50話:元ヤンから案内が始まりそうです
ここはペネムエが捕らえられている部屋。
昨日は天井から伸びてきたアームによって血液を採取されたり無人の状態で実験が行われた。
しかし今日は十字架に拘束さえれたペネムエの前に3人の男が立っている。
年齢は3人とも20代前半に見える。
「はぁ。付いてねぇぜ。昨日は休日出勤させられたと思ったら、今日も通常通り勤務なんてよぉ」
3人の中ので1番大柄な男がダルそうにため息をつきながら機嫌の悪そうな顔で話す。
「まぁまぁ。こんな可愛い子を好きにしていいって本社の主任とドクターに言われてるからいいじゃないでやんすか兄貴ぃ」
小柄な男はそう言いながらペネムエの事を嫌らしい目で撫でまわすように見つめる。
「しかし、どこから見ても普通の人間ですが本当に人類の敵なんでしょうか?」
次に話したのはメガネを掛けた細身の男だ。3人の中では知的な雰囲気がある。
「馬鹿か。昨日の実験の映像見てねぇのか? 人間なら即死の電撃を何度も喰らってピンピンしてやがる」
「人類滅亡の脅威とか聞いたときは、本社の連中が働きすぎておかしくなったと思いましたが本当に未確認生命体がいるとは」
「……じゃありません」
3人の会話を聞いていたペネムエは、か細い声で口を開いた。
「あっ?」
しかし聞き取れなく、苛立った大柄の男は威圧的な態度で聞き返す。
「わたくし達は……人間の敵ではありません!!」
今度は力を振り絞り、声をあげる。
「そりゃあ、この状況自分から敵なんて言う訳ないでしょう」
ペネムエの必死の訴えも、メガネの男には届かず一蹴されてしまう。
「そんな事よりドクターからは、調べつくしたから好きに処分しろって言われてるんでしょう? だったらちょっと楽しんでおくでやんす」
今までいやらしい目でペネムエを眺めたまま沈黙していた小柄の男がようやく口を開いた。
「俺は、ガキには興味ねぇよ」
「見た目はこれでも実際は人間じゃないんでしょ? 僕もごめんですね。やりたい事があるなら勝手にどうぞ」
大柄の男とメガネの男は、あきれた様子でこの提案には興味を示さなかった。
「お2人ともドライでやんすねぇ。じゃあオイラ1人で楽しませてもらうでやんす」
小柄の男は、ペネムエの腰の拘束を外すと今はジーンズになっているペネムエのズボンを下ろそうとする。
「やめっ」
ペネムエは弱々しい声を出すが、それで止めてもらえるはずもなかった。
「ちょっと待ってください」
しかし、それはメガネの男が強い声を上げたことで中断させられた。
「鷹野さん。なんでやんすか? まだ何もしてないでやんすけど」
メガネの男は鷹野と言うらしい。小柄の男がペネムエに集中している間に電話が掛かってきたらしくスマホを手にしている。
「本部から連絡です。侵入者のようですね?」
「あぁ? こいつの仲間か?」
「その可能性が高いらしいですね。しかし相手は普通の人間らしいです。3人で確実に捕獲せよと」
「人間かよ……じゃあこいつの出番はねぇか」
大柄な男は銃のリボルバー部分に注射器のようなものが付いている器具を取り出した。
「虎谷さんに加え僕と八田君もいますからね」
鷹野は何故かドヤ顔でメガネをクイッと上げた。大柄の男の名は虎谷。小柄の男は八田というらしい。
「懐かしいでやんすねぇ。高校の時はよく『タトハッター』ってチームで馬鹿やってたでやんす」
「僕には黒歴史ですが……まぁ行きますか」
3人は部屋から駆け足で出て行った。
(……人間の侵入者? まさか翔矢様が?)
