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92話:見送りから会合が始まりそうです()

 ペネムエがA級天使に昇格してから、天界の時間で一週間が過ぎた。

 彼女にとって待ちに待った、ノーマジカルへの帰還の日だ。


 天界の駅のホームで、ペネムエは魔法列車を待っていた。


 「やはり、リールは見当たりませんね……一緒には帰れないのでしょうか?」


 辺りをいくら見渡しても、リールの姿が見当たらない。

 翔矢をマキシムへ転生させる計画は、白紙になったとうい話だが、北風エネルギーの調査という新たな任務が正式に決まった。


 リールもアテナ派の天使として、同じ任務を受けるはずだが、その姿は無かった。


 「オーディン様は、厳しいながらも、ブリューナクを使いこなせるよう、わたくしを鍛えて下さりました……

 優しい方でしたので、悪いようにはなっていないと思うのですが……」


 試験後に、目を覚ました日に、リールと再会し、何かの理由でオーディンに連れていかれたきり連絡すら取れない。

 そういえば、試験の中日にも連絡が取れない日があった。

 ペネムエの頭の中が徐々に悪い想像に支配されていく。


 「まぁ任務は決定してる訳ですし、すぐに会えますよね?」


 そう自分に言い聞かせていたタイミングで、誰かに右肩をポンポンと叩かれた。


 「リール!?」


 そう思い勢いよく振り返ったが、肩を叩いたのいはリールではなかった。


 「アッアルマ様!? 失礼しました」


 まさか駅に女神が来ているとは思わず、何度も何度も頭をペコペコと下げる。



 「あぁ、かしこまらずとも良い」


 「わたくしに何かご用でしょうか?」


 「何、少し暇が出来たのでな、お主をノーマジカルに転送してやろうと思ってな」


 アルマの言葉にペネムエは目を丸くする。

 本当に暇だったとしても、女神が、1人の天使を送り出す為に出向くなど聞いた事が無い。


 「めめめ滅相もないですよ!!」


 「しかし、今回の魔法列車の終着駅は東京という所じゃぞ?

 お主、そこから六香穂まで、どうやって行く気じゃ?」


 「マジックラウドで……」


 「恐らくじゃが10時間は掛かるぞ……」


 アルマは呆れた表情を見せる。


 「そっそんなにですか?」


 ノーマジカルの地理に、まだ詳しくないペネムエはギョッとした。


 「少しでも早く翔矢に会いたいじゃろう? ワシからの昇格祝いだと思って受け取ってくれ」


 女神にそこまで言われては断れないし、断ってしまえばアルマに無駄足を運ばせた事になってしまう。

 ペネムエは、アルマの言葉に甘える事にした。


 「よろしくお願いいたします」


 「うむ、目を瞑っておれ、翔矢の目の前の転送して驚かせてやろう!!」


 アルマは悪戯を企む子供のように、ニヤニヤと笑みを浮かべた。

 その姿は、彼女の容姿で見れば、年相応にも思えた。



 「あの……確かに1秒でも早く、お会いしたいと思っておりましたが、本当の意味で1秒を争う手段でなくても……」


 そう言いながらも、ペネムエは目を瞑ると、あっという間に足元に魔法陣が派生し、ペネムエの姿は足からゆっくりと消えて行った。


 「……翔矢によろしくのぉ」


 そう見送ったアルマの声はペネムエには聞こえなかっただろう。



 

 

 *****




 その頃、12神官のアイリーンは、自分の仕事部屋で本を読んでいた。

 すると部屋のドアからコンコンとノックされる音が聞こえてきた。


 「どうぞ」


 本を閉じ、机に置きながら返事をすると、同じ12神官のクローバーと、自分の教え子に当たるゼウが入って来た。


 「クローバー様、人形の為に薬を作って頂いたそうで……

 お手間を取らせました」


 アイリーンが珍しく頭を下げたので、クローバーもゼウも驚いたが、触れずに話を進めた。


 「ふん、アルマ様からの頼みであったので仕方ないですな!!」


 「俺は……あなたがペネムエを見逃すとは思わなかった。

 ブリューナクの奥義には驚いたが、余裕はあっただろう?」


 ゼウが質問したタイミングで、アイリーンはゆっくりと椅子から立ち上がった。


 「えぇ、それでも普通の天使であれば即座にA級への昇格に値するわ」


 「『普通の天使であれば』と強調したという事は、人形の昇格は、アイリーン殿の意思では無かった訳ですな?」


 「その通りよ」


 アイリーンは、おもむろに上着を脱いで見せた。

 クローバーもゼウも驚いたが、それは彼女が服を脱いだからではない。


 「こっこれは……」


 「なんだ?」


 アイリーンの上半半身には、薄紫に不気味に光る文字がギッシリと刻まれていた。

 この文字が何なのか、クローバーは見た瞬間に分かったが、ゼウには分からず首を傾げていた。


 「今の若い天使は見たことないわよね?

