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66話:ごめんねから和解が始まりそうです

 その日の夜もペネムエはいつものように翔矢の部屋の片隅にマジックラウドを設置して寝ようとしていた。


 しかし中々寝付く事ができずにマジックラウドの上をゴロゴロしている。


 (喫茶店でせっかく翔矢様が夕飯のリクエストを聞いて下さったのに、邪魔してはいけないと変に気を回してしまい無視する形になってしまいました)


 ちょっとした事では翔矢は全く気にしていなかったのだが、ペネムエは後悔からマジックラウドに頭を打ち付けている。


 マジックラウドは、雲なのでフワフワしていて柔らかく痛みは無いが、これが地面に同じ事をしていれば頭から赤い液体が流れ出ていただろう。


 「このままでは寝付けません……天界から明日の早朝にはわたくしに処分が下りますのに……」


 横になっていても考え込んでしまい、全く眠くなる気配が無かったので、いったん起き上がることにした。


 同じ部屋で寝ている翔矢を起こさないようにゆっくりと歩き、部屋から出ようとする。


 すると、部屋の扉付近にあるベットに目が行き、そのまま翔矢の寝顔が視界に入った。


 「わたくしを助けて下さった時は頼もしく格好よく見えましたが、こうやってお休みになっていると無防備で……可愛らしいですね。

 翔矢様は男性としては小柄ですし、後ろ髪も長めですからね……」


 ペネムエは思わず翔矢の頭に手を伸ばし撫でててしまった。


 「うーん」


 それが眠りを浅くしてしまったのか翔矢は寝返りを打った。


 「ひっ!!」


 我に返ったペネムエはベットから一気に離れて距離を取った。


 「おっ起きてはいないようですね……

 わたくしは……いったい何をしていたのでしょう。

 余計に目が覚めてしまいました……」


 我に返り、今度こそ1度部屋から出ようとしたのだが今度は翔矢の布団がさっきの寝返りではだけてしまった事に気が付く。


 「だんだんと暑くなって来たとはいえ夜は冷えますからね……

 布団を直して差し上げるだけなのです!!」


 そう自分に言い聞かせ布団に手をかけようとする。


 「シャッ、シャツも捲れてしまってはっ肌が見えてしまっているでは無いですか!!

 かっ風でもひかれては一大事ですので直してあげませんと!!

 てっ天使が人間の体を心配するのは当然の事なのです!! ゴクリ」


 ペネムエは息を飲み、シャツの端の方を摘まんだ。


 「もうちょっと上に上げて中を確認してから直しても風邪になる確率は変わりませんよね?」


 などと少し邪悪な考えが浮かんだところで、魔法のポーチが薄紫に光ながらブルブルと震えた。


 「ごめんなさい!! ごめんなさい!! まだ何もしておりません!!」


 ペネムエは小声ながらハッキリとした声でごめんなさいを連呼し翔矢から離れた。


 そしてポーチから薄紫色に輝いた魔法石を慌てて取出した。


 「久しぶりじゃのうペネムエ」

 

 「アルマ様、御無沙汰しております」

 

 魔法石には女神アルマの姿が映し出されていた。


 ペネムエはピンと背筋を伸ばしお辞儀をする。


 「この前は忙しくてのぉ。何とかサポートはできたが連絡する暇は無かったわい。

 翔矢だけには声を掛けたが、対になる魔法石無しで世界を超える通信は長く持たんしのぉ」

 

 「あっいえ……アルマ様のサポートして下さらなければ、どうなっていたか分かりませんので

 ところで、こんな時間にどうされたのですか?」


 「こんな時間? しまった日本は夜じゃったか!?

 ニューヨークという所の時間を見ておったわい。

 夜中にすまんかったのぉ」


 「いえ。わたくしも色々ありまして目が冴えておりましたので」


 「そうか? ごめんなさいなどと連呼したので、寝ぼけておったのかと。

 では決定した処分の内容を伝えるぞ?」


 ペネムエの表情は急に真剣な物に変わった。





 *****





 次の日の早朝。翔矢の部屋には、ペネムエの他に召集のかかったリールも来ていた。


 立体映像の見れる通信用の魔法石でアテナとアルマ、2人の女神も参加している。


 「えっ? ぺネちゃん天界に帰るの?」


 天の議会での決定事項を、ある程度聞かされた翔矢は驚きを隠せなかった。


 「翔矢。早とちりするでない。

  『A級天使昇格試験』を受ける。それが決定したペネムエへの罰じゃ。

 試験を受けるために一度天界にきてもらうだけじゃ」


 「それって受からなかったらどうなるんですか?」


 罰の内容に疑問を持ったリールがアルマに尋ねた。


 「試験の結果は特に問わぬぞ? 試験を受けるというのが決定した罰じゃからな」


 「それは罰に入るのでしょうか?」


 ペネムエは処分の内容に納得していなかった。


 「では翔矢に聞いてみるか?」


 「俺っすか?」


 「試験は好きかのう?」


 「いや……実は俺もテスト近いんですけど、正直好きではないですね……」


 「そういう事じゃ。ペネムエの場合は本来受けなくても良い試験を受けねばならぬ訳なので十分罰になる訳じゃな」


 アルマの説明に勉強が好きでない翔矢は、ついつい納得してしまった。


 だがペネムエは違った。


 「あの、今回の処分は十二神官の方々が決定されたのですよね?

