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晴人の朝
ある日の朝、僕は見たんだ…
あれは澄み切った空が急に前触れもなく変化し雨空へと変わった日…
彼女は透き通るような肌をして空を見上げていた
何かを見るように
何かを感じるように
空を見上げていた
八時半に到着する電車の音
定刻通りに鳴るベルの音
その一瞬だけ 僕と彼女は、会うことが出来た
「……夢…か」
見た覚えのない夢かどうかも、見たのかも知らない夢が途絶えて夜が明けた
そして何かが頬を伝って落ちる感覚があったのを覚えている
今となっては覚えてはないが多分涙だったと思う
何よりも僕はジリリリッと目覚まし時計に頭を叩かれて目が覚めた
夢など覚えてる訳が無い そう思いながらネクタイを締め出掛ける準備を終えた
「あら、晴人くんおはよう」
近所に住むおばぁちゃんだ
いつも花壇に水をあげている
「おはようございます」
そう声をかけて駅へと向かった
あの子と出会う事になる''天昏駅''へ
改札を通り駅のホームに着いた
発車ベルの音が静かな無人駅に鳴り響いた
八時半に来た電車の音が何かを訴えるように
そしてドアが閉まりまるで鼓動のように鳴らし進み続ける