピークを迎えます。
でも、日を増すごとに、訪問者数が減少。
そして、2週間を経過することを待たずに、およそ10~12日間後には、更新前と同程度の訪問者数に落ち着くようです。
つまり、1回の更新での客寄せ効果は、2週間弱であると仮説が立ちます。
ここからは、そのサイトの運営方針次第。
満員御礼さながらの状況を常に保ちたいのであれば、1週間に1回。
そこまでで無いにしろ、ユーザの興味に間隙を作りたくないのであれば、10日1回。遅くとも2週間に1度くらいはサービスを更新した方が良さそうです。(※4)
■3:効果のあるバーナー広告
美少女ゲームの通販サイトの大手である、げっちゅや(http://www.getchu.com/)さんで、かれこれ十数回、同じスペースにバナー広告を出稿してきました。
その中で、効果的だった(クリック数が多かった)ものもあれば、反響が今一だった広告もあります。
もっとも効果があったのは、【商品の説明ではなく、ユーザーの興味を誘うもの】でした。
いわゆる『悪堕ちゲーム』を作った時の広告ですが。悪堕ちゲームとは、【清純だった正義のヒロインが、洗脳など何らかの方法によって、妖艶な悪のヒロインになる】のを楽しむ作品群のこと。
姿まで、えろろーんに変わってしまうヒロインの様=立ち絵の変化を楽しみます。
そこで、ターゲットのお客様の興味を引くために、
『9種類もの悪堕ちパターンがあるよ』
『↑の立ち絵の体の一部分を、アニメーションで見せる(胸、お尻、口元とか)』
『オフィシャルホームページで、最新の悪堕ち立ち絵を公開中!』
という情報を乗せ、『詳しくはここをクリック!』と促すバナーを、1か月公開。
商品の購入を決意させるより、とにかくバナーをクリックして、リンク先のホームページに来てもらうことに狙いを絞りました。が。これが、プチヒット!
従来のクリック数が、『10』だとすると、倍にあたる『20』を達成しました。
やはり、【商売っ気マンマン】の姿勢で行くより、【こんな楽しいイベントやってるよ!】と、訴えかけた方が受けがいいようですね。
逆に、反響が悪かったのは、【ダウンロードで先行販売したものを、コンプリートパックとして初パッケージ化】したもの。
待望、お得だよ、とかのメッセージも載せたのですが。
従来のクリック数が、『10』だとすると、半分の『5』しかクリックされませんでした。
あくまでお客さんは新作の情報が欲しいのであって、旧作のセット販売ごときではあまり興味が惹かれないのかもしれませんね。(※5)(※6)
以上、
【楽しいイベントをアピールしたら、いっぱいクリックしてくれた】
【旧作のセット販売だと、興味を持ってもらえなかった】
と、当然といえば、当然の結果の帰結なわけですが。
なにより、同じスペースに同じ期間バナーを設置しても、内容によって4倍もクリック数に差が出たことこそ、注目すべき点かもしれません。
■4:販売から10日間観察すれば、売上が予測できる(ダウンロード販売の場合)
30タイトルほどダウンロード販売にかかわり、また同時期のライバル商品の売り上げを観察してきました。
その甲斐もあり、販売数の目安をある程度つかむことができました。
法則として表してみると、以下の通りです。
〇1:発売から3日間の売上が、発売から半年間の売上の2/7にあたる。
〇2:発売から10日間の売上が、発売から半年間の売上の1/2にあたる。
1の法則に当てはめると、発売から3日間で1000本ソフトが売れていれば、半年後までには3500本売れているであろう計算に。
2の法則に当てはめると、発売から10日間で2000本ソフトが売れていれば、半年後までには4000本売れているであろう計算になります。
なお、法則1と法則2では、法則2の10日間をベースにした計算の方がより正確です。
実は、ダウンロード販売の売り上げ推移には、3つのパターンがあり、
〇A:ロングランタイプ
発売直後からよく売れ、かつ売上ペースがなかなか落ちない、理想的なパターン。
ヒット作でないとこの形には恵まれない。
〇B:初動集中パターン
発売直後はよく売れるが、落ち着くのが早いパターン。
ターゲットが狭いコアな作品や、続編物で多くのファンが最初からついている作品がこの形になりやすい。
〇C:飛ばず鳴かずパターン
単純に売れないパターン。
それでも発売直後の方が、購入数は伸びる。
発売が3日後の時点だと、パターンAかパターンBなのか区別がつかないのです。
10日経過すると、違いが現れ、選別が可能となります。
なお、上記の法則は、美少女ゲームの場合です。
つまり、【美少女ゲームは金曜日に発売するため、金土日に売り上げが集中する】→【最初の3日間を観察すれば、今後の推移も予測できる】ってな寸法なわけで。
これが、コンシューマーゲームだと、発売が木曜日に集中します。
よって、3日間→4日間、10日間→11日間の売上を見る必要があるかも。
あるいは、同人市場だと毎日新作が発売されているので、リリースした曜日によって、微妙に数値のずれが出るかもしれません。
■今日のまとめ■
・雑誌広告や、新聞チラシの効果は3日間だよ
・ホームページの更新による客寄せ効果は10~14日間だよ
・バナー広告は内容によって、クリック数に4倍(以上)の差が出る
・ダウンロード販売は、3日間、10日間の売り上げを観察すべし
(※1) 購買率
お店に来た人が、どのくらいの確率で商品を購入してくれるかを数字で表したもの。もちろん、高い方が望ましい。
(※2) ロイヤリティ
愛着度、忠誠度のこと。
(※3)
こうして、お客さんが馴染みの店に通うようになることを、ロックインといいます。
(※4)
これはホームページを基準にした数字です。
スマホゲーを運営するのであれば、毎日でもユーザーに通って欲しいぐらいでしょうから、更新の頻度をもっと上げる選択肢が生じます。
(※5)
前者の【悪堕ちゲーム】も、後者の【コンプリートパック】も、同じシリーズの作品。よって、商品の作風がクリック数に影響したとは、考えづらいです。
(※6)
【ダウンロードで先行販売したものを、コンプリートパックとして初パッケージ化】したら、バナーのクリック数が半分になったということで。
私などは、パッケージ版を先行発売した後に、ダウンロード版を発売した場合。
または、ダウンロード版を先行発売した後に、パッケージ版を発売した場合。
後発組の売り上げは、本来の半分になるだろうという、仮説を立てています。
【自己紹介 板皮類 学名:ニョロリマス・オパーイスキー】
ばんぴるいと読む。美少女ゲーム業界で14年。
その後、一瞬だけソーシャルゲーム業界にいた、元企画屋&シナリオライター。
毎週、新作エロゲを300円で8週間連続発売するなど、コンフォートゾーンから飛び出す、変わり種企画が持ち味だった。