 これは『真の神の呪い』よ、人形を消そうと思ったら食らってしまったの。

 人形を見逃したら、収まって来たから、そのうち消えるとは思うんだけど……」


 アイリーンの表情は、どこか自信が無さそうだった。


 「真の神、俺たち天使の振興の対象だが……

 ここまで、直接手を出してくる事があるんですか?」


 ゼウは冷や汗が止まらなくなっている。


 「基本はありませんな、しかしすべての世界の大筋の動きは、真の神が誕生した際に示した通りに動いているんですな。

 その道筋を大きく阻害する動きをしようとすれば、警告を受けるんですな」


 クローバーは、彼女にしては静かな口調で、ゼウに説明をした。


 「ペネムエが生き続ける事が、真の神の道筋に関係あるという事ですか?」


 「少なくとも、何か役割はあると考えた方がいいですな」


 ゼウとクローバーが話している間に、服装を整えたアイリーンは、ここで深刻な顔になった。


 「あの子は、人形という事を覗いてもおかしい点が多いのよ、例えばブリューナクの継承」


 「確か、天界学校卒業の際に女神アルマ様が授けたとか。

 氷に、かなりの耐性が無ければ使えないせいで長年使い手のいなかった武器なので、人形といえど継承しても不思議は無いと思いますがな」


 「神器は人間の道具と逆で、使わないと痛んでしまうからな……」


 「問題はそこじゃないわ、ブリューナクの継承の件で彼女は、天界学校時代にメイジに仕えているトリマーに特に酷い虐めを受けていた」


 ここでゼウは首を傾げたが、クローバーはハッとした顔をする。


 「卒業後に継承したはずのブリューナクの件で、学校時代に虐めを受けているのはおかしいですな!!」


 クローバーは頭の四つ葉をぶんぶん振り、興奮した様子だ。

 これを聞いて、ゼウもある事に気が付いた。


 「ライカ……俺がブレイズで世話をしていた雷鬼……

 彼女がペネムエに殺された俺の記憶は残っているのに、あいつは違うと言った……」


 「私も試験の時に人形の記憶を覗いたけど、本当に何も知らないようね」


 「しかしアイリーン殿の記憶改変のような魔法であれば、記憶に疑問を持った地点で魔法は解けるはず……」


 3人による考察は、ここで手詰まりとなった。


 「もう1つ、人形の記憶から、面白いのが見えたの、ゼウ君。

 あなた、マキシムに派遣されていたなら、『大魔王ベルゼブ』って知ってるかしら?」


 この質問に、ゼウは聞いたこともないと言っているのと同義なほど、首を傾げた。


 「そんな気はしてたわ……マキシムに行って確かめるのが早いけどゲートは厳重に封印されてる……

 なら、ゼウ君にはノーマジカルに行ってもらうわ!!」


 「何が何だか分からない事だらけだが……それしかできる事もないか」


 ゼウは、アイリーンの部屋をゆっくりと出て行った。






 *****





 

 ペネムエをノーマジカルに送った後、女神アルマは自室に続く廊下を歩いていた。

 すると、自分の部屋の前にチャイナ服の女が立っているのが見えた。


 アルマに気が付くなり、その女は頭を下げた。


 「お初目に掛かるアル、私はリンシャって言うアル!!」


 「あぁ確かA級昇格試験に出ておったの、見事な戦いぶりじゃった」


 「お褒めに預かり光栄アル」


 「まぁ、お主の事は最終試験を棄権した変わり者がいたという方で覚えていたがな」


 アルマはリンシャの目を、何かを見透かすように見つめた。


 「私が昇格する訳にはいかないアル、それより部屋で我が主『大魔王ベルゼブ様』がお待ちアル」


 「やれやれ……呼び出したとはいえ、女子の部屋に勝手に入るとわな」


 アルマは部屋の扉を開けると、中で待っていた黒い鎧を全身に纏った、大魔王ベルゼブと目を合わせた。


 ベルゼブが手をかざすと、リンシャは『赤いメリケンサック』へと姿を変え、ベルゼブの手元に戻った。


 「やはり……天使を創っておるのか……」

 

 アルマは悲しそうな表情を見せた。


 「我が力を持っても、あの子には未だに手が届かぬ……」


 「当然じゃな……」


 ベルゼブの仮面の中は、恐らく悲しい表情をしているのだろう。

 アルマはそう感じていた。


 「何故!! あの子をノーマジカルに送った!!」


 ベルゼブは闇でできた剣を興奮した様子で、突きつけた。


 「殺せもせんのに、物騒な物を向けるな」


 「くっ」


 ベルゼブは、静かに剣を納める。


 「そこを変えれば、ワシは真の神に殺される、命は惜しいのでな」


 「数万年も生き、あの子の命より、自分の命を取るか!!」


 ベルゼブは、手を出してもおかしくないほどに興奮している。


 「安心せいワシの力と、ここに干渉する程の、お主のチートがあれば全て救えるわい」


 アルマの表情は笑顔になったが、無理をしているようだった。


 「今は、その言葉を信じよう……」


 ベルゼブは闇に包まれ、その姿を消した。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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