ペネムエは意識がハッキリしない中、翔矢の身に何かが起こりそうな危機感を抱いた。
*****
「この会社の間取りどうなってるんだよ」
翔矢は1回目の曲がり門で右を選択して以降何度も曲がり角に直面した。それはまるでアリの巣のようだった。
次の曲がり角をどちらに進むべきか悩んでいた翔矢の後ろから人の足音が聞こえてきた。
「誰?」
翔矢が勢いよく振り返ると、そこには3人組の男が立っていた。
「それはこちらのセリフですよ」
「ここは関係者以外立ち入り禁止でやんすよ」
「痛い目に合いたくなったら、とっとと出ていくんだな」
鷹野、八田、虎谷は口調は比較的、落ち着いているが目は明らかに威嚇している。
「帰りたくても出口塞がれてるし。社会人が痛い目に合いたくなかったらとか言っちゃダメだと思いますよ」
翔矢も口調は穏やかに、しかし鋭い目で返した。
*****
「まさか翔矢さんだったとは知らずに失礼しました」
「ふっ雰囲気が変わってたので気が付かなかったでやんす」
「本当に、お久しぶりです」
鷹野、八田、虎谷は3人そろって翔矢に深々と頭を下げていた。
「そんな頭を下げなくてもいいですよ」
社会人3人に頭を下げられ翔矢は、かなり戸惑っていた。
どうやら翔矢が荒れていた中学時代に、当時高校生だった3人をボコボコにしていたらしい。
正直、言われても全く思い出せなかった。
「ところでペネちゃんは無事なんだろうなぁ?」
今は怖がられていた方が都合がいいので少し威圧的な態度で本題を切り出した。
「えっえぇまぁ……俺たちは、まだ何もしてませんので」
虎谷は大柄な体に似合わない歯切れの悪さで質問に答えた。
「『まだ』なにもぉ!?」
まだという事は、何かしようとしていたという事だ。さっきはわざと威圧的な態度を取ったが今度は素で荒い口調になった。
「すっすいません!! 実は北風エネルギーは新しいエネルギーの開発を進めているんですが、あの子がそのエネルギーと同じものを体内に持っていたんで……研究の対象にしようとしてました」
虎谷はペラペラ白状すると再び頭を下げた。
「ペネちゃんの体内のエネルギーって事は魔力? えっ? 開発できるの?」
「これは企業秘密でやんすが実用化も近いでやんす」
八田がそう付け加えた。
「ここに来る途中、変な生き物を見ませんでしたか?」
3人の中では比較的落ち着いている鷹野も口を開く。
「……いたな。ゴブリン」
急に現れたゴブリンのことを、鷹野が知っていいたので翔矢は少し警戒し始めた。
「ゴブリンは海外では雪男と言われたりしています。世間でUMAと言われる生物の一部は魔力を持った生物です。
どこからか来たのか、それとも地球に最初からいた生物なのか謎だらけですがね。
我々は、これらの生命体を『ウィザリアン』と名付け研究しています」
「んで、ペネちゃんも研究しようとした訳か」
かなり重要な事を聞いた気がしたが、頭に血が上ってしまっている翔矢の耳には話半分しか入っていなかった。
「まっ魔力を持ち人の言葉を話す生物は、初発見で上が危険視もしていたので……あの子は翔矢さんの何なんですか?」
「俺のボディーガード……かな?」
「はっはぁ?」
どう答えていいか分からなかったが、ふとペネムエが自分の何なのかを考え浮かんだのがそれだった。
翔矢の返答に3人はキョトンとする。
(自然に同居しちゃってるけど俺の何かって言われると難しいよな)
「あっ、そのボディーガードちゃんのいるのはここでやんす」
3人に案内され、たどり着いたのは大きな扉の前だった。
大きな扉は八田がカードキーをスラッシュするとゆっくりと大きな音を立てて空いた。
(ペネちゃん……本当に無事だよな?)
翔矢は不安を抱きながら、部屋の中に入って行く。
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