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45話:取り調べから実験が始まりそうです

 ペネムエは気が付くと白い壁に覆われた部屋にいた。手足に鎖が括り付けられ背丈以上もある十字架に縛られている。人間の平均より強い程度の天使の力ではどうもできそうにない。


 「ここは……?」


 状況が飲み込めないペネムエは、今日の自分の行動を思い出そうとする。


 「わたくし買い物に出かけてそれで……」





 *****





 マジックラウドに乗り家を出たペネムエは、線路をたどり目的の駅に到着した。


 「建物は、しっかりしているのに人通りが少ないですね。ノーマジカルの田舎町は人口が本当に少ないです」


 マジックラウド以外の魔法の道具を、ほとんど家に置いてきてしまったペネムエは姿を隠す事ができず、人がいなくなるのを待って地上に降りたのだが裏路地ならほとんど人を気にする事なく降りることができた。


 「この格好では目立つでしょうか?」


 自分の魔法少女のような恰好を気にしたペネムエは、とりあえず翔矢の私服を思い浮かべ魔法の服の形状をジーンズと謎の英語の書いているTシャツに変えた。


 「男性の物ですが変じゃないですかね?」


 いつもなら翔矢に意見を求めるが今日は一人で来たので答えてくれる相手がいないはずだった。


 「いやいや。お嬢さんよく似合ってるよ」


 「そうですか? ありがとうございます? ……え?」


 ペネムエは、振り向いたが直後に腹部に強い衝撃を受けて気絶してしまったのだった。





 *****






 「何者かがわたくしをさらった? しかし誰が何のために?」


 記憶をたどってみたものの、自分の身に起こった事は、ほとんど理解することができなかった。


 しかし、それはすぐに説明されることになる。


 「おや、お目覚めのようだね」


 ペネムエが目を覚ましてから数分もしないうちに壁に映像が映し出された。映像には30代くらいで白髪混ざりの白衣を着た男が映っていた。


 「あなたが、わたくしをさらったのですか?」


 「正確には、さらったのは私でなく支社の連中に頼んだんだけどねぇ」


 ペネムエの質問に男は明るいトーンで答えた。直接の対面であれば心の声を聴くこともできるがモニター越しではそれは叶わない。


 「あなたの目的は何ですか?」


 この男がどこまで真実を話すかは分からないが今は情報を聞き出すしかない。


 「私たちの目的は君のような魔力を持つ生命体。まぁ我々はウィザリアンと名付けたんだけどね。そういう脅威から世界を守ることさぁ」


 「脅威? わたくし達が?」


 確かに天使はこの世界に本来存在しない魔力を持っているが、それだけで脅威と言われる理由が分からなかった。


 「しらばっくれても無駄だ!!」


 今度はスーツ姿の男が映像に映ってきた。明るく自然体な白衣の男に対し、こちらは興奮した様子だ。


 「ちょっと蓮。私がまだ話してるんだけどなぁ」


 「ドクターは口が軽い。余計な事まで話かねんからな」 


 「信用ないなぁ。じゃあ後はお好きにどうぞ」


 そういうとドクターと呼ばれた男は部屋を出たのか画面の外にフィードバックしていった。


 「話を続けようか。我々北風エネルギーは六香穂で最近頻発している事件を調査している」


 「事件?」


 ペネムエは首をかしげたが漣は話を続けた。


 「最初はトラックが少女を弾きかけたという物だった。幸い地元の高校生が庇い大きな事故にはならなかったようだがな」


 (それってリールが翔矢様を転生させようとした事故の……)


 事故に心当たりがあることを悟られないように平静を装い話を聞く。


 「最初は運転手の不注意かと思われたが、現場からは我々が元より研究を進めていた魔力が検出された」


 ペネムエはゾッとした。北風エネルギーという組織は魔力を検出できる技術を持っている。


 ノーマジカルの人間は1人異世界に行くだけで、その世界が壊滅するほどの魔力を得る。なので天界は、この世界の人間に魔法の事は極力隠すようにしてきたのだ。


 魔法の存在を知るだけでなく検出できるレベルまで研究されているのは非常に危険だ。


 「他にも空海山での不可解な落石。氷結。いずれも魔力によるものと調査結果が出た」


 登山のときのリールとの戦いの事だ。魔法がファンタジーとしか思われていないノーマジカルで多少無茶をしても特定はされないと思っていたが迂闊だった。ペネムエの顔色は徐々に悪くなる。


 「ここまで話したんだ。俺の質問にも答えてもらおう。君の目的は何だ?」


 漣は鋭い目つきでペネムエを睨む。異世界転生させる為にノーマジカルの人間が命を狙われていて、自分はそれを防ぐために来ている。と本当の事を話しても逆効果になりそうだ。


 相手を納得させる事ができる回答が思い浮かばずペネムエは沈黙してしまう。


 「まぁいい。最初から素直に話すとは思っていない。ドクター、あとは好きに処分してくれ」


 「いいのかい?」


 今まで画面の枠外にいたドクターが、漣の言葉にウキウキした答えながら戻ってきた。


 「これ以上問い詰めても無駄だろう。それに、お前の事だ。これの死体1つでもあればさらに研究が進めれるだろ?」


 「もちろん!! 直接解剖したい所だけどマジギアの量産も急がなきゃならないし……とりあえず遠隔操作で生かしたまま調べるか」


 ドクターがパソコンを操作すると、無数の機械のアームが天井から伸びてくる。アームの先端は1つ1つ違う器具が取り付けられている。


 「うっ」


 先端がナイフになっているアームがペネムエの左頬を薄く傷つけた。赤い血がツーっと頬を伝わる。


 「ふむふむ。君たちにも赤い血が流れているとはね」


 ドクターはパソコンでアームの操作を続け、少量の血をガーゼに染み込ませ瓶に保存した。


 「血液の分析は時間が掛かるから、ゆっくり待つとして次は……

いや、見た目はどう見ても少女。あまり傷付けるのは心が痛む。他の仕事に戻ろう」


 そう言って立ち上がったドクターの姿にペネムエは少しホッとした。


 「キャーーーー!!」


 しかし、その瞬間ペネムエの体に強い電撃が流れた。


 意識はあるが力が抜けグッタリしていまう。十字架に縛られているため体は起き上がったままだ。


 「なんてうっそーーー!! あいにく僕は見た目に騙されるほど甘くないのでね。

今の電撃で意識があるのが君が化け物である証拠だぁ。怖い怖い」


 ドクターはワザとらしく体を震わせる。


 そのドクターの言葉に反応するほどペネムエの力は残っていなかった。


 時間の許す限りドクターによる実験はいつまでも続く。


 気絶すらできずペネムエにはその時間が永遠にのように感じられた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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