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47話:工業団地から侵入が始まりそうです

 翔矢、グミ、リールの3人は女神アテナから送られてきた地図を頼りに、ペネムエがいると思われる工業団地までやってきた。


 この辺は広大な敷地に工場が何社か並んでいる。


 リールは空飛ぶ絨毯、グミは空飛ぶホウキから適当な場所に着陸した。翔矢はどうやって来たのかと言うと……


 「はぁはぁ……やっと着いたか」


 到着早々に疲れた様子の翔矢。しかし歩いて来た訳ではない。リールの絨毯に一緒に乗せてもらったのだが……


 「だらしがないわねぇ。高い所苦手なの? ずっと心の中で、うどんだのソバだの食べ物の名前連呼してたでしょ」


 「別に高い所は平気……いや苦手って事でいいや」


 「?」


 翔矢のあいまいな返答にリールは首を傾げた。


 (ペネちゃんも似た所あるけど天使ってみんなそうなのか?)


 絨毯に乗っている間、関係ない事ばかり考えていたのは絨毯に乗るとリールと体が密着しているからだ。


 天使は自分に対する人の心の声を聴くことができる。これは近かったり触れたりすると鮮明になるらしい。


 女子と密着すれば人並みにいやらしい事を考えてしまうので、覚られないようにとりあえず食べ物の名前を連呼していた訳だ。


 今日のリールは、ほとんど露出のないメイド服を着ているのは助かった。いつもの露出の多い服では色々危なかった。


 悪魔は心の声を聴けないのでグミのホウキに乗る手もあったが、こちらは完全に抱き着かないと同乗できなかったので却下した。


 ここに来るだけで翔矢は気疲れしたが、ペネムエを見つけるため歩みを進めた。






 *****






 「歩きスマホはダメよ」


 スマホの地図を凝視しながら歩く翔矢にリールが注意する。


 「あっうん。悪い悪い」


 やっぱり天使は規則とかには厳しいのかと思いながら一旦足を止めた。


 「翔矢も地図は苦手ニャ?」


 「苦手じゃない。と思ってたけど、普段あまり使うことないし、工業団地で同じような建物ばかりだからなぁ」 


 この辺は地元のちょっとした権力者である佐島雅渋が会長を務める佐島グループの会社が並んでいる。


 1つ1つの会社の敷地が広い上に外観は似たような作りで、どれがどの会社なのかまるで分らない。


 客商売する店舗ではなく、工業団地なので外観は気にしていないのだろう。


 「あっあれだな。北風エネルギー」


 立ち止まった所から、辺りをグルっと見渡すと北風エネルギーと書かれた看板が上の方に見えた。


 「でも何でこんな所にペネムエは来たニャ?」


 「買い物に行ったからな。ここのデカい建物が目に入って店だと思った。とかならいいんだけどな」


 「正直嫌な予感しかしないわね。場所分からなかったなら大人しく帰って来るでしょうし……この北風エネルギーって何やってるところなの?」


 「風力発電やら太陽光発電の会社みたいだな」


 佐島グループの会社の中には大企業もあって地元では有名なのだが、まだ高校生の翔矢は事業内容までは知らなかったので来る途中にネットで調べた情報だ。


 「山の上でクルクル回ってる風車とかは、北風エネルギーの事業らしいのよー」


 北風エネルギーについて女神アテナから補足説明が入る。通信用の水晶玉を介してこちらの様子を見ているらしい。


 3人は思わず「へぇー」と関心の声を上げた。


 「でも、そんニャ大きい会社が天使を狙う理由ってなんニャ?」


 グミと同じ疑問を、アテナを含めたこの場の全員が持っていた。状況からみて誘拐まがいの事をされたとみてまず間違いないだろう。


 「ペネちゃん……」


 「あの子なら大丈夫なのよー。ロリババアが事態を把握していないって事は深刻な事にはなってないのよー」


 「そうそう。あぁ見えて天界一の秀才なんだから!! まぁ超天才の私ほどじゃないけどね」


 心配から漏れてしまった言葉が聞こえていたのか、アテナとリールがフォローしてくれた。


 「そうだよな……ペネちゃんには俺を、どこかの女神と天使から守ってもらわなきゃならないしな」


 「「うっ」」


 「何の話ニャ?」


 2人もペネムエの事をちゃんと心配しているのが伝わったので冗談で返してみたのだが、逆に精神にダメージを与えてしまったようだった。


 事情を知らないグミだけは首を傾げている。





 *****





 北風エネルギーは目視では確認できていたが、歩きではそれなりに距離があり到着まで時間がかかってしまった。


 「ここみたいね」


 正門らしい場所まで来たのだが、門はしっかりとしまっている。一応敷地内をある程度見渡せるのだが何十台も駐車できそうな駐車場には3台ほどしか車が確認できなかった。


 「月曜って普通働いてるよニャ?誰もいないのかニャ?」


 「電気もついてないし休み……か?」


 「あれよ。きっと働き方改革って奴よ」


 「天界から来たのに、変な言葉知ってるんだな」


 3人は入れそうな場所を探し、会社の敷地を囲む塀をグルっと1周しながら、そんな話をしていた。


 「さっきの門からしか敷地には入れなそうね」


 「そうだニャ」


 そう言うとリールとグミは2メートル以上ある塀を魔法の絨毯とホウキで飛び越えていった。


 (いや……入口探してた意味は?)


