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58話:解放から再戦が始まりそうです

 未だにペネムエの体に巻きつかれた鎖を、解決出来ていない翔矢は、グミとリールを待ちながらゆっくりとほどいていた。


 何となくではあるが、少しづつ緩くなっている気がする。


 「この辺が、グチャグチャなんだよな……ここさえ緩まれば……」


 鎖に集中する翔矢からは、すでにメリケンサックにより現れた赤いオーラは消えていた。


 ペネムエが翔矢の様子を見守っていると、後ろの方で異変が起こっている事に気が付いた。


 「しょ……翔矢様!! 後ろを!!」


 「後ろ!?」


 ペネムエに言われ後ろを確認すると、最初に倒し気絶したままの八田に向かって無数の機械のアームが伸びていた。


 アームの先端には注射器のような物が付いている。


 「……マジかよ。それはシャレにならんぞ」


 何となくではあったが、その注射器の中身は、鷹野と虎谷が使っていた人工魔力であると察することができた。


 注射器1本分の虎谷が、あの戦闘能力だったので、大量に摂取するとどうなるのか想像もしたくなかった。


 「翔矢様!! 逃げ……」


 少し前のペネムエであれば翔矢の安全を一番に考え、その先の言葉を言っただろう。


 しかし今のペネムエには、自分が何を言っても翔矢は1人で逃げないだろうと理解していた。


 「仕方ない……もう一度こいつで」


 翔矢はポケットに入れていた赤いメリケンサックを取り出し、構えた。


 しかし、赤いオーラを出そうとした寸前に、膝を付き倒れてしまう。


 「ぐっ……」

 

 「翔矢様?」


 まだ、何もされていないのに倒れこむ翔矢をペネムエがジッと見ると、翔矢の全身に痛みを誤魔化す魔法が掛けられているのに気が付いた。


 (あのメリケンサックの効果? いえ……これは道具による物ではない。

 先ほどの白銀の騎士にも、そのような素振りは……

 そもそも、この世界では魔力があっても魔法は使用できないはず。

 他の世界で発動した魔法の効果は干渉できると聞きますが……)


 ペネムエが思考を巡らせている間に、人工魔力を注入された八田は、人の原型を留めない巨大な鬼のような姿になっていた。


 「くっそ……」


 意識はあるものの、痛みで体が動かせない翔矢は、力を振り絞り無理やり立ち上がろうとしたが、それもできなかった。


 「ぐぉぉぉぉぉ!!」


 鬼となった八田は、雄たけびをあげ、地団駄を踏んだ。


 それだけで、床には地割れのようなヒビが発生した。

 

 「きゃっ」


 その地割れは、不幸中の幸いかペネムエを拘束していた十字架を傾け倒してしまった。


 「とりあえず、動けますね」


 翔矢が鎖を緩めていた事もあり、十字架が倒れると鎖も体をクネクネすると、外れるまでになっていた。


 「とにかく、翔矢様を回復させないと……」


 鬼となった八田のパワーは凄まじいが、肉体が巨大化する魔法は巨大であればあるほどスピードが落ちるというのが常識だった。


 翔矢の肩にはペネムエの魔法の道具の入ったポーチがぶら下がっている。


 酷いケガではあるがポーションを飲ませれば、自力で動ける程度には回復するはずでだ。


 (わたくしも、流石にポーションを飲まなければ、あの人間から生き延びる事はできないですね)


 「翔矢様。お首元失礼いたします」


 「うっうん」


 体の自由は効かないものの、翔矢は弱々しくも、はっきりと返事をした。


 ポーチを外し取ると改めて翔矢の容態を理解した。


 (右手の骨は完全に砕けている? やっぱり戦う前に痛めつけられたさい、すでに折れていたんだ……

 これだけのケガの痛みを感じさせなくする魔法……天界や他の世界から干渉するにしても、なぜ治癒でなく痛み止めを?)


