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84話:恐怖から最大魔法が始まりそうです()

 「この腕を見て、何も感じないだと? ふざけるな!!」


 ゼウは、自分の事もライカの事も覚えていないペネムエに、さらに怒りが強まり、攻撃を強める。

 ペネムエの体は、常にゼウから回復魔法を掛けられ回復しているせいで、気絶すら許されず、ただただ痛みを感じるだけの時間が流れる。


 体のダメージは回復し続けていても、心へのダメージは蓄積していくばかりだ。


 (早く降参しないと……あっ相手は、わたくしを殺すつもりでしたっけ……)


 徐々に思考能力も低下していく。


 (だったら、早く殺してくれないかな……)


 苦しみに耐えられず、そんな考えが頭をよぎってしまった。


 「……お前を痛めつけても雷鬼のライカは転生もできないし、帰って来る訳もない。

 そろそろ終わらせるか……」


 ペネムエの頭の考えが読み取られたかのように、ゼウは魔力を貯め最後の攻撃の体勢へと移った。





 *****




 2人の女神もペネムエとゼウの戦いを観戦していた。


 「もう見ていられないのよ!!」


 女神アテナは、見るに耐えられなくなり2人の戦いを止めようと、魔法陣を展開した。

 魔力を貯め、火炎球をゼウに向かって放とうとした瞬間、アテナの体中に赤い模様が浮かぶ。


 「くっ……」


 アテナは冷や汗を流しながら膝を地面に付き、魔法陣もそのまま消滅してしまう。


 

 「やれやれ、アイリーンの呪いが掛かっておるというのに無茶をしおって」


 隣のソファーに腰を掛けていたもう1人の女神アルマは、その様子をジッと見つめていた。


 「はぁ……はぁ……ペネムエは、あなたに仕えている天使でしょう?

 何とも思わないの?」


 「そう見えてしまっても仕方ないかのぉ。

 わしが止めるのは簡単じゃが、それは意味のない事じゃ。この戦いの決着は、まだ付かんじゃろうしのぉ」


 「なんですって?」


 アルマの言葉にアテナは息を整えて、再び戦いを見守るのだった。





 *****





 「これで終わりだ!!」


 ゼウは体が見えなくなるほどの凄まじい電気を纏い、高速でペネムエに向かってくる。


 (やっと……終われる……)


 すでに抵抗する気力もないペネムエは、時間の流れがスローモーションに感じられた。

 とてつもないスピードで向かってきているはずのゼウも、速足で近づいて来ているように錯覚される。


 それでも、すぐに自分の元に辿り付くだろう。


 ペネムエは覚悟を決め目を閉じる。


 

 「力を貸してくれライカ!!

 【ライジング・クラッシュ】」


 

 ゼウは体中に纏っていた雷を右手の雷鬼の手へと集中させ、最後の一撃でペネムエの心臓を貫こうとする。



 ペネムエの事を、冷ややかな目で見ていた観客たちも、いざ彼女の最後の時が近づこうとすると目を背ける者が大半だった。

 ゼウが痛めつけるような攻撃を始めた地点でも、そうだったので、ここまで事が進んでくれば、この様子を見ていられる者はほとんど残ってはいない。


 

 それでも戦いを止めようとする者はおらず、この場に居合わせるのみだった。


 誰もがペネムエは、この場で終わりだと思った。

 140年間、天界の忌々しい存在としてさげすまされてきた人形の歴史がここで終わるのだと。



 「なに!?」


 「はぁ……はぁ……」


 

 しかし、その歴史は、まだ終わっていなかった、トドメを刺しにきた最後の一撃を、ペネムエは雷鬼の腕を右手で掴み防いでいた。

 その姿は、白銀のオーラを纏っていた。



 目を背けていた観客達も、決着が付いていない事を察したのか、コロシアムに目を戻し始める。


 

 「まだ、痛めつけられ足りないのか?」


 雷鬼の腕を掴まれながらも、ゼウは比較的落ち着いていた。

 2人の実力差を考えれば、1撃防がれた程度は問題ないと考えていたのだろう。


 「怖かったです……恐ろしかったです……」


 「我ながら憎しみに身を任せ趣味の悪い事をしたと思っている。

 ようやく終わらせてやろうと思ったんだがな……」


 「違います!! わたくしが恐ろしいと思ったのは……

 痛みに負け、帰りを待ってくれている人の事を……忘れてしまいそうになったことです!!」


 ペネムエは、体から凍てつくような冷気を放ちゼウの雷鬼の腕ごと凍らせてしまった。


 「くっ……なぜ雷が出せない……」


 ゼウはすぐに氷を破壊し、ペネムエと距離を取ろうとするが、得意の雷が出せず、さすがに焦りを見せる。


 「無駄です!! この氷は魔力を遮断します!!」


 「厄介な魔法を……

 だが、俺の力はライカからもらった雷だけじゃない!!

 このまま、あの世に送ってやる!!」


 ゼウは目からあふれ出る殺気と共に、氷っていない左手で腰の剣を握り、抜刀術でペネムエの首を斬り落とそうとした。


 「あなたが、なぜわたくしを恨んでいるのか分かりません。

 本当にわたくしが、あなたや雷鬼に何かしていたなら、謝る事もあるのかもしれませんが……

 

 今は生きて大切な人の元に帰る!! それだけです!!

 【絶対零度Lv150】」


 「ぐっ……」


 しかし魔法も封じられ、無理な体勢からの抜刀は間に合わず、ペネムエの全てを掛けた魔法でコロシアムは観客を護る結界の表面ごと氷ついてしまった。


 

 「あの人形こんなに強かったのか……」


 一瞬で凍り付いた周りを見渡し、観客達もザワツキ出す。


 しかし完全に凍り付いてしまったコロシアムにはゼウの姿はおろか、ペネムエの姿も確認できないのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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