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82話:ブーイングから雷撃が始まりそうです

 「さぁ、続いての選手の入場です!!

 まず1人目、本日はこの方の試合を見に来たという人も多いのではないでしょうか?

 あの12神官最強のオーディン様の孫娘!! メイジ選手!!」


 高らかな実況と共にクルクルヘアと、これから戦闘を行うとは思えない派手なドレスが特徴的なメイジが歓声に答えるように手を振りながら入場する。


 (お爺様の七光りのような紹介は気に入りませんが……大勢から応援して頂けるのは素直に受け取っておきますわ)



 メイジか開始位置で立ち止まってもなお、観客の歓声は鳴りやまない。



 「さぁ、続いての選手は……」


 実況の天使は、ここまでハイテンションだったが、次の選手のプロフィールに目を通した瞬間に、テンションが下がってしまった。


 「おっと、失礼!! 続いての選手は……悪しき魔法が生み出した忌々しき人形!!

 ペネムエ選手だぁ!!」


 気を取り直し無理やりテンションを上げた実況と共にペネムエは入場する。


 ペネムエがコロシアムに現れるなり、会場からは大きなブーイングや野次が飛ぶ。




 「人形はすっこんでろ!!」

 「物覚えは良いらしいが、そんなのお前が人形だからだ!!」

 「そうだ!! 作られた魂が、A級の試験なんか受けるんじゃねぇ!!」



 ペネムエが、開始位置で止まってもブーイングは鳴りやまない。

 さきほどメイジに向けられたブーイング


 「あら、あなたも大した注目ね。妬けてしまいますわ」


 メイジとペネムエが目を合わせる。


 「今更、なんとも思いません……

 1人でも応援して……待ってくれる人がいれば、その方のためにも全力を尽くすまでです!!」


 「でも、あなたが私に勝てるかしら? 魔法列車では、うやむやになってしまいまいたが、コロシアムでは、そうはいきませんわよ!!」


 メイジはスッとペネムエに杖を向ける。


 (実力では確かに敵うと思えません……

 しかし、わたくしには友達と言ってくれる人がいる、家族と言ってくれる人がいる……)


 未だにブーイングは鳴りやまない。しかし何万人が自分の存在を否定しようとも、無事を願い帰りを待ってくれている人がいる。

 その事実が、この雑音を打ち消してくれる。


 「さぁ2人が火花を散らしているようですが、最後の1人を紹介しましょう!!

 と言いたいところですが、私の手元には彼の情報は、ほとんど入って来ておりません!!

 詳細不明の雷使い!! ゼウ選手!!」


 ボロボロのマントで体を隠した、金髪ヘアの男が入場すると、一応の拍手は送られるものの、誰も彼を知っている者はおらず、メイジの時と比べると短い印象を受けた。




 「それでは、試合開始!!」


 実況の合図とともに、コロシアムは、観客全員が目を瞑ってしまう程の眩い光に包まれた。


 (うっ)


 観客よりも光の発生源に近い位置にいるペネムエも当然目を開けていられず、右手で顔を覆い隠す。

 光はすぐに収まり目を開けると、メイジがぐったりと倒れてしまっていた。


 「なんという事だぁ!! 昇格間違い無しと思われていたメイジ選手が早くもダウンだぁ!!」



 「そんな……」


 「くっ……あり得ませんわ……」


 予想外の出来事にペネムエもメイジも困惑している。


 (メイジ様……)


 観客席ではメイジに仕えているトリマーもショックを受けていた。


 「すまない……手加減のできる相手では無いと判断して、最初から俺の最強の魔法を使わせてもらった」


 ゼウの方に全員が目を向けるとローブから伸びた右手は、天使ではなく雷鬼の者だとペネムエも観客も一瞬で理解した。


 「無念です……私の知らない天使に、これほどの実力者がいようとは思いませんでしたわ……」


 ダウンの判定を受けたメイジは、足を引きずりながら自ら退場する。


 「お前とは……1対1で戦いたかったからな」


 メイジの退場を確認すると、ゼウの目はギロリとペネムエを睨む。


 「……どういう意味でしょうか?」


 その問いかけが言い終わるか終わらないかの間に、ペネムエの腹部に強い衝撃が走る。


 「ぐはっ」


 ゼウの右腕から高速で繰り出された拳は、1撃だけとは思えない威力だった。


 「ふざけるな!! この右腕に見覚えが無いとは言わせないぞ!!」


 

 自分が人形だからじゃない。この男は何か別の理由で、自分に恨み……いや殺意を向けている。

 ペネムエが、それを理解している間にも、何発も何発も、さきほどの拳が飛んでくる。


 あまりにものスピードに、今どこを攻撃されているのかも分からない。


 数秒間の攻撃だったが、何分にも感じられた。


 やがてペネムエは気を失い、体は雷で焦げ、ピクリとも動けなくなってしまった。


 「懺悔の1つでもすれば、楽に死なせてやろうと思ったんだがな……」



 ゼウは動かなくなったペネムエの顔を踏み付ける。



 「ペネムエ選手もダウンだぁ!!」


 「いや、まだ終わらせはしない!!」


 審判の役割もしている実況を、ゼウは大声で遮る。


 【テラ・オブ・キュア】


 「えっ?」


 ゼウが魔法を唱えると、ペネムエの意識は戻り傷も完治していた。


 「楽に死ねると思うなよ?

 お前を、殺すのは簡単だが……それじゃこいつが浮かばれない」


 ゼウは雷鬼の手を撫でながら、涙を流しているのがペネムエには見えた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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