 ペネムエは、考え事をしながらポーチの中をガサゴゾと漁る。


 「ペネちゃん!! 前!!」


 「えっ?」


 しかし翔矢の大声に反応し、言われた通りに前を向くと、眼前にはすでに鬼となった八田がいた。


 (しまった。集中しすぎ……)


 ペネムエは、状況を理解した頃には、すでに体は吹き飛ばされ壁に激突していた。


 「うっ……」


 「ペネちゃん!! 大丈夫!?」


 「はい……なんとか」


 翔矢は体を無理やり動かしペネムエの様子を確認した。


 電撃も受け、ペネムエの体は既にボロボロだが、天使の体は骨が完全に折れでもしない限りは、動くことができる。


 (あの者の心の声が全く聞こえなかった……理性を完全に失ってしまっている)


 何が起こっても客観的に状況を分析できるペネムエだが、これ以上状況を見る余裕は無かった。


 鬼となった八田は狙いを翔矢に変え、今にも殴り掛かろうとしていたのだ。


 「いけない!! 【光の牢獄】」


 ペネムエは即座にポーチから光の槍のような物を取り出し翔矢に向かって投げつけた。


 光の槍は翔矢の真上で8つに分裂して、翔矢の周りを檻のように囲む。


 八田の拳は光の檻に防がれ、翔矢に届く事は無かった。


 それでも、一撃を受けただけで少しヒビが入ったので長くは持たないだろう。


 「あっありがとう」


 「間一髪でした」


 それでも安心している暇はない。


 八田は、理性を失っているはずだが光の檻にさらに攻撃をして破壊しようとしている。


 「それ以上の攻撃には耐えれそうにないので、ご遠慮ください」


 ペネムエはそう言いながら、八田に弓矢を放った。


 「えっ?」


 使用したのは魔法の効果もなければ、殺傷能力も無い、先端の丸い練習用の矢だったのだが、八田の腕を貫通してしまった。


 注意を自分に引き付ける程度のつもりだったペネムエは困惑する。


 それでも狙い通り、八田は悲鳴を上げたが、すぐにペネムエの方に向かってきた。


 (体が大きくなり攻撃力は上がっているのに、肉体があまりにもろい……

 これでは自分自身の攻撃の反動でも相当なダメージのはずですが)


 八田の地面を殴るように振り下ろすパンチを、後ろ飛びで3発目を回避したペネムエだが、相手の拳は血で赤く染まっている。


 地面に当たっている自分の攻撃の反動に腕が耐えられていないのだろう。


 (この程度の攻撃なら、いくらでも回避はできますが、お相手の体が心配です。

 攻撃させて気絶させようにも、練習用の矢であのダメージでは何を使っても死なせてしまう可能性が……)


 練習用の弓矢で悲鳴を上げたので痛みは感じているはずだが、理性を失ってるせいかダメージを受けていないかのように向かってくる。


 このままでは、回避を続けても八田が命を落とすのは時間の問題に思えた。


 何か手はないとペネムエが思考を巡らせていると、入り口のドアがバンと音を立て勢いよく開いた。


 これ以上、敵が増えるのかと身構えたが扉を開けた人物の声が聞こえると、安心して思わず顔の筋肉が緩んでしまった。


 「ペネムエ!! 無事!?」


 駆け付けたのはリールだった。リールは目の前の状況を見たものの状況を全く飲み込めていない。


 「えっ? ゴブリンの次は鬼!?」


 状況を飲み込めていないなりに、鬼を倒さなければと思いサーベルを構える。


 「リール!! いけません!! 彼は人間です!!」


 「えっ?」


 今にも斬りかかりそうなリールだったが、ペネムエの言葉に動きが止まる。


 「話すと長くなってしまいますが、攻撃を当てるのも避け続けるのも危険な状況です」


 「いや……どうするのよそれ」


 「どうやら、体内に注入された大量の魔力の影響のようです。

 時間が経つにつれ、少しずつではありますが、魔力は減少しているようです。

 攻撃を当てずに、相手に攻撃もさせずに時間を稼ぎ魔力を消耗させれば人間に戻せるかと」


 「無茶苦茶ね……でもあんたの事だから作戦はあるんでしょ?」


 「はい。1人では難しいので協力して頂けますか?」


 「こんなの異世界転生させる訳にはいかないし分かったわよ!!」


 リールはペネムエの方に駆け寄り、態勢を整えるのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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