57話:戦闘後から停電が始まりそうです
虎谷、鷹野、八田を倒した翔矢は、ペネムエを拘束している鎖を外そうとしていた。
「やっと助けられる……待ってて!!」
そう言いながら、準備体操のように両手をブルブルと振っている。
「翔矢様……本当になんとお礼を言ったらいいのか」
「俺は、ペネちゃんを助けたいって思ったから、ここまで来たんだよ?
だから、そういうのいいの!! 後……お礼を言われるのはまだ早いかも……」
翔矢は、鎖をほどこうとしたり引っ張ってみたりするが外れる気配がない。
先ほど倒した3人が起きてこないか、時々振り向いて確認しながら作業を続ける。
「ってか、邪魔だな……これ」
そう思い、右手に付けっぱなしにしていたメリケンサックをポケットにしまった。
体に纏った赤いオーラは、戦闘が終わっても残っており力が増すので使えると思ったが、細かい作業をするにはメリケンサックは手が動かしにくく逆効果に感じた。
「これでよし!!」
気合を入れ直した翔矢は、そのまま鎖を思いっきり引っ張った。
「痛い!! 痛いです!! 翔矢様!!」
しかし、ペネムエはすぐに痛みで悲鳴を挙げた。
「あっ!! ごめん!!」
さすがに力を入れすぎたのか、それともペネムエの体の傷にでも触ってしまったのかと、翔矢は慌てて鎖から手を放す。
そこで、鎖を握っていた手を確認すると、ペネムエが痛がった理由に気が付いた。
「あっ……」
メリケンサックを外したにも関わらず体は赤いオーラを纏ったままだったのだ。
これで力いっぱい引っ張ってしまったのだから、ペネムエは相当痛かっただろう。
「本当にごめん……こういうのは外したら効果が消えるのがお約束だから、元に戻ってると思ってつい……」
「いえ……わたくしの為にしてくださってることなので……」
そうは言ったものの、完全に手詰まりだ。
鎖を、隈なく確認しても鍵のような物も見当たらないので、外す方法は思い付かない。
北風エネルギーは、ペネムエを完全に敵視していたので外す想定はしてなかったのかもしれない。
「悪いけど、グミかリールが来るまで待つしかないかな……」
「お、お二人も来ているのですか!?」
事情を知らなかったペネムエは目を丸くして驚いた。
*****
北風エネルギー東京本社で、蓮は深刻な顔をしていた。
「ドクター……、実験はもう済んだろ? 銀髪のウィザリアンを始末しろ」
「いいのかい? 今、鎖には宮本翔矢が触れている。
電撃を流せば彼の命も無いよ?」
「構わん!! 六香穂支部の2人が人工魔力を使った地点で、本来なら彼の命は無かったはずだ。
どの道、死ぬ運命だったと腹を括るしかない。
ドクターが始末できないと言うなら私がやる!!」
蓮は急ぎ、パソコンの操作を行った。
「私が、始末できないとは言ってないよ?
鈴君と同じ力を、ウィザリアンに味方する人間が持っているのも危険だしね。
実験の為とはいえ、ウィザリアンを今まで生かしていた私にも責任がある」
ドクターはパソコンを操作する蓮を止め、自分で操作を行い始める。
「鈴……お前は目をつぶっていろ」
中学を卒業したばかりの鈴を気にかけたのか、蓮は画面を一緒に見つめていた鈴に声を掛ける。
「大丈夫……『あれ』を見たときから……私も覚悟は決まってる。
一緒に……見届ける……」
「じゃあやるよ?」
ドクターは、超高圧電流を流すスイッチに手を掛けた。
*****
「何にゃ? 今の魔力は?」
通気口から脱出した後、会社内をさまよっていたグミはペネムエの魔力を頼りに進んでいたが、建物の構造に戸惑い思うように進めないでいた。
そんな中、異様な魔力を感じたので、一刻も早く駆けつけようと焦っているのだが、この世界の建物に慣れないのが進めていないのが原因なので、駆け足になったところで解決にはならない。
今では、先ほど感じた異様な魔力も弱くなってきている。
「ちくしょう……こうニャッたら最後の手段」
痺れを切らしたグミは、デコデコにデコられた自分のトランクケースからグローブを取り出した。
「手技は好きじゃニャイし、師匠から肉体強化の道具は邪道って教えられたけど、大変ニャ事が起こってるかもニャし、依頼主に何かあっては悪魔族の恥ニャ」
グミはグローブを両腕にはめると、ペネムエの魔力の方向を改めて確認した。
「ニャーーー!! はぁっ!!」
するとグミは、壁に思いっきり正拳突きをした。
一撃で壁にはヒビが入った。
「この世界の建物は頑丈だニャー」
そう言いながらも正拳突きを打ち続ける。
壁はどんどん崩れていく。
「よし!! 鉄じゃニャイからこのままやってれば進めるにゃ!!」
グミは壁を破壊しながら、ペネムエのいる部屋に向かおうとするのだった。
*****
グミが壁を破壊している振動は、通気口にハマり腰から下天井から、ぶら下がった状態のリールの所まで届いていた。
「えっ? 何? 地震?」
何が起きたか分からず、驚きジタバタしたが、体は完全にハマってしまっており抜け出せない。
しかし、なおも続く揺れで天井には少しづつヒビが入っていた。
「うわっ!! 落ちる!!」
大きなヒビではなかったが、それでもハマっていた体が抜けるには十分だった。
急に落ちそうになったので、リールは咄嗟に目に入った細い紐のような物に掴まった。
一瞬、落ちずに済んだと思ったが、細い紐はすぐに切れてしまった。
「うわっ!! ってあんまり高くないじゃない」
地面に足を突いたが、思ったより低かったので、何事もなく着地することができた。
「えっ? 暗くなった? 今度は何?」
しかし、すぐに次の異変がリールを襲った。部屋の電気が消え真っ暗になったのだ。
窓のない部屋だったので日中でも、ほとんど前が見えない。
「あっ、明るくなった。何だったの?」
10秒ほどするとすぐに明かりがついた。
リールが切ってしまった紐は電源系統の線だったのだが、天界から来たばかりなので、この世界の電気の仕組みなど理解していないので、その事には気が付かなかった。
『ガチャン』
今度は、ゴブリン戦の前に降りてきて道を塞いでいたシャッターから音が聞こえた。
もしやと思い、持ち上げてみると人間の力でも持ち上がるほど軽く、シェルターを上げる事が出来た。
「よく分からないけどラッキー!!」
リールはシェルターの隙間を潜り、前へ進んだ。
*****
「やられたねぇ」
「どうした?」
ペネムエに翔矢ごとトドメを刺そうとしていたドクターと蓮だったが、ドクターはパソコンのエンターキーを連打しながら、参ったというような顔をしている。
「我々が銀髪のウィザリアンに気を取られている内に、他の2匹のウィザリアンに動きがあったようだねぇ。
黒猫娘の方は、なぜか壁を破壊しながら銀髪の方に向かい、赤髪の方は電源系統を破壊してくれたようだ」
「予備電源が起動しただろ?」
「停電と違って、線を切られてるからねぇ。電灯と監視カメラは復旧できても、シェルターみたいな電気を喰う設備は、ここからじゃどうしようもないねぇ」
「ということは、銀髪を始末する電流も?」
「電気での始末は無理になったけど……まぁ切り札があるよ」
ドクターは再びパソコンを操作し始めた。
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