 そう思いながら翔矢もリールの絨毯に再び乗せてもらい塀の内側に入った。


 しかし敷地内に入っても北風エネルギーは3つの建物に分かれていた。


 どの建物にペネムエがいるか分からないし、分かっても入れるのかは分からない。


 「そういえば近くまでくれば魔力で居場所って分かるんじゃなかった?」


 「は? 探知魔法も使えないのにそんなの無理よ」


 ここに来る前にグミからその話を聞いたのを思い出し提案してみたが、リールに何を言っているんだとばかりに否定された。


 「あぁ。あの建物の奥の方にいるニャ」


 だが、グミは即答で建物の1つを指さした。


 「できるじゃん?」


 翔矢は少しムッとした表情でリールを睨んだ。


 「あっ悪魔族は動物に感覚が近いから、魔法なしでも気配とか把握できるのよ!!」


 リールは恥ずかしいような怒ったような顔で弁明する。


 




 *****






 建物のガラス張りのドアは、やはり鍵がしっかりかかっていた。


 「まぁしょうがニャイ」


 グミは一歩後ろに下がり、左足を後ろへ引いた。


 「ストップ!! ストップなのよーーー。一応何をしようとしてるか答えるのよー」


 「回し蹴りでこんなドアはドーーーンニャ!!」


 「ね、念のため破壊活動は控えてほしいのよー」


 水晶玉から半透明で浮かび上がっているアテナは冷や汗をかいていた。


 「でも、このままじゃペネムエの所に行けませんよ?」


 リールもドアを破壊しようと考えていたらしく手にはサーベルが握られていた。


 「ちょちょっと待つのよー」

 

 アテナはパンと両手を合わせて見せた。するとドアがガチャっと音がした。まさかと思い翔矢がドアを押してみると鍵はかかっていなかった。


 「ニャニャニャ!? ノーマジカルで魔法は使えないんじゃニャイのか?」


 この状況を一番驚いたのはグミだった。


 「確かにノーマジカルで魔法は使えないのよー。でも他の世界で発動した魔法はノーマジカルに干渉するのよー」


 「よし!! 行くぞ!!」


 「はいよー」


 「ニャ!!」


 3人はいよいよ北風エネルギー内部に侵入した。


 





 *****






 建物内部に入ると、中は幅の広い廊下が続いていた。数メートル置きに部屋があったので1つ1つ確認しながら進んでいく。


 この建物は事務仕事の部署が集中しているのか、どの部屋もパソコンと資料が並ぶばかりだ。


 「奥の方にペネちゃんいるの分かってるんだろ? 別に部屋は見なくてもいいんじゃねぇか?」


 一刻も早くペネムエの無事を確認したい翔矢はイライラしながら部屋を覗く。


 「ここの連中が何の目的でペネムエを、さらったか手がかりがあるかもしれないからね」


 リールは部屋の引き出しを次々に開けたり、ファイルをパラパラめくり資料を確認したりする。


 「あっ、この建物の資料のコピーは終わったから先に進んでいいのよー」


 物色を10分くらいしていた所でアテナが間の抜けた声で話しかけてくる。


 「コピーしてたんなら先に言ってくださいよ!!」


 そんな事ができるなら、3人で真っ先にペネムエの所に言ってれば良かったと、さらにイライラが強くある。


 「あー。私も天使を経由しないと魔法は使えないのよー。まぁWi-Fiの中継みたいなものなのよー」


 「Wi-Fiって……」


 「私は資料を確認するから、後は頼むのよー」


 と言い残しアテナとの通信は切れた。





 

 *****





 その後3人は廊下に戻ったのだが、出口に戻る道は分厚いシャッターで塞がれていた。


 「え?」


 「ニャニャ?」


 リールとグミが驚きの声を漏らすが、これは道を塞がれていたからではない。


 「どうしてノージカルに……ゴブリンがいるのよ……」


 ペネムエがいる方向から10体のゴブリンが巨大な木製のハンマーを持ち、ゾロゾロと迫って来ていたのだ。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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