 それにしては、あまりに軽いと思うのですが……」


 「まぁ翔矢も無事だった訳じゃし、人工魔力と言ったか? あれを注入された3人も入院中じゃが命に別状は無いらしいからのぉ。

 被害は、そこまで出なかったという判断じゃろう」


 (そんなはずない……こんな処分をアイリーン様が認める訳がありません……)


 しかしペネムエにそれ以上の追及は出来なかった。


 「あのぉ……私はこれからどうすればいいんですかね?」


 リールは自分の担当女神であるアテナに尋ねたがアテナは沈黙していた。


 「アテナ様?」


 「あっ、ごめんなのよー。ノーマジカルの今の状態は危険だと思うのよー。

 だから転生の件は一端保留にするのよー。ベルゼブも目立った動きは無いようだし時間の流れもゆっくりだから、今は北風エネルギーの調査の方が重要なのよー。

 リールには調査任務を任せようかと……あっB級の昇格試験も一緒に行われるから、リールも1回天界に戻って……」


 アテナがそこまで話した所でリールはテーブルをドンと強く両手で叩いた。


 「ふざけないで!!」


 そして、そのまま部屋を飛び出して行ってしまった。


 「ペネムエ、行ってやれ。伝えるべきことはもう伝え終わったからのぉ」


 「はい!!」


 ペネムエもリールを追って部屋を飛び出した。


 「ぺネちゃん……」


 「あの2人なら大丈夫なのよ……」


 「お主がそれをいうのか? まぁ翔矢には、まだ要件が残っておるからのぉ。

 まだ残ってほしい訳じゃが」


 「なんすか?」


 「なに、北風エネルギーで白銀の騎士から渡されて力に解析魔法を掛けさせてもらいたくてのぉ。

 本当は天界のシステムを使いたいのじゃが、ペネムエがいない間に北風エネルギーがお主を襲撃する可能性もゼロではない。

 今は必要な力なはずじゃ。なので時間は掛かるが、この場で解析魔法を掛けさせてもらうぞ」


 アルマが、そう言うと同時に翔矢のポケットに入っていた赤いメリケンサックが輝きだす。


 「うわっ」


 「すまん、すまん。驚かせてしまったかの。その光は数分で収まるが解析には地球の時間で3日は掛かる。

 まぁ気長に待っておれ」


 「はい」


 女神との通信はここで終わった。





 *****





 「はぁ……はぁ……」


 リールを追っていたペネムエは数分走った所で、ようやく追いつき息を切らしていた。


 追い付かれたリールは一度立ち止まったが、すぐにまた走り出そうとする。


 しかしペネムエはリールの腕をガッシリと掴んだ。


 今逃がしてしまっては、取り返しが付かなくなってしまう気がした。


 「待ってください!! どうしたのですか!!」


 覚悟を決めたのかリールは口を開いた。


 「私さぁ……この前は……ペネムエが危ない目にあってるかもって思って無我夢中で助けに行った……」


 「はい。リールがいてくれなければ全員無事とは行かなかったでしょう。

 本当に感謝しています。」


 「だけどさぁ……私は元々、宮本翔矢を殺して転生させるためにノーマジカルに来たのよ?」


 「マキシムの世界の方々の気持ちを考えてでしょう? ベルゼブの圧倒的な力を考えれば正しいと言えないまでも全て否定はできないのではないでしょうか?」


 「そうよ……前に宮本翔矢をマキシムの仮想空間に送ったの覚えてる?」


 「はい。翔矢様にマキシムの現状を直接見てもらい転生を前向きに考えてもらおうとしたのですよね?」


 「ノーマジカルに派遣される前に、あの仮想空間で私もベルゼブと戦ったの。

 超天才の私なら絶対にベルゼブを倒せるって思って……結局手も足も出なかったわ。

 仮想空間って分かってても死の恐怖を感じた」


 「それで転生させるしかないと思ったのですね……」


 「絶対ベルゼブを倒さないとって、あれを見たら何を犠牲にしても倒すのが正しいって思ったわ」


 「わたくしだってベルゼブを目にしたら、そう思ってしまうのかもしれません……」


 「でも私、ペネムエにひどい事した!! ひどいこと言った!!」


 ペネムエは思い出した。リールはノーマジカルで初めて会ったとき、自分に容赦なくサーベルを振り下ろし、一番言われたくない『人形』という言葉を浴びせたのだ。


 「ビックリしましたよ? だけどわたくしはリールの事を信じていましたので……」


 「だからよ!! 怒って欲しかった!! 憎んで欲しかった!!

 信じられちゃったら……自分のした事が余計許せなくなるじゃない!!


 アテナ様には……正直当たっちゃったわよ。私が苦しんで引き受けてる任務をあっさり保有っていうんだもん……

 でも私は私が一番許せない!!」


 「リールはいつも言っていました。全ての世界の人々を笑顔にしたいと。

 わたくしは……そんなに自分を責めてるリールを見ても笑顔になれません。


 それに友達がこんなに苦しんでたのに、どうして気づいてあげれなかったんだろうって、自分が許せません……」


 「ペネムエ……私の事、まだ友達って言ってくれるの?」


 「当たり前じゃないですか!! 北風エネルギーの事もベルゼブの事も解決して、2人でまた本当に笑いましょう?」


 「ペネムエ……ごめんね!! ごめんね!! 保留なんて関係ない!!

 転生でも友達の大好きな人を手にかけるなんてできない!! 私は私のやり方で全部救って見せる!!」


 「ちょっと……リール痛いですよ!!」


 リールはペネムエをがっしり抱きしめた。


 「あと5分!!」


 「しかたないですね……」


 さっきは2人で笑顔になろうと言ったペネムエだが、リールに抱きしめられ体にに隠れた顔は、すでに満面の笑みだった。


 

 

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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