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70話:車中から変態行為が始まりそうです

 魔法列車に乗ったペネムエとリールは、光の空間の中を移動している。


 ノーマジカルの列車であれば景色を観たりするのも楽しみの1つになるが、魔法列車は駅に到着するまで景色が変わる事はない。


 ペネムエは狭いトロッコで足を伸ばして試験対策の本を読んでいるがリールは退屈そうにしている。


 「よくこんな所で本なんか読めるわね、私は何もしてないのに酔いそうなんだけど……」


 ダタゴトとトロッコに揺られながらリールは話しかけたがペネムエは集中しているのか反応がない。


 「……あっ、宮本翔矢が金髪お姉さんと手を繋いで歩いてる!!」


 「えっ? えっ? そんな!!」


 ペネムエは、この言葉には泣き目になりながらトロッコから身を乗り出し辺りをキョロキョロしだした。


 「ここ、時空の狭間よ? いたら一大事だから」


 ここまで反応するとは思っていなかったのでリールは呆れてしまった。


 「もう!! リールはいじわるです!!」


 しかし当のペネムエは大まじめだったのか頬を膨らませ怒りだす。


 「あんたが無視するからでしょうが、ってかそんなんで宮本翔矢と1か月も離れて平気なのか不安になってきたわ」


 「その点は抜かりありません」


 ペネムエは魔法のポーチをガサゴゾと漁ると、1枚のバンダナを取り出した。


 「なにそれ?」


 「翔矢様が部活で使用しているバンダナです、剣道というスポーツでは頭に巻く決まりがあるようです」


 「なんで、そんな物をあんたが?」


 「こうすると、いつでも翔矢様の存在を感じられるのです!!」


 ペネムエはバンダナを自分の顔に密着させスリスリしたり匂いを嗅いだりしだした。


 「えっ? えっ? えっ?」


 リールは目の前にいる天界トップの知識を持つ天使の行動に言葉を失ってしまった。


 そして、しばらくしてようやく口から言葉が出てきた。


 「色々と言いたい事はあるけど、それ汗吸いまくってるでしょ?

 汚いから止めなさい!!」


 もっと他に言うべき事はあるのだろうが最初に思い浮かんだのがこれだったのだ。


 その一言でペネムエの表情がキリッと険しくなった。


 「失礼な!! 翔矢様が部活を頑張られて掻いた汗を吸っているのですよ!!

 新品や洗いたてよりも神聖に決まっているではないですか!!」


 「どっちにしたって天使が人間の物を盗んだらアウトよ」


 「誤解です!! 合法的に入手したのです!!」


 流石に盗んだと思われたままでは、マズいと思ったのか入手経路についてペネムエは語りだした。


 





 *****





 時は北風エネルギーとの戦いが終わった数日後に遡る。


 「翔矢様、この前は助けて頂き本当にありがとうございました。

 ささやかな物ですがお礼をさせてください!!」


 ペネムエは意を決したような表情で翔矢に紙袋を手渡した。


 「えっ? ありがとう、わざわざ買ってくれたの?

 開けていい?」


 「はい、翔矢様の好みなど分からなくて……

 気に入って頂けると嬉しいのですが……」


 ペネムエがモジモジしている間に翔矢は紙袋を開封していた。


 「おぉ!! かっこかわいくていいね!! ありがとう!!」


 中身は白地に赤で短刀のような小さいイラストがズラリと並んだデザインのバンダナだった。


 「気に入って頂けたようで嬉しいです!! 失礼ながら剣道で使用しているバンダナがボロボロに見えましたので……」


 「よく気づいたね、入部したときに何枚か買ったけど、それっきり買い替えたりしてなかったんだよね……」


 ペネムエにそこまで見られていた事が少し恥ずかしかったが、気持ちはすごく嬉しかった。


 しかし、この気持ちの本当の部分には翔矢はまだ気が付いていない。


 (でも、もったいないから部活用にはできないかな……しばらくはハンカチとして使わせてもらおう)


