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86話:問い詰めから提案が始まりそうです()

 ペネムエとの試合を終えたゼウは険しい表情で、ある場所へと向かっていた。


 その場所への扉の前へ辿り付いたが、扉の前には2人の見張りの天使がおり、ゼウが近づいて来るのに気が付くと、見張りは人の背丈ほどもある槍をクロスさせ行く手を阻んだ。


 「これより先は12神官様の専用席だ」

 「お引き取り願います」


 西洋風の鎧兜で表情こそ見えないが、その声は緊迫していた。


 「すまないが急いで確認したい事があるのでな……

 【スパークLv70】」


 「なっ」


 「がはっ」


 2人はゼウが魔法を発動させた途端に、見張りの2人に電流が流れそのまま倒れてしまう。


 「12神官に警護など着ける必要ないだろう……」


 ゼウは倒れた見張りを一瞬見つめて、一言だけ呟いた後、勢いよくドアを開けた。


 この場にいないオーディン以外の12神官は、まるで外の様子を知っていたかのように、ゼウの開けた扉の方を見つめていた。


 「まぁ、私に用事があるのよね?」


 その1人アイリーンは、ゆっくりとゼウの元に近づく。


 

 「人形……いや、ペネムエと手合わせをして分かった……

 あいつはライカを殺していない、そういう奴じゃない……」


 「じゃあ、そのライカちゃんは誰にやられたと思うの?」


 「分からない……が俺の記憶の中では今でもペネムエが犯人だ。

 そんな事ができるのは、お前の記憶改変くらいだろう?」


 ゼウは強い殺気の目でアイリーンを見つめながら、体にバチバチと電流を流している。


 「ゼウと言いましたか? ボーン?

 残念ですがアイリーンちゃんの記憶改変では、それは無理ですね、ボーン」


 ゼウの質問に代わりに答えたのはクルリとした髭が特徴的な、ピエルンだった。


 「無理? どういう事だ?」


 ゼウの目からわずかに殺気は消え、体を纏っていた電撃もスゥっと引いていく。

 思い込みでペネムエを恨んでしまった反省もあるのかもしれない。


 「記憶改変は、そんな便利じゃないわ。その記憶に疑問を持てば魔法は解けてしまうの。

 あなたの中で犯人が人形っていうのが変わってないなら、それは記憶改変じゃない」


 「……じゃぁ俺のこの記憶は……」


 ゼウは何が何だか分からなくなり、崩れ落ちてしまった。

 その姿を哀れな目で見ながらアイリーンは答える。


 「私にも分からない。あなたが人形を恨んでいてくれた方が都合がいいから黙ってたけど……

 あれが神槍ブリューナクを継承したのは、天界学校を卒業してから。

 まだ10年も経ってないはずよ?」


 「なっ……」

 

 ゼウはライカが命を落とした時の事を再び思い出す。

 80年前、確かにライカの体を貫いたのは神槍ブリューナクだった。


 「あなたの恨みを利用してしまった事は謝るわ。

 ごめんなさい……」


 アイリーンは暗い表情を見せながら頭を下げた。

 その姿に、他の12神官は驚きの表情を見せる。


 「だけど、あなたが大切な者と右腕を失った事に私は無関係よ……

 それ以上は何も知らないの……」


 今まで見たことのないようなアイリーンの表情。

 ゼウはペネムエが無実と感じた時と同じように、アイリーンも無実だと確信してしまった。

 それと同時に自分が、これから何をすればいいのか分からなくなってしまう。


 「……もう1つ言うなら、80年前の神槍ブリューナクの所有者は、天の英雄アリスよ」


 その一言はゼウにとって、さらなる追い打ちとなる。


 「アリス……復活が近いとされている大魔王ルシファーの調査へ向かい行方不明になった英雄だと?」


 「えぇ……でもおかしいの。だとしたら何故アルマ様は神槍ブリューナクを持っていたのかしら?」


 「何が起こっているのか分からない……だが俺は必ずライカの仇を探し出す。

 その相手が……誰であろうとな!!」


 ゼウは、開けっ放しになっていた扉から部屋を出ると、勢い良く扉を閉めて行った。

  


 「アイリーン、さっきの話は本当ですかな?」


 ゼウが出て行ったのタイミングを待っていたかのようにクローバーは口を開いた。


 「私が嘘を付く必要がある?」


 「ふん、お主は記憶の改変ができますからな。

 ウソなど付く必要はありませんな」


 クローバーは違和感を感じながらも、話には納得した様子ではあった。


 「さぁて、この話はおしまい。

 私は準備があるから失礼するわね」


 「準備とは何のですか? ボーン?」


 ピエルンは、ヒゲをピンと指で触りながら、後ろの席からアイリーンの背後を横目で見ながら会話に入ってきた。


 「もちろん、人形を処分する準備よ?」


 アイリーンは席を立ちあがると、ピエルンの横まで歩いてきた所で立ち止まり、横目を向いて微笑みながら、一言だけで言い放ち部屋を出て行ってしまう。


 (早く人形を……処分しないと……私がおかしくなってしまうわ……)


 

 

 

 *****




 

 ゼウとの試合を終えた翌日、この日は試験の休日だったのでペネムエは、リールに会おうと朝から何度か通信用魔法石で連絡を取っていた。

 しかし、昼近くになっても連絡は付かなかった。


 「B級の試験は昨日で終わったはずですが……疲れて寝てしまったのでしょうか?」


 通信用魔法石を握りながら、数秒間見つめて寂しそうな表情を浮かべた。


 「残念ですが、明日の試験に備えて体調を整えますか……」


 ペネムエは、首から下げている魔法のポーチから翔矢からもらった……と言うより騙し取った剣道のバンダナを取り出し匂いを嗅ぎ始めた。


 「はぁ……はぁ……試験とはいえ厳しい戦いが続きましたからね……

 癒されますぅ」


 バンダナの匂いを嗅いだペネムエは、目がトロンとして気が抜けきった顔になってしまった。

 

 「ほぅ、そこまでの癒しを与える香りとは珍しい。

 特殊な薬草でも染み込んでいるのかな?」


 「いえ、愛しい方の努力の結晶が……ん?」


 後ろに誰かがいた事に気が付いたペネムエは驚き、素早く振り向くと、声の主を見て、さらに驚く事となる。


 「オ、オ、オ、オ、オ……オーディンさまぁぁぁぁぁ!?」


 後ろにいたのは、自分が一生話す機会が無いと思っていた12神官最強と言われるオーディンだった。

 オーディンの両隣には、トリマーとメイジもいたのだが、驚きすぎて2人に対するリアクションまで順番が回ってこないでいた。


 「ははは、驚かせてしまったかな?」


 それは大当たりで驚きはしたが、オーディンの表情は優しい笑顔だったので、自分に敵意などは無いと分かった。

 しかしペネムエはオーディンに堅苦しい印象を持っていたので、このように話しかけられた事に驚きはした。


 何より両隣には自分を良く思っていないはずのメイジとトリマーがいる。

 時間が経ち冷静になるほど要件が想像できなかった。


 「何、アイリーンの企みが気に食わなかったのでな、お主に少し協力をしようと思ってな」


 優しいながらも厳しい表情で、オーディンはペネムエに、アイリーンの企みを伝え、さらに1つの提案をしたのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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