 「でっでは、ちょうど今日の洗濯に出されたバンダナが一番ダメージを受けているようでしたので処分しておきますね!!」


 ペネムエは洗濯籠の、ちょうど一番上に見えていたバンダナを取り出した。


 これは、まだ洗濯前の物である。


 「えっ? いいよ、自分で捨てるよ!!」


 「あっ、えっと、あの……」


 翔矢は気が付かなかったがペネムエは一瞬何かを閃いたような表情をした。


 「天使にとって人間が身に着け愛用して古くなった物の処分をするのは、お互いにとって大変縁起の良い事とされているのです!!」


 ペネムエの表情は必死だった。


 「そっそうなの? 俺にとってもぺネちゃんにとっても縁起がいいって事か」


 「左様でございます!!」


 「じゃあ、お願いしようかな」


 「御頂戴いたします!!」


 ペネムエがバンダナを受け取った瞬間に翔矢はパンパンと手を叩いて拝み始めた。


 「翔矢様?」


 「あっ、何となく物への感謝とか込めて拝んだ方がいいのかと」


 「大切な心がけだとは思いますが、そういった儀式ではないので……」


 「そっそうなんだ」


 

 

 

 *****





 「という事があったのです!!」


 「あったのです!! じゃないわよ!!」


 ペネムエの回想を聞き終わったリールは、そのままチョップをお見舞いした。


 「痛いです!! 何をするんですか!!」


 「あんたが何してるのよ!! いらない物だからって嘘ついてもらっちゃダメでしょ!!」


 「嘘はついておりません!! 天界に文明がまだ広まっていなかった時代には人間から使わなくなった物を何でも譲ってもらい、再利用したり文明の勉強に役立てていたそうです。

 人間にとっては天に献上するという事で、当時は神事だったそうですよ」


 「へぇ、そんな時代が……って天界に文明が発展してないって、想像もできない大昔の話じゃない!!」


 「昔を知る事は大事な事です。実際にこうして利を得る事ができました」


 「利って……」


 翔矢のバンダナをスリスリしているペネムエを見て、天界1の知識の使い方がこれでいいのかと呆れてしまったが、それでも誰に迷惑をかけている訳でもないし、友達の嬉しそうな顔を見ていると止める気にはなれなかった。


 (まぁ宮本翔矢には、いつか天界1の知識を、こんな変態にした責任は取らせないとね……)


 「リール、何かいいました?」


 「なんでもいないわよ」


 心の声のつもりだったが、どうやら少し口に出してしまったようだった。




 『次はぁクラウディアー、クラウディアー

 お降りのお客様はお忘れ物の無いようご注意ください』


 ここで車内アナウンスが流れた。お降りのお客様と言っても、この魔法列車にはペネムエとリールしか乗っていない。


 「ここで乗り換えるのでしたね」


 ペネムエは肩から下ろしていたポーチを掛けなおすと下車する準備を始める。


 その姿を見つめながらリールは悩みながらも口を開く。


 「あんたなら気が付いてるんだろうけど、今回の試験絶対に何か裏があるわ。

 ただでさえ今回の試験の責任者はアイリーン様だし……」


 「分かっております。それでも……わたくしは、この試練を乗り越えてノーマジカルに帰らなければなりません。

 帰りを待ってくれている人がいますので!!」


 (ノーマジカルに『帰る』……か)


 「それに……身を案じてくれる親友もいますから」


 「ばっ……馬鹿!! 急に恥ずかしい事言うんじゃないわよ!!

 とっ、とにかく天界では合流できるか分からないけど、また元気に会いましょう!!」


 「はい!! リールのメイドさん姿、可愛らしかったのでまた見たいですし!!

 B級試験も頑張ってくださいね」


 「とっ当然よ!!」


 2人は再会を約束し、ペネムエはクラウディアで下車。


 リールは、このまま天界へと向かたのだった